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技術伝承の成功事例5選と人材育成の極意を徹底解説

「製造業の技術伝承は難しいと聞いて不安です。実際に成功した事例を教えてください」

技術者の高齢化や退職、若手人材の不足による技術伝承の停滞は、製造業全体の大きな課題の一つです。
今まさに上記のような悩みを抱えている経営者の方もいるのではないでしょうか。

技術伝承の成功には、戦略的かつ計画的な人材育成の仕組みが必要です。
しかし、具体的にどのように技術伝承を行えばよいのか、わかりませんよね。

実際に技術伝承に成功した企業では、以下のような取り組みを行っています。

技術伝承のために行った取り組み

(有)中山鉄工所

ベテランの作業風景を撮影したり、製造物をデータベース化したりしたことで、記録を見ながら学習できるようにした

しのはらプレスサービス(株)

業務に必要な技術を分析・体系化。作業標準を設定することで若手でも一定の品質で作業を行えるようになった

川崎重工業(株)

技術の習熟度を段階別に分け、技術者のレベルに合わせた研修を実施

(株)ワールド山内

Webカメラによる作業の可視化を実施。効率的に振り返り学習ができるようになった

(株)濱﨑組

「技能研修センター」を社内に設置!新卒採用と育成を途切れることなく継続

これらの事例に共通するのは、ノウハウ・技術をデジタル化したり、体系的なOJT(On the Job Training)を行ったりしている点です。

ノウハウ・技術のデジタル化

体系的なOJT

つまり、技術・ノウハウの属人化を解消し、若手人材の育成を組織的かつ計画的に行う仕組みを作ることが重要なのです。

この記事では、上記の5社の成功事例について詳しく解説していきます。

この記事を読めば、御社の技術伝承を成功させるための具体的なヒントが得られ、他社の経験を活かした技術伝承体制を作るための手助けになるでしょう。

ぜひ、最後までご覧ください。

▼技術伝承については、下記で関連テーマについて解説しています。
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▼技術伝承については下記の資料にまとめています。

目次[非表示]

  1. 1.事例(1)機械部品の加工・製造ほか|(有)中山鉄工所
  2. 2.事例(2)プレス機の保守・改造ほか|しのはらプレスサービス(株)
  3. 3.事例(3)航空機関連機器の製造ほか|川崎重工業(株)
  4. 4.事例(4)機械加工・溶接・組立など|(株)ワールド山内
  5. 5.事例(5)総合建築工事・左官工事ほか|(株)濱﨑組
  6. 6.【他社事例から学ぶ】技術伝承を成功させるコツ5つ
    1. 6.1.ノウハウ・技術を「デジタル化」して伝承する
    2. 6.2.​​​​​​​デジタル化に対応できるデジタル人材を採用・育成する
    3. 6.3.「伝承する側」に対して指導・育成スキルの習得の機会を設ける
    4. 6.4.技術伝承の重要性を現場に理解させる制度を作る
    5. 6.5.作成したマニュアルを活用し続ける仕組みを作る
  7. 7.まとめ

事例(1)機械部品の加工・製造ほか|(有)中山鉄工所

出典:有限会社中山鉄工所

有限会社中山鉄工所は、金型やその部品を製造する会社です。

金型や部品の製造には高い精度が求められます。
機械を操る技能だけでなく、工具の選定や加工の度合いを判断する経験や勘も必要で、技術を会得し一人前の技術者になるまでに5年以上かかるといわれています。

