【キーワード】人材育成担当者が知っておくべき学びのトレンド

2019年以降、働き方改革関連法案が施行されて以降、さまざまな企業で長時間労働の是正や、多様で柔軟な働き方の実現を目指した業務改善が行われるようになりました。
それに伴い、「自身の仕事に精いっぱいでOJTに時間が割けない」「現場が忙しすぎて、研修に人を参加させられない」など人材育成について課題が明確になり、改革を迫られるようになりました。
そして、そのような中コロナ禍の影響により、教育の分野にもオンライン化の波が押し寄せました。

しかし、急対応を求められたこともあり、DXではなく集合研修をそのままオンライン研修に置き換えただけで終わってしまっているケースが多いのではないでしょうか。
学習の分野にDXを取り入れることは、既存の人材育成についての課題を解決できるだけでなく、会社の生産性 向上に大きく貢献できる可能性を秘めています。

今回はそのような「学びのDX」の成功に必要な5つのキーワードを紹介いたします。

目次[非表示]

  1. 1.マイクロラーニング
  2. 2.モバイルラーニング
  3. 3.ソーシャルラーニング
  4. 4.パフォーマンスラーニング
  5. 5.アダプティブラーニング
  6. 6.まとめ


マイクロラーニング

マイクロラーニングとは、短時間で学べる一口サイズの学習を指します。
短時間とはどれくらいを指すのか、定義が決まっているわけではありませんが、1~5分ほど、長くても10分以内に細分化することが望ましいとされています。
なぜ、短時間で学べるマイクロラーニングが注目されているのでしょうか?
理由は3つあります。

1つ目は、記憶に定着しやすいこと。
人が集中力を持続させられる時間は15分ともいわれています。
マイクロラーニングの提供により集中力が持続した中で 学習を進められ、結果として受講生の記憶に定着しやすいというメリットがあります。
また、マイクロラーニングは必然的に1動画あたり1テーマ の内容となることが多く、受講生はポイントや要点をつかみやすくなります。
これにより、理解度の向上を図ることもできます。

2つ目は、隙間時間に学習できること。
短い動画であれば、移動中や小休憩の間にもサッと学習することが可能です。
分からないことや困ったこと があったときにピンポイントで学習し、疑問を解消することもできます。
まとまった学習時間を取りづらい現代のビジネスパーソンにとって、マイクロラーニングは負担を感じず学習ができる強力なツールとなります。

3つ目は、作成・修正が容易であること。
1時間の動画 を作成、もしくはその動画中の一部を修正する ことは容易ではありません。
その分の撮影時間や、修正箇所を探すなどの手間がかかるからです。
しかし、5分程度であればまとまった時間を取らずとも少しずつコンテンツを増やしていくことができます。
特に法律や制度など、一定期間で変更が発生する可能性が高いコンテンツについては、マイクロラーニングで作成しておくことにより、変更が必要な部分 のみを差し替えることができます。
講師やコンテンツ作成者にとっても、業務の効率化につながる可能性があるのが、マイクロラーニングなのです。


モバイルラーニング

モバイルラーニングとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を活用した学習のことをいいます。
eラーニングが世の中に出始めたころ、学習端末はPCでした 。
スマートフォンやタブレットの普及、そして高性能化を経て、学習端末がそういったモバイル端末に変化してきています。
そして、モバイルラーニングの実現により、いつでもどこでも学習ができる環境を提供することが可能です。

また、先述のマイクロラーニング が有効だからこそ、モバイルラーニングができる環境が大切だともいわれています。
スマートフォンでの学習中に電話が鳴ったり、さまざまな通知が来たり、集中力が切れてしまう要因が考えられるからです。
だからこそ、モバイル端末で1時間の動画をまとめて視聴するということは難しいと考えられます。

いつでもどこでも 、隙間時間を活用して学習できる環境を整えるためには、マイクロラーニングとモバイルラーニングを組み合わせることが重要です。


ソーシャルラーニング

ソーシャルラーニングとは、SNSを活用した学習、つまりさまざまな人とのやり取りを通じて学習することをいいます。
例えば、同じ動画を見たとしても、受講生ごとに持っている知識・立場・経験により、感じ方が異なることがあります。
受講生自身が「こう感じた」「ここがポイントだと思う」「この点は業務に生かせそうだ」と感じるだけでなく、他の人はどう思うか・どう感じたかを知ることで、理解の幅が広がり、学びに深さが出るのです。

そして多くの企業で課題となっているスキル・ノウハウの属人化も、ソーシャルラーニングの活用が解決の糸口となります。
ソーシャルラーニングの活用により、学びを共有する場をつくることで、 個人が蓄積した学習を最大限活用することができるのです。

また、講師が意図していなかった学習の機会を提供できる可能性も秘めています。
ソーシャルラーニングでのつながりからコミュニケーションを学んだり、現場で起きた実際の事例を収集できたり、さまざまな場面で受講生に学習・成長の機会を提供することが可能です。


パフォーマンスラーニング

パフォーマンスラーニングとは、成果(パフォーマンス)につなげることができる学習のことをいいます。
「いい学習」とはどのようなものでしょうか?
研修後や学習の後のアンケートで理解度や満足度が高かったら、それは「いい学習が提供できた」といえるのでしょうか。

答えはNoです。
「知っている」のと「できる」のとは違います。
知っていてもできなければ、知らないことと等しいのです。
これからは学習で得た知識を使えるよう 、工夫した学習設計を行うこと が求められます。
そのためには、知識のインプットだけでなく、学んだことのアウトプットの機会を組み込むことが大切です。

▼ パフォーマンスラーニング実践の4つのステップ

パフォーマンスラーニングのステップ

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アダプティブラーニング

アダプティブラーニングとは、受講生個々人が期待される成果につなげるために最適化された学習、「適応学習」のことをいいます。
一人一人、生まれ育ってきた環境・経験・持っている知識は違います。
そういった背景に合わせて学習を提供することで、個人の学習効果を最大化することが可能なのです。

また、アダプティブラーニングの提供により得られたデータを活用すれば、組織として不足している知識が何か、多くの人が自身の弱みと考えているスキルは何かなどが分かり、より効果的な学習の施策の展開に向けた 検討材料とすることができます。

これは従来の集合研修では実現することができませんでした。
しかし、オンラインでのテクノロジーを活用すれば、実現可能です。


まとめ

この記事では、「学びのDX」の成功に必要な5つのキーワードをご紹介してきました。

環境変化に伴い、人事管理や人材マネジメントのあり方や人材育成手法、具体的な取り組みについても多様になってきています。施策を成果につなげるためには、さまざまなフレームワークやキーワードについて考え方からきちんと理解を深め、それを応用していくことが求められます。

人材育成に関する課題を解決し、会社の生産性を上げていくためにも、各キーワードに関する理解と実践を深めていきましょう。


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LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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