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「OJTのばらつき課題」とは?真因と改善する具体策を解説!

「社員教育にOJTを取り入れているが、育成状況にばらつきがある」
「拠点やトレーナーによって、教育の質に差が出てしまう」

このような課題感を抱える方は、多いのではないでしょうか。

実際、弊社が実施したアンケート調査でも、8割近くの企業担当者の方が、「育成状況のばらつき」を課題として挙げています。

OJT課題②

ここで重要なのは、「課題=ばらつきがあること」で思考を止めるのではなく、ばらつきを生んでいる真因を探求することです。

この記事では、なぜOJTに“ばらつき”が生じるのか、どうすれば改善できるのか、掘り下げて解説します。

OJTの課題の本質を見極め、実効性のある改善アクションにつなげて、社員の育成を加速させていきましょう。

▼OJTの全体像や詳細のテーマについては以下にまとめています。併せてご覧ください。(関連記事)

▼OJTについてのお役立ち資料は下記よりダウンロードできます。

OJTまるごと理解3点セット

この記事の監修者  株式会社LDcube 代表取締役 新井澄人  株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。

目次[非表示]

  1. 1.「OJTのばらつき課題」の真因  
    1. 1.1.時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差がある
    2. 1.2.トレーナーの指導スキルが平準化されていない
    3. 1.3.OJTの目的や進め方が標準化されていない
    4. 1.4.対象者の成長度合いを適切に把握できていない
    5. 1.5.組織的なOJTマネジメント体制がない
  2. 2.OJTの課題を可視化するステップ  
    1. 2.1.OJTの基本方針と現状のギャップを把握する
    2. 2.2.トレーナーと対象者双方の声を集める
    3. 2.3.OJTの進捗管理の実態を可視化する
    4. 2.4.トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を分析する
    5. 2.5.組織のOJTマネジメントの成熟度を客観的に評価する
  3. 3.OJTの課題別の改善策とは
    1. 3.1.組織的なOJTマネジメント体制の再構築
    2. 3.2.トレーナーのリソース不足への対応
    3. 3.3.トレーナーの指導スキル向上
    4. 3.4.OJTのプロセス標準化とツール整備
    5. 3.5.OJT対象者の成長度合いの可視化
  4. 4.まとめ

「OJTのばらつき課題」の真因  

OJT課題③

冒頭でも触れたとおり、OJTによる社員育成を進めるにあたり、多くの企業が「育成状況のばらつき」に頭を悩ませています。OJT担当者(トレーナー)や部署によって指導内容や質にばらつきが生じ、育成対象者の成長度合いや習熟スピードに差が出てしまう状況です。

こうしたOJTの「ばらつき課題」は、一見するとトレーナーの力量不足が原因のように思えます。しかし、OJTのばらつきが生じる背景には、もっと構造的な問題が潜んでいるのです。ここでは5つのポイントを見ていきましょう。

  1. 時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差がある
  2. トレーナーの指導スキルが平準化されていない
  3. OJTの目的や進め方が標準化されていない
  4. 対象者の成長度合いを適切に把握できていない
  5. 組織的なOJTマネジメント体制がない

時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差がある

1つ目は「時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差がある」です。

OJT課題④

繁忙期や業務のピーク時は、トレーナーがOJT対象者の指導に十分な時間を割けないため、OJTが形骸化しがちです。一方、閑散期や業務負荷の少ない時期は、OJTに注力できる環境が整っているため、手厚い指導が可能になります。

また、人員に余裕のある部署とそうでない部署でも、OJTの密度に差が出てしまうのが現状です。

【OJTに割ける時間や労力に差が生じる原因】

  • 業務の繁閑に応じてOJTの優先順位が変動す
  • 部署によって業務負荷や人的リソースにばらつきがある。
  • トレーナーの本来の業務とOJTの両立が難しい
  • OJTのための時間を組織として確保できていない
  • OJTに対する組織としてのコミットメントが一定しない

