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OJT計画とは?テンプレートや効果的なプランの立て方・注意点

「OJT計画の立て方がわからず、頭を悩ませている」という方は、多いのではないでしょうか。

近年、人材育成の重要性が叫ばれるなか、効果的なOJT(On-the-Job Training:職場内訓練)の実施が、企業の発展に不可欠となっています。

OJTを体系的に行うためには、綿密な計画を立てることが重要ですが、その作成方法に悩む企業は少なくありません。

OJT計画②

本記事では、OJT計画の基本から、効果的な作成方法、注意点までを詳しく解説します。

ご一読いただくと、自社に最適なOJT計画を立案し、社員の成長を加速させるノウハウが身に付きます。さっそく見ていきましょう。

▼OJTの全体像や詳細のテーマについては以下にまとめています。併せてご覧ください。(関連記事)

▼OJT計画の具体例やシートを含むチェックシートなどの役立ち資料は下記よりダウンロードできます。

OJTチェックシート_バナー

この記事の監修者  株式会社LDcube 代表取締役 新井澄人  株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。

目次[非表示]

  1. 1.OJT計画の基礎知識について 
    1. 1.1.OJT計画とは何か
    2. 1.2.OJT計画を立てるべき理由
    3. 1.3.OJT計画書のテンプレート例
  2. 2.OJT計画の効果的な作り方
    1. 2.1.ステップ1:中長期の成長目標を明確にする
    2. 2.2.ステップ2:短期の成長目標に落とし込む
    3. 2.3.ステップ3:教育内容と期間を具体的に設定する
    4. 2.4.ステップ4:育成方法とフィードバック方法を決める
    5. 2.5.ステップ5:評価基準と評価方法を明確にする
    6. 2.6.ステップ6:計画の見直しと修正を継続的に行う
  3. 3.OJT計画作成時の3つのポイント  
    1. 3.1.所持スキルからストレス耐性まで対象者の特性に合わせる
    2. 3.2.対象者が混乱しないようにチームの連携を密にする
    3. 3.3.計画と照らし合わせて効果を検証する
  4. 4.OJT計画を基にした具体的な指導法
    1. 4.1.「Show」やってみせる
    2. 4.2.「Tell」説明・解説する
    3. 4.3.「Do」やらせてみる
    4. 4.4.「Check」評価・指導をする
  5. 5.OJT計画運用の要はトレーナー
  6. 6.OJTを計画的に進めるにはデジタル化
  7. 7.OJTのデジタル化を図った支援事例
  8. 8.まとめ

OJT計画の基礎知識について 

OJT計画③

OJT計画は、新入社員や業務未経験者の育成を、効率的かつ効果的に行うために不可欠なツールです。まずは、OJT計画の基本的な知識を確認しておきましょう。

OJT計画とは何か

OJT計画とは、新入社員などの育成目標を達成するための、具体的なOJTカリキュラムとスケジュールのことです。

OJT計画で扱う領域は、端的にいえば “OFF-JT(=集合研修、座学での学習)以外の実習トレーニングすべて” となります。

OJT計画④

  出典:厚生労働省「有期実習型訓練を活用してみませんか」を加工

OJTの対象となる社員に必要なスキルや知識を洗い出し、職場内でのトレーニングを通じて、「いつまでに・何を・どのように習得するのか」を明確にします。

このOJT計画は、育成担当者とOJT対象者の双方にとって、指針となるものです。

計画に沿った実践によって、効率的かつ着実な人材育成が可能となります。

OJT計画を立てるべき理由

OJT計画を立てることには、以下のようなメリットがあります。

【OJT計画を立てるべき理由】

  • 目標達成への道筋が明確になる:対象者の目指すべきゴールと、そこに至るまでのプロセスが明らかになります。目標達成に向けて、計画的に教育を進められます。
  • 指導漏れを防げる:指導内容を網羅的に洗い出し、計画に落とし込むプロセスによって、重要な項目の指導漏れを防げます。
  • 進捗状況の把握が容易になる:事前に立てた計画があれば、進捗の確認が容易になります。計画と実績のギャップによって対象者の成長度合いを把握でき、必要に応じて、計画の修正も可能です。
  • 育成担当者の教育スキル向上につながる:OJT計画の作成および実践プロセスを通して、育成担当者自身が教育の要点を整理できます。結果として、トレーニング力の向上が期待できます。

