
OJT効果を最大化する進め方とは? 〜現代の後輩育成のポイントを紹介〜
OJT(On the Job Training)は企業の成長に欠かせない要素です。この記事では、OJT計画書の作成から、教育目標の設定、時間割作成、OJT担当者やリーダー、メンターの役割、そして評価方法の決定まで詳細に解説します。
また現代の変化に合わせたOJTの進め方、デジタルネイティブ世代についての情報にも触れ、現場で役立つ指導方法についても紹介しています。
▼ OJTの全体像についてはこちらをご覧ください
目次[非表示]
- 1.OJTの計画書を作成する
- 1.1.OJT計画書の目的と役割を理解する
- 1.2.教育目標を設定する
- 1.3.時間割を作成する
- 1.4.OJTリーダーやメンター、コーチを決定する
- 1.5.フォローアップと評価方法を決める
- 2.OJT計画書サンプル
- 3.具体的に指導する
- 3.1.指導の方法① マンツーマン指導(個別指導)
- 3.2.指導の方法② フィードバックを活用する
- 3.3.指導の方法③ ロールモデルとして
- 3.4.指導の方法④ チャレンジを促す
- 4.OJT活動を振り返る3つの観点(OJTの現状点検:コミュニケーションと指導技術がカギ)
- 4.1.コミュニケーション力の重要性
- 4.2.フィードバックの大切さ
- 4.3.メンタルサポートの役割
- 5.これからのOJT進め方のポイント
- 5.1.従来のOJTの課題と理想の姿
- 5.2.テクノロジーの活用
- 5.3.フィードバックの重要性
- 5.4.今後の後輩指導の進化
- 6.デジタルネイティブ世代のOJTの進め方
- 6.1.デジタルネイティブとは
- 6.2.デジタルネイティブの特性
- 6.3.指導の考え方と具体的なポイント
- 6.4.世代間の違いを理解する重要性
- 7.デジタルネイティブ世代に合わせたOJT環境づくりには「UMU:ユーム」がおススメ!
- 8.まとめ
OJTの計画書を作成する
OJT計画書の目的と役割を理解する
まず始めに、OJT計画書が何であるか、その目的と役割を理解することが大切です。OJT計画書は極めて重要であり、その存在の確認から行う必要があります。OJT計画書とは新入社員や新たな部署に配属された社員が職務を遂行するために必要なスキルを習得するためのプランを明確にするものです。
しかしながら、OJT計画書が存在しない場合もあります。OJT計画書が不在の場合、OJT機能不全に陥っているケースがほとんどですので注意が必要です。まずはOJT計画書があるか確認するところから始めましょう。
教育目標を設定する
OJT計画書の作成ステップの1つ目は、教育目標を設定することです。どのようなスキルや知識を身に付けるべきなのか、それが実務にどのように役立つのかを明確にし、いつまでに何を身に付けるのか、内容と時間軸とを合わせて計画書に落とし込みます。
時間割を作成する
OJTの日程と時間割を作成します。OJT期間全体のスケジュール、そして1日の活動の流れを詳細に計画します。また、この段階できちんとカリキュラムを構成しましょう。
いつ何を学ぶのか、1日ごとの学ぶべき時間帯や教える人、そしてそのためにどのような指導や支援が必要かを考慮しカリキュラムを構成します。
OJTリーダーやメンター、コーチを決定する
OJT計画書の中には、指導役となるOJTリーダーやメンター、コーチを明記します。彼らの役割や責務、そしていつどのように指導を行うかも詳細に記述します。
育成対象となる方々が配属される前に決めておくことが重要です。職場に配属になったものの誰に指導を受けたらよいかわからないという状況は避けたいです。主に誰に指導を受けるのかが不明瞭の場合、新人や若手社員という指導を受ける側が必要以上に不安を覚えることもあります。
しっかりと受け入れ態勢を構築しておきましょう。
フォローアップと評価方法を決める
最終的に、計画書にはフォローアップのスケジュールと評価方法を記載します。定期的に進捗を確認し、どの程度目標に近づいているのかを評価する方法を明示しましょう。
OJT計画書をもとに、OJTを行うリーダーやメンター、コーチとOJTを受ける側の新人や若手社員とで定期的にコミュニケーションを取り、全体像の中でどの程度までスキルアップできているのかを常に確認しながら進めていくことがポイントです。OJT計画書がない場合、行き当たりばったりとなり、進捗や成長度合いが確認できなくなりますので、OJT計画書の存在はとても重要になります。
