
人材開発の課題とは?成果につながらない原因と解決策を解説
人材開発担当者の中には、
毎年研修を実施しているのに成果が見えない
受講者アンケートの評価は高いのに現場が変わらない
本当にこの育成施策を続けるべきなのか分からない
といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
新入社員の早期離職、管理職の育成不足、OJTの形骸化、次世代リーダー不足など、人材に関する課題は年々複雑化しています。それにもかかわらず、多くの企業では従来と同じ研修を繰り返し実施し、人材開発の効果を十分に検証できていないのが実情です。
実際に、弊社の調査では4年連続で60%以上の組織が「人材育成の効果を十分に感じられていない」と回答しています。その背景には、効果測定が行われていないこと、研修を実施すること自体が目的化していること、そして学習者の行動変容まで見据えた設計になっていないことなど、共通する課題があります。
一方で、人材開発の成果を上げている企業は、単に研修回数を増やしているわけではありません。組織課題から逆算して育成施策を設計し、上司を巻き込みながら現場での実践を支援し、デジタルツールやAIも活用して継続的な学習環境を構築しています。
つまり、「研修を実施すること」ではなく、「現場での行動変容と成果創出」をゴールに据えているのです。
本記事では、人材開発でよくある課題を体系的に整理するとともに、その解決に向けた具体的な考え方や実践方法を解説します。人材育成の成果に課題を感じている方はもちろん、これから人材開発の見直しを進めたい方も、自社の育成施策を見直すヒントとしてぜひ参考にしてください。
▼人材開発・育成については、テーマに合わせて詳しく解説しています。
▼各社の人材育成の実態については、以下の調査レポートもご参考ください。
目次[非表示]
- 1.なぜ研修は成果につながらないのか?人材開発課題の全体像
- 1.1.「4年連続で60%以上の組織で人材育成の効果を感じられていない」という実態
- 1.2.研修の効果を感じていない状態を放置している
- 1.3.そもそも効果測定をしていない
- 1.4.成果につながる研修設計をしていない
- 2.人材開発でよくある課題11選
- 2.1.研修効果が出ない
- 2.2.効果測定をしていない、やり方が分からない
- 2.3.新入社員が育たない
- 2.4.若手離職の増加
- 2.5.OJTが効果的に機能していない
- 2.6.中堅社員が伸び悩んでいる
- 2.7.次世代リーダー候補が育たない
- 2.8.ベテラン管理職のマネジメントアップデート
- 2.9.営業のスキル不足
- 2.10.拠点や配属先ごとの育成のばらつき
- 2.11.従業員エンゲージメントの向上
- 2.12.人的資本開示への対応
- 2.13.AIリテラシー教育体制の整備
- 3.人材開発でよくある課題を解決するための6つのポイント
- 3.1.研修の目的を見直す
- 3.2.対象者に取ってほしい期待する行動を明確化する
- 3.3.行動変容を促す研修を設計する
- 3.4.上司の関与を促す
- 3.5.インターバル型の研修を設計し実践を促す
- 3.6.デジタルツールを活用して細かなリマインド・フォローをする
- 4.人材開発でよくある課題を解決するための10の手段
- 4.1.オンボーディングプログラムの構築
- 4.2.OJTのデジタル化
- 4.3.キャリア開発支援
- 4.4.eラーニングを活用したパーソナライズ学習
- 4.5.AIを活用したロープレトレーニング
- 4.6.経営シミュレーションによる次世代リーダー育成
- 4.7.社内トレーナーによる研修の内製化
- 4.8.学習プラットフォーム・LMSを活用した学習行動データの取得
- 4.9.ブレンデッドラーニングの設計
- 4.10.拠点単位・職場単位での研修実施
- 5.人材開発の課題を解決する上で見落としがちなポイント
- 6.LDcubeは人材開発担当者の相談相手になります
- 7.まとめ
なぜ研修は成果につながらないのか?人材開発課題の全体像
人材開発の課題を考える上で、まず押さえておきたいのは、多くの企業で研修を実施しているにもかかわらず成果を実感できていないという現実です。
その背景には、効果測定の不足や研修設計の問題など、共通する課題があります。まずは人材開発が成果につながらない全体像を整理していきましょう。
「4年連続で60%以上の組織で人材育成の効果を感じられていない」という実態
人材開発の課題として最も深刻なのは、多くの企業が人材育成の成果を実感できていないことです。
弊社が2023年から毎年実施している調査によると、4年連続で60%以上の組織が人材育成の効果を十分に感じられていないという結果が明らかになりました。多くの企業が研修に予算や時間を投資しているにもかかわらず、期待した成果が得られていないのです。