逆に、OJT計画を立てずに場当たり的教育を行うと、対象者のスキル習得遅れが生じたり、指導内容ムラが出たりするおそれあります。

社員の早期戦力化が望めないだけでなく、早期離職を招くケースもありますので、注意が必要です。

OJT計画書のテンプレート例

OJT計画書のテンプレートとしては、以下のような項目を盛り込むとよいでしょう。

【OJT計画書のテンプレート項目例】

  • 対象者情報
    対象者の氏名、所属部署、配属日などを記載します。
  • 育成期間
    OJT実施の開始日と終了日、「配属後◯か月間」など、期間を明記します。
  • 育成目標
    対象者が達成すべき目標を、業務遂行能力・スキルなどの観点から、具体的に設定します。
  • 育成項目
    対象者が習得すべき知識やスキルを洗い出し、リスト化します。優先順位もつけておくとよいでしょう。
  • スケジュール
    育成項目ごとに、いつまでに何を教育するのかを時系列で記載します。マイルストーン(重要な節目)も設定します。
  • 指導方法
    OJTの実施方法を記載します。実践指導・ロールプレイングなど、具体的な指導方法を列挙します。
  • 評価方法
    対象者の習得度をどのように測定し、フィードバックするのかを記載します。評価基準も設けます。
  • その他
    教材や参考資料など、OJTに必要なリソースを洗い出しておきましょう。

以上の項目を網羅したテンプレートを用意しておくと、OJT計画の策定がスムーズになります。自社の状況に合わせて、項目の追加・修正を行ってください。
 
以下はテンプレートの例です。

【中長期の計画書の例】

OJT計画⑤

出典:厚生労働省「人材育成事例052:水ing株式会社」

【短期の計画書の例】

OJT計画書⑥

出典:OJTの正しいやり方とは?【即戦力を育てる】7ステップを徹底解説!

ほかにも検索すると、さまざまなテンプレートがヒットします。
​​​​​​​⇒ Googleで[OJT計画書 テンプレート]と画像検索した結果ページ

上記リンクからテンプレート画像を確認できます。参考にしてみてください。

OJT2点セットバナ

OJT計画の効果的な作り方

OJT計画⑦

続いて、効果的なOJT計画の作成プロセスを、具体的なステップに分けて解説します。

ここでは、以下の6つのステップに分けて見ていきましょう。

  • ステップ1:中長期の成長目標を明確にする
  • ステップ2:短期の成長目標に落とし込む
  • ステップ3:教育内容と期間を具体的に設定する
  • ステップ4:育成方法とフィードバック方法を決める
  • ステップ5:評価基準と評価方法を明確にする
  • ステップ6:計画の見直しと修正を継続的に行う

ステップ1:中長期の成長目標を明確にする

1つ目のステップは「中長期の成長目標を明確にする」です。

まずは、育成対象者の中長期的な成長目標を設定します。

いつまでに、どのようなスキルや知識を身に付けてほしいのか、ゴールイメージを明確にしましょう。

本人の適性や、配属先の部署の特性を考慮しながら、達成可能な目標を立てることが重要です。

【中長期の成長目標設定の際の注意点】

  • 企業理念や経営方針と整合したものにする
    組織の大きな方向性と、対象者の成長の方向性を一致させます。
  • 具体的な言葉で目標を記述する
    抽象的な表現は避けましょう。「自社の主力商品について、機能や特徴を詳しく説明し、顧客のニーズに合わせた提案ができるようになる」など、具体性を持たせます。
  • 行動レベルで目標を設定する
    単に知識を習得するだけでなく、「その知識を使って何ができるようになるのか」を意識して目標設定します。
  • 数値目標を盛り込む
    可能な限り、数値を用いた目標設定を行います。「月間◯件以上の企画書を作成できる」など、評価しやすい目標にします。
  • 対象者本人とすり合わせる
    一方的に目標を押し付けるのではなく、対象者本人の意向も確認しながら、合意形成を図ります。

