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製造業の人材育成の方法とは?直面しやすい課題と成功への7つの方法

「製造業で人材育成に悩んでいます。どうすれば効果的に人材を育成できるのでしょうか?」

このようなお悩みの声を聞く機会が、増えています。

近年、製造業を取り巻く環境は大きく変化しており、人材育成の重要性がますます高まっています。

技術革新とグローバル化が加速するなか、人材育成が、製造業の競争力を左右する鍵となっています。さらに、ベテラン層の退職を控え、技能継承と若手の早期戦力化が喫緊の課題です。

製造業を取り巻く環境と製造業の経営者の葛藤について


本記事では、製造業の人材育成が重要な理由や課題を整理したうえで、人材育成を成功に導く施策を具体的に紹介します。

効果的な人材育成を通じて、生産性向上とイノベーション創出を実現し、製造業の継続的な成長と発展につなげていきましょう。

▼技術伝承については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

  技術伝承とは「熟練技術やスキルの引き継ぎを行うこと」秘訣を解説! 技術伝承とは熟練技術やスキルの引き継ぎを行うことです。教える方も教えられる方も苦労が多く、業務に追われて後回しにしがちでなかなか進まないのが現状です。企業競争力の維持・発展のために具体的な技術伝承のイメージがもてるように、伝承における課題を明らかにし、技術伝承に必要な解決策を解説します。 株式会社LDcube

▼外国人向けの研修については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

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▼製造業では海外赴任する方も多いです。海外赴任者研修については下記にまとめています。

海外赴任者研修資料

目次[非表示]

  1. 1.製造業の人材育成が重要な理由
    1. 1.1.技術革新とグローバル化で人材の質が競争力の鍵を握る
    2. 1.2.ベテラン層の高齢化で技能継承と若手の早期戦力化が急務になる
    3. 1.3.ESG経営の実現に求められる人材育成の役割が増す
  2. 2.製造業の人材育成で直面しやすい4つの課題
    1. 2.1.属人的な技能をシステム化する難しさ
    2. 2.2.若手を育てるマネジメント力の欠如
    3. 2.3.デジタル人材の不足
    4. 2.4.新しい価値観に対して閉鎖的な環境
  3. 3.製造業の人材育成を成功に導く7つの方法
    1. 3.1.マネジメント人材の育成
    2. 3.2.暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツの制作
    3. 3.3.OJT推進体制の整備
    4. 3.4.デジタル人材のリスキリング
    5. 3.5.ESG人材の育成
    6. 3.6.新しい発想を促すイノベーション文化の醸成
    7. 3.7.人材育成プラットフォームの整備
  4. 4.まとめ


製造業の人材育成が重要な理由

製造業のイメージ画像

製造業における人材育成は、かつてなく重要度を増しています。最初に、その理由を整理しておきましょう。以下3つのポイントを解説します。

  1. 技術革新とグローバル化で人材の質が競争力の鍵を握る
  2. ベテラン層の高齢化で技能継承と若手の早期戦力化が急務になる
  3. ESG経営の実現に求められる人材育成の役割が増す


技術革新とグローバル化で人材の質が競争力の鍵を握る

1つめのポイントは「技術革新とグローバル化で人材の質が競争力の鍵を握る」です。

製造業では、IoTやAI、ロボティクスなどのデジタル技術が急速に進化し、製品開発や生産工程の高度化が進んでいます。

こうした技術革新に対応し、付加価値の高いものづくりを実現するには、高度な専門スキルを持つ人材の育成が不可欠となります。

【デジタル人材に求められるスキル】

  • デジタル技術の理解と活用力
    AIやロボティクスなどのデジタル技術に関する深い知識と、それらを製造現場に適用して課題解決や業務改善につなげる実践的なスキルが求められます。
  • データサイエンス力
    膨大なデータを分析し、意思決定や改善アクションにつなげるデータ活用力が重要です。統計解析や機械学習の手法を使いこなせる人材が重宝されます。
  • デジタルマインドセット
    デジタル技術の可能性を探求し、新たな価値創造に挑戦する意欲と姿勢が重要です。失敗を恐れず、スピード感を持って変革を推進する人材が望まれます。