例えば、新任管理職研修を実施したものの、現場でのマネジメント行動に変化が見られないケースがあります。また、営業研修で高い満足度を獲得しても、売上や商談成約率に好影響が表れないことも少なくありません。受講者からは良い研修だったという声が上がる一方、組織成果につながっていない状況が発生しています。
このような状態が続くと、人材開発部門は本当に意味があるのかという厳しい評価を受けるようになります。さらに、経営層から研修予算削減の圧力が高まることもあります。
人材開発の本来の目的は、知識を教えることではなく、業績や生産性向上につながる行動変容を生み出すことです。そのため、人材育成の効果を実感できていないという現実を正しく認識することが、課題解決の第一歩となります。
研修の効果を感じていない状態を放置している
成果が出ていないこと以上に問題なのは、「研修の効果を感じられていない」状態を放置している企業が少なくないことです。
研修を実施した後、多くの企業ではアンケートを回収して終了となります。受講者の満足度は確認していても、その後の行動変化や業績への影響までは追跡していません。その結果、成果の有無が分からないまま、毎年同じ内容の研修が繰り返されています。
例えば、若手社員向け研修を毎年実施しているものの、離職率は改善していないケースがあります。それにもかかわらず、研修内容や育成方法を見直すことなく継続してしまうのです。また、管理職研修でも、現場からマネジメント不足の声が出ているにもかかわらず、同じプログラムが継続されることがあります。
本来であれば、成果が出ていない場合には原因を分析し、改善施策を検討する必要があります。しかし、研修はやるものという慣習が優先されると、課題発見や改善活動が行われなくなります。
人材開発を成果につなげるためには、実施すること自体を目的にせず、本当に効果が出ているのかを継続的に検証する姿勢が欠かせません。
▼調査結果詳細については、以下をご覧ください
⇒【調査レポート速報!】(4年目)人的資本経営時代における人財育成の実態調査結果を公開!
そもそも効果測定をしていない
人材開発が成果につながらない大きな要因の1つが、効果測定の未実施です。
多くの企業では、受講直後の満足度アンケートのみを実施しています。しかし、満足度が高いことと成果が出ることは同じではありません。面白かった、分かりやすかったという評価だけでは、実際に現場で活用されているかは判断できないのです。
例えば、営業研修後に営業成績が向上したのか、管理職研修後に部下との面談回数が増えたのかを測定しなければ、研修の効果は分かりません。また、新入社員研修の場合でも、定着率や早期戦力化の状況を確認する必要があります。
効果測定が行われない理由としては、何を測れば良いか分からない、時間がない、データ収集が難しいといった声が挙げられます。しかし、測定しなければ改善の方向性も見えてきません。
成果につながる人材開発を実現するためには、満足度だけでなく、理解度、行動変容、業績への影響まで段階的に確認する仕組みを構築することが重要です。測定できない人材開発は改善できないという考え方が求められます。
▼研修の効果測定については、以下で詳しく解説しています。
⇒研修の効果測定を行い、成果につなげる方法とは?ツール活用法も解説!
成果につながる研修設計をしていない
人材開発の成果が出ない原因は、育成施策の設計そのものにある場合も少なくありません。
これまでの人材育成は、集合研修を中心に実施されることが一般的でした。しかし、その多くは学習者ではなく、研修を提供する側の都合を前提に設計されています。決められた日時に、決められた内容を一律に受講する形式では、一人一人の課題や業務に合わせた学びを実現することは難しいでしょう。
例えば、コミュニケーション力の向上を目的とした研修でも、1度受講しただけで行動が変わるわけではありません。営業研修も同様に、集合研修でロールプレイングを行うだけでなく、現場で実践し、フィードバックを受けながらスキルを磨く機会が必要です。
また、働き方や学び方が多様化した現在では、集合研修だけが育成の手段ではありません。オンライン学習やデジタルツール、AIを活用したロールプレイングなどを組み合わせることで、学習者は必要な内容を必要なタイミングで学び、実践につなげやすくなります。
成果につながる人材開発を実現するためには、研修を実施することを目的にするのではなく、学習者がどのように学び、どのような行動変容を起こすのかを起点に設計することが重要です。集合研修に限らない学習環境を整え、継続的な学びと実践を支援することが、人材開発成功の鍵となります。
▼研修設計の方法については、以下で詳しく解説しています。
⇒効果を生み出す研修設計の方法とは?見直すポイントと成果との関係を解説!