長期目標がブレないよう、しっかりと言語化し、文書に落とし込んでおきましょう。

設定した目標は、OJT実施中に常に意識できるよう、OJT日誌の裏表紙などに掲示する工夫も有効です。

ステップ2:短期の成長目標に落とし込む

2つ目のステップは「短期の成長目標に落とし込む」です。

中長期の目標ができたら、次はそれを短期の目標に分解していきます。

中長期の目標を達成するために、まずは何から取り組むべきかを明らかにするプロセスです。

短期の目標は、3か月先、半年先など、比較的近い未来の姿を思い描きながら設定しましょう。

【短期目標への落とし込み方】

  • 目標達成までの期間を区切る
    1カ月・3カ月・半年などの単位で、区切りをつけます。区切った期間ごとに、到達目標を設定します。
  • 中長期目標からのバックキャスティング(逆算)
    中長期目標の達成に向けて、いつまでに何ができればよいのかを逆算して考えます。
  • 経験則に基づいて設定する
    先輩社員の成長プロセスを参考にしつつ、無理のないペースで目標設定します。
  • 優先順位をつける
    育成項目の優先度を判断し、優先順位の高いものから目標設定していきます。
  • フェーズごとのテーマを設ける
    「基礎知識習得」「実践力強化」など、目標達成までの道のりをフェーズに分け、各フェーズのテーマを明確にします。

短期目標は、中長期目標よりも具体性を高め、より行動レベルに近づけて設定します。

小さなトレーニングの積み重ねを通じて、大きな目標を達成できるよう、着実に一歩ずつ進められる目標を心がけましょう。

ステップ3:教育内容と期間を具体的に設定する

3つ目のステップは「教育内容と期間を具体的に設定する」です。

短期目標が定まったら、目標を達成するための教育内容と期間を具体化します。過去の知見なども参考にしつつ、対象者の成長度合いに応じた教育プログラムを設計しましょう。

【教育内容設定のポイント】

  • 目標達成に必要な知識・スキルを洗い出す
    目標達成のために習得すべき知識やスキルを書き出します。洗い出した項目は、体系立ててまとめておきましょう。
  • 知識・スキルの習得レベルを設定する
    習得を目指す知識やスキルは、その習得レベル(どの程度、使いこなせるようになるのか)を明確にしておきます。
  • OFF-JTの実施時期を検討する
    OJTと連携して実施するOFF-JT(集合研修など)を実施するタイミングを設定します。実務に入る前の事前研修、実務と並行しての定期研修など、学習効果が最大となるよう計画的に実施します
  • OJT期間中の業務内容を精査する
    OJTの一環として、対象者に任せる業務の内容と量を精査します。段階的に難易度を上げながら、適切な業務を割り当て、着実に成長を促します。
  • マイルストーンを設ける
    目標達成までの節目に、習得状況の確認ポイントを設定します。確認結果に応じて、教育内容の調整を図ります。

教育内容と期間は、フィックスト(固定)とフレキシブル(柔軟)のバランスを取るのがポイントです。

大枠のスケジュールは固定しつつ、対象者の成長スピードに合わせて、臨機応変に内容を調整できる余地を残しておきましょう。

ステップ4:育成方法とフィードバック方法を決める

4つ目のステップは「育成方法とフィードバック方法を決める」です。

教育を効果的に進めるには、適切な指導方法の選択と、きめ細やかなフィードバックが欠かせません。対象者の特性を見極めつつ、育成方法を柔軟に使い分けていく必要があります。

【育成方法の例】

  • 実践指導
    対象者が実際の業務を行う際に、育成担当者が横について指導・助言を行う方法です。対象者の習熟度に合わせて、徐々に任せる業務の範囲を広げていきます。
  • シャドウイング
    対象者が先輩社員の業務を観察し、そのやり方を学ぶ方法です。実際の業務の流れや、顧客対応の仕方など、生きた知識を吸収できます。
  • ロールプレイング
    実際の業務場面を想定して、対象者と育成担当者が役割を演じながら、対応方法を練習する方法です。さまざまなシナリオを用意し、実践的なスキルを磨きます。
  • OJT日誌
    対象者が日々の業務内容と学びをまとめ、育成担当者がフィードバックを行う方法です。対象者の成長や課題を継続的に把握できます。
  • 定期面談
    一定期間ごとに、対象者と育成担当者が面談を行う機会を設けます。対象者の悩みを聞き、アドバイスを行いながら、信頼関係を築いていきます。

育成担当者は、対象者との信頼関係を築きながら、適切な指導とフィードバックを心がけましょう。対象者の主体性を引き出し、モチベーションを高める関わり方が求められます。