加えて、市場のグローバル化に伴い、世界各国の製造業との競争が激化しています。

グローバル市場で勝ち残るためには、国際感覚やマネジメント力を兼ね備えたグローバル人材の育成が急務です。

技術革新×グローバル化の画像

このように、技術革新とグローバル化が加速するなか、これらに対応するルスキルを兼ね備えた人材の育成が、製造業の競争力の鍵を握っています。

ベテラン層の高齢化で技能継承と若手の早期戦力化が急務になる

2つめのポイントは「ベテラン層の高齢化で技能継承と若手の早期戦力化が急務になる」です。

日本の製造業では、従業員の高齢化に伴い、長年培ってきた高度な技能やノウハウの継承が大きな課題となっています。

熟練技能者の引退により、現場の生産力や品質が低下するリスクが高まっており、新人や若手社員への計画的な技能伝承が急務です。

【危惧される問題】

  • 暗黙知の喪失
    ベテランの頭の中にある勘やコツといった暗黙知が、言語化・文書化されないまま退職を迎えると、貴重な技能が永久に失われるおそれがあります。
  • 属人化した技能の断絶
    特定のベテランにしかできない高度な技能は、属人化されているがゆえに標準化が難しく、継承が滞るリスクがあります。引退とともに、その技能が現場から途絶えてしまう危険性があります。
  • 世代間ギャップの深刻化
    ベテランと若手の世代間ギャップにより、価値観や仕事へのスタンスの違いから、技能の伝承がスムーズに進まない可能性があります。

ベテラン層の技能を、着実に若手に引き継ぐための人材育成取り組み強化は、待ったなしの状況といえます。

技能伝承の遅れは、ものづくりの根幹を揺るがし、製造業の将来を危うくする深刻なリスクです。

ESG経営の実現に求められる人材育成の役割が増す

3つめのポイントは「ESG経営の実現に求められる人材育成の役割が増す」です。

近年、企業には経済価値の追求だけでなく、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)への配慮を通じたESG経営の実践が強く求められるようになりました。

ESGについて

製造業においても、脱炭素化や資源循環、人権尊重、ダイバーシティ経営など、ESG課題への対応力が競争力の源泉となりつつあります。

​​​​​​​ESG経営の実現には、環境負荷低減に寄与する製品・サービスの開発、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの取り組み推進など、広範な知見とスキルを持つ人材の育成が欠かせません。

【ESG人材に求められる専門スキル】

  • 環境工学の知識
    環境負荷の少ない製品設計や、省エネ生産プロセスの構築に必要な専門知識を有する人材が求められます。LCA(ライフサイクルアセスメント)などの環境影響評価の手法にも精通する必要があります。
  • サーキュラーエコノミーの理解
    資源の循環利用を追求するサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方を理解し、製造プロセス全体の資源効率を高められる人材の育成が急務です。
  • ステークホルダー・エンゲージメント力
    サプライヤーをはじめとする社外ステークホルダー(利害関係者)との対話・協働を通じて、サプライチェーン全体のESG課題解決を主導できる人材が欠かせません。高いコミュニケーション力が求められます。

ESG人材の戦略的育成は、経営戦略と一体化した課題として、企業の未来を大きく左右する重要な要素となっています。

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製造業の人材育成で直面しやすい4つの課題

製造業で作業しているイメージ画像

一方、製造業が人材育成を進めるうえで、現場レベルで立ちはだかる障壁も、少なくありません。

あらかじめ知っておけば、適切な対処が可能です。ここでは、以下4つの課題を見ていきましょう。

  1. 属人的な技能をシステム化する難しさ

  2. 若手を育てるマネジメント力の欠如
  3. デジタル人材の不足
  4. 新しい価値観に対して閉鎖的な環境


属人的な技能をシステム化する難しさ

1つめの課題は「属人的な技能をシステム化する難しさ」です。

ベテラン社員の持つ高度な技能やノウハウは、長年の経験に裏打ちされた「属人的な財産」であり、言語化・体系化が難しいのが実情です。

【属人的な技能の伝承を阻む3つの壁】

  • 言語化の壁
    ベテランの技は経験と勘に依存しており、言葉で説明するのが難しい傾向があります。
  • 時間と機会の不足の壁
    現場では人員が削減され、技能伝承に割ける時間的余裕が失われているケースがあります。ベテラン自身が多忙を極め、若手と向き合う機会が限られています。
  • 受け手の意識の壁
    若手社員はマニュアル化された知識の習得を好む傾向にあり、試行錯誤を避ける風潮が見られます。ベテランの技を自ら盗もうとする意欲に欠けるケースも、少なくありません。

