OJTトレーナーの3つの役割とよりよい人材育成の循環を生むコツとは?
「OJTトレーナーは、具体的に何をすればいいの」
「OJTトレーナーはどういう人がいいのだろう」
(OJT=On The Job Training:職場内での訓練のこと)
OJT研修を実践しているものの、「なんだか成果がでない…」と、課題を感じている研修担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
OJTの成功は、「トレーナー」によって大きく左右されます。
しかし、トレーナーの役割を、本当に理解している方は少ないかもしれませんね。
OJTトレーナーは、「育成対象者に伴走して業務を実践で教える人」です。
OJTは、ただの「マンツーマン指導」ではありません。
育成対象者が、職場での実務を通じて、社会人としての一般知識やスキルを取得させるための研修です。
トレーナー自身も、育成対象者への指導を通じて、大きく成長することができます。
結果的に、会社全体の生産力を、押し上げることにも繋がるでしょう。
とはいえ、仕事ができる優秀な社員だからといって、OJTトレーナーに向いているわけではありません。
また、トレーナーと育成対象者の相性によっては、双方がストレスを抱え、最悪の場合「退職」に追い込んでしまう可能性もあるのです。
OJTを成功するためにも、トレーナーについての役割をきちんと理解し、任命には十分な配慮が必要でしょう。
そこで、この記事では次のことを解説していきます。
この記事でわかること |
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この記事を読めば、OJTトレーナーとは何か、本当の役割がわかります。
OJTトレーナーを育てる方法も理解し、たくさんの優秀なトレーナーが誕生するでしょう。
最後までお読みになって、育成対象者を即戦力化するOJTを、ぜひ成功させてください。
▼OJTの全体像や詳細のテーマについては以下にまとめています。併せてご覧ください。(関連記事)
- 効果的なOJTとは?意味と目的、新時代の学習環境の作り方を解説
- OJTにおける最大のデメリットとは?解決策と合わせて解説!
- デジタル時代のOJTマニュアルとは?社員教育のポイントを紹介!
- OJT成功の企業事例10選|うまくいく会社の共通ポイントを解説
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- OJTトレーナー研修とは?45%が未実施!内容や実施方法を解説!
- OJTガチャの不運・悲劇を防ぐ処方箋3選!効果的な対策について解説!
▼OJTについてのお役立ち資料は下記よりダウンロードできます。
目次[非表示]
- 1.OJTトレーナーとは「育成対象者に伴走して業務を実践で教える人」
- 2.OJTトレーナーの役割とは?
- 2.1.業務に沿った育成計画を作る
- 2.2.対象者への業務指導を行う
- 2.3.社会人としてのヒューマンスキルを教育する
- 3.OJTトレーナーに向いている社員
- 3.1.【理想】入社2〜3年目の若手社員
- 3.2.コミュニケーション能力が高い社員
- 3.3.今後の成長に向けて指導力を強化したい社員
- 4.OJTトレーナーの強化すべき能力
- 4.1.業務に関する広い知識
- 4.2.指導力
- 4.3.トレーナーとしてのマインド
- 5.必ずOJTトレーナー研修を実施する
- 6.OJTトレーナーは4段階職業指導法を用いる
- 7.OJTとトレーナーを成功に導くポイント
- 8.OJTトレーナーのデジタル化には「UMU(ユーム)」
- 9.OJTトレーナーについてのまとめ
OJTトレーナーとは「育成対象者に伴走して業務を実践で教える人」
OJTトレーナーとは、育成対象者に伴走して、業務を実践で教える指導者を指します。
単純に、業務を教えるだけではありません。職場での実務を通じて、社会人としての一般知識やスキルを教育します。
育成対象者が独り立ちし、会社の即戦力となるための、サポーターといえるでしょう。
このように、育成対象者のサポートをする指導者には、トレーナーの他に、「メンター」があります。
どちらも対象者を成長させることが目的ですが、トレーナーが業務の指導がメインなことに対し、メンターは精神的なサポートになることが大きな違いでしょう。
【トレーナーとメンターの違い】
トレーナー |
メンター |
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サポート内容 |
業務の指導・サポート |
精神的(マインド)なサポート |
指導方法 |
具体的な業務・技術を指導する |
答えは言わずに気づきを促す |
主な手法 |
ティーチング |
コーチング
(傾聴を通じてサポートする) |
主体となる人 |
トレーナー |
育成対象者 |
※ただし、明確な定義がないので、会社や業務によっては役割が重複する場合があります。
トレーナー制度(OJT)とメンター制度を併用することで、いち早く社会人としての成長が望めるでしょう。
OJTトレーナーの役割とは?