なお、育成担当者(OJTトレーナー)の育成が不十分な企業においては、OJTトレーナー育成計画の策定も必要です。

ステップ5:評価基準と評価方法を明確にする

5つ目のステップは「評価基準と評価方法を明確にする」です。

育成の成果を測定するには、評価基準の設定と、適切な評価方法の選択が不可欠です。対象者の成長度合いを多面的に評価できるよう、評価の仕組みを工夫しましょう。

【評価基準の設定方法】

  • 目標の達成度で評価
    設定した目標に対する達成度を、具体的な指標に基づいて評価します。
  • 業務遂行能力で評価
    実務でどの程度力を発揮できているかを評価します。業務の質、スピード、対応力など、多角的な評価を心がけましょう。
  • コンピテンシーの発揮度で評価
    自社で定義するコンピテンシー(行動特性)について、対象者がどの程度身に付けて発揮できているかを測ります。
  • 日常業務の観察評価
    日常の業務での対象者の様子を観察し、育成担当者が総合的に評価します。上司や先輩社員など、ほかの社員の意見も参考にします。
  • 自己評価の機会を設ける
    本人の自己評価の機会も設けましょう。成長の実感は、モチベーション向上に直結します。

評価の実施タイミングは、マイルストーン到達時など節目に設定しましょう。

評価結果は、上司と対象者の面談の場で丁寧にフィードバックし、対象者のさらなる成長をサポートするとよいでしょう。

ステップ6:計画の見直しと修正を継続的に行う

6つ目のステップは「計画の見直しと修正を継続的に行う」です。

作成したOJT計画は、実行しながら随時、見直しを図りましょう。

OJT計画のゴールは、計画の完遂ではなく、「育成対象者が必要な知識やスキルを習得すること」です。

教育を進める過程で、対象者の成長度合いの過不足や、計画の誤算が見えてくることがあります。それらを無視せず、柔軟に計画を修正しながら育成を進めることが大切です。

【計画見直しの視点】

  • 目標の妥当性を再検討
    設定した目標が、対象者の成長度合いに照らして妥当かどうかを定期的に確認します。必要であれば、目標の修正を検討します。
  • 教育内容の過不足を精査
    育成を進めていくと、教育内容の過不足が判明することがあります。柔軟にカリキュラムの内容を見直しましょう。
  • 育成方法の有効性をチェック
    選択した育成方法が、対象者の習得度向上に効果を発揮しているかを確認します。改善の余地があれば、方法を変更します。
  • 教育期間の妥当性を検討
    当初の予定通りに育成が進まない場合、状況に応じて教育期間の延長を検討するなど、臨機応変な判断をします。

計画の見直しは、育成担当者だけでなく、関係者を交えて行うと効果的です。多様な視点から計画を振り返り、より効果的な育成プロセスを設計していきましょう。

OJTまるごと理解3点セット

OJT計画作成時の3つのポイント  

OJT計画⑧

最後に、OJT計画の作成および実行時に気をつけたいポイントをお伝えします。以下の点を意識しながら進めていきましょう。

  1. 所持スキルからストレス耐性まで対象者の特性に合わせる
  2. 対象者が混乱しないようにチームの連携を密にする
  3. 計画と照らし合わせて効果を検証する

所持スキルからストレス耐性まで対象者の特性に合わせる

1つ目のポイントは「所持スキルからストレス耐性まで対象者の特性に合わせる」です。

OJT計画の策定の理想的なあり方は、対象者一人一人の特性や学習スタイルを見極め、その人に合わせた育成プランを設計することです。

画一的なカリキュラムを全員に適用するのではなく、個人の強み・弱みを分析して対応する柔軟性が、成果につながります。

【対象者の特性分析の着眼点】

  • 経験とスキルの把握
    対象者のこれまでのキャリアや、すでに習得済みのスキルを確認します。得意分野や伸ばすべき領域を特定し、集中的に強化する項目を盛り込みます。
  • 学習傾向の見極め
    座学中心のアプローチが効果的な人もいれば、実地での経験を通じて学ぶのが得意な人もいます。対象者の学習パターンを見抜き、最も学習効果の高い教育手法を採用します。
  • パーソナリティ特性の理解
    真面目さ、協調性、積極性など、対象者の性格面の特徴も考慮に入れます。性格タイプに合わせて、適切な動機づけやフィードバックの方法を使い分けます。
  • モチベーター(やる気が高まる要因)の特定
    何によってモチベーションが上がるかは、人それぞれ異なります。たとえば承認欲求が強い人には称賛を、達成感を重視する人には挑戦的な課題を与えるなど、モチベーションの源泉を見極めます。
  • メンタルヘルスへの配慮
    ストレス耐性やコーピングスキル(ストレスに対応する技術)の個人差にも目を配ります。過度な負荷がかからないよう、心身の健康状態をモニタリングしながら育成プランを遂行します。