壁を打開するためには、人に依存した技能体系から脱却し、ノウハウを「システム」として継承する全社的な仕組みづくりが急がれます。

若手を育てるマネジメント力の欠如

2つめの課題は「若手を育てるマネジメント力の欠如」です。

管理職やリーダー(とくに技術者)に、若手の指導・育成スキルが十分に備わっていないことも、大きな障壁となっています。

【経験豊富な技術者がマネジメントでつまずく理由】

  • 教えられた経験の欠如
    「見て覚えろ」というスタンスで教えてもらってきたため、自分が部下として適切なマネジメントを施された体験に乏しいのが要因のひとつです。
  • リーダーシップ教育の不足
    高い技術力を買われて管理職に抜擢されるケースが多いものの、リーダーシップ開発の機会が十分に与えられていないのが現状です。
  • 権威的な指導
    縦社会で、現場の強い統率力を重んじる文化から、若手の主体性を引き出す働きかけが苦手である点も課題です。一方的な指示・命令に偏りがちな傾向があります。
  • コミュニケーション不足
    技能伝承の必要性は理解していても、若手との本音の対話が不足しています。双方向のコミュニケーションが成立していない点も課題です。

技術・技能の伝承だけでなく、リーダーシップ開発にも軸足を置いた、戦略的な育成施策の強化が必要です。

デジタル人材の不足

3つめの課題は「デジタル人材の不足」です。

技能伝承や人材育成を進めるにあたり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性は、理解されつつあります。

しかしながら、社内に旗振り役となるデジタル人材が不足している現状があります。

総務省の調査によれば、デジタル人材が不足する理由として、4割以上の企業が「採用および育成の体制が整っていないこと」を挙げています。

製造業でデジタル人材が不足している理由のグラフ画像

出典:総務省「令和4年版 情報通信白書|データ集(第3章第8節)」を加工

若手を採用しても、デジタルスキルを教えられるデジタル人材が不足しているために、体系的なスキル習得の機会が提供できていません。

デジタル人材を採用・育成する体制を整えることが、重要なブレイクスルーポイントといえます。

新しい価値観に対して閉鎖的な環境

4つめの課題は「新しい価値観に対して閉鎖的な環境」です。

「出る杭は打たれる」という同調圧力の強い風土が、根強く残っている現場も見受けられます。

多様な価値観を受け入れる柔軟性が欠けていれば、挑戦的な取り組みを受け入れられなくなってしまいます。

【イノベーションを阻む組織風土の弊害】

  • 過度な効率至上主義
    無駄を徹底排除する精神が行き過ぎ、ゆとりや遊び心、冒険する余地が失われています。リスクを取って新しいことに挑戦する文化が根付いていません。
  • 上意下達の組織体質
    トップダウン型の意思決定が浸透し、現場の創意工夫が発揮されにくい状況です。ボトムアップ型のアイデア創出が奨励されていません。
  • 画一的な価値観の弊害
    組織内の価値観が均質化し、多様な視点からの議論が成立しにくい環境があります。異なる意見を唱えることへの心理的なハードルが高いのが課題です。

イノベーション人材を育むには、失敗を許容する懐の深い組織文化が欠かせません。

ダイバーシティ(多様性)を尊重し、自由闊達な議論を通じてチャレンジを促す、革新的な風土の醸成が急務となっているのです。

▼ダイバーシティ&インクルージョンについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

  ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味や違い・取り組み事例 ダイバーシティ&インクルージョンとは多様性を包摂(包み込むこと)して、新たな価値を創造する概念です。本記事ではダイバーシティインクルージョンについて解説します。また、企業の取り組みとして何をすべきか、行動ベースでの理解が深まるよう事例もご紹介します。 株式会社LDcube

▼イノベーションを起こすには創造性が不可欠です。創造性については下記で詳しく解説しています。

  創造性とは何か?ビジネスパーソンに必要なクリエイティビティの本質 欧米企業の多くで、「クリエイティビティ(創造性)」が、採用や人事評価の重要指標として位置づけられています。本記事では、ビジネススキルとしての創造性の本質、長けている人の特徴、創造性を高めるための方法などについて必要な情報を包括的に解説します。 株式会社LDcube