時期や部署によるリソースの差を解消するには、計画的にOJTの時間を確保する工夫が欠かせません。トレーナーの業務負荷を調整したり、OJT期間中は専念できる環境を整えたりすることが求められます。

加えて、OJTをトレーナー個人の善意に頼るのではなく、組織を挙げて取り組む姿勢を明確にすることも重要です。

トレーナーの指導スキルが平準化されていない

2つ目は「トレーナーの指導スキルが平準化されていない」です。

OJT課題⑤

優秀なトレーナーもいれば、指導力不足のトレーナーもおり、育成の質を一定に保てていないという企業は多いでしょう。トレーナーによって知識やノウハウ、コミュニケーション力などの指導スキルに差があれば、対象者の習熟度に大きな開きが出てしまいます。

トレーナーのスキルを均一化する取り組みが不十分なままでは、OJTのばらつきは解消されません。

【トレーナーの指導スキルが標準化されない原因】

  • トレーナーに求められる指導スキルが明確でない
  • トレーナー向けのスキル研修が不足している
  • 優秀なトレーナーの指導ノウハウが共有されていない
  • トレーナー同士の情報交換の機会が乏しい
  • 指導スキルの向上を促す仕組みがない

トレーナーの指導スキルを平準化するには、求められるスキル要件を明確にするところが、スタートラインです。

さらに、それらを体系立てて習得する研修プログラムを整備し、全トレーナーに受講を義務付けるといった対応が必要です。

▼OJTトレーナーについては下記でも解説しています。合わせてご覧ください。

▼OJTトレーナー育成も含めOJTに関する資料をセットにしました。  

OJTまるごと理解3点セット

OJTの目的や進め方が標準化されていない

3つ目は「OJTの目的や進め方が標準化されていない」です。

OJT課題⑥

OJT対象者に身に付けさせるべきスキルや到達レベルが曖昧なままでは、体系的な育成は難しいといえるでしょう。目指すべきゴールや指導プロセスが明確でないと、トレーナーの裁量に委ねられ、育成内容が属人化してしまうからです。

トレーナーによって指導方針がバラバラでは、OJTの効果を一定に保てません。

【OJTの目的や進め方が標準化されない原因】

  • OJTの目的や期待成果が共有されていない
  • 新入社員の成長のロードマップが描けていない
  • 職種や部署ごとのOJT指針がない
  • OJTマニュアルやテキストが整備されていない
  • OJTの進捗管理の方法が確立していない

まずはOJTの目的と到達目標を明確にし、育成の進め方を標準化しなければなりません。

職種や部署の特性に応じたOJT指針を策定し、指導内容やステップを可視化することが重要です。

対象者の成長度合いを適切に把握できていない

4つ目は「対象者の成長度合いを適切に把握できていない」です。

OJT課題⑦

OJT対象者の習熟状況を客観的に測定する仕組みがなければ、トレーナーの主観的な判断に委ねざるを得ないのが実情でしょう。本来、OJTは個々人の習熟度に合わせて最適な指導を行うべきです。しかし、進捗の可視化が不十分な状況では、画一的なOJTに陥りがちです。

その結果、成長の早い社員の能力を十分に伸ばせなかったり、つまずきを見逃してフォローが後手に回ったりしてしまうのです。

【成長度合いを把握できない原因】

  • 成長度合いを測る指標がない
  • 定期的な習熟度チェックの機会を設けていない
  • トレーナーによる評価基準がバラバラである
  • 成長を客観的に可視化する仕掛けがない

成長度合いを適切に把握するには、習熟度の評価基準を明確化することが大切です。

加えて、スキルチェックリストを整備し、定期的にレビューする機会を設けるなど、OJTの進捗状況を見える化する仕掛けが欠かせません。

組織的なOJTマネジメント体制がない

5つ目は「組織的なOJTマネジメント体制がない」です。

OJT課題⑧組織として一貫したOJTマネジメントができていなければ、さまざまな問題が生じます。

人事が主導すべき局面が現場任せになっていたり、現場の実態を踏まえないカリキュラムが強要されたりしていては、組織力強化に資するOJTは実現できません。

【組織的なOJTマネジメントが機能しない原因】

  • OJTに関する基本方針が明文化されていない
  • OJTを推進する専任の体制が敷かれていない
  • OJT計画の策定から評価までのプロセスが確立していない
  • 現場を支援するための人事部門の関与が弱い
  • OJTのPDCAサイクルが回っていない