人材開発でよくある課題11選
人材開発には企業ごとにさまざまな悩みがありますが、多くの組織で共通して見られる課題があります。ここでは、人材開発担当者が直面しやすい代表的な課題と、その背景にある問題について解説します。
研修効果が出ない
人材開発において最も多い課題が、研修を実施しているにも関わらず成果が出ないことです。
その原因の多くは、研修を実施すること自体が目的化している点にあります。本来、研修は経営課題や現場課題を解決するための手段です。しかし、年間研修計画をこなすことや受講人数を達成することが目的となり、成果とのつながりが意識されなくなってしまいます。
例えば、毎年同じ管理職研修を実施しているものの、現場のマネジメント品質は改善していないというケースがあります。また、営業研修を実施しても商談成約率は変わらず、受講者満足度だけが評価指標になっている場合もあります。
こうした状態では研修を重ねても組織成果にはつながりません。まずは何を改善したいのか、研修後にどのような行動を取ってほしいのかを明確にすることが重要です。
効果測定をしていない、やり方が分からない
人材開発担当者から非常によく聞かれるのが、効果測定の方法が分からないという悩みです。
研修後アンケートは実施しているものの、それ以外の測定は行っていない企業が少なくありません。そのため、研修が成功だったのか失敗だったのか客観的に判断できない状況が発生しています。
例えば、リーダーシップ研修を実施した場合、本来であれば面談実施率やチームメンバーとのコミュニケーション頻度などの変化を確認すべきです。しかし、満足度アンケートのみで終了すると、実際の効果は見えません。
効果測定は難しく考える必要はありません。受講後の理解度、行動変容、業績指標の変化などを段階的に確認する仕組みを作ることで、人材開発の価値を可視化できるようになります。
新入社員が育たない
多くの企業で、新入社員が期待通りに成長しないことが課題となっています。
背景には、入社直後の教育期間だけで育成を完結させようとする考え方があります。しかし、新入社員にとって重要なのは配属後の成長支援です。現場で学び続けられる環境がなければ、研修で学んだ内容も定着しません。
例えば、入社時研修では理解できていた内容でも、実際の業務で活用できずに自信を失うケースがあります。また、相談相手がいないことで不安を抱え、早期離職へつながることもあります。
新入社員育成では研修だけでなく、OJT、メンター制度、上司との定期面談などを組み合わせて継続的に成長を支援することが重要です。
若手離職の増加
若手社員の離職率上昇は、多くの企業が抱える深刻な課題です。
給与や福利厚生だけが離職の理由ではありません。成長実感が得られない、自分の将来像が描けない、上司との関係が良くないといった理由も大きく影響しています。
例えば、入社後数年間に十分な育成機会が提供されない場合、若手社員は会社にいても成長できないと感じるようになります。その結果、転職を選択する可能性が高まります。
若手離職を防ぐためには、育成計画の明確化やキャリア支援の充実が欠かせません。成長を実感できる環境づくりが離職防止につながります。
OJTが効果的に機能していない
多くの企業がOJTを導入していますが、期待した成果が出ていないケースは少なくありません。
その理由は、OJTが仕組み化されていないからです。担当者任せになり、指導内容や指導品質が属人化してしまうのです。
例えば、優秀な指導担当者の下では成長する一方で、忙しい担当者の下では十分な指導が受けられないという状況が発生します。これでは育成品質に大きな差が生まれてしまいます。
OJTを機能させるためには、指導内容の標準化や育成計画の共有、定期的な振り返りやデジタルツールの活用など、仕組みが必要です。
中堅社員が伸び悩んでいる
中堅社員の成長停滞も人材開発における代表的な課題です。
若手時代は多くの研修機会がありますが、中堅層になると育成機会が減少する傾向があります。その結果、日々の業務をこなすだけになり、成長が止まってしまいます。
例えば、プレイヤーとして成果を出しているものの、後輩育成や部門横断の課題解決には関わった経験がないケースがあります。
中堅社員には視野を広げる教育機会や、リーダーシップを発揮する機会を計画的に提供する必要があります。
▼中堅社員の伸び悩みについては、以下で詳しく解説しています。
⇒中堅社員の「伸び悩み」を解消するには?原因と組織的な対策、効果的な育成施策を紹介!
次世代リーダー候補が育たない
将来の管理職や経営幹部候補が不足していることも大きな課題です。
多くの企業では、候補者を選抜するだけで十分な育成が行われていません。そのため、役職に就いた後に必要なスキルの不足が顕在化します。
例えば、高い専門性を持つ社員が管理職になったものの、部下育成や組織運営がうまくできないケースがあります。
次世代リーダー育成には、早期からの計画的な経験付与と経営視点を養う教育が重要になります。
▼次世代リーダー育成については、以下で詳しく解説しています。
⇒次世代リーダー育成の【最重要ポイント】はタスクアサイン!