製造業の人材育成を成功に導く7つの方法

製造業で人材育成施策を積み上げていくイメージ画像

続いて、製造業が直面しやすい障壁を突破し、未来を担う人材を育てる方法を見ていきましょう。

  1. マネジメント人材の育成

  2. 暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツの制作

  3. OJT推進体制の整備
  4. デジタル人材のリスキリング
  5. ESG人材の育成
  6. 新しい発想を促すイノベーション文化の醸成
  7. 人材育成プラットフォームの整備


マネジメント人材の育成

1つめは「マネジメント人材の育成」です。

製造現場のリーダーを担う中堅層に、部下の指導・育成スキルを身に付けさせることが、まず重要です。

従来の「見て覚えろ」式の指導から脱却し、若手主体性を引き出すコーチング型マネジメントを浸透させましょう。

ファーストステップとしておすすめなのは、eラーニング教材の導入です。eラーニングなら、研修スケジュールの調整や講師の手配といった手間をかけずに、すぐ全社へ展開できるからです。

たとえば以下は、LMS・eラーニング「CrossKnowledge」にて提供可能なコンテンツの一部です。

製造業でも使えるeラーニングのコース紹介画像

出典:eラーニング「CrossKnowledge」

eラーニングのスキルパス紹介画像


上記は一例ですが、リーダーシップ開発に特化した研修プログラムを充実させ、人材育成ができる現場リーダーを計画的に育成していきましょう。

▼リーダーシップ開発について詳細は、以下の記事をあわせてご覧ください。

  リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント 本記事ではリーダーシップ開発の基礎知識から、企業における実践ステップ、効果的な進め方のコツまで、 実務に役立つ情報を網羅的に解説します。従業員の潜在能力を引き出し、組織力を高める手がかりが見つかるはずです。 株式会社LDcube

▼部門最適から全体最適のマネジメントができる人材育成には経営シミュレーションが最適です。

  経営シミュレーションとは?人材育成の新手法・研修について解説! 今回は経営シミュレーションの意義や内容、対象者、必要なスキル、進め方について解説します。ビジネススキルや戦略思考、意思決定力を高め、経営力を育てる研修として、企業の成長を支える人材育成に役立つでしょう。 株式会社LDcube


暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツの制作

2つめは「暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツの制作」です。

暗黙知と形式知についての説明画像

現場に蓄積された経験やノウハウを言語化し、体系的な教育コンテンツに落とし込むことが、人材育成の効率化と継承スピードの加速につながります。

【暗黙知の教材化を進める3つのステップ】

  • スキルの棚卸しと構造化
    ベテラン社員が持つ技能を網羅的に洗い出し、分類・整理します。継承すべきスキルを階層的に可視化しましょう。
  • ノウハウの言語化と標準化
    ベテランの暗黙知を引き出すインタビューを実施し、経験に基づくノウハウを言葉で表現してもらいます。ベストプラクティス(最良の実践例)を標準化し、伝承しやすい形式に落とし込みます。
  • eラーニング向け教材の制作
    言語化されたノウハウをわかりやすく伝えるため、動画・音声・図解を組み合わせたデジタル教材を制作し、社内のデータベースに蓄積します。

補足として、社内学習用の教材には、きれいな装飾やデザインは不要です。

見た目にこだわらず、実用性を重視する方針なら、テキスト教材はもちろん、動画教材でも、社内で十分に制作できます。

▼詳しくは、以下の記事も参考にしてみてください。

  研修用動画コンテンツの作り方!効果的に作成するポイントやコツなどを解説! 研修用の動画コンテンツをどのように作成したらよいか?という悩みをよく耳にします。本記事ではコストをかけずに、既にある研修の機会などを活用し、教育しながら動画コンテンツの作成を進めていくポイントを解説し、得られるメリットも紹介します。 株式会社LDcube


OJT推進体制の整備

3つめは「OJT推進体制の整備」です。

製造現場で最も重要な教育手法ともいえるOJT(On the Job Training:職場内訓練)を、より効果的に進めるための体制づくりは欠かせないポイントです。