組織的なOJTマネジメントを実現するには、まずはOJT推進の基本方針を確立することが第一です。そのうえで、方針を実行に移すための専任体制を整備し、人事部門(またはそれに準ずる部門)が推進役を担わなければなりません。

現場を支援するためのノウハウを蓄積し、OJTの企画から運営、振り返りまでを一気通貫でマネジメントする仕組みの構築が求められます。

OJTの課題を可視化するステップ  

OJT課題⑨

続いて、自社のOJTの課題を深掘りし、可視化するための5つのステップを解説します。自社のOJTの課題を解決するには、自社特有の課題の全容を可視化することが不可欠です。表面的な問題点だけでなく、深層にある真の課題を見極め、構造的な改善策を講じる必要があります。

以下で詳しく見ていきましょう。

  1. OJTの基本方針と現状のギャップを把握する
  2. トレーナーと対象者双方の声を集める
  3. OJTの進捗管理の実態を可視化する
  4. トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を分析する
  5. 組織のOJTマネジメントの成熟度を客観的に評価する

OJTの基本方針と現状のギャップを把握する

1つ目のステップは「OJTの基本方針と現状のギャップを把握する」です。OJTの課題を探るには、まず組織としてのOJTの基本方針を再確認することから始めましょう。

人材育成の理念や目的、期待する成果を明らかにしたうえで、現状のOJT運用とのギャップを分析します。

【基本方針と現状のギャップ把握の着眼点】

  • OJTの目的や期待成果は明確に定義されているか
  • OJTの基本方針は現場に浸透しているか
  • 方針と実態のギャップはどこにあるか
  • あるべき姿と現状のギャップを構造的に捉えると、どうか

OJTの基本方針と現状のギャップを概観できたら、次はより具体的な課題の洗い出しに入ります。

「そもそも方針が存在しない」という場合は、ここに大きな問題の根源があるといえるでしょう。OJTの方針策定から着手する必要があります(これについては次の章で取り上げますので、続けてご覧ください)。

トレーナーと対象者双方の声を集める

2つ目のステップは「トレーナーと対象者双方の声を集める」です。OJTの生の実態を知るには、トレーナーおよびOJT対象者の本音を聞くことが欠かせません。

アンケートやインタビューを通して、OJTの当事者が抱える悩みや課題感を引き出していきましょう。

【トレーナーへのヒアリング項目例】

  • OJTを進めるうえで工夫している点や課題に感じている点は何か
  • OJT対象者の指導で最も難しいと感じるのはどのような点か
  • 現在のOJTの教育内容と期間は適切だと思うか
  • OJT対象者の習熟度合いを測る際の基準や方法は何か
  • OJT対象者の強みと弱み、今後の育成方針をどのように捉えているか

【対象者へのヒアリング項目例】

  • OJTで満足している点と不満に感じる点は何か
  • 上司や先輩に対して感じる良い点と改善してほしい点は何か
  • OJTで受けている教育内容と期間は適切だと感じるか
  • 自身の習熟度合いをどのように評価しているか。その理由は何か
  • トレーナーの指導方法や姿勢で良い点と改善を望む点は何か

このように、当事者の声を丹念に集めれば、OJTの課題をリアルに把握できます。これが、実効性の高い施策につながります。

OJTの進捗管理の実態を可視化する

3つ目のステップは「OJTの進捗管理の実態を可視化する」です。OJTのばらつきを生んでいる一因として、進捗管理の不十分さが挙げられます。「だれが」「いつ」「どのように」OJTの進捗を把握し、フォローしているのかを可視化することが重要です。