このような対象者理解の鍵は、日常の観察と定期的な面談を通じた情報収集にあります。

表面的な印象にとらわれることなく、対象者の個性に寄り添う姿勢こそが、OJTの成功を左右する大きな要因です。

対象者が混乱しないようにチームの連携を密にする

2つ目のポイントは「対象者が混乱しないようにチームの連携を密にする」です。

OJTを組織的に展開していくには、育成する側の連携プレーが不可欠です。

対象者の視点から見たときに、

「教育担当者と上司とで、言うことが違う」
「教わったとおりに業務を行ったら、他部署から叱責を受けた」

など、育成側の連携不足による弊害が起きる状況は、避けなければなりません。

対象者を混乱させず一貫性のある指導を行えるよう、OJTの目的達成を下支えするチームビルディングを図りましょう。

【連携強化のためのアクションプラン】

  • 育成チーム編成
    対象者の育成を担当するトレーナーとサポートメンバーを任命します。直属の上司だけでなく、専門性を持つ先輩社員や人事担当者など、多様な立場のメンバーを巻き込みます。
  • 合意形成ミーティング
    OJT開始前に指導チーム全員を召集し、育成の全体像を共有します。達成目標や育成方針について議論を重ね、メンバー間の足並みをそろえます。
  • タスク・ロールの設定
    育成チーム内でのタスク分担とロール(役割)設定を行います。誰が何を担当するのかを明確化し、抜けや漏れ、ダブりが生じないよう調整します。
  • 情報共有プラットフォーム
    チームメンバー間の情報共有基盤を整備します。チャットグループなどを活用し、対象者の状況や直面する問題をメンバー全員がタイムリーに把握できるようにします。
  • サポート・フォロー体制
    メンバー間の助け合いを促進する仕掛けを用意します。たとえば、困ったときに相談しやすい雰囲気の醸成や、ピンチヒッターを送り込む柔軟なシフト運用が挙げられます。

一人一人が持ち味を発揮しながら、同じベクトルに向かって協力し合える体制があれば、OJTを受ける新入社員や若手社員も、チームの一員として早くなじめるでしょう。

計画と照らし合わせて効果を検証する

3つ目のポイントは「計画と照らし合わせて効果を検証する」です。

OJTの効果を組織全体で最大化するには、個々のOJT計画の進捗管理だけでなく、OJTの全体的な成果を検証し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。

組織目標に対して、どの程度の成果が出ているのかを多角的に評価し、次なるOJTの改善につなげていく必要があります。

OJTの組織的な効果検証を進めるためのポイントは以下のとおりです。

【OJTの組織的な効果検証のポイント】

  • 組織目標の達成度評価
    組織として設定した人材育成やOJTの目標に照らして、どの程度の成果が出たかを評価します。定量的な指標を用いて、達成度を可視化します。
  • OJT修了者の追跡調査
    OJTを修了した対象者のその後の活躍ぶりを追跡します。OJTで習得した知識・スキルが、実務でどのように発揮されているかを確認します。
  • マネジメント層への効果のヒアリング
    OJT対象者の上司や経営層に、OJTの効果を尋ねます。現場の生の声からリアルな評価を収集し、OJTの成果や改善点を探ります。
  • 他社事例との比較検討
    自社のOJTの取り組みを、他社の優良事例と比較します。先進的な取り組みを参考にしながら、自社のOJTの改善ポイントを見出します。

組織の人材力強化には、個人の成長だけでなく、組織全体でOJTに取り組む意識や風土づくりが欠かせません。効果検証を通じて、組織のOJTの強みと課題を認識し、より効果的なOJTの仕組みを作り上げていきましょう。

人材育成の効果測定については、以下の記事もあわせてご覧ください。
⇒人材育成の効果測定とは?重要な観点や評価項目を網羅的に解説

OJTまるごと理解3点セット

OJT計画を基にした具体的な指導法

OJTをしているイメージ

OJT計画を作成したら、実際にOJTを行っていきますが、OJTは基本的にマンツーマン指導での実施となります。職種や業務によって多少異なる点はありますが、実際の指導には「4段階職業指導法」という方法を用いることが基本です。

これは、「Show(やってみせる)」「Tell(説明・解説する)」「Do(やらせてみる)」「Check(評価・指導をする)」というプロセスで、即戦力を育成する、実践型の人材育成手法です。