ベテラン管理職のマネジメントアップデート
近年はベテラン管理職のマネジメントスタイル見直しも大きなテーマです。
働き方や価値観が変化する中で、過去の成功体験だけでは組織運営が難しくなっています。特に若手世代とのコミュニケーションに課題を抱えるケースが増えています。
例えば、以前は通用していた指示命令型のマネジメントが、現在では離職やエンゲージメント低下の原因になることがあります。
管理職自身が学び続け、新しい時代に適応したマネジメントを身につけることが求められています。
営業のスキル不足
営業部門では、成果に直結するスキル強化が課題となることが少なくありません。
市場環境や顧客ニーズは急速に変化しています。しかし営業担当者のスキルが更新されなければ、成果の低下につながります。
例えば、提案型営業が求められているにもかかわらず、従来型の商品説明中心の営業から脱却できないケースがあります。
営業育成では、1度の研修で終わらせず、実践とフィードバックを繰り返す仕組みを作ることが重要です。
拠点や配属先ごとの育成のばらつき
企業規模が大きくなるほど、育成のばらつきは大きな課題になります。
同じ会社であっても、拠点や部署によって育成の質が大きく異なることがあります。その結果、人材レベルにも差が生まれてしまいます。
例えば、ある拠点では体系的な指導が行われている一方で、別の拠点では現場任せになっているケースがあります。
育成品質を安定させるためには、共通の育成基準や学習環境の整備が必要です。
▼拠点ごとの効果的な人材育成については、以下で詳しく解説しています。
⇒拠点別人材育成とは?現場課題に効く育成方法と成功のポイントを解説!
従業員エンゲージメントの向上
近年、多くの企業が人材開発をエンゲージメント向上のための施策として活用しています。
従業員のエンゲージメントは、上司との関係性や仕事のやりがい、将来への期待感など、さまざまな要因によって左右されます。そのため、単に制度を整えるだけでなく、従業員一人一人への働きかけが重要になります。
例えば、管理職向けに1on1やコミュニケーションに関するトレーニングを実施し、部下との関わり方を改善する企業もあります。また、若手社員に対しては、仕事のやりがいやキャリアについて考える機会を提供することで、組織とのつながりや成長実感を高める取り組みも行われています。
エンゲージメント向上を実現するためには、課題に応じた人材開発施策を通じて、従業員の意欲や主体性を引き出していくことが重要です。人材開発は、組織と従業員の関係性を強化する有効な手段の1つといえるでしょう。
▼従業員エンゲージメントを高めることについては、以下で詳しく解説しています。
⇒従業員エンゲージメントを高める効果的な取り組みとは?おすすめの方法6選も紹介!
人的資本開示への対応
人的資本経営の浸透により、人材開発の成果を社外に説明する必要性が高まっています。
投資家やステークホルダーは、人材育成への投資状況だけでなく、その成果にも関心を持っています。そのため、人材開発部門にはデータに基づく説明責任が求められるようになりました。
例えば、研修時間や参加率だけでなく、スキル向上や離職率改善といった成果指標の提示が必要になっています。
人的資本開示への対応は、人材開発の取り組みを定量的に把握する重要なきっかけにもなります。
AIリテラシー教育体制の整備
今後ますます重要になるのがAIリテラシー教育です。
生成AIをはじめとするテクノロジーの進化によって、多くの職種で業務の進め方が変化しています。しかし、社員によってAIの活用状況には大きな差があり、十分に使いこなせていない企業は少なくありません。また、情報漏えいや著作権、生成結果の正確性などに関する理解が不足したまま利用されるリスクも高まっています。
例えば、一部の社員はAIを活用して大幅な生産性向上を実現している一方で、多くの社員は活用方法が分からず業務効率化の機会を十分に生かせていない可能性があります。また、適切な利用ルールを理解しないままAIを利用することで、セキュリティーやコンプライアンス上の問題につながる可能性もあります。
企業全体の競争力を高めるためには、特定の社員だけでなく全従業員を対象としたAIリテラシー教育の仕組み作りが不可欠です。AIを効果的かつ安全に活用するための知識とスキルを身に付けてもらうことが、これからの人材開発における重要なテーマになるでしょう。
▼AIリテラシー教育については、以下で詳しく解説しています。
⇒新入社員にAIリテラシー研修が必要な理由と対策について解説!