OJTの進捗管理の仕組みや運用実態を、総合的に点検します。OJT期間中のコミュニケーションの頻度や質、振り返りの有無なども確認が必要です。

【OJTの進捗管理の可視化ポイント】

  • OJT対象者の成長度合いの測定・評価の仕組みがあるか
  • トレーナーとOJT対象者の面談はどの程度の頻度で実施されているか
  • 日常的な進捗管理とフィードバックが行われているか
  • 定期的な振り返りの場が設けられているか
  • 進捗状況を組織として把握・共有する仕掛けがあるか

マネジメントの目が行き届いていない部分、属人化している部分などを洗い出し、改善の糸口をつかんでいきましょう。

トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を分析する

4つ目のステップは「トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を分析する」です。トレーナーの属性(年齢・社歴・役職・専門性など)と成果の相関には、重要な改善のヒントが隠れています。

優秀な成果を上げているトレーナーの特徴を紐解けば、理想的なトレーナー像を描けます。反対に、低パフォーマーの傾向を把握することは、トレーナーの選定や教育の改善に役立ちます。

【トレーナーの属性とOJT効果の相関分析の観点】

  • 年齢や社歴とOJTの効果の相関関係
    トレーナーの年齢や社歴によって、OJTの効果に差が見られるか検証します。関連性が見いだせれば、トレーナーの選定基準の最適化につながります。
  • 役職や職種による指導力の違い
    トレーナーの役職や職種によって、指導力に差異が生じているか確認します。マネジメント経験の豊富な管理職と、実務に長けた専門職では、指導のアプローチが異なる可能性があります。このような特性の把握は、トレーナーの配置や育成方針の検討に役立ちます。
  • 専門性の高さとOJT対象者の習熟度の因果関係
    トレーナーの専門性のレベルと、OJT対象者の習熟度の関係性を探ります。専門性の高さがOJT対象者の習熟度に与える影響を捉え、トレーナーの要件定義に反映します。
  • トレーナー経験の多さとの関連性
    トレーナーとしての経験の積み重ねが、OJTの成果にどう影響しているか分析します。トレーナー経験と成果の相関関係を紐解き、経験の浅いトレーナーへの支援策の検討につなげます。
  • 高評価のトレーナーに共通する特質
    高い評価を得ているトレーナーに共通する資質や行動特性を抽出します。優れたトレーナーのスキルセットやマインドセットを言語化し、ロールモデル(ほかのトレーナーの手本)とします。

以上のような観点から、トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を多角的に分析していきます。

データに基づいてトレーナー要件の適正化やスキル習得計画を推進すれば、理想的なトレーナー像の実現と効果的なOJTの運用が可能です。

組織のOJTマネジメントの成熟度を客観的に評価する

5つ目のステップは「組織のOJTマネジメントの成熟度を客観的に評価する」です。ここまでに収集した情報や分析結果をもとに、評価をまとめていくプロセスです。

OJTを支える組織的な仕組みが、どの程度整っているのか、自社のOJTマネジメントのレベルを診断しましょう。

具体的には、「戦略」「体制」「プロセス」「ツール」「トレーナー育成」の5つの観点から点検するのがおすすめです。

評価項目

チェックポイント

OJT戦略の明確化と浸透

・人材育成の方針や目指す人材像が明文化されているか
・経営戦略とOJT戦略の整合性は取れているか
・OJT戦略は現場の隅々まで浸透しているか
・目標達成に向けた実行計画が立案されているか

OJT推進体制の確立

・OJT推進の責任部署や専任担当者が明確に定められているか
・経営層のコミットメントが得られているか
・人事部門の関与は適切か
・現場の主体性を引き出す仕掛けがあるか

OJT運用プロセスの標準

・OJT計画の策定から実施、評価、改善までのPDCAサイクルが回る仕組みになっているか
・運用ルールやフォーマットは標準化されているか
・進捗管理の方法は確立しているか
・PDCAサイクルを回すうえでの課題が検証され、対策されているか