4段階職業指導法

OJTのやり方具体的指導モデルの画像

頭では理解していても、実際の業務がうまくいくわけではありません。この4つを育成対象者が慣れるまでくりかえすことが大切でしょう。

それぞれの段階のポイントを解説していきましょう。

「Show」やってみせる

まずは、トレーナーが、実際の業務をやってみせることからはじめます。

トレーナーの業務を実際に見ることで、育成対象者は、自分の仕事を具体的にイメージすることができるためです。

解説や説明を先にすると、育成対象者はイメージができず、混乱してしまう可能があるでしょう。

専門的な業務だけではなく、電話の対応や、コピーの取り方など些細なことでも、まずは「お手本」を見せるようにしましょう。

「Tell」説明・解説する

トレーナーが業務を行っているところを見せたあと、育成対象者に業務の内容や、やり方を丁寧に解説します。

なぜこのやり方をするのか、どのタイミングで行うのかなど、業務の目的などもしっかりと説明します。

分からないまま次の段階へ進むことがないよう、質問なども積極的に受けましょう。

「Do」やらせてみる

次に、実際にその業務をやってもらいましょう。

やってもらうことで、本当に理解ができているのか、間違って理解していないかなどを確認します。

この時、必ずトレーナーは側にいてサポートをします。業務によっては、危険がないように充分な配慮も必要です。

「Check」評価・指導をする

育成対象者が行った業務をチェックし、簡単な評価や指導を行います。

【チェックするべきこと】

  • できたこと、達成できたこと
  • できなかったこと、失敗したこと
  • なぜできなかったのか
  • できるようになるために何をするか

失敗してしまった点は、具体的に、何が悪かったのか、どうすればよかったのかを丁寧にフィードバックし、気づきを促しましょう。

また、失敗した箇所を指摘するだけではなく、できたところは積極的に評価することを意識しておきましょう。できなかったことの指摘だけでは、成長を実感しにくくモチベーションも低下してしまいます。

できなかった業務に関しては、再度「Show」からはじめると、習得が早く、スキルが定着し、成果につながりやすくなります。

チャレンジを促そう!

全体を通して、失敗をしないように先回りするのではなく、できるだけチャレンジをするように促しましょう。

育成対象者は、新人にしか許されない失敗を重ねて、特別な経験や実体験を得ることができます。

この学びが、今後の仕事に大いに活かされ、社員の一員として飛躍することにも繋がるはずです。

▼OJTのやり方については下記で詳しく解説しています。
⇒OJTの正しいやり方とは?即戦力を育てる7ステップを徹底解説!
OJTまるごと理解3点セット

OJT計画運用の要はトレーナー

OJTしているイメージ

OJT計画をしっかりと運用していく際の要となるのはOJTトレーナーです。OJTトレーナーがOJTトレーナーの役割をしっかりと認識し、OJT計画の重要性などについても理解して進めていくことが重要です。OJTトレーナーが適切にその役割を発揮してもらうためには、会社がOJTトレーナー研修の機会を用意し、OJTトレーナーにきちんと役割を伝え、役割発揮に向けた能力開発の機会を提供することが重要です。OJTトレーナー研修に必要な要素について紹介します。

(OJTトレーナー研修に必要な要素)

  • OJTトレーナーとしての役割理解
  • OJT計画書の作成方法
  • 指導力向上のためのトレーニング
  • OJTトレーナーのコミュニケーションスキル

OJTトレーナーとしての役割理解

OJTトレーナーに任命された社員がOJTトレーナーとして活動していく上で、OJTトレーナーとしての役割をきちんと理解していることが大前提です。OJTトレーナーとしての役割、人材育成において重要な役割を担っているという責任のみならず、組織独自の期待役割なども伝えて、理解してもらうことが重要です。

OJT計画書の作成方法

OJT計画なくしてOJTにあらず。OJT計画書がそもそも存在しないという課題を抱えている企業も少なくありませんが、効果的にOJTするにはOJT計画書が欠かせません。OJT計画書とは、OJTトレーナーが、OJT対象(トレーニー)に、いつまでに、何が、どれくらいできるようになってもらうのかを整理するためのものです。

OJTトレーナーは、OJTの目的を理解し、職場で日々教えていくための目標設定、計画立案、進行管理、評価方法などについて、OJTトレーナー研修で学び、OJT計画書を作成する必要があります。

指導力向上のためのトレーニング

効率的な教え方、コーチングのスキル、フィードバックの与え方など、相手に効果的に教えるために必要なスキルが多くあります。後輩も一人一人の特性が異なるため、その特性に合わせて効果的に指導や関わりを持てることが重要です。

現代では、動画を活用して教えるなど、教え方のバリエーションも増えています。それに伴い、OJTトレーナー(教える側)のさらなるスキルアップも必要です。

▼OJTについて、現代の教える側が押さえておきたいポイントについてはこちらをご覧ください。
⇒OJTで教える社員の役割とは?デジタル時代に必要なポイントを解説!

