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ハラスメントとコンプライアンスの違いとは?両方を防ぐ対策も解説

「ハラスメントの相談が寄せられたが、コンプライアンス違反に該当しないのか?」
「そもそもハラスメントはコンプライアンス違反に含まれるのでは?」

そのように、ハラスメントとコンプライアンスの違いがはっきりとは分からず、お悩みではありませんか?

たしかに、ハラスメントはコンプライアンス違反の一部ではあります。
しかし、両者には定義をはじめとし、以下のような違いもあるのです。


ハラスメント

コンプライアンス違反

定義

他人に不快感・苦痛を与える迷惑行為や嫌がらせ

法令や企業倫理、社会規範を破ること

対象となる行為

人間関係(個人同士)の中で発生する行為

企業活動全般における、法令・企業倫理・社会規範・社内規則に違反する行為

リスク・影響

・被害者の心理的・身体的な苦痛が大きい
・被害者との訴訟に発展する可能性がある

・取引先や社会全体への信頼損失につながる
・企業として法に抵触する可能性がある

法的範囲

主に労働環境を取り巻く法律

刑事・民事も含めた社会秩序を守る法律全般

そもそもの定義や加害者と被害者の関係性なども違うため、正しい知識を持ってなければ、適切な対応を見誤る恐れがあります。

そのような事態を避けるため、本記事では、ハラスメントとコンプライアンス違反の違いについて以下の通り解説します。

  • ハラスメントとコンプライアンスの違い
  • ハラスメントとコンプライアンスの共通点
  • ハラスメントがコンプライアンス違反に発展した事例
  • 違いや共通点を踏まえた上で両者を防ぐために必要なこと

適切な対処を取るうえで知っておくべき共通点や事例についても紹介しているので、ハラスメントとコンプライアンス違反の具体的なイメージを持って、判断・対処できるようになるはずです。

ぜひ最後まで目を通してみてください。

▼コンプライアンスやハラスメント防止についてはテーマに合わせて下記で解説しています。

▼コンプライアンス教育については下記にまとめています。

コンプライアンス教育 資料ダウンロード

目次[非表示]

  1. 1.ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(1)定義
    1. 1.1.ハラスメントは被害者が不快感・苦痛を感じる迷惑行為や嫌がらせ
    2. 1.2.コンプライアンス違反は法令や企業倫理、社会規範などを破ること
  2. 2.ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(2)対象となる行為
    1. 2.1.ハラスメントは個人間で発生する行為が対象
    2. 2.2.コンプライアンス違反は企業の中の業務や事業・活動全般が対象
  3. 3.ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(3)リスク・影響
  4. 4.ハラスメントとコンプライアンス違反の違い (4)法的範囲
    1. 4.1.ハラスメントは働く環境にまつわる法律が対象
    2. 4.2.コンプライアンス違反は社会や企業全体に関わる法律が対象
  5. 5.ハラスメントとコンプライアンスの共通点
    1. 5.1.企業・組織の責任問題になる
    2. 5.2.初期の対応が重要になる
    3. 5.3.組織的な対策が必要
  6. 6.ハラスメントがコンプライアンス違反に発展したケース
    1. 6.1.マスコミで大きく報道されてコンプライアンス違反として社会問題化したケース
    2. 6.2.企業が職場環境を適正に維持する責任を果たさなかったことでコンプライアンス違反になったケース
    3. 6.3.組織内のコンプライアンス違反として認められたケース
  7. 7.コンプライアンス違反の防止策を徹底することがハラスメント防止にもなる
  8. 8.コンプライアンス違反を防ぐ対策
    1. 8.1.コンプライアンス違反の明確なルールを設ける
    2. 8.2.客観的な視点を取り入れて課題を明確化する
    3. 8.3.コンプライアンス違反を許さない社内風土を築く
    4. 8.4.全社員がコンプライアンスに関する知識を習得する
  9. 9.まとめ