OJT支援ツールの充実

・トレーナー向けのマニュアルや手引書は用意されているか
・OJT対象者向けのテキストや教材は十分か
・ITツールは十分に活用されているか
・ツールの使いやすさや有用性は高いか

トレーナー育成の体系化

・トレーナーの選抜基準は明確か
・スキル向上のための研修機会が設けられているか
・実践的な学びの場は用意されているか
・トレーナーのスキル認定の仕組みはあるか

評価結果を踏まえて、OJTマネジメントの成熟度を高めるための行動計画を策定しましょう。優先順位をつけながら改善を重ねていくことが、成功の鍵を握ります。

OJTまるごと理解3点セット

OJTの課題別の改善策とは

OJT課題⑩

OJTの課題が明らかになったら、課題の特性に応じた具体的な改善策を立案し、実行に移します。ここでは、以下の5つの課題領域ごとに、改善のためのポイントをご紹介します。

  1. 組織的なOJTマネジメント体制の再構築
  2. トレーナーのリソース不足への対応
  3. トレーナーの指導スキル向上
  4. OJTのプロセス標準化とツール整備
  5. OJT対象者の成長度合いの可視化

組織的なOJTマネジメント体制の再構築

1つ目の改善ポイントは「組織的なOJTマネジメント体制の再構築」です。属人的なOJTを脱し、より高度な育成を実現するには、組織的なOJTマネジメント体制の再構築が不可欠です。

まずは人材育成の理念や方針を体系化し、OJTの位置付けを明確にするところが出発点となります。その方針を実行に移すための主管チーム(人事部門などを中心とした推進組織)を立ち上げ、施策を展開していきましょう。

【OJTマネジメント体制再構築に向けた取り組み例】

  • 人材育成の基本方針を経営理念に紐付けて再定義する
    組織の目指す姿と人材要件(必要とされる人材の条件)を明らかにし、OJTで実現すべき成果を明示します。経営戦略を実現するうえでの人材育成の意義を全社で共有します。
  • OJT推進プロジェクトを発足し専任メンバーをアサインする
    人事部門(またはそれに準じる部門)を中心に、OJT推進の専任チームを立ち上げます。各部門の代表者を集め、全社横断でOJT施策を展開します。
  • OJT計画の策定から評価までのプロセスを標準化する
    OJT対象者の成長度合いに応じて、習得すべきスキルを明確化します。一人一人の能力開発計画を策定し、評価基準を設けて、客観的な達成度評価を行う仕組みも整備します。
  • トレーナーの選定・教育・評価の仕組みを整備する
    トレーナー候補の選定基準を明確にし、計画的に育成します。指導スキルの評価指標を設計し、適切に評価・処遇する仕組みを構築します。
  • OJTの費用対効果を定期的に検証する
    OJTにかけたコストと、得られた成果を定量的に把握します。投資効果を可視化し、改善すべき点を洗い出します。PDCAサイクルを回しながら、OJTの質の向上を図ります。

トレーナーのリソース不足への対応

2つ目の改善ポイントは「トレーナーのリソース不足への対応」です。時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差が生じる問題には、組織的なリソース配分(人材や予算などの経営資源の割り当て)の最適化が求められます。