同社では、若手がまず作業を行い、それをもとにベテランが指導する、という昔ながらのOJT方式で技術の伝承を試みてきました。

しかし、ベテランの技術者の高齢化が進むなか、前述のように技術の継承に長い年月を要することが課題となっていました。

こうした状況を受け、同社は「技術の継承をより分かりやすく、目に見える形で行えないか」と考え、デジタル技術を活用した以下のような技術伝承の取り組みを始めました。

動画による
技術の見える化

ベテラン技術者の作業をスマートグラス(眼鏡型端末)で撮影し、若手がその映像を見ながら学習できるようにした

AIによる
指導の補助

自社で製造した部品の仕上げ状況を画像で読み取り、AIにその良否を判定させることで、ベテラン技術者の経験や技術に頼らず仕上げ判定ができるようになった

製造物の
データベース化

完成品のデータをデータベース化していつでも参照できるようにすることで、ベテラン技術者に頼っていた仕上げ作業を若手も行えるようにした

上記の取り組みにより、若手はベテランの技術者が不在でも自ら技術を学ぶことができ、一人前になる時間の短縮ができるようになりました。

出典:中小製造業における技能承継問題の実態とその解決策|日本政策金融公庫

事例(2)プレス機の保守・改造ほか|しのはらプレスサービス(株)

出典:しのはらプレスサービス株式会社

しのはらプレスサービス株式会社では、全メーカーのプレス機を対象に保守や改造、さらには周辺装置の設置まで行っています。

このような状況に対応する修理や改造の技能は、技術者の経験や勘に依存する部分が多く、技術の属人化が課題となっていました。

また、従業員の増員についても、技術を持つ人材の中途採用で対応している状態でした。

そこで同社が取り組んだのは、属人的だった技術を、誰もが学び身につけられる「技術」として標準化する以下のような仕組みづくりです。

業務に必要な技術の
分析・体系化

業務に必要な知識や技術を体系化し習熟度を確認できる教育計画を実施。
研修期間(7年間)に技術を漏れなく習得できるようにした

「作業標準書」の作成

実際の手順や作業中の写真、実際のコストなどをデータとして収集し、作業を標準化。

作成した作業標準書は研修や実務で活用され、経験の浅い人材でも「作業標準書」を参考に作業を行えるようになった

作業標準書を活用する
仕組みづくり

作業標準書は、新たな技術やノウハウが追記されて共有される。

その結果、作業標準書は常に更新され、若手人材だけでなく他の技術者からも実務に役立つマニュアルとして活用されている

これらの取り組みにより、誰でも一定の品質で作業を行えるようになり、現場の技術的なばらつきを解消できるようになりました。

その結果、同社では従業員の9割以上が新卒採用者となり、管理職を除く平均年齢は約28歳と若手が中心の企業になりました。

出典:
中小製造業における技能承継問題の実態とその解決策|日本政策金融公庫
特集●企業における技能と技術の融合と人材育成について|基盤整備センター

事例(3)航空機関連機器の製造ほか|川崎重工業(株)

出典:川崎重工業株式会社

川崎重工業株式会社では、製造業の一般的な企業と同様に、若手技術者の不足が大きな課題となっていました。

同社は「人財の育成と活性化」を重視する社風のもと、技術者の短期育成を最重要課題と位置づけ、組織全体の技術力向上を目指す仕組みづくりを行っています。

具体的には、若手技術者への技術伝承を目的として、以下の施策を実施しています。

​​​​​​​習熟度に合わせた
​​​​​​​研修制度

技術の習熟度を段階別に分け、技術者のレベルに合わせた教育計画を実施する体系的な人材育成システム

ベテラン技術者に対する
リーダーシップ教育

ベテラン技術者に対して、指導者としてのリーダーシップ教育を実施。
シニア層やOB人材も積極的に採用・教育して指導者として活用する

技術者の動きを再現する
ロボットシステムの採用

ベテラン技術者の動きをロボットが学習して再現するシステムの開発・導入により、システムによる人材育成や技術伝承が可能になった

上記の人材育成の成果として、川崎重工業株式会社の若手技術者は、社外で開催される技能競技大会で入賞するなど、着実な技術習得を実証しています。

これは、同社の人材育成が単なる技能伝承にとどまらず、企業全体の技術力向上にも貢献していることを示す証拠と言えるでしょう。

出典:
平成30年度ものづくり基盤技術の振興施策|厚生労働省
2019年版ものづくり白書|経済産業省
遠隔協調で熟練技術者の動きを再現する新ロボットシステム「Successor」を販売開始
川崎重工業株式会社 ESGデータブック