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(1)定義

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(1)定義

ハラスメントとコンプライアンス違反は、そもそも定義が異なります。

定義を理解していなければ、「許される行為/許されない行為」の線引きや明確な判断基準がわからないままです。

両者を混同して対応を誤ったり、トラブルを見過ごしたりする可能性があるため、定義については正しく理解しておくことが大切です。

ハラスメントとコンプライアンス違反は、それぞれ以下のように定義できます。

ハラスメント

被害者が不快感・苦痛を感じる迷惑行為や嫌がらせ

コンプライアンス違反

法令や企業倫理、社会規範を破ること

次項以降で詳細を確認し、ハラスメントとコンプライアンス違反の定義の違いを明確化しましょう。

ハラスメントは被害者が不快感・苦痛を感じる迷惑行為や嫌がらせ

ハラスメントは、端的に言うと「嫌がらせ」や「いじめ」のことです。

例えば、以下のような行為です。

  • セクシャルハラスメント:
    上司が不必要に肩や腰に触れる

  • パワーハラスメント:
    上司が業務の範囲を超えた、人格を否定するような暴言を繰り返す

  • パタニティハラスメント:
    育児休暇を申請した男性従業員に対して、暴言や育児休暇を認めないなどの嫌がらせをする

  • ジェンダーハラスメント:
    「女だから」「男だから」という理由で、仕事内容が制限される

被害者が不快感や苦痛、恐怖や脅威を感じる迷惑行為や不利益を受けた場合は、すべてハラスメントに該当します。

ハラスメントは、加害者の悪意や意図の有無は関係ありません。軽い気持ちで行った行動や発言でも、相手が不快に思うと、ハラスメントに該当します。

なお、さまざまあるハラスメントの種類や詳細については「【ハラスメントの種類一覧表】40のハラスメント詳細とリスクを解説」で紹介していますので、併せてご参考ください。

コンプライアンス違反は法令や企業倫理、社会規範などを破ること

コンプライアンス違反は、企業や従業員が定められた法令や社会的なルール、モラルを破ることです。

国の「法律」「政省令」、行政機関が定める「条例」「規則」などが法令の代表例です。具体的には、以下のような行為がコンプライアンス違反に該当します。

【従業員によるコンプライアンス違反の例】

  • 経費と偽り、資金を横領する
  • 顧客情報をUSBに入れ、外部に持ち出す
  • 内部情報をライバル企業へ流す
  • ハラスメント行為を働く

【企業としてのコンプライアンス違反の例】

  • 食品の産地を偽る
  • 助成金を不正に受給する
  • ハラスメント発生後に企業として適切な対応を行わない

法令遵守にとどまらず、企業自らが定めた企業倫理や就業規則、企業や個人が守るべき社会通念上のルールもコンプライアンスの範囲に含まれます。

近年では、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標目標)などの社会貢献に関連したルールやマナーも広域のコンプライアンスとされる場合があります。

つまり、仮に法律には触れない法の隙間をついた行為や対応であったとしても、倫理的ではない場合は、コンプライアンス違反に該当するのです。

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(2)対象となる行為

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(2)対象となる行為 イメージ

ハラスメントとコンプライアンス違反は、対象となる行為が異なります。

対象となる行為が異なる理由は、加害者と被害者の関係性が違うからです。

以下は、ハラスメントとコンプライアンス違反の加害者と被害者の関係性をまとめた表です。


ハラスメント

コンプライアンス違反

対象となる行為

人間関係(個人同士)の中で発生する行為

企業活動全般における、法令・企業倫理・社会規範・社内規則に違反する行為

具体的に見ていきましょう。

ハラスメントは個人間で発生する行為が対象

ハラスメントは、一般的に上司と部下や、同僚などの「個人と個人の間」で発生する行為が対象です。

例えば、以下のような個人と個人の間で発生します。

上司と部下|先輩と後輩

上司や先輩という優位な立場を利用したパワハラやセクハラなど
・毎日暴言や威圧的な態度をとる
・「こんなこともできないのか?」と人前で侮辱する

同僚同士

同僚の評価を落とすような発言や批判といったモラハラやマタハラなど
・陰で同僚の悪口を言う
・育休申請をした人に嫌味を言う

取引先と担当者

取引先という立場を利用したパワハラやセクハラなど
・取引や契約を人質に、交際を迫る
・無理な納期変更を迫られる

このようにあらゆる人間関係の中で起こった行為がハラスメントです。

コンプライアンス違反は企業の中の業務や事業・活動全般が対象

コンプライアンス違反は、企業の中で行われるあらゆる事業・業務において、法令や社会規範などに違反する行為が対象です。

具体的なケースは次の通りです。

従業員の業務で起こり得る事案

・労働時間の改ざん
・USBメモリや私物PCの持ち出しによる情報流出
・社内の重要資料を間違ったアドレスに送信
・金銭目的で取引先のデータを外部に売却
・業務中に発生したハラスメント行為