業務とOJTのバランスを取るためのルール作りや、繁閑に応じた柔軟な人員シフトなどの工夫が必要不可欠です。

加えて、OJTに専念できる環境を整備するとともに、トレーナーの負荷を軽減するためのサポート体制の強化も検討していきましょう。

【リソース不足への具体的な対応策】

  • 業務とOJTの優先順位付けのガイドラインを策定する
    業務とOJTのバランスを取るための明確な基準を設け、トレーナーの判断に委ねるのではなく、組織としてのルールを定めます。優先度の高い業務や繁忙期の対応方針などを盛り込み、運用の指針とします。
  • OJT期間中はトレーナーの業務を軽減する
    OJT期間中は通常業務の割り振りを減らすなど、トレーナーが指導に集中できる環境を整えます。業務のサポート要員を確保したり、タスクのシェアを進めたりするなどの工夫をしましょう。
  • 繁忙期にはトレーナーのアサイン調整を柔軟に行う
    業務のピーク時にはトレーナーの担当を一時的に外したり、ローテーション(交代制)を組んだりするなど、臨機応変なアサイン調整を行います。その際、トレーナー間の引き継ぎを円滑に行うための情報共有の仕組みも整備します。
  • トレーナーのタイムマネジメントスキル(時間管理能力)を高める
    限られた時間の中でOJTを効果的に進めるには、トレーナー自身のタイムマネジメント能力が問われます。スケジューリングの方法やタスクの優先順位付けなど、実践的なスキルを習得させる研修を実施します。

トレーナーの指導スキル向上

3つ目の改善ポイントは「トレーナーの指導スキル向上」です。トレーナーのスキルのばらつきは、トレーナー教育の強化によって確実に改善可能な領域です。

座学だけでなく、ロールプレイング(役割演技)など、実践的な学びの機会を用意すると、高い教育効果が期待できます。

【トレーナーのスキル向上のための具体策】

  • 指導スキルを体系的に学ぶ研修プログラムを整備する
    OJTの基本的な進め方からコーチング、ティーチングの技法まで、指導スキルを体系立てて習得できるカリキュラムを用意します。
  • トレーナー同士のロールプレイングで指導スキルを磨く
    トレーナー同士が、OJT対象者役とトレーナー役を演じ、指導場面を疑似体験するロールプレイングを実施します。相互にフィードバックし合い、改善点を明確化しましょう。
  • 優秀なトレーナーのノウハウを共有する勉強会を開催する
    高い評価を得ているトレーナーの指導事例を題材に、ノウハウを学ぶ勉強会を定期的に開催します。実践的なテクニックを身に付けるために有効です。
  • 指導スキルの向上度合いを適切に評価し処遇に反映する
    トレーナーの指導スキルの成長度を定期的に評価する仕組みを設けます。高評価のトレーナーには、キャリアアップの機会を提供したり、インセンティブ(報奨)を付与したりするなどのモチベーション施策も効果的です。

▼OJTトレーナーの育成に関する詳しい情報は、以下の資料もご一読ください。  

OJTまるごと理解3点セット

OJTのプロセス標準化とツール整備

4つ目の改善ポイントは「OJTのプロセス標準化とツール整備」です。OJTの目的や進め方が属人的になっている状況を改善するには、プロセスの標準化とツールの整備が有効な解決策となります。

必要に応じて、eラーニングプラットフォームを活用したオンライン学習など、OJTを補完するツールの導入も検討しましょう。

【OJTのプロセス標準化とツール整備の具体例】

  • 目的や期待成果を明文化し共有する
    OJTの育成方針を明確にし、関係者間で共有します。OJT対象者に求める成果や習得すべきスキルを、具体的に定義しましょう。
  • OJT対象者の成長ロードマップを職種別に策定する
    職種ごとに習得すべきスキルや到達目標を可視化し、段階的な育成計画を立案します。計画はOJT対象者本人にも共有し、自身の成長の道筋を意識させるとよいでしょう。
  • OJTの標準的な進め方をマニュアル化する
    指導項目や手順を段階ごとに標準化し、マニュアルやガイドラインにまとめます。指導ツールやテンプレートも整備し、トレーナー間のばらつきを抑えます。
  • eラーニング・動画を導入する
    オンライン学習を通じて自己学習を促進し、OJTを補完します。入社時期や配属部署に左右されない、一定レベルの学習機会を全社的に提供します。

▼OJTの進め方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
⇒OJT効果を最大化する進め方とは? 後輩育成のポイントを紹介

▼また、eラーニング・動画を活用したOJTについては、以下の記事にて詳説しています。
⇒若手のOJTには動画教材の活用が効果あり!事例も含めて理由を解説!