事例(4)機械加工・溶接・組立など|(株)ワールド山内

出典:(株)ワールド山内

株式会社ワールド山内は、「人の介在しないものづくり」をテーマに掲げ、合理化と品質向上を目指してIT化に取り組んできた企業です。

繰り返し触れているように、製造業ではベテラン技術者による勘や経験が技術の根幹を支え、それを若手が見て学ぶというスタイルが一般的でした。

同社も例外ではなく、古株の技術者が中心となるなか、若手人材の定着率が低く技術伝承が進まないという課題を抱えていたのです。

そこで同社は、自社開発の生産管理システムを軸に、工場内のすべての作業工程をシステム化・マニュアル化し、次のような人材育成体制を整えました。

Webカメラによる
作業の可視化

工場内に設置された約40台のカメラが、機械や人の動きを画像と音声で記録。
これにより、技術者のムダな動きの改善やトラブル発生時の振り返りが可能となった

研修用教材の
デジタル化

人材育成に必要な教材は、すべての作業工程をデジタル化して作成
毎月行う社員研修で活用される

技術者自身が講師となり
指導力を磨く

講師は若手技術者にも担わせることで、技術の復習の機会を設けるとともに、実践的なプレゼンテーション能力や指導能力も身につけさせる

これらの取り組みにより、従来は技術者の記憶や経験に依存していた工程が可視化され、誰でも同じ品質で業務や人材育成ができる環境が整備されました。

さらに同社では、作業のIT化によって24時間体制の自動化・高効率化した生産体制を実現しています。

出典:2020年版ものづくり白書|経済産業省

事例(5)総合建築工事・左官工事ほか|(株)濱﨑組

出典:(株)濱﨑組

株式会社濱﨑組は、従来の左官業に多く見られる「親方と弟子」の徒弟制度ではない、独自の技術伝承システムによる、優れた人材育成を実現しています。

同社は、学科研修に加えて実技の社内検定や技能検定の練習ができる「技能研修センター」を社内に設けており、以下のような取り組みを行っています。

研修センター
での学習

入社1年目は「研修生」として、研修のみを行う。
実務経験は入社2年目以降から積み始め、半期ごとに社内検定を実施して技術の習熟度を確認する
指導できる

技術者の育成

世代によって得意な技術に偏りがあるため、各世代に指導役を育成することで、伝承する技術の偏りを防いでいる

これらの取り組みにより、(株)濱﨑組は創業以来60年以上にわたって、新卒採用と育成を途切れることなく継続しています。

技術者が段階的に成長し、着実にキャリアを積める環境が整っているため、若手技術者の定着率が高く、技術伝承もスムーズに進んでいることがわかります。

出典:
平成30年度ものづくり基盤技術の振興施策|厚生労働省
2019年版ものづくり白書|経済産業省

【他社事例から学ぶ】技術伝承を成功させるコツ5つ

前章までで、実際に技術の伝承を成功させてきた企業の事例を紹介してきました。
とはいえ、事例を見ただけでは貴社での技術継承を成功させるのは難しいかもしれません。

そのためには、各企業の取り組みを深く分析し、自社の状況に合わせて応用する必要があります。

そこでこの章では、以下の「紹介した事例からわかる技術継承を成功させるコツ」について解説します。

  • ノウハウ・技術を「デジタル化」して伝承する
  • デジタル化に対応できるデジタル人材を採用・育成する
  • 「伝承する側」に対して指導・育成スキルの習得の機会を設ける
  • 技術伝承の重要性を現場に理解させる制度を作る
  • 作成したマニュアルを活用し続ける仕組みを作る

