取組前の課題:
・各支社・部門によって多種多様な課題があった。世代・価値観・時代の変化によりコミュニケーションが希薄化
・組織風土変革のためには本部主導でなく現場主導で、各支社・部門の課題に寄り添った取り組みの必要性を感じるように
取り組んだこと:
・体験学習型ワークショップをベースに各課題に合わせたテーマで研修を実施し、デジタルツールを活用しながら職場実践を促進
今後の展望:
・各支社・部門・職場に対して、より効果的にプログラムを展開できる体制を構築したい
人事・コーポレート本部 人財開発センター 人財開発部 部長
武田 佳祐 様
リコーグループは、日本、米国、欧州、アジア・パシフィックに拠点を置き、全世界約200の国と地域で事業を展開しているグローバルカンパニーです。2036年に創業100周年を迎えるリコーグループは、「”はたらく”に歓びを」という価値観を基に持続可能な未来をつくる活動をしています。
「人のこころとからだに携わり、現場に寄り添った教育施策を実現したい」という個人の想いを持ち、活動しています。
「本部主導の教育施策だけでなく、現場に寄り添った教育施策を展開したい」
「研修後の学びの定着を支援し、職場での実践と成果向上まで促進したい」
このような悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
リコージャパン様では、LIFO・HEP・ITS・SBRP・行動の柔軟性開発プログラムを活用した体験学習型ワークショップにより、
現場の課題解決と社員一人一人の能力開発を目的とした組織風土改革の取り組みをされています。
本記事では、人事・コーポレート本部 人財開発センター 人財開発部長の武田 佳祐 様にインタビューした内容をレポートします。
①各支社・部門の状況・課題に合わせた教育施策ができていない
2010年7月に日本国内の販売会社7社を統合し、リコージャパン株式会社が設立されました。それまで各販売会社では独自でさまざまな取り組みを実施しており、風土や教育施策、組織課題も各社各様でした。販売会社の統合からこれまで、教育施策は本部主導で一方的なものが多く、幅広く多くの社員が受講できることを優先した取り組みとなっていました。統合後の各支社では、統合前の組織風土の名残やそれぞれの課題に応じて、本部主導だけでなく各支社・部門の課題に寄り添った、ボトムアップの施策を展開することが必要でした。
②縦割りの組織文化とコミュニケーションの希薄化
これまで各支社では「こんな課題があり困っている」ということがあっても、人材育成の知見がそれほどあるわけではなく、なかなか手が打てていない状況でした。本部へ相談したとしても、縦割りの組織風土もあったことにより、対応できることとできないことがありました。各支社・部門で困ったことがあったときに、本部で一度受け入れて、汎用的に職場で実施できるプログラムの構築や体制づくりが必要でした。
また、近年は飲み会でのコミュニケーションの機会も減る中で、コミュニケーションが希薄化していました。従来弊社では、上下関係を尊重しながらも、お互いを気に掛けながら仕事を進める良い風土がありました。飲み会でお互いのパーソナリティーを知り、より良い仕事につなげる好循環ができていました。しかし、近年では世代や価値観、時代の変化などから、そのような機会も減少していきました。飲み会に限らずとも、職場のコミュニケーションをより良くしていく必要を感じていました。このような状況下で、特に職場メンバーの個性や特性を知り、深く関わることができていないということは大きな課題でした。
「人の“こころ“と“からだ“に携わる仕事がしたい」と異動希望を出していたこともあり、2022年10月より北海道支社から人材開発センターに異動しました。2023年9月に、上記のような課題を解決しながら、効果的な人材育成施策を実行していくために情報収集として、HR EXPOへ参加しました。
そこでLDcubeとそのサービスを知り、まずはじめの第一印象としては「相談できそうな相手が見つかって良かった」ということでした。新しいことを考え、実行していく上ではどうしても専門的な知見やノウハウが必要です。その上で、さまざまな観点で相談できる相手を見つけることもHR EXPOへ参加した目的の1つでした。商談では現状の課題や実現したいことについて相談をしました。
その中で、まずは社員一人一人が自分の強みや弱みを理解し、そしてお互いの個性や特性を理解し合うことが大事だとメッセージをもらいました。それは、これまで飲み会でやっていたことができなくなってきているという課題認識と合致していました。