企業の運営や事業で起こり得る事案

・架空の売上を計上し、利益を水増し
・食品の産地や消費期限の偽装
・無許可で医療や建設などの業務を行う
・工場排水を違法に河川へ放出

個人レベルでも企業・組織レベルでも、業務や事業に関連した活動の中で発生した違法行為は、すべてコンプライアンス違反になり、企業として責任を負うことになります。

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(3)リスク・影響

3.ハラスメントとコンプライアンス違反の違い(3)リスク・影響 イメージ

ハラスメントとコンプライアンス違反は、社会的な面でのリスクや影響が異なります。

ハラスメント

コンプライアンス違反

・被害者の心理的・身体的な苦痛が大きい
・被害者との訴訟に発展する可能性がある

・取引先や社会全体への信頼損失につながる
・企業として法に抵触する可能性がある

先述の通り、ハラスメントは「個人間で発生する行為」が対象ですが、コンプライアンス違反は「あらゆる企業活動全般」が対象となります。

このためコンプライアンス違反は、企業としての責任問題に発展し、社会的制裁を受けたり、法で裁かれたりと、影響範囲が拡大しやすいのです。
賠償金などの金銭的リスクだけでなく、違反行為が報道される可能性もあり、取引停止や行政指導による信用喪失など、そのダメージははかり知れません。

一方で、ハラスメントに関しては、ハラスメントの程度や種類によっては影響範囲が限定的になるケースもあります。(例:防止策や明確な対応が確立されていないスメルハラスメントなど)

ただ、その場合も被害者となった従業員の苦痛は看過できないものです。

また、発生したハラスメントに対して適切に対処しなかったり、ハラスメントの防止策が講じられなかったりした場合は、被害者に訴訟を起こされるリスクも孕んでいます。
さらに、こうしたケースはコンプライアンス違反にも該当するため、影響範囲が大きくなることもあるでしょう。

まとめると、

  • コンプライアンス違反のリスクや影響は、拡大しやすく、ダメージも大きい
  • ハラスメントのリスクや影響は限定的な範囲に留まるケースもあればコンプライアンス違反と同等に拡大するケースもある

ということが言えます。

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い (4)法的範囲

ハラスメントとコンプライアンス違反の違い (5)法的範囲 イメージ

ハラスメントとコンプライアンスは、法的範囲にも違いがあります。

一部共通する法律もありますが、明確に法令違反の行為として扱われ、厳しい制裁を受けるかどうかが大きく異なります。

以下は、ハラスメントとコンプライアンス違反で問われる法律の代表例です。

ハラスメント

コンプライアンス

男女雇用機会均等法
育児介護休業法
労働契約法

刑法、民法
会社法
労働基準法
個人情報保護法

法的範囲を把握し、加害者の処分や企業としての罰則内容などの理解を深めましょう。

ハラスメントは働く環境にまつわる法律が対象

ハラスメントは、働く環境に関連した法律が対象です。

ハラスメントにおいては、必ずしも法律違反になるわけではありませんが、発生したハラスメントや、企業としての対応状況によっては次のような法律に抵触する可能性があります。


ハラスメント例

違反する義務

男女雇用機会均等法

・セクシャルハラスメント
・マタニティハラスメント

・セクハラに関する相談窓口や適切な対応を行うハラスメント防止のための措置義務
・妊娠・出産等を理由とした不利益な取り扱いをしないようにする義務

育児介護休業法

・パタニティハラスメント
・ケアハラスメント

・育児や介護休業の申し出をしたことや取得したことを理由にした不利益な取り扱いをしないようにする義務

労働契約法

・パワーハラスメント

・企業が従業員の健康と安全を守る貯めに必要な配慮をする義務(安全配慮義務)
・相手の信頼を裏切らないよう誠実に行動する義務

企業がハラスメントの事実を知りながら対処しない場合や、防止策を講じていなかった場合、これらのハラスメントに関連する法律違反に該当しやすくなります。

コンプライアンス違反は社会や企業全体に関わる法律が対象

コンプライアンス違反によって抵触する可能性のある法律は、ハラスメントよりも幅広いです。

ハラスメントによってコンプライアンス違反が問われる場合は、前項で紹介した法律に抵触することになりますし、その他にも以下のような法律に抵触する可能性があります。

刑法

例:経理担当者が会社の口座から自分の口座にお金を着服する

民法

例:上司が部下に連日に暴言を浴びせ、被害者がうつ病を発症する

会社法

例:取締役が独断で契約を結び、会社に重大な損益を与える

労働基準法

例:上司が部下に対して月100時間を超える残業を命令した

個人情報保護法

例:従業員がUSBで顧客データを持ち出し、顧客情報を流出させた

このように、コンプライアンス違反の対象となる行為が「企業活動全般」と広いこともあり、自ずと関連する法律も幅広くなります。

ハラスメントとコンプライアンスの共通点

ハラスメントとコンプライアンスの共通点 イメージ

ハラスメントとコンプライアンス違反には、ご紹介したような違いはあるものの、コンプライアンス違反にハラスメントが含まれることもあり、組織・企業の責任や初期対応など切り口で見たときに共通する部分は多く見られます。