それでは、それぞれのコツをチェックしていきましょう。

ノウハウ・技術を「デジタル化」して伝承する

これまでベテラン技術者が長年の経験を通じて培ってきたノウハウや勘は、「職人技」とも呼ばれるいわば属人的な財産です。

こうしたノウハウは言語化や体系化が難しく、そのままではスムーズな技術継承は期待できません。
技術の伝承をスムーズに行うためには、ノウハウや技術・知識をデジタル化し、見える形で共有するシステムを構築することが必要です。

さらに、ここ数年で製造業全体のデジタル化が加速しています。
厚生労働省の調査によると、8割以上の中小製造業がデジタル技術を活用し、人手不足の解消や作業効率の改善に取り組んでいます。

出典:2024年版 ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)|厚生労働省

今こそデジタル技術を活用しなければ、技術伝承の遅れが大きくなるだけではなく、業務効率や人材育成で他社に後れを取るリスクさえあるのです。

業務や技術を「デジタル化」して技術伝承を行う方法として、以下の例が挙げられます。

  • 技能を標準化し、動画・音声・図解を組み合わせたデジタルマニュアルを作成する
  • 経験やノウハウをデータベースに蓄積して社内で共有し、若手が活用できるようにする
  • Webカメラで従業員の動線を記録・分析し、教育や指導に役立つフィードバックを提供する

このようにノウハウ・技術をデジタル化することで、伝承する側の技術者が不在の状況でも、自主的に若手人材が作業を学ぶことができます。

また、伝承する側の負担も軽減され、技術伝承にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。

BEFORE

AFTER

なおこれらの「デジタル化」について、自社では困難だと思うかもしれません。

その場合は、後述するデジタル人材の採用や育成に加え、人材育成を支援する専門のシステムやサービスを提供する企業に外注する方法もあります。

【技術伝承のデジタル化はLDcubeにお任せください】  



「UMU」は学習の科学とAIテクノロジーを組み合わせたデジタル学習プラットフォームです。

  • ベテランの技術・ノウハウを簡単にデジタル化
    「UMU」なら、スマートフォンで撮影した動画や、画像・音声・手書き情報を組み合わせた業務マニュアルを簡単に作成・共有できます。

    技術者の技術をデジタル化することで、学ぶ・練習する・評価する・仕事に生かすといったサイクルの中で技術の定着を促進します。

  • いつでも・どこでも繰り返し学べる環境
    作成したコンテンツは、スマートフォン・タブレット・PCからアクセス可能です。
    現場や自宅など、場所や時間を問わず何度でも学習できるため、若手社員が自発的に学び、技術の習得スピードを高められます。
     
    また、分からない部分はキーワード検索ですぐに解決でき、マニュアルが「作っただけで終わる」ということがありません。

  • OJTの質を均一化し、指導者の負担を軽減
    教える内容をデジタル化することで、誰が指導しても同じ品質の教育ができます。
    「技術を伝承する側」に高い教育スキルがなくてもOJTができるので、現場の負担を軽減できます。

UMUを導入して、ベテランの技術を「見える化」し、技術伝承を効率化しませんか?



​​​​​​​デジタル化に対応できるデジタル人材を採用・育成する

デジタル化に対応できるデジタル人材の採用と育成は、技術伝承を進めるための重要な前段階として、急務となっています。

前述したように、技術伝承の成功には、従来の技術をいかに「デジタル化」して伝えるかが重要です。
しかし、現時点でこれらの役割を担える人材が不足している企業は少なくありません。

デジタル人材を採用・育成する方法には、以下のようなものがあります。

企業がデジタル化を進めるためには、デジタル技術を活用できる人材を積極的に採用し、育成する体制を整えることが非常に重要です。

上記のような支援やサービスを活用しながら、企業はデジタル人材の確保と育成を進めていきましょう。

出典:
2023年版 ものづくり白書(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興施策)|厚生労働省
2024年版 ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)|厚生労働省
中小企業等DX人材育成支援コーナーについて|高齢・障害・求職者雇用支援機構