OJTトレーナーの役割は、育成対象者に寄り添い、業務に必要な知識や技術を教育することです。
実践的な業務はもちろんですが、将来的に自立するための心構えやビジネスマナー、ヒューマンスキルも教育内容に含みます。
具体的には、次のことを行います。
それぞれ解説していきましょう。
業務に沿った育成計画を作る
トレーナーは、業務に沿った育成計画を作成します。
OJTで習得するべき業務は多岐に渡るため、一度にすべてを教えることはできません。
3ヶ月や半年間など、期間を区切った計画書を作成することで、育成対象者の成長の過程や、達成具合を確認しやすくなります。
業種や業務内容によって異なりますが、例として営業部のOJT計画書をみてみましょう。
【例:OJT計画書(短期)】
期間 |
本配属後の3ヶ月間 《5月1日〜7月31日》 |
育成対象者 |
田中 和樹さん |
トレーナー |
営業2課 斎藤 拓海さん |
育成対象者の現状 |
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OJT到達目標 |
基礎業務を身につけ、3ヶ月後に独り立ちする。 |
1ヶ月目 |
《教育目標》 我が社の社員としての自覚を持つ。
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2ヶ月目 |
《教育目標》 トレーナーのサポートを受けながら営業業務を一通り行う。
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3ヶ月目 |
《教育目標》 トレーナーのサポートを受けながら新規開拓を成功させる。
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また、計画書を作成したあとは、OJTを具体的に進めるための時間割も作成します。
学校の時間割のように細かく区切る必要はありませんが、対象者が「いつ」「何をするのか」を把握できるようにしておきましょう。
【例:1ヶ月目の時間割】
午前中 |
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13:00〜15:00 |
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15:00〜17:00 |
|
17:00〜 |
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▼OJT計画については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒OJT計画とは?テンプレート例や効果的なプランの立て方・注意点
対象者への業務指導を行う
トレーナーの一番重要な役割は、育成対象者への業務指導を行うことです。
まずは、育成対象者に業務のイメージを持たせるため、トレーナーが実際の業務をやってみせましょう。
「お手本」を見せることで、あとの実践や解説がスムーズになるためです。
基本的にはマンツーマン指導を行いますが、業務によっては数人単位で実施されるケースもあります。
実際の指導方法については、6.実際にOJTトレーナーが指導するときは「4段階職業指導法」を使用しようの章を参考にしてください。
社会人としてのヒューマンスキルを教育する
OJTトレーナーは、業務以外にも、社会人としてのヒューマンスキルを教育します。
ヒューマンスキルとは、ビジネスマナーやコミュニケーション能力など、会社員としての土台となるスキルのことです。
その他にも、実務的な、電話の対応方法や、コピーの取り方なども指導しましょう。
【教育するべきスキルの一例】
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ビジネスマナーなどは、OFF-JTでも研修するはずですが、OJTではより実践的な指導となります。
知識として理解しても、実践ですぐに使える訳ではありません。また、時と場合によっても、使い方は異なるため、その都度教育するようにしましょう。
OJTトレーナーに向いている社員
OJTトレーナーは、特別な資格などは特に必要ありません。
実際に指導するスキルや方法は、トレーナー研修で習得すれば良いのです。
しかし、やはり「向き・不向き」はあります。
OJTトレーナーに向いているのは、次のような社員です。
それぞれ解説していきましょう。
【理想】入社2〜3年目の若手社員
OJTトレーナーは、業務を習得している、入社2~3年目くらいの社員が理想といえるでしょう。
入社2〜3年目の社員は、育成対象者と歳が近く、比較的コミュニケーションが取りやすいからです。
同世代なので、同じような事柄に共感しやすく、関係性も構築しやすいでしょう。
一方、直属の上司や、年齢が離れすぎている社員の場合、育成対象者が緊張し、萎縮する可能性が高くなります。
気軽に質問をすることがむずかしくなり、OJTが失敗する可能性もあります。
コミュニケーション能力が高い社員
OJTのトレーナーは、コミュニケーション能力が高い社員が向いているでしょう。
OJT研修は、育成対象者の成長を後押しし、一人前の社会人とするための惜しみないサポートが必要だからです。
そのため、育成対象者が気軽に分からないところを聞くことができ、業務上の悩みを相談しやすい雰囲気を持つ人が良いでしょう。
たとえ業務に精通している人でも、人とコミュニケーションが取れない場合は避けます。
自分のやり方を押し付ける人や、他人の失敗を許容できない社員も、トレーナーには向いていません。
今後の成長に向けて指導力を強化したい社員