OJTの推進では、指導する側の従業員教育スキル向上と、実施状況モニタリングや評価を通じたPDCAサイクル確立がポイントとなります。

【OJT推進のための3つの施策】

  • 指導者教育の強化
    ベテラン社員向けに、後進の指導方法を学ぶ研修を実施します。技能の言語化や、効果的なフィードバックの方法など、OJTで必要となる指導スキルを体系的に習得する機会を設けます。
  • OJT計画の策定と進捗管理
    各部門・職場ごとにOJT計画を策定し、計画に沿った技能伝承が行われているか定期的に確認します。進捗状況を可視化し、必要に応じて計画の修正や指導方法の改善を図ります。
  • OJTの評価と改善
    OJTの効果を測定するための評価基準を設定し、定期的に評価を行います。指導を受けた若手社員の技能習得度や、指導者のスキルなどを多面的に評価し、次のサイクルに向けた改善につなげます。

このようにOJT推進体制を整備すれば、現場の技能伝承をより効率的かつ効果的に進められます。

▼OJTに関しては、以下の記事もあわせてご覧ください。

  OJTとは?意味や目的、メリット、Z世代への適応まで全解説! OJTは、企業内で具体的な仕事を通じて、社員を育成する社員教育法の1つです。本記事では、その意味や目的、効果、そしてOJTの活用方法について詳しく解説します。そして、これからの時代に合わせたOJTのあり方や新時代に合わせてバージョンアップすることで享受できるメリットについても紹介します。 株式会社LDcube
  OJTの正しいやり方とは?【即戦力を育てる】7ステップを徹底解説 OJTは正しく進めることで非常に高い効果が出る教育方法です。しかし、多くの会社で先輩が単にマンツーマンで業務を教え指導する「形だけのOJT」となっているようです。本記事では、正しいOJTのやり方、実践上のポイントなどについて手順を追って具体的に解説します。 株式会社LDcube


デジタル人材のリスキリング

4つめは「デジタル人材のリスキリング」です。

前述のとおり、日本中でデジタル人材の不足が課題となっており、多くの企業はデジタル人材を採用・育成する体制が整っていません。

そこで、皮切りとしたいのが、従業員のリスキリングによって社内からデジタル人材を輩出する取り組みです。

リスキリングについての説明画像

【リスキリング推進のための3つの処方箋】

  • トップのコミットメントと推進体制の確立
    経営トップ自らがリスキリングの必要性を発信し、全社的な推進体制を整備します。専任の推進チームを立ち上げ、人事・現場が一体となって取り組む社内体制を構築します。
  • 従業員の学習時間の確保と支援
    デジタルスキルの習得には一定の学習時間が必要です。業務の効率化や削減により、従業員が学習に充てる時間を捻出します。eラーニングの活用など、場所や時間に縛られない学習環境の整備も欠かせません。
  • 社外リソースの有効活用
    外部の人材教育機関やベンダーが提供するリスキリングプログラムを積極的に活用します。企業によってDX戦略や目指すべきデジタル人材像は異なりますので、自社の課題に即したカリキュラムを選定し、実践的なスキルの習得と、修了者の即戦力化を図ることが大切です。

このように、経営層のリーダーシップのもと、従業員の学習をサポートし、外部リソースも活用しながら、組織全体でリスキリングに取り組む体制を整えることが重要です。

▼リスキリングについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

  リスキリングに最適なeラーニングの活用法と陥りやすい落とし穴とは? 現在注目を集めているのが、eラーニングを活用したリスキリング支援です。本記事では、リスキリングへのeラーニング導入の概要や進め方、陥りやすい落とし穴と対策まで、網羅的に解説します。社員一人一人に寄り添った学習環境を実現し、組織力を強化していきましょう。 株式会社LDcube
  【リスキリング事例12選】大企業・中小企業それぞれのヒントが満載 少子高齢化の進行や産業構造の変化により、日本企業の多くが人材不足に直面しています。今、企業の成長と発展の鍵を握ると注目されているのが、「リスキリング」という社員の学び直しです。本記事では、大企業と中小企業のリスキリング事例 12選をご紹介し、取り組むポイントを解説します。社員の成長を後押しし、変革の時代を勝ち抜く強い組織づくりにぜひお役立てください。 株式会社LDcube