人材開発でよくある課題を解決するための6つのポイント
人材開発の課題は、単に研修回数を増やしたり、新しい研修を導入したりするだけでは解決できません。成果が出る企業には共通して、行動変容を生み出すための設計や運用の工夫があります。ここでは、人材開発を成果につなげるために押さえておきたい6つのポイントを解説します。
研修の目的を見直す
人材開発の課題を解決する第一歩は、研修の目的を明確にすることです。
多くの企業では、若手社員3年目研修は毎年実施しているから実施する、管理職になったから受講させるといったように、研修そのものが目的化しています。しかし、本来の研修は組織課題を解決するための手段です。
例えば、管理職研修を実施する場合でも、本当の目的は管理職研修の実施ではありません。部下の育成力向上、離職率の低下、組織の生産性向上など、解決したい経営課題や現場課題があるはずです。
目的が曖昧なままでは、どのような内容を学ぶべきか、どのような成果を目指すべきかが見えてきません。その結果、受講者にとっても実務との関連性が薄くなり、学びが定着しにくくなります。
成果につながる人材開発を実現するためには、まず何のために研修を行うのかを問い直し、組織課題と研修を結び付けることが重要です。
対象者に取ってほしい期待する行動を明確化する
研修の成果を高めるためには、受講後にどのような行動を取ってほしいのかを具体的に定義する必要があります。
人材開発でよく見られる失敗は、研修当日の知識習得や気付き・学びを目的にしてしまうことです。しかし、組織成果につながるのは研修当日の学びそのものではなく、学びを活用した現場での実践活動です。
例えば、営業研修であれば、商談前に顧客課題を整理する、ヒアリング質問を増やすといった具体的な行動を設定します。管理職研修であれば、部下との月1回の面談実施やフィードバック頻度の向上などが期待行動になります。
期待する行動が曖昧な場合、研修後に何を実践すればよいのか受講者自身も分からなくなります。また、効果測定を行う際の基準も設定できません。
人材開発を成果につなげるためには、学んでほしいことではなく、実践してほしいことを明確にすることが重要です。
行動変容を促す研修を設計する
成果を生み出す人材開発では、知識提供よりも行動変容を重視した設計が不可欠です。
人は講義を聞いただけでは行動を変えられません。実際に試してみる機会があり、成功体験や振り返りを通じて少しずつ習慣化していきます。
例えば、コミュニケーション研修で傾聴スキルを学ぶ場合、講義だけで終わるのではなく、ロールプレイングや実践課題を組み込みます。その後、職場で実践した結果を共有し、改善点を振り返る機会を設けることで行動の定着を促進できます。
また、自分事として考えられるケーススタディーや現場課題を活用することも効果的です。実際の業務との関連性が高いほど、受講者は学習内容を実践しやすくなります。
研修当日の満足度を高めることではなく、研修後の行動を変えることを中心に設計することが重要です。
上司の関与を促す
人材開発の成果を左右する大きな要素が上司の関与です。
研修でどれほど優れた内容を学んでも、職場で活用する機会や支援がなければ行動変容は定着しません。特に受講後の数週間から数カ月間は、上司の働きかけが重要な役割を果たします。
例えば、研修後に上司が学んだ内容を確認し、実践状況について定期的に対話するだけでも行動継続率は大きく変わります。また、挑戦した結果に対してフィードバックを行うことで、受講者は安心して新しい行動を続けられます。
一方で、研修に行ったことを知らない、学んだ内容に関心がないといった上司の下では、現場実践が進みにくくなります。
人材開発担当者は受講者だけでなく上司も巻き込み、育成の当事者として関与してもらう仕組みを整えることが重要です。
インターバル型の研修を設計し実践を促す
研修効果を高めるためには、1度で完結する集合研修ではなく、インターバル型研修の活用が効果的です。
従来型の研修は、1日または数日間で集中的に学習するケースが一般的でした。しかし、人は学んだ内容を短期間で忘れてしまうため、実践機会がないと知識は定着しません。
例えば、1カ月ごとに研修を実施し、その間に現場実践課題に取り組んでもらう方法があります。受講者は学んだ内容を職場で試し、その結果を次回研修で振り返ります。このサイクルを繰り返すことで、学習内容が実務に結び付きやすくなります。
また、他の受講者との成功事例共有や課題相談も行えるため、継続的な学習意欲を維持しやすくなります。
行動変容を実現するためには、学習と実践を繰り返す仕組みを設計することが重要です。
デジタルツールを活用して細かなリマインド・フォローをする
近年の人材開発では、デジタルツールを活用した継続支援が欠かせません。
研修で学んだ内容は時間の経過とともに忘れられていきます。そのため、学習内容を思い出し、行動を継続するためのリマインドが必要です。
例えば、LMSや学習プラットフォームを活用して実践課題を配信したり、定期的な振り返りアンケートを実施したりする方法があります。また、動画コンテンツやマイクロラーニングを活用することで、短時間でも継続的な学習が可能になります。
さらに、実践状況や受講履歴をデータとして蓄積すれば、効果測定や個別フォローにも活用できます。育成状況を可視化することで、人材開発担当者や上司も適切な支援を行いやすくなります。
人材開発の成果を高めるためには、研修当日だけでなく、その後の実践支援まで含めて設計することが重要です。デジタルツールは、その仕組みを効率的かつ継続的に運用するための有効な手段といえるでしょう。
人材開発でよくある課題を解決するための10の手段
人材開発の課題を解決するためには、研修を実施するだけでなく、現場での実践や継続的な成長を支援する仕組み作りが重要です。
近年はデジタル技術の発展によって育成手法も多様化しており、自社の課題に合わせて適切な手段を組み合わせることが求められています。ここでは、人材開発の成果向上につながる、代表的な10の手段を紹介します。
オンボーディングプログラムの構築
新入社員や中途入社者の早期戦力化には、体系的なオンボーディングプログラムが欠かせません。
多くの企業では入社時研修を実施していますが、その後のフォローが不十分なケースが少なくありません。入社直後は業務だけでなく、人間関係や企業文化への適応も求められるため、継続的な支援が必要です。
例えば、入社後3カ月から6カ月にわたり、学習計画、定期面談、メンター制度を組み合わせたオンボーディングを実施することで、組織への適応を促進できます。また、業務スキルだけでなく心理的な不安の軽減にもつながります。
人材定着と早期戦力化の両方を実現するためには、入社時研修だけで終わらない育成設計が重要です。
▼オンボーディングプログラムについては以下で詳しく解説しています。
⇒オンボーディングプログラムとは?構築のポイントやメリット、具体的な事例など解説!