今後の成長に向けて指導力を強化したい社員を、OJTトレーナーに任命することをおすすめします。
OJTは、トレーナー自身が成長する機会でもあるからです。
どんなに個人で大きな成果を上げている人でも、個人プレーには限界があり、いつかは壁に当たるでしょう。
さらに、将来、役職がつくようになった場合、相手を動かすスキルやコミュニケーション力も必要にります。
OJTトレーナーの体験は、問題解決や後輩への指導のスキルが身につきます。
さらに、相手の立場に立つという、貴重な体験もできます。
次世代リーダーとして、今後のキャリアアップの原動力にもなるでしょう。
▼ OJT教える側について下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
OJTトレーナーの強化すべき能力
上の章でもご紹介しましたが、OJTのトレーナーは、「業務に詳しい」だけでは務まりません。
育成対象者を「即戦力」として育成するには、業務の知識やスキルに加えて、トレーナーが強化するべき能力があります。
それが、次の3つの能力です。
それぞれ解説していきましょう。
業務に関する広い知識
トレーナーには、業務に関する広い知識が必要です。
「なんとなく、経験から業務を行なっている」ような社員は、育成対象者からの質問や、疑問に答えられない可能性があるためです。
自分が行なっている業務の意味や背景、関わる人などをきっちりと説明できるようにしておきます。
たとえば、業務に関する知識を振り返り、5W1Hを意識して伝えられるようにしておくと良いでしょう。
【5W1Hを使った知識の振り返り】
What:どのような業務を |
指導力
次に、トレーナーは「指導力」を強化しましょう。
トレーナーは、育成対象者が必要とする業務知識やスキルを、正確に、分かりやすく指導する必要があるからです。
たとえば、複雑な業務の手順を、単純に「解説」するだけでは、習得してもらうことはできません。
実践した業務でミスをした場合、どうして間違えたのかをフィードバックし、どう改善していくかをうまく導くことで、育成対象者は成長します。
このようなフィードバックや改善を行うには、「指導力」というスキルが必要なのです。
指導力(スキル)は、主に次のようなものがあります。
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このような指導力は、通常の業務では利用しないケースもあるため、トレーナー研修できっちりと教育します。
トレーナーとしてのマインド
トレーナーには、育成対象者を「成長させてあげたい」というマインド(愛情)が必要です。
トレーナーが親身になって寄り添い、愛情をもって接することで、育成対象者の心理的安全性が増すからです。
結果的に指導やアドバイスを素直に受け取ることができるため、OJTはより成功しやすくなるでしょう。
育成対象者は、慣れない環境で、不安を抱えて、慣れない業務を身につけなければなりませんよね。
トレーナーが相手への理解や共感ができない人や、「トレーナーなんてやりたくない」と思っている社員が担当してしまうと、一方的な指導になってしまうでしょう。
育成対象者が萎縮してしまうと、気軽に質問や問題解決ができなくなります。
最悪、研修自体が嫌になり、早期退職にも追い込みかねません。
トレーナー研修を通し、トレーナーとしてのマインドを強化しましょう。
▼改めてOJT研修について確認したい場合には下記をご覧ください。
⇒改めて知りたいOJT研修とは?目的や進め方をプロが解説
必ずOJTトレーナー研修を実施する
実際にOJTを始める前に、必ずトレーナー研修を実施しましょう。
なぜなら、下記の理由があるからです。
【トレーナー研修を実施する理由】
研修内容 |
研修方法 |
OJTの理解 |
座学 |
OJTの目標 |
座学 |
OJTの進め方 |
座学 |
コミュニケーション指導 |
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指導の実践テクニック |
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計画書の作成 |
演習 |
※業種や業務によって、内容は大きく異なります。
▼ OJTトレーナー研修については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
OJTトレーナーは4段階職業指導法を用いる
実際にOJTトレーナーが指導する場合、「4段階職業指導法」という方法を用いることが基本です。
これは、「Show(やってみせる)」「Tell(説明・解説する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・指導をする)」というプロセスで、即戦力を育成する、実践型の人材育成手法です。
【4段階職業指導法】
失敗してしまった点は、具体的に、何が悪かったのか、どうすればよかったのかを丁寧に解説し、できたところは積極的に評価するのが大切です。 |
できなかった業務に関しては、再度「Show」からはじめることで、確実に習得するようになります。
実際のOJTの進め方について更に詳しく知りたい方は、「【即戦力を育てる】OJTの正しいやり方とは?7ステップを徹底解説!」の記事を参照してください。
OJTとトレーナーを成功に導くポイント
ここまでの説明で、OJTトレーナーの役割や重要性について、ご理解いただけたのではないでしょうか。
この章では、OJTを成功に導くためのポイントを見ていきましょう。
ポイントは次の3つです。
OJTトレーナーの役割を充分に認識させる