ESG人材の育成

5つめは「ESG人材の育成」です。

製造業がESG経営を実現し、持続的な成長を遂げるには、ESGの考え方理解し実践できる人材の育成が欠かせません。

環境・社会・ガバナンスの観点から事業を見直し、社会課題の解決に貢献する新たな価値創造を牽引する人材を計画的に育てていく必要があります。

【ESG人材育成のための3つのアプローチ】

  • ESG教育の強化
    ESGの基本概念や世界の潮流、自社の取り組み方針などを学ぶ研修を全社的に実施します。ESGの意義を理解し、日々の業務に落とし込む意識を醸成します。
  • ESG実践の場の提供
    ESG関連の業務や プロジェクトにチャレンジする機会を増やします。環境マネジメントの企画や、人権デューデリジェンス(企業活動が人権に与える影響を特定・防止・対処するプロセス)の実施など、実践を通じてESGのスキルを習得させます。
  • ESGリーダーの計画的育成
    ESG推進の中核となるリーダー人材を計画的に育成します。外部専門家との対話や、先進企業への派遣研修などハイレベルな学びの場を設け、ESGのプロフェッショナルを輩出します。

ESG人材の育成は、これからの製造業の人材戦略の柱のひとつとなるでしょう。

「まだ、うちの会社にはいらない」と後回しにせず、早期に手を打つことが、企業の発展につながります。

▼ESGを含む、新時代の人材教育については、以下の記事にまとめました。あわせてご覧ください。

  次世代の経営者を育成する!新時代の人材教育ソリューション! 急速な環境変化に対応するために、次世代の経営者を育成するニーズが高まっています。デジタルスキルへの対応などこれまでの幹部研修や人材育成プログラムでは対応できなくなっています。これからの時代に必要なポイントを提供します。 株式会社LDcube


新しい発想を促すイノベーション文化の醸成

6つめは「新しい発想を促すイノベーション文化の醸成」です。

製造業の未来を切り拓くイノベーションは、画一的な思考に縛られない自由で活発な発想から生まれるものです。

しかし、製造現場では「型破りな発想=異端」とみなす同調圧力が根強く、新しいアイデアが芽吹きにくいケースがあります。

イノベーション人材を育むには、多様性を尊重し、失敗を許容する組織風土の醸成が欠かせません。

鍵となる概念として「ダイバーシティ&インクルージョン」「心理的安全性」が挙げられます。

【イノベーション文化醸成の鍵】

  • ダイバーシティ&インクルージョン
    多様な背景や価値観を持つメンバーを受け入れ、その違いを強みに変える組織づくりを指します。異なる視点の交流から、革新的なアイデアが生まれやすくなります。
  • 心理的安全性
    チーム内で自分の意見を安心して言えるという感覚を指します。失敗を恐れず、自由に発言できる環境があってこそ、革新的な提案が生まれる土壌が作られます。

それぞれ、研修プログラムを導入し、自社への定着を専門的に目指すとよいでしょう。

▼以下に参考になる関連記事をリンクしますので、あわせてご覧ください。

  ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味や違い・取り組み事例 ダイバーシティ&インクルージョンとは多様性を包摂(包み込むこと)して、新たな価値を創造する概念です。本記事ではダイバーシティインクルージョンについて解説します。また、企業の取り組みとして何をすべきか、行動ベースでの理解が深まるよう事例もご紹介します。 株式会社LDcube
  心理的安全性の研修はどう企画する?具体的な研修内容や設計のポイント 組織パフォーマンスの向上と人材定着の鍵として、心理的安全性が注目されています。本記事では、心理的安全性を高める研修を企画する際のポイントを解説します。定義と重要性から、目的の設定、具体的な内容設計、階層別プログラム例まで、実践的な情報を紹介します。 株式会社LDcube