OJTのデジタル化
育成の質を向上させるためには、OJTのデジタル化も有効な手段です。
従来のOJTは指導担当者の経験やスキルに依存しやすく、育成品質にばらつきが生じるという課題がありました。特に拠点数の多い企業では、指導内容の標準化が難しい状況があります。
例えば、育成チェックリストや業務マニュアルをデジタル化し、習得状況を可視化することで、誰が指導しても一定レベルの育成を実現できます。また、進捗状況を上司や人事部門も確認できるため、適切なフォローも可能になります。
OJTを個人任せにするのではなく、組織の仕組みとして運用することが成果向上のポイントです。
▼OJTのデジタル化については、以下も参考になります。
⇒OJT制度とは?これからの導入はデジタル化して進めよう!|成功ポイントを解説!
キャリア開発支援
従業員の成長意欲や定着率を高めるためには、キャリア開発支援が重要です。
近年は終身雇用を前提としない働き方が広がり、従業員自身がキャリア形成を重視する傾向が強まっています。そのため、企業側も従業員が将来のキャリアを描ける環境を整える必要があります。
例えば、キャリア研修やキャリア面談を実施し、自身の強みや今後の成長目標を整理する機会を提供します。また、社内公募制度や異動制度を活用することで、多様なキャリアパスを提示できます。
成長実感を持てる環境は、エンゲージメント向上や離職防止にもつながります。
▼キャリア開発については、以下も参考になります。
⇒キャリアが分からない社員が増える理由とは?人事が取るべき3つの打ち手を紹介!
eラーニングを活用したパーソナライズ学習
多様化する学習ニーズへの対応には、eラーニングの活用が効果的です。
集合研修だけでは、受講者ごとの知識レベルや課題に対応することが難しい場合があります。一方、eラーニングであれば、自分に必要な内容を必要なタイミングで学習できます。
例えば、新任管理職にはマネジメントコンテンツを、営業担当者には提案力向上コンテンツを提供するなど、個別最適化された学習環境を構築できます。
学習時間や受講履歴も記録できるため、継続学習の促進や効果測定にも役立ちます。
▼パーソナライズ学習については、以下で詳しく解説しています。
⇒パーソナライズ学習とは?進化する人材育成手法について解説!
AIを活用したロープレトレーニング
実践的なスキル習得には、AIを活用したロールプレイトレーニングが注目されています。
従来のロールプレイングでは、講師や上司が相手役を務める必要がありました。しかし、時間や人員の制約から十分な練習機会を確保できないケースも少なくありません。
AIを活用すれば、営業商談やマネジメント面談などを繰り返し練習できます。また、会話内容に対してフィードバックを受けられるため、短期間でのスキル向上も期待できます。
実践機会を増やし、行動変容を促進する手段として活用が広がっています。
▼成果につながる効果的なロープレトレーニングについては、以下もご覧ください。
⇒LDcubeが教えるセールスパーソン育成ノウハウ
経営シミュレーションによる次世代リーダー育成
次世代リーダーを育成するためには、経営視点を養う教育が重要です。
管理職候補者や幹部候補者の多くは、自部署の業務には精通していても、会社全体を俯瞰して意思決定する経験が不足しています。
例えば、経営シミュレーション研修では、仮想企業の経営者として意思決定を行い、利益や組織運営への影響を体験的に学びます。
こうした経験を通じて、経営感覚や戦略的思考を身につけることができます。
▼経営シミュレーションについては、以下で詳しく解説しています。
⇒経営シミュレーションとは?人材育成の新手法・研修について解説!