OJT対象者の成長度合いの可視化

5つ目の改善ポイントは「OJT対象者の成長度合いの可視化」です。OJT対象者の習熟度を適切に把握し、個別に最適な指導を行うには、成長度合いの可視化が鍵を握ります。

スキルチェックリストなどの評価ツールを活用し、定量的に進捗を測定する仕組みを整備するのは必須の取り組みです。加えて、学習のためのプラットフォームを導入し、OJT対象者の学習履歴や習熟度をデータとして蓄積・分析することも非常に有効です。

【成長度合いの可視化に向けた具体的施策】

  • スキル習熟度のレベル定義を明確化する
    OJT対象者が習得すべきスキルを洗い出し、到達レベルを段階的に定義します。各レベルの評価基準を明文化し、評価者による判断のブレを防ぎます。
  • 評価指標に基づいた定期的なスキルチェックを実施する
    設計した評価指標をもとに、月次や四半期ごとに定期的な確認テストを行います。机上のテストだけでなく、実務課題やロールプレイングを通じて実践的なスキルを評価します。
  • プラットフォームを活用し学習状況を可視化する
    対象者の学習の進捗状況や習熟度をLMS上で管理します。学習データの分析を通じて、個々人の強みと弱みを把握し、適切な指導につなげます。
  • トレーナーと対象者の定期面談を義務化する
    週1回など、一定の頻度でトレーナーと対象者が面談する機会を設けます。日常の指導では拾いきれない悩みや課題を引き出し、早期の解決を図ります。
  • OJT対象者の成長度合いを経営会議で報告する
    OJT対象者の成長状況を経営会議の場で定期的に報告する仕組みを設けます。トップのコミットメントを引き出すとともに、育成の進捗を組織全体で把握する機会とします。

▼OJTへのプラットフォームの活用については、以下の記事にまとめていますのでご一読ください。⇒OJTとは?意味や目的、メリット、Z世代への適応まで全解説!

▼具体的なプラットフォームの資料をいくつか取り寄せて比較検討を進めたい方は、以下より資料をダウンロードできます。

UMU資料

まとめ

本記事では「OJTの課題」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。OJTで多くの企業が抱える「ばらつき課題」の真因として、以下を解説しました。

  1. 時期や部署によってOJTに割ける時間や労力に差がある
  2. トレーナーの指導スキルが平準化されていない
  3. OJTの目的や進め方が標準化されていない
  4. OJT対象者の成長度合いを適切に把握できていない
  5. 組織的なOJTマネジメント体制がない

自社のOJTの課題を深掘りして可視化する流れを5つのステップで解説しました。

  1. OJTの基本方針と現状のギャップを把握する
  2. トレーナーとOJT対象者双方の声を集める
  3. OJTの進捗管理の実態を可視化する
  4. トレーナーの属性とOJT効果の相関関係を分析する
  5. 組織のOJTマネジメントの成熟度を客観的に評価する

以下のOJT課題別の改善策をご紹介しました。

  1. 組織的なOJTマネジメント体制の再構築
  2. トレーナーのリソース不足への対応
  3. トレーナーの指導スキル向上
  4. OJTのプロセス標準化とツール整備
  5. OJT対象者の成長度合いの可視化

課題解決には一定の時間を要しますが、長期的な視点を持ちながら、地道に改善を積み重ねていくことが重要です。

OJTの改革を通じて、組織の人材力を高め、ビジネスの成長につなげていきましょう。

株式会社LDcubeはこれまでの組織活性化や人材育成で培ったノウハウを生かしながら、新たな時代の人材育成方法の模索を支援しています。

また、OJTのデジタル化など課題解決に向けたプラットフォームの提供やコンテンツ作り、運用のサポートなど、OJTトレーナー研修の実施など、さまざまなサービスを展開しています。

無料のデモ体験会や具体的な使い方のご案内、導入事例の紹介なども行っています。お気軽にご相談ください。

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▼関連記事はこちらから。

LDcube編集部
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