そして、その促進ツールとして担当営業の方からLIFOというツールを教えてもらいました。LIFOの個人診断は対面形式だけではなく、オンライン上でも実施することができます。また設問に対して自分に当てはまる数字を選択していくことで、その場で診断結果(LIFOレポート)を出力することができます。LIFO診断によって、一人一人の考え方や行動特性が数値で可視化されます。数値が良い悪いではなく、「同じ組織でも違っていいんだ」ということが自覚できるため、弊社が抱えていた課題を解決する手段として、有効に活用できそうだと感じました。
さらに、LIFOは単なる診断ではなく、ライセンスを取得することにより社内トレーナーとしてLIFOを活用した研修プログラムを実施できるものでした。ライセンスを取得することにより、社内事情をより知っている社内トレーナーがプログラムを実施できるため、組織風土改革のプログラムに適していると感じました。
また、導入の決め手としては、「担当者の対応力」と「プログラムデザイン力」でした。
弊社が抱える「人と組織」の課題と要望に対して、丁寧なヒアリングと提案をしていただきました。課題や要望に対して、サービスの紹介だけでなく、実現したい「組織風土変革」の進め方や、取り組みの効果を上げるための工夫まで、一連のプログラムをデザインしていただいたのが導入の決め手となりました。
また、LIFOを活用して実践できる「体験学習型ワークショップ」の種類の多さも重要なポイントでした。本部が各支社・部門のさまざまな課題を受け入れ、解決に向けたプログラムを展開していく上で、ワークショップのラインナップの多さは心強く感じる要素の1つでした。
組織風土改革プログラムは、LIFOの結果を通じて社員全員が自己理解と他者理解を深め、各支社・部門の課題に寄り添いながら課題解決の手助けをすることを目標としています。社員一人一人は、プログラムを通じて各支社で事前に定めた啓発スキルを伸ばすことにコミットして、参加してもらいました。研修後から職場実践を通じたスキル啓発度合いについては、本人評価とその上司の評価、そして実践度合いも含めてPDCAを回しました。スタートから約1年間で計14部門約600名の社員を対象に、プログラムを実施しています。
各支社・部門に対して実施する、基本的なプログラムの展開ステップとしては以下の通りです。
研修のテーマは、LIFOライセンスを取得したタイミングでLIFOを活用したワークショップのラインナップをLDcubeから提供されていましたので、ラインナップを基に各支部・部門の教育担当者と相談し、実施しました。
LIFOを活用して実施したプログラムは、コミュニケーション、セールス、タイムマネジメント、プレゼンテーション、コーチング、CS向上、チームづくり、仕事の進め方、リーダーシップ、報連相実践力、と多岐にわたります。1回あたり3~4時間で実施をしました。
どのテーマでも共通して、人それぞれに適した行動スタイル(特性)があります。例えばセールスやタイムマネジメントにおいても、得意な行動スタイル(特性)があります。自分がどのような行動スタイル(特性)なのかを理解した上で、インプットされた内容をいかに自己版にアレンジしながら活用してもらうかを大事にしていました。
また、職場実践促進の工夫として、ラーニングプラットフォーム「UMU」も一部活用しました。
プログラムは、各支社・部門によって単発で実施するケースと、シリーズで実施するケースがありました。シリーズ(全5開催など)の実施では特に、研修の振り返りやその後のPDCAを追いかけるのに膨大な時間と労力がかかります。LDcubeから紹介していただいたUMUを活用することで、この課題を解決し、研修の効果と受講者満足を向上させられると考えました。
実際に、受講者はUMUを使い、テキストで振り返りを提出したり、自分の言葉で説明するための動画課題を投稿したりして、研修での学びや気付きを深めました。それをUMU上で確認し、私からコメントを返す赤ペン先生のようなことや、受講者同士で課題動画に対してコメントをし合うというような「受講者同士で学ぶ環境」も醸成することができました。
各支社・部門で事前に設定した効果測定項目について、プログラム受講前後で数値的にも成果が見られました。例えば、ある支社では「対人関係」「マネジメント能力」「組織・職場の活性化」「自己成長」という4つの大項目に対して、各50ポイントの計250ポイントで効果測定の比較をしました。その結果、受講者の自己評価では平均11.6ポイント、上司からの評価では平均31.4ポイントの改善が見られたという結果となりました。