ハラスメントがコンプライアンス違反に発展するケースもあるため、共通点を認識し、包括的な対策をすることが重要です。

企業・組織の責任問題になる

1つ目の共通点は、企業・組織の責任を問われるということです。

例えば、上司が部下に対して日常的に暴言を浴びせ、部下がうつ状態になった場合、加害者も被害者も個人ですが、企業は職場環境の安全を守る義務があります。

そのため、個人間の問題でも、組織的な体制の不備が背景にあるケースが多く、安全への配慮義務を果たしていないという理由で社会的責任を問われる可能性があるのです。

このように、コンプライアンス違反だけでなくハラスメントも、企業・組織の責任問題として扱われることが多いのです。

初期の対応が重要になる

2つ目は、問題が発生したときの初期対応が非常に重要となる点です。

例えば、

  • 被害者からのハラスメントの訴えを「ただの人間関係のトラブル」として放置する
  • 情報漏えいを内部告発により把握していたのに組織的に隠す

このような誤った初期対応をすることで、事態は深刻化し、発覚したときには被害者の精神的負担が大きくなり、法的責任の増大にもつながります。

初期対応の良し悪しがその後の結果を大きく左右するため、問題を小さなうちに誠実に対処する姿勢が、企業の信頼と被害拡大を防ぐカギになります。

組織的な対策が必要

ハラスメントもコンプライアンス違反も、未然に防ぐためには、個人のモラルに頼るだけでなく、組織的な対策が不可欠です。

一部の人だけが理解して気をつけていても、正しい知識を持った人が少なく、曖昧なルール・対応の属人化などがあると、トラブルを根絶できず、繰り返されやすくなります。

また、制度だけを変えても「声を上げづらい雰囲気」や「見て見ぬふり」をする人ばかりでは、制度は機能しません。

組織の価値観づくりも重要な対策であるため、持続的に機能する仕組みを作り、組織的に取り組んで対策することが大切です。

ハラスメントがコンプライアンス違反に発展したケース

ハラスメントがコンプライアンス違反に発展したケース イメージ

先述の通り、ハラスメントを放置・悪化させると、被害が拡大して、コンプライアンス違反に発展するケースがあります。

どのようなシチュエーションにおいて、ハラスメントがコンプライアンス違反になるのかを把握することで、早期対応や適切に対処することの重要さについて理解が深まるはずです。

この章では、実際に発生した事例を取り上げ、ハラスメントがコンプライアンス違反に発展するケースについて紹介します。

マスコミで大きく報道されてコンプライアンス違反として社会問題化したケース

1つ目の事例は、長時間労働の強要を含むパワーハラスメントからコンプライアンス違反に発展したケースです。

対象者

加害者:上司、被害者:新入社員

概要

月100時間を超える違法残業を強いられ、うつ病を発症し、被害者が自殺した。労基署が過労死と認定した。

ポイント

・労働基準法違反(時間外労働)
・安全配慮義務違反(労働契約法5条)
・企業の管理責任(過労死認定)
・企業のコンプライアンス体制の不備

1か月で100時間を超えるほどの過重労働は、労働基準法に該当します。

今回の事例では、うつ病という健康被害に発展しており、マスコミでも大きく報道されたことで、コンプライアンス違反が問われました。

企業が職場環境を適正に維持する責任を果たさなかったことでコンプライアンス違反になったケース

2つ目の事例は、上司からの叱責や無視などで精神疾患を発症し、企業を相手に訴訟まで発展したケースです。

対象者

加害者:上司、被害者:部下

概要

上司からの継続的に叱責や無視などのパワーハラスメントを受けたことで、被害者がうつ病を発症し、休職した。裁判に発展し、最終的に企業に約290万円の損害賠償の支払いが命じられた。

ポイント

・パワハラによる精神疾患発症
・安全配慮義務違反(職場環境を適正に維持する責任を怠った)
・労働契約法5条違反
・民事訴訟に発展

この事例では、日常的な叱責や無視などのハラスメントがあったのに、企業側も適切な対処を怠った可能性があると認められたことで、コンプライアンス違反として損害賠償責任に問われています。