OJTトレーナーには、その役割を充分に認識させるようにしましょう。
役割をきちんと認識することで、トレーナーとしての責任感が高まり、適当に指導してしまうことを防ぐことができます。
また、OJTは、育成対象者だけではなく、トレーナー自身の成長にも繋がることを伝えると、より真剣に取り組むようになるでしょう。
具体的には、下記のようなことを伝えます。
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トレーナー研修などでしっかりと、トレーナーの役割を共有させましょう。
トレーナーの指導についてフィードバックやサポートを必ず行う
トレーナーの指導について、フィードバックやサポートを必ず行いましょう。
OJT研修中は、トレーナーと育成対象者の2人でいることが多いため、周りが把握しないまま、大きな問題を抱えてしまうケースもあるからです。
たとえば、次のようなケースがあります。
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OJTが孤立しないよう、定期的にトレーナー同士やOJT管理者を交えて、情報共有や、フィードバックを行なえる場を作りましょう。何か問題を抱えていないかを探り、積極的にサポートを行います。
部署内にサプトレーナーやサポーターを設置することや、トレーナー専用の相談窓口の設置などがおすすめです。
OFF-JTやeラーニング研修も併用する
OJT研修は、OFF-JTやeラーニング研修も併用することで、より大きい効果を得る事ができるでしょう。
OJTだけでは、担当するトレーナーのやり方や考え方に、大きく影響される可能性が大きいからです。
たとえば、トレーナーが独自の方法で業務を行なっていても、育成対象者は、それが正しいのか判断をすることができません。方法が間違っていたとしても、トレーナーのやり方を引き継ぐことになります。
また、常に二人だけの研修では、窮屈さを感じて、ストレスも溜まってしまうでしょう。
OJT以外の研修を適度に入れることは、包括的な学びを得ることができる上、適度な「息抜き」にもなるのでおすすめです。
たとえば、OFF-JTは大人数で研修するため、スキルの均一化や、体系的な学びを取り入れることができます。業務を客観的に見ることにも繋がるでしょう。
また、eラーニングは、動画などを活用し、OJTで学んだ知識を繰り返し学習できることがメリットです。
分からない箇所を自力で解決することもできるので、トレーナーが忙しい時期などに活用するのもいいでしょう。
▼OJTのばらつき課題を克服するポイントについては下記で解説しています。
⇒多くの企業が抱える「OJTのばらつき課題」とは?真因と改善する具体策を解説!
OJTトレーナーのデジタル化には「UMU(ユーム)」
OJTを円滑に進め、育成対象者を即戦力に育て上げるには、OJTトレーナーの育成は欠かせません。
これまでお伝えしてきたように、OJTは、「トレーナーの質」に大きく左右されるからです。
しかし、自社内でOJTトレーナーを育成する環境や人材が不足している場合や、そもそも業務が忙しくて、トレーナーを育成している時間がとれない会社も多いのではないでしょうか。
その場合、オンライン上のプラットフォームを利用して、OJTのデジタル化をする方法があります。
AI活用学習プラットフォーム「UMU」は、これまで人が行っていたOJTをデジタル化することをサポートしてくれます。学ぶ側の結果が出やすいように、最適化された学習用プラットフォームです。
スマートフォンからでも学習できるため、場所も時間も選びません。
UMUの学習機能の一例
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OJTのデジタル化はもちろん、さまざまな研修に幅広くお使いいただけます。
▼ OJTのデジタル化については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
\\ぜひ、UMUの機能をご確認ください!//
OJTトレーナーについてのまとめ
いかがでしたでしょうか。
OJT研修を成功させるトレーナーについて、よくお分かりになったのではないでしょうか。
ここで、この記事の内容をまとめてみましょう。
◯ OJTトレーナーとは
OJTトレーナーは、「育成対象者に伴走して業務を実践で教える人」です。
ただ業務を教えるだけの「マンツーマン指導」ではなく、職場での実務を通じて、社会人としての一般知識やスキルを取得させるサポーターでもあります。
◯ OJTトレーナーの役割
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◯ OJTトレーナーに向いている社員
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◯ OJTトレーナーとともにOJTを成功に導く3つのポイント
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この記事を参考にして、優秀なトレーナーを育成し、OJT研修が大成功することを願っています。
株式会社LDcubeはこれまでの組織活性化や人材育成で培ったノウハウを生かしながら、新たな時代の人材育成方法の模索を支援しています。
また、OJTのデジタル化に向けたプラットフォームの提供やコンテンツ作り、運用のサポートなど、OJTトレーナー研修の実施など、さまざまなサービスを展開しています。
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