OJT計画書は、OJTの成功を保証するための重要な道具です。目的の理解から始まり、教育目標の設定、時間割の作成、OJTリーダーやメンター・コーチの決定、フォローアップと評価方法の決定まで、一貫した流れで作成することが求められます。
これらのステップを踏むことで、OJTが目指すべき方向性を明確にし、その達成を具体的な形でサポートします。
OJT計画書サンプル
- 会社名: ABC株式会社 部門名: 営業部
- プログラム名称: 新入社員営業スキル強化 OJTプログラム
- 期間: 2023年4月3日から2023年6月30日までの3カ月間
- 目標: 新入社員が基本的な営業活動を自立して行えるレベルへスキルアップさせること。
- プログラム詳細
1-1. 開始日から2週間
テーマ:会社と部門の理解
担当者:全社人材育成担当
内 容:会社のビジョン、ミッション、部門の役割と責任を理解する。自社の製品やサービスの知識を深める。
1-2. 2週間から1カ月
テーマ:営業基本スキル習得
担当者:営業マネジャー
内 容:電話の取り方、電子メールの作成、ミーティングの開催方法など、営業に必要な基本的スキルの習得。
1-3. 1カ月から2カ月
テーマ:フィールドセールストレーニング
担当者:先輩営業スタッフ
内 容:先輩営業スタッフの営業活動に同行し、お客さまとの対応方法や商談の進め方を学ぶ。
1-4. 2カ月から3カ月:
テーマ:実践トレーニング
担当者:営業マネジャー
内 容:営業として1人で独立して商談を行い、結果をフィードバックとして受け取る。
2-1. フィードバックセッション
毎週の終わりに、新入社員と担当者の間でフィードバックセッションを持つ。
2-2. 一定の評価基準に基づくパフォーマンス評価(卒業試験)を最終日に行う。
具体的に指導する
OJTは、組織の未来を担う新たな人材を育成する上で非常に重要です。上手な指導により、後輩たちは自身のスキルを伸ばすことができ、組織全体の生産性向上に寄与します。
指導の方法① マンツーマン指導(個別指導)
OJTは、一人ひとりの個性やスキルレベルを把握し、それに応じた指導を行うことが求められます。
個別に関わり業務に必要なことをマンツーマンでの指導を行うことで、その人が何に困っているのか、どのようなスキルを身に付ける必要があるかを理解しながら的確なアドバイスをすることが可能です。
指導の方法② フィードバックを活用する
フィードバックは、後輩の成長を促す大切なツールです。ただし、そのフィードバックがネガティブなものだけではなく、ポジティブな内容も含まれていることが大切です。
フィードバックとは相手を攻撃するものではなく、相手の成長を支援するための鏡の役割です。ネガティブなものも当然含まれますが、ポジティブなフィードバックにより、後輩が自信を持つことができ、モチベーションを保つことが可能となります。
何となくではなく、実際に業務を行った状況等をとらえてフィードバックすることがポイントです。
指導の方法③ ロールモデルとして
後輩は無意識に、自分が尊敬し、見習いたいと思う先輩をロールモデルとして見ます。したがって、OJTリーダーや指導者(メンターやコーチ)自身がそのことを十分理解し、プロフェッショナルとしての行動を示し、倫理観高く活動し、高いコミュニケーション能力を持つよう心掛けることが、OJTを効果的に機能させることにつながり、後輩育成の一環となります。
自分が思っている以上に後輩は先輩のことを見ています。
指導の方法④ チャレンジを促す
経験を積ませることは、OJTにおいて不可欠です。指導者としては、後輩が自身で問題を解決し、新たなスキルを獲得するためのチャレンジを促すための場を意図的、計画的に創出し、その場を任せて経験を積ませることが大切です。そのような場づくりをすることもOJTの一環です。自分だけではそのような場づくりが不十分な場合。上司にも相談し場づくりを行うことも重要です。
OJTは、組織の未来を担う大切な役割です。マンツーマンによる個別指導や、フィードバックを活用した上での指導、自己の行動を見せるロールモデルとしての指導、そして何よりも経験を積ませるチャレンジを促すことで、後輩の能力開発を促進し、組織全体の生産性向上に貢献できます。それが組織独自のノウハウを伝え、育んでいくことにつながります。
OJT活動を振り返る3つの観点(OJTの現状点検:コミュニケーションと指導技術がカギ)
コミュニケーション力の重要性