組織内のコンプライアンス違反として認められたケース

3つ目の事例は、同僚の女性に対して性的な発言や接触を繰り返して、セクシャルハラスメントに認定され、行政処分に発展したケースです。

対象者

加害者:同僚の男性、被害者:女性社員

概要

県職員が同僚の女性職員に対して不適切な発言・接触を繰り返したことで、セクシャルハラスメントと認定され、加害者の男性が懲戒処分を受ける形となった。

ポイント

​​​​​​​・公務員の服務規律違反

・セクハラによる職場環境悪化
・組織内コンプライアンス違反
・懲戒処分(行政処分)に発展

県職員の同僚女性に対するセクシャルハラスメントにより、公務員としての服務規律違反や職場環境の悪化したことで、コンプライアンス違反に発展したケースです。

最終的に、加害者の男性は懲戒処分を受け、大きく報道されたことで、単なる人間関係のトラブルから企業全体の問題として社会的に注目を浴びる結果となりました。

コンプライアンス違反の防止策を徹底することがハラスメント防止にもなる

コンプライアンス違反の防止策を徹底することがハラスメント防止にもなる イメージ

ここまで見ていただいた通り、ハラスメントとコンプライアンス違反には、違いはあるものの、コンプライアンス違反にはハラスメントが含まれています。

このため、ハラスメントの状況や、企業の対応の仕方によっては、ハラスメントがコンプライアンス違反に該当するケースもあることがお分かりいただけたかと思います。

両者のこうした関係性を踏まえると、「コンプライアンス違反の防止策を徹底することがハラスメントの防止にもつながる」ということが見えてくるはずです。

例えば、事業運営や業務上のルールを、法令やモラルに沿った形に見直し、徹底することはコンプライアンス違反の防止策として有効です。
同時に、モラルに反するハラスメント行為の防止にも効果が見込めます。

このように、コンプライアンスは、法令遵守や倫理的責任、社会からの期待に沿った対応などの広範な概念を含むため、コンプライアンス違反について組織的に取り組めば、ハラスメントの予防や抑制にも直結するのです。

コンプライアンス違反を防ぐ対策

ハラスメントを防止する上で、コンプライアンス違反の防止策を徹底することが有効だとお話ししました。

コンプライアンス違反に発展すると、社会問題として大きく報道され、刑事罰や行政指導などの社会的制裁につながるため、ポイントを抑えた対策が必要になります。

最後に、具体的にどのような取り組みを実施するべきかを紹介します。具体的な対策方法は、次の4つです。

コンプライアンス違反を防ぐ対策

ハラスメントやコンプライアンス違反を防ぐために、企業や組織としてどのような対策が必要なのかを整理し、把握していきましょう。

コンプライアンス違反の明確なルールを設ける

1つ目の対策は、どのような行為がコンプライアンス違反になるのかを言語化し、明確なルールを設けることです。

どの行為がコンプライアンス違反になるのかがわからなければ、従業員もどの行動や発言に注意をすべきかわからず、無自覚な言動につながってしまいます。

ハラスメントもさまざまで、すべてを網羅するのは難しいかもしれませんが、職場で起こりやすいトラブルや問題については、固有のルールを設けるのが有効です。

例えば、ハラスメントでは、以下のようなルールを設け、コンプライアンス違反に発展しやすい事例と一緒に周知するのがおすすめです。

パワーハラスメント
のルール例

・個人の業務量を把握し、その範囲を超える無理な指示、指導は行わない
・「そんな考え方はおかしい」「君はダメな人間だ」などの従業員の人格や価値観を否定する発言、態度は取らない
・一部の従業員に対し、情報共有をしない、会話から排除するなどの孤立させるような行動、言動をしない
・能力に見合わない業務の割当や、不当に評価を下げるといった能力の過小評価、過大評価をしない など

セクシャルハラスメント
のルール例

・容姿・年齢・服装など、身体的特徴に関する発言はしない
・恋愛、結婚、性別、出産など、業務と関係ない場面での性的な質問や雑談を避ける
・肩に触れる、腰に手を回すといった不適切な身体接触は行わない
・お酒の席であっても、節度を持って接する など

ハラスメントだけでなく、コンプライアンス違反も同様です。

情報漏洩
(例:顧客情報や社員情報の漏洩

・業務データは会社が承認した端末のみで管理し、USBメモリや私物スマホに業務データを保存して持ち出さない
・パスワード管理は専用ツールを使用し、メモに書いてPC周辺に置かないようにする