「伝承する側」に対して指導・育成スキルの習得の機会を設ける

技術伝承の成功には、ただ「伝承される側」の育成を重視するだけでは不十分で、技術や技能を伝える「伝承する側」にも、指導・育成スキルが求められています。

特に、製造業における現場リーダーやベテラン技術者には、指導・教育するためのスキルが十分に備わっていない場合が珍しくありません。

実際に、製造業における人材育成の問題として、6割以上の企業が指導者不足を挙げています。

出典:2024年版 ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)|厚生労働省

この問題を解決するためには、指導的役割を担う技術者に対して、指導・育成スキルを体系的に身につけさせることが必要です。

例として、以下のような方法が挙げられます。

  • 外部の人材教育機関やセミナー・教材の導入
  • 技術の言語化や効果的なフィードバックの方法など、指導・教育方法を学ぶ研修の実施 など

指導・育成スキルを習得した技術者が技術伝承を行うことで、「若手人材の定着率が低く、技術伝承が進まない」などのリスクを減らすことができます。

技術伝承の重要性を現場に理解させる制度を作る

技術伝承の成功には、若手に技術を伝える重要性を現場に理解させる必要があります。

しかしなかには、自分の長年の経験に基づく技術が共有されることで、自分の存在価値や評価が低下するのではないかと懸念し、協力をためらう技術者もいます。

このような状況を打破するためには、技術伝承を組織全体の重要課題として根付かせることが重要です。

具体的には、以下のような方法でベテラン技術者の不安を払拭し、技術伝承に対する前向きな空気を作りましょう。

  • 受講者からの評価やフィードバックなど、OJT行動を評価の対象にする
  • OJTに対する明確な評価基準や賃金体系を示し、やる気を引き出す
  • 若手技術者の指導者としての役割を与え、その重要性を強調する など

上記のような制度を導入することで、ベテラン技術者も技術伝承の重要性を理解しし、技術伝承の取り組みに協力しやすくなるでしょう。

作成したマニュアルを活用し続ける仕組みを作る

技術伝承のためにマニュアルを作成しても、その後も活用し続ける仕組みがなければ、再び技術伝承が滞ってしまいます。

以下のような工夫を行い、マニュアルを活用し続けられる仕組みづくりを行いましょう。

  • オンラインでいつでも最新のマニュアルを閲覧できるようにする
  • マニュアルを活用するための定期的なワークショップや研修を行う
  • マニュアルの理解しやすさや使いやすさの意見を集め内容を更新する など

マニュアルは、実際に「伝承される側」にとってどれだけ理解しやすいか、取り入れやすいかが非常に重要です。

「しのはらプレスサービス(株)」のように、マニュアルを単なるツールにせず、実際に技術を伝承する資料として機能させるためにも、上記のような仕組み作りは必要不可欠です。

まとめ

この記事では、製造業における技術伝承の成功事例について解説しました。

最後に内容を振り返りましょう。

〇製造業において、実際に技術伝承に成功した企業では、以下のような取り組みを行っています。

技術伝承のために行った取り組み

(有)中山鉄工所

ベテランの作業風景を撮影したり、製造物をデータベース化したりしたことで、記録を見ながら学習できるようにした

しのはらプレスサービス(株)

業務に必要な技術を分析・体系化。作業標準を設定することで若手でも一定の品質で作業を行えるようになった

川崎重工業(株)

技術の習熟度を段階別に分け、技術者のレベルに合わせた研修を実施

(株)ワールド山内

Webカメラによる作業の可視化を実施。効率的に振り返り学習ができるようになった

(株)濱﨑組

「技能研修センター」を社内に設置!新卒採用と育成を途切れることなく継続

〇上記の事例からわかる「技術継承を成功させるコツ」は以下の通りです。

  • ノウハウ・技術を「デジタル化」して伝承する
  • デジタル化に対応できるデジタル人材を採用・育成する
  • 「伝承する側」に対して指導・育成スキルの習得の機会を設ける
  • 技術伝承の重要性を現場に理解させる制度を作る
  • 作成したマニュアルを活用し続ける仕組みを作る

この記事の情報が、課題を解決する参考となれば幸いです。

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