OJTにおけるコミュニケーション力の重要性は言うまでもありません。共有したい情報を適切なタイミングで、適切な方法で伝えるスキルは指導者に必須と言えます。
そしてそれだけでなく、後輩の人となりを理解した上で、相手が受け入れやすい方法でコミュニケーションを取ることが重要です。十分に実践できているかどうか振り返りましょう。
フィードバックの大切さ
OJTを通じて、後輩の能力を最大限に引き出すには、適切なフィードバックが欠かせません。
ただし、そのためには、自分自身がきちんと観察し、分析するスキルが求められます。後輩と適度な接点を持ちながら、計画書を踏まえて進捗を確認しながら、伝えるべき評価や意見を的確に伝えていくことが重要となります。相手が傷つくのではないかと遠慮し、伝えるべきことを伝えないことは相手の成長を阻むだけでなく、信頼関係を構築する上で障害となることもあるので注意しましょう。
ただ、正しいフィードバックの仕方については事前にOJTリーダー研修等でしっかりと学んでおく必要があります。フィードバックのタイミング、質と量が適度なものかどうか振り返りましょう。
メンタルサポートの役割
新入社員や若手社員は、業界や会社のことを理解していないため、不安を抱えていることが多いです。そのため、精神的なサポートや質問や疑問への解答など、メンタル面のケアも指導者の大切な役割です。
仕事内容だけでなく、自社組織の中ではどのように行動することが自然なのかということも伝えていく必要があります。知らないで良かれと思って取った行動が自社組織では望まれない行動であるというケースもあります。
自社組織の中で生き抜いていく上での不安を解消していくサポートをしましょう。新人や若手社員の心の支えになれているかどうか振り返りましょう。
OJT活動を定期的、継続的にきちんと振り返り、コミュニケーション力の重要性、適切なフィードバック、そしてメンタルサポートといった要素がきちんと機能しているかどうかを確認しましょう。これらを意識し、OJTの進め方を見直すことで、より質の高いOJTが可能になります。
教える側、教えられる側の間での心理的安全性の確保も重要です。心理的安全性についてはこちらを参照ください。
これからのOJT進め方のポイント
従来のOJTの課題と理想の姿
多くの組織では「先輩が後輩を指導する」という伝統的なスタイルが根付いてきましたが、社会状況や働き方の変化によりその限界が露呈してきています。一方的な指導は後輩の自主性を奪い、また先輩に過大な負担を与える可能性もあります。
理想的なOJTは、先輩と後輩が一緒に成長できるものであるべきです。それには、先輩がただ指導するだけでなく、後輩の意見や視点に耳を傾け、一緒に問題解決し、一緒に成長していくという姿勢が求められます。
テクノロジーの活用
近年のテクノロジーの進化は、OJTの進め方にも新たな可能性を提示しています。
例えば、リモートワークが主流となり、直接的なコミュニケーションが難しくなった現代において、オンラインツールを活用し、シームレスなコミュニケーションを可能にするための工夫が必要です。
デジタルコンテンツを用意し、プラットフォームを活用して運用することで、新人や若手社員が自らキーワードで検索し、自分に必要な事柄を学ぶことができるような環境整備も必要です。現代はテクノロジーの活用がOJTを効果的に進めることに役立ちます。
フィードバックの重要性
良好なOJTにはフィードバックが重要です。
特に、具体的でポジティブなフィードバックは後輩の自信と向上心を引き出します。フィードバックは相手のあら捜しをすることだと思わず、定期的な鏡の役割としてフィードバックを提供することは、後輩の成長を確実に促すことができます。自分にはどのように映っているかを伝え、説明してあげましょう。
そしてそのフィードバックもSNSのようなデジタルツールなども活用してバリエーションを増やしていきましょう。現代のフィードバックについて、新人の入力したコメントに「いいね」ボタンを押してあげるという行為もフィードバックも選択肢の1つになっています。
今後の後輩指導の進化
これからのOJTは、より多様化する働き方や社会の変化に合わせて進化していく必要があります。従来の一方的な指導から、互いの成長を促す対話型の指導に移行することで、組織全体でも新たな価値を創造することが可能になります。
そしてその対話の在り方もテクノロジーを活用するなどして進化させていく必要があります。自分たちがしてもらったようにするのではなく、今の世代が受け入れやすいやり方に変換してOJTを行っていくことが求められています。