社内トレーナーによる研修の内製化
人材開発の成果を高める方法として、研修の内製化も有効です。
外部講師による研修は専門性が高い一方で、自社特有の課題や現場事情を十分に反映できない場合があります。
例えば、現場経験豊富な管理職や専門人材を社内トレーナーとして育成することで、自社の事例や成功体験を活用した実践的な研修が実現できます。
また、研修後も受講者との接点を持ち続けられるため、継続的なフォローや行動変容支援にもつながります。
▼研修内製化については以下で詳しく解説しています。
⇒研修内製化の完全ガイド|7つのメリットと成功へのポイントを解説!
学習プラットフォーム・LMSを活用した学習行動データの取得
人的資本経営が重視される中、学習データの活用はますます重要になっています。
従来は研修実施回数や受講人数のみを管理していましたが、それだけでは人材開発の成果を把握できません。
LMSを活用すれば、学習時間、受講状況、理解度テスト結果などを継続的に収集できます。また、育成状況を可視化することで、追加支援が必要な対象者を把握しやすくなります。
データに基づいた人材開発を実現するための基盤として、多くの企業が導入を進めています。
ブレンデッドラーニングの設計
人材開発の効果を最大化するためには、複数の学習手法を組み合わせることが重要です。
集合研修だけでは実践機会が不足しやすく、eラーニングだけでは学習意欲の維持が難しい場合があります。そこで活用されるのがブレンデッドラーニングです。
例えば、事前学習をeラーニングで行い、集合研修で演習を実施し、その後は職場実践とオンラインフォローを組み合わせる形です。
学習効率と実践効果を高められるため、多くの企業で採用が進んでいます。
▼ブレンデッドラーニングについては、以下で詳しく解説しています。
⇒ブレンデッドラーニングとは?研修で「行動変容」を生み出す実践手順を解説!
拠点単位・職場単位での研修実施
学習内容を現場で定着させるためには、職場単位での研修も効果的です。
本社主導の一斉研修だけでは、各職場の具体的な課題に対応しきれないことがあります。また、研修後に職場で学びを共有する機会が不足しがちです。
例えば、営業所単位や部門単位で研修を実施すると、実際の業務課題をテーマに議論しやすくなります。さらに、受講者同士が同じ職場で実践するため、相互支援や継続的な改善活動も生まれやすくなります。
人材開発の成果を現場に定着させるためには、組織全体の施策と現場密着型の育成を組み合わせることが重要です。企業の課題に応じて最適な手段を選択し、継続的な成長を支える仕組みを構築することが求められます。
▼拠点単位での研修を効果的に実施した事例があります。
⇒リコージャパン株式会社 各支社・部門の現状と課題に合わせたプログラム展開で組織風土改革を推進
人材開発の課題を解決する上で見落としがちなポイント
人材開発の議論では、どのような研修を行うべきか、どのツールを導入すべきかに注目が集まりがちです。しかし実際には、多くの企業が見落としている重要なポイントがあります。
人材開発の成果を高めるためには、研修そのものだけでなく、学習の定着や現場での実践を支える仕組みに目を向ける必要があります。
研修「当日」の効果・学びは、20%
人材開発の効果を高めるためには、研修当日だけに注目してはいけません。
その理由は、学習成果の大部分が研修前後の取り組みによって決まるからです。人材開発の分野では40:20:40の法則が知られています。これは、学習成果の40%が研修前の準備、20%が研修当日の学習、残り40%が研修後の実践やフォローによって決まるという考え方です。
例えば、同じ内容の管理職研修を受講したとしても、事前に課題意識を持って参加した人と、何となく参加した人では学習効果に大きな差が生まれます。また、受講後に実践計画を立てて行動した人と、そのまま業務に戻った人でも成果は大きく異なります。
しかし多くの企業では、研修当日ばかりに力を入れています。講師選定や教材開発には時間をかける一方で、事前課題や事後フォローには十分なリソースを割いていません。
本当に成果を求めるのであれば、研修当日を成功させることではなく、研修前後を含めた学習プロセス全体を設計することが重要です。
多くの研修提供会社の本音
人材開発担当者が知っておくべきことの1つが、研修業界の構造です。
多くの研修会社は、研修を提供することがビジネスモデルの中心になっています。そのため、どうしても研修当日の品質向上に重点が置かれやすく、研修後の行動変容や成果創出まで責任を持つケースは限られています。
例えば、研修終了時には高い満足度評価を得られていても、その後の行動変容や業績改善については確認されないことがあります。受講者から分かりやすかった、参考になったという評価を得ることが成果指標になっている場合も少なくありません。
もちろん、全ての研修提供会社がそうではありません。しかし、人材開発担当者側も研修会社に任せれば成果が出ると考えるのではなく、自社で行動変容や成果創出の仕組みを構築する必要があります。
重要なのは、良い研修を選ぶことではなく、良い成果を生み出すことです。その視点を持つことで、研修会社との関わり方も大きく変わります。
社内講師こそが研修の効果を追求し、「行動変容」を実現できる
行動変容を実現する上で大きな可能性を持っているのが社内講師です。
なぜなら、社内講師は研修の実施だけでなく、その研修がどのように効果につながったのかまで責任を持っているからです。また、受講者の業務内容や職場課題を理解しており、研修後も継続的に関われる立場にあるからです。
例えば、営業部門の社内講師であれば、研修で学んだ提案手法が実際の商談で活用されているかを確認できます。管理職向け研修であれば、部下との面談実施状況やマネジメント行動の変化を直接フォローすることも可能です。
外部講師は専門的な知見を提供できますが、受講者の日常業務までは把握できません。一方で社内講師は、研修と現場をつなぐ役割を担うことができます。
そのため、人材開発の成果を高める上では、社内講師を単なる研修担当者ではなく、行動変容を支援する伴走者として育成することが重要です。
社内講師は実は相談相手が少ない?