総じて受講者満足度も高く、何よりも各支社・部門の課題に合わせた人財育成の支援ができたことに、成果を感じています。プログラムのベースとなったLIFO診断と、デジタルツールであるUMUを活用することで、今までにない観点や学びを、受講者に届けられたと思います。
特に、職場の問題の大半を占めるのが「人」の問題であるため、自己理解と他者理解を促すLIFOを活用したレクチャーを受けられたことが非常に良かったという受講者の声を多く聞いています。
受講者満足度が高かった要因としては、今回の組織風土改革の取り組みを、インプット重視の学習ではなく、アウトプット重視の学習(体験学習)にしたことであると感じています。
また、組織風土改革プログラムの一連のデザインを、「学び→実践→振り返り」のサイクルを回す設計にしたこと、その運用にラーニングプラットフォームUMUを活用したことで、事務局負担の低減および学習効果の向上につながりました。
さらに、各支社・部門の事務局と設定した項目で事前事後アンケートをとったことで、取り組みの効果が測れただけでなく、受講者に能力啓発したい項目の意識付けにつなげることができたと実感しています。
各支社・部門の事務局からも、以下のような声をいただきました。
このような声は、「各部門・支社の課題に寄り添ったプログラムを実施したい」と考えて取り組み始めた私にとって、非常にありがたく、今後の励みとなりました。
<受講者の声>
<各支社・部門の事務局の声>
今回の「組織風土改革プログラム」はトップダウンではなくボトムアップで行っていることもあり、受講者が参加しやすいように1回3時間の設定にした開催もありました。そのため、内容が駆け足となり、消化不良になってしまった受講者もいました。職場のリアルテーマでの検討時間を増やすなど、受講者の理解促進と自分事化の工夫が必要と感じています。
また、取り組み実施後、すべての受講者をフォローするには限界があるため、今後は事務局や上司から受講者への関わり度合いを高める工夫も必要です。
上期はトライアルということもあり1人で8拠点(部門)を対面で実施したものの、今後全社に展開する際には社内トレーナーを増やす必要性を感じ、現在追加で8名養成しています。
これらの課題を解決し、さらにスピード感をもって効果的に全社へ展開していくために、今後の展望として、以下3つを考えています。
①さらなる社内トレーナーの養成と、職場単位ワークショップの実践
本部からの派遣以外に、現場で研修ができる体制を構築したいと考えています。各支社・部門の教育担当者をトレーナーとして養成することができれば、好きなタイミングで、より現場の課題に合わせた研修を実施することが可能となります。また、各職場のリーダー層にもLIFOを活用した「職場単位ワークショップ(MSS)」を展開できるよう、マネジメントスキル認定を行うことで、現場での継続的なPDCA活動ができるようになります。
併せて、本部のトレーナーについてもライセンシーとして養成し、研修を希望する現場への派遣や階層別教育をよりスピード感をもって実施できるようにしていきたいです。
②プログラムのブラッシュアップ
LIFO以外のプログラムライセンス(SBRP、ITS、HEPなど)を活用することで、提供できる研修のラインナップを増やすことができます。そうすることで、より自社にFITしたカリキュラムを提供できるようにしていきたいです。
③ラーニングプラットフォーム「UMU」の活用
現在はトライアルで利用させていただきましたが、導入を検討していきたいと思います。シリーズでの研修実施の際の継続的な学習環境づくりや、動画投稿などのアウトプットの機会をつくる意味で、対面の研修とデジタルを組み合わせてプログラムをデザインする必要性を感じています。社内にあるリコージャパンデジタルアカデミーという動画学習サイトとは別で、プログラムの効果を高め、実践を促進するために、ラーニングプラットフォームUMUの本格活用を検討していきたいと思います。
LIFOに限らず、LDcubeの持つライセンスプログラムを活用することにより、社内で柔軟な教育施策を展開することができます。また、デジタルツールを活用することで取り組みの効果を高め、実践を促進することもできます。
引き続き検討・実施を重ねていくことで、「”はたらく”に歓びを」という使命と目指す姿を実現し、社員がいきいきと誇りを持って働ける組織づくりをしていきたいと思います。
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