OJTトレーナーのコミュニケーションスキル

自分を知って、相手を知ることで効果的なコミュニケーションにつながります。コミュニケーションはまず自分を知ることから始まります。また、職場にはさまざまな背景を持つ人々がいます。多様性への理解や、差別、ハラスメントに対する理解を深める必要もあります。

コミュニケーションスキルは、OJTトレーナーとしてトレーニーに日々関わる上で重要なスキルとなります。トレーニーとうまくコミュニケーションが取れないとOJTが機能しません。現代では、ハラスメントにも気を付ける必要があります。自分を知って相手を知って、効果的なコミュニケーションが取れていれば問題ありません。

しかし、自分が良かれと思って行っているコミュニケーションの取り方は、相手が苦手としている場合もあります。そのような場合、日常的にそのままコミュニケーションを行い続けるとハラスメントへと発展してしまう恐れがありますので、注意しましょう。

OJTをきちんと機能させるには、OJTを担当するOJTトレーナーの方々に研修を受講してもらい、役割認識やスキルを身に付けてもらうことをおすすめします。

参考:OJTトレーナー研修実施の実態

OJTトレーナー研修を実施する際には、人事が主催し、外部講師に依頼して研修を実施することもあれば、社内講師で実施することもあります。株式会社LDcubeでは2023年10月に「ポスト・コロナのOJTの実態」についてのアンケート調査(有効回答数235件)を行いました。

その中で、「貴社では、OJT担当者研修は実施していますか? 最も当てはまるものをお選びください」として、OJTトレーナー研修の実施状況について聞いています。37%の組織においては「社内講師で実施している」と答えています。

「外部講師で実施している」と回答した組織は9%でした。そして、「実施していない」という回答が45%と最も多い回答となりました。

OJTトレーナー研修実施実態調査結果グラフ

OJTを効果的に機能させるためには、OJTトレーナー研修を実施し、OJTトレーナーに期待する役割やスキルを教えることが不可欠です。OJTトレーナー研修を実施していない場合は、実施することをおすすめします。

▼OJTトレーナー研修については下記で詳しく解説しています。
⇒効果的なOJTトレーナー研修とは?これからの時代に必要な要素も解説!

OJTまるごと理解3点セット

OJTを計画的に進めるにはデジタル化

OJTのデジタル化イメージ

OJTを計画的に進めるためには、デジタル化が重要です。

OJTのデジタル化とは、OJTで教える内容について動画コンテンツやファイルデータ、理解度クイズなどをデジタル化し、プラットフォーム上で引用することにより、学習行動の履歴を管理しなgら、OJTのやり方そのものを変革し、効果を高めていくことを指します。

デジタル化は「ばらつき」を軽減し、生産性を向上させる有効な手段です。教える内容を統一したデジタルコンテンツとして整備することで、誰が教えるかに依存せず、質の高い教育を提供できます。これにより、トレーナーの業務負荷も軽減され、効率的な教育を実現できます。

さらに、デジタルコンテンツを活用して、いつでもどこでも学べる環境を整備することで、受講者は自己学習を通じてスキルを向上させることができます。

学習行動やトレーナーの指導行動のデータ解析を通じて、人材育成の再現性も向上させることが可能です。

これらの取り組みを通じて、OJTを計画的に進めるオンボーディングプログラムが実現され、新入社員や若手社員が早期に戦力として活躍し、企業全体の成長が促進されます。

▼OJTのデジタル化については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒OJTにおける最大のデメリットとは?解決策と合わせて解説!