OJTの進め方は、社会や働き方の変化と共に進化するべきです。概念の変革、テクノロジーの活用、フィードバックの重視などを通じて、OJTは新たなステージに進むことが期待されます。組織全体の成長とともに、個々の成長も重視した、新たなOJTの形が今後ますます重要となるでしょう。
そしてそれが組織の競争優位性の構築につながっていくと考えられます。時代に合わせて新たな手法も積極的に取り入れましょう。
デジタルネイティブ世代のOJTの進め方
デジタルネイティブとは
デジタルネイティブとは、生まれたときからインターネットやデジタル技術が周囲に存在していて、それらに対する慣れや理解が深い世代のことを言います。主に1996年以降に生まれた世代を指すことが多いです(諸説あり)。
デジタルネイティブ世代は情報が豊富で手軽に入手できる環境で育ち、スマートフォンやSNSの活用が日常の一部であり、当たり前です。
デジタルネイティブの特性
デジタルネイティブ世代はソーシャルメディアを通じて得た情報や意見を自在に取り扱いながら、自分たちの考えを短い文言で伝えることに慣れています。また、気軽にさまざまな枠組みを超えてコミュニケーションを取れる強みがあります。
しかし、どのような情報に触れるかということが自己選択できるため、触れている情報に偏りが生じることもあります。得ている、触れている情報が偏らないように注意が必要です。
指導の考え方と具体的なポイント
デジタルネイティブ世代を指導する上では、彼らが得意なデジタルツールを駆使することが有効です。また、彼らには得た情報をそのまま信用せずに多角的にとらえようとするクリティカルシンキングの重要性を理解させることも重要です。
全ての情報が正しいわけではないということを学ばせることで、より健全な情報活用能力を身に付けさせることができます。
具体的なポイント
- デジタルツールを活用し、視覚的に理解させる
- SNSでの情報共有やディスカッションを行い、意見交換の場を提供する
- デジタル情報の信憑性を確認する習慣を身に付けさせる
世代間の違いを理解する重要性
デジタルネイティブ世代と非デジタルネイティブ世代の世代間で起こりやすいミスマッチを理解し、お互い学びあうことの必要性を認識しましょう。それによってコミュニケーション上のミスマッチなどが改善され、円滑なコミュニケーションが生まれ、職場の生産性も向上します。
デジタルネイティブ世代の指導は、彼らだけに特化したものではなく、世代間理解を深めるきっかけでもあります。デジタル技術の活用や情報の信憑性を確認する重要性を教えたり、さまざまな視点でディスカッションを促したりすることで、デジタルネイティブ世代の持つ能力を最大限に引き出しましょう。
新人を預かる上司だけでなく、経営や人事もそのことを理解した上で、現場のマネジャーや部下育成を担っている方々に世代間のギャップについて理解を促す研修会の機会などを用意することも必要です。
OJTを効果的に進めるにはオンボーディングプログラムの構築が有効です。
詳しくはこちらをご覧ください。
デジタルネイティブ世代に合わせたOJT環境づくりには「UMU:ユーム」がおススメ!
デジタルネイティブ世代が学びやすいOJT環境、学習環境をつくるにはラーニングプラットフォーム「UMU:ユーム」の活用がおススメです。
デジタルツールを活用して視覚的に理解してもらうことを促します。また、理解度クイズや卒業試験などをデジタル環境で運用することで、運用における負担を軽減することができます。そしてデジタル環境で運用することで、あらゆる学習行動のデータが蓄積され、データを活用したOJTのPDCAサイクルを回していくことが可能となります。
デジタルネイティブ世代の学ぶ環境づくりにはUMU:ユームがおススメです。UMUが他のeラーニングと違う点についてはこちらを参照ください。
まとめ
プロが教えるOJT効果を最大化する進め方とは? 〜現代の後輩育成のポイントを紹介〜について解説してきました。
デジタルネイティブ世代のOJTを成功させるにはこれまでと進め方を変えていく必要があります。OJTをする側の論理ではなく、OJTを受ける側、つまりデジタルネイティブ世代が学びやすく、パフォーマンスを発揮しやすい学習環境を整えていく必要があります。
株式会社LDcubeでは従来型のOJTを機能させるためのOJT研修プログラムの提供はもとより、デジタルネイティブ世代が学びやすい、新時代のOJT学習環境づくりの支援も行っています。ぜひ気軽にご相談ください。