また、イノベーティブな思考に特化してトレーニングしたい場合には、ITS (イノベイティブ・シンキング・システム)を活用する方法があります。

アイデアを生み出すフェーズはもちろん、絞り込み、実践するまでを “技法” として、習得できます。

ITSについての説明画像

詳しくは、以下の資料にてご確認ください。

ITSについての資料ダウンロード画像


人材育成プラットフォームの整備

7つめは「人材育成プラットフォームの整備」です。

製造業の人材育成を効率化し、スキルアップを加速させるためには、デジタル技術を活用した学習基盤の構築が欠かせません。

人材育成そのものをデジタルトランスフォーメーション(DX)することが、非常に重要です。

その鍵を握るのが、LMS(Learning Management System)の導入です。LMSとは、学習管理システムを指します。

LMS説明画像

製造業で必要とされる知識やスキルを、従業員が場所や時間を選ばずに学べる環境を提供するプラットフォームとなります。

教材の配信から、受講状況の管理、学習成果の評価まで、人材育成に必要な一連の機能を1つのシステムで管理できる点が強みです。

【LMS活用のメリット】

  • 学習の効率化
    動画教材などを使った反復学習により、効率的にスキルを習得できます。対面研修に比べて、時間と場所の制約が少なく、学習機会を増やせます。
  • 進捗の可視化
    個々の従業員の学習進捗を管理画面で把握できるため、習得状況に合わせたきめ細かなフォローが可能です。到達度に応じた教材のレコメンド(推奨)なども行えます。
  • 教材の更新容易性
    製造ラインの変更など、必要な知識やスキルに変化があった場合でも、教材のアップデートを即座に反映できます。常に最新の情報を全社で共有できる点が強みです。
  • 学習履歴の蓄積
    従業員の学習履歴がデータとして蓄積されるため、人材育成の効果測定や、次の教育計画の立案に役立ちます。PDCAサイクルを回す基盤として機能します。

先に解説した暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツや、リーダーシップ開発のeラーニングコースは、LMS上のコンテンツとして展開するとよいでしょう。

▼LMSを初めて導入検討される方向けの情報は、以下の記事にまとめました。あわせてご覧ください。

  LMS(学習管理システム)とは?最新トレンドや導入の目的について解説! 企業の人材育成において、社員にパーソナライズしたeラーニングの提供により効率的な管理を実現するのがLMS(Learning Management System:学習管理システム)です。テクノロジーの発展によるLMSの最新トレンドや導入目的の変化、主要機能や導入を成功させるポイントを詳しく解説します。 株式会社LDcube

以上、製造業の人材育成を成功に導く方法として、7つのポイントを解説しました。

製造業の人材育成成功のポイント画像


それぞれの企業の状況に合わせながら、着実に人材育成を進めていきましょう。

まとめ

本記事では「製造業における人材育成」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

製造業の人材育成が重要な理由として、次の3つが挙げられます。

  1. 技術革新とグローバル化で人材の質が競争力の鍵を握る

  2. ベテラン層の高齢化で技能継承と若手の早期戦力化が急務になる

  3. ESG経営の実現に求められる人材育成の役割が増す

製造業の人材育成で直面しやすい4つの課題として、以下を解説しました。

  1.  属人的な技能をシステム化する難しさ

  2. 若手を育てるマネジメント力の欠如
  3. デジタル人材の不足
  4. 新しい価値観に対して閉鎖的な環境

製造業の人材育成を成功に導く7つの方法は、以下のとおりです。

  1.  マネジメント人材の育成

  2. 暗黙知を形式知に変換する教材コンテンツの制作
  3. OJT推進体制の整備
  4. デジタル人材のリスキリング
  5. ESG人材の育成
  6. 新しい発想を促すイノベーション文化の醸成
  7. 人材育成プラットフォームの整備


人材育成は長期的な取り組みになります。経営戦略と連動させたビジョンを描き、全社統一された方針で進めていくことが大切です。

人への投資を惜しまず、「ひとづくり」と「ものづくり」の好循環を生み出していきましょう。

株式会社LDcubeはこれまでの組織活性化や人材育成で培ったノウハウを生かしながら、新たな時代の人材育成方法の模索を支援しています。

製造業でもさまざまな人材育成のご支援をしています。新入社員研修から管理職研修などの研修会のご支援、社内トレーナーの育成支援、技術伝承に向けたLMSの導入と運用の支援、部門最適から全体最適につなげるための経営シミュレーションなどの支援実績も多いです。

一度ご事情をお伺いさせていただければ、貴社の状況にフィットした人材育成のご提案をさせていただくことができます。

各種ツールの無料のデモ体験会や研修プログラムの無料体験会、導入事例の紹介なども行っています。お気軽にご相談ください。

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LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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