OJTのデジタル化を図った支援事例

OJTシーン

建設業でOJTのデジタル化を図り、OJTという名の放置を解決した支援事例を紹介します。

社員数:100名以上
事業:土木建築工事、建設工事の設計と監理


課題・背景

  • 技術教育に十分な時間を割けない
    ベテラン社員が現場作業に追われ、若手社員の技術教育を十分にできていないという課題がありました。
    また、時間だけでなく、人員にも余裕がないため、本来教えるべき技術やノウハウが現場で伝達できていないという事態に陥っていました。
  • OJT格差と離職率が上昇
    現場のOJTは主にベテラン社員が担当していましたが、人によって言うことが違う、厳しい口調の上司が多いなど、 OJT格差がありました。

    その結果、若手社員の離職率が高くなり、新入社員の採用に悪影響が出ました。


取り組みの詳細

  • 全社プロジェクトの立ち上げ
    課題解決のため、人を介さず業務知識が学べるコンテンツの配信環境を構築するプロジェクトを立ち上げました。まずは各現場で「わが社の新人に必要な学習内容は何か」という観点で棚卸しを行いました。このプロジェクトの初期は、中堅社員をコンテンツ作成作業の中心に据えました。
  • 全社員アンケートを実施
    現場所長や各部署の社員を対象とした「現場に配属になった際に覚えてほしいこと」アンケートを実施しました。そこで集まった声を基にし、業務フローと照らし合わせながら、必要なコンテンツリストをブラッシュアップしました。
  • コンテンツ作成のサポート体制を強化
    中堅社員の目線でコンテンツ作成を行った結果、自身が新入社員だった頃の感覚を忘れていることもあり、どのようなポイントを伝えれば新入社員にとって分かりやすいかという観点が抜けた内容になっていました。
    また、コンテンツ一つ一つの情報量が多いことや、自身が普段当たり前のように行っている業務を、コンテンツに落とし込むことができないという課題が浮上しました。そこで具体的な作業に関するコンテンツ作成を若手社員が担当するように切り替えました。

    さらに、各部に配置したアシスタントによる動画撮影・編集のバックアップなど、コンテンツ作成サポートの強化を行いました。


取り組み後の成果

  • 若手社員の知識習得レベルの底上げ
    若手社員が中心となり、自身が新入社員だった頃の目線を思い出しながらコンテンツ作成を行い、2年間で600個が完成しました。これにより、初めて業務を覚える新入社員にとっても分かりやすく、必要な情報が十分にそろった学習環境を提供することができました。
    また、マイクロラーニングの考え方に基づき、全ての動画コンテンツの長さを5分以内に収めました。その結果、隙間時間に効果的な学習をすることが可能になり、新入社員の知識習得レベルの底上げにつながりました。
  • OJT格差の是正とコミュニケーションの活性化
    コンテンツを活用した教育によって社員の学習の機会が標準化されたことで、OJT格差が縮小しました。
    また、業務内容については新入社員と若手社員がベテラン社員に習い、現場で活用するスマートフォンやタブレットなどについてはベテラン社員が新入社員と若手社員から学ぶという動きも出てくるようになりました。
    この動きは、ベテラン社員と新入社員、若手社員のコミュニケーションの活性化にもつながっています。
  • 入社希望者の増加
    OJTのデジタル化を導入したことが、県内の入社希望者数の増加につながりました。新卒の採用説明会やメディアの取材において、OJTのデジタル化を図った取り組みを紹介し、企業の教育体制の優位性をアピールしました。
    その結果、県内の学生が選ぶ建設業知名度ランキングで1位を獲得し、多くの学生から選ばれる企業となりました。

まとめ

本記事では「OJT計画」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

OJT計画の効果的な作り方を6つのステップに分けて解説しました。

  • ステップ1:中長期の成長目標を明確にする
  • ステップ2:短期の成長目標に落とし込む
  • ステップ3:教育内容と期間を具体的に設定する
  • ステップ4:指導方法とフィードバック方法を決める
  • ステップ5:評価基準と評価方法を明確にする
  • ステップ6:計画の見直しと修正を継続的に行う

OJT計画を作成する際に注意すべき3つのポイントは以下のとおりです。

  1. 所持スキルからストレス耐性まで対象者の特性に合わせる
  2. 対象者が混乱しないようにチームの連携を密にする
  3. 計画と照らし合わせて効果を検証する

OJT計画は社員育成に欠かせない、重要なツールです。本記事でご紹介した知見を実践の場で活用し、教育のブラッシュアップを図っていただければ幸いです。

株式会社LDcubeはこれまでの組織活性化や人材育成で培ったノウハウを生かしながら、新たな時代の人材育成方法の模索を支援しています。

また、OJTのデジタル化など課題解決に向けたプラットフォームの提供やコンテンツ作り、運用のサポートなど、OJTトレーナー研修の実施など、さまざまなサービスを展開しています。

無料のデモ体験会や具体的な使い方のご案内、導入事例の紹介なども行っています。お気軽にご相談ください。

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LDcube編集部
LDcube編集部
株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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