社内講師の重要性が高まる一方で、見落とされがちな課題があります。それは、社内講師自身が人材育成について相談できる相手が少ないという点です。
例えば、内製での研修内容を見直したい場合、外部の研修提供会社は講師派遣がビジネスの前提であるため、内製化を進める企業の支援には限界があります。また、eラーニングや学習プラットフォームの提供会社はツールには詳しいものの、人材育成全体の設計や運用のノウハウを持っているとは限りません。
その結果、社内講師は十分に相談できる相手がおらず、試行錯誤しながら1人で課題を抱え込み、育成施策の改善が進まなくなることもあります。社内講師の力を最大限に引き出すためには、相談や情報交換ができる環境を整えることが重要です。
LDcubeは人材開発担当者の相談相手になります
LDcubeは、研修やツールを提供するだけではなく、人材育成全体をデザインするパートナーとして、人材開発担当者を支援しています。
多くの研修会社は研修の提供が中心です。そのため、外部講師への依頼を前提とせず、内製での研修や人材育成を検討している場合、親身になって相談に乗ってくれない場合が多くあります。
また、eラーニングや学習プラットフォームなどのツール提供会社は、ツール導入や活用支援が主な役割になります。そのため、ツール活用の相談はできても育成体系全体の相談は難しかったりすることがあります。
一方、LDcubeは成果につながる人材育成をデザインする会社です。集合研修やオンライン研修などの学習機会の提供はもちろん、eラーニングやAIロールプレイングなどのデジタルツールの提供、人材育成の内製化支援や社内講師育成まで幅広く対応しています。
例えば、若手社員育成を強化したい場合でも、単に研修を提案するのではありません。現場での実践を促す仕組みや上司の巻き込み方、デジタルツールを活用した継続学習の方法、さらには将来的な内製化まで含めて検討できます。人材開発担当者が抱える課題に対して、手段ありきではなく成果ありきで支援できることが特長です。
また、LDcubeは60年以上にわたり組織開発・人材開発を支援してきたビジネスコンサルタント集団を親会社に持ち、その知見やノウハウを引き継いでいます。そのため、eラーニングや学習プラットフォームなどのDXツールを提供するだけではなく、現場での行動変容につなげる人材育成設計や、効果測定を見据えた取り組みを設計することができます。
LDcubeは、成果につながる人材育成をともに考えるパートナーとして、人材開発担当者の挑戦を支援しています。初めて人材開発を担当する方も、より効果的な育成施策を目指している方も、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
人材開発において成果が出ない最大の理由は、研修の実施が目的となってしまっていることや、研修が提供側主体の研修設計になっており、学習者主体となっていないということです。
また、新入社員育成や若手離職、OJTの形骸化、次世代リーダー育成、エンゲージメント向上、AIリテラシー教育など、人材開発担当者が向き合う課題はますます多様化しています。こうした課題に対しては、従来の集合研修だけで解決することは難しくなっています。
重要なのは、「何を教えるか」ではなく、「受講者にどのような行動を取ってほしいか」を起点に育成を設計することです。そのためには、組織課題と育成施策を結び付け、効果測定を行いながら改善を繰り返すことが欠かせません。
さらに、上司の関与やインターバル型の学習、eラーニング、学習プラットフォーム、AIロールプレイングなどを活用し、現場での実践を継続的に支援する仕組み作りも重要になります。
また、40:20:40の法則が示すように、研修当日の学びだけで成果は決まりません。事前準備と事後フォローを含めた学習プロセス全体を設計してこそ、行動変容と成果創出につながります。これからの人材開発には、研修という“イベント”を提供する発想ではなく、学習者の成長と現場での実践を支援する“仕組み”を構築する視点が求められます。
人材開発の目的は研修を実施することではなく、組織成果につながる人材を育成することです。ぜひこの機会に、自社の人材開発施策が本当に行動変容と成果につながっているかを見直し、より効果的な育成の在り方を検討してみてください。
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