横領・不正行為

(例:会社の経費や売上金の私的流用、利益の水増しなど)

・経費精算の際は領収書の原本提出と上長承認を必須として、架空の領収書による経費精算を防ぐ
・不適切な取引先との癒着を防ぐためにも、ワンオペを禁止し、金銭の取り扱いは複数人で行うなどのチェック体制を整備する

ルールを策定するだけでなく、就業規則として明確に定めることで、違反したときの処罰も明らかにすることができます。

何をするとコンプライアンス違反になるのかをイメージできる形でルールを設け、認識を統一しましょう。

客観的な視点を取り入れて課題を明確化する

2つ目は、客観的な視点を取り入れて、自社の課題を明確化することです。

独自ルールや業務方法が浸透している状況下では、社内のどこに課題や問題があるのかに気が付かない可能性があります。

そのため、外部監査や第三者機関を利用して、客観的な視点で課題や問題を把握することが重要です。

具体的には、客観的な視点で評価してくれる各項目のプロや専門家に相談するのがおすすめです。

お金関係

会計士、税理士

職場環境

社会労務士

経営・管理

各業界の相談機関、調査機関

法律

弁護士

自社の状況を共有し、可視化しきれていない課題や問題をあぶり出し、それを改善・解決できる対策を行って、コンプライアンス違反に発展しづらい組織・体制づくりをしましょう。

コンプライアンス違反を許さない社内風土を築く

3つ目の対策は、コンプライアンス違反を許さない社内風土を築くことです。

ハラスメントもコンプライアンス違反も、事態が悪化する前に対策をすることが重要です。

「違反だと分かっていても、昇進に影響しそうで何もできない」「仕方がない」と諦めてしまうような環境では、最終的に大きな問題に発展してしまいます。

そのため、従業員全員が「コンプライアンス違反は許さない」という意識を持ち、コンプライアンス違反を発見したときにすぐに報告できる風通しの良い風土をつくることが大切です。

【風通しの良い風土にする環境づくりの参考例】

  • 匿名で通報できる窓口を用意する
  • 部署に関係なく、上司や先輩が後輩の話に耳を傾けるようにする
  • コンプライアンス対応専門の組織をつくる

見て見ぬふりをさせないためにも、「上司に意見できない」「自分が通報したとバレるのが怖い」といった通報者や報告者の心理的不安を解消し、二次被害などを恐れることなく報告できる環境を整えましょう。

全社員がコンプライアンスに関する知識を習得する

4つ目の対策は、全社員がコンプライアンスに関する知識を習得することです。

コンプライアンス違反の対応に関連する人や上層部だけが理解していても、ハラスメントやコンプライアンス違反の問題は解決できません。

全社員が違反を「問題」と認識し、意図しない発言や行為をしない行動を取ることが重要となるため、何度もお伝えしている通り、組織的に取り組んで解決することが求められます。

特に、コンプライアンスは概念が幅広いため、以下のような方法で従業員のコンプライアンスに対する認識や知識を深めましょう。

【コンプライアンスに対する認識や知識を深める方法】

  • eラーニングを活用して、コンプライアンスの基礎知識を高める
  • コンプライアンスに関連する外部講座やセミナーへ参加する
  • ハラスメント研修や品質管理研修など、テーマを決めて社内研修を実施する
  • コンプライアンスに関する書籍などの情報を周知し、その後に研修機会を設ける

コンプライアンスの知識を習得する研修では、インプットした情報をアプトプットできる機会を設けることも大切です。

基礎知識を学ぶ座学やeラーニングの後に、習得した知識を活かせるようなコンプライアンスに関するディスカッションや、事例を用いたロールプレイングなどを実施し、アウトプットを通して知識の定着を図りましょう。

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まとめ

ハラスメントとコンプライアンスの違いを把握したうえで、コンプライアンス違反の予防をすることがハラスメントの対策にもなるということをご理解いただけたのではないでしょうか。

改めてポイントをまとめると以下になります。

【ハラスメントとコンプライアンス違反の違い】


ハラスメント

コンプライアンス違反

定義

他人に不快感・苦痛を与える迷惑行為や嫌がらせ
法令や企業倫理、社会規範を破ること

対象となる行為

人間関係(個人同士)の中で発生する行為
企業活動全般における、法令・企業倫理・社会規範・社内規則に違反する行為

リスク・影響

・被害者の心理的・身体的な苦痛が大きい ・被害者との訴訟に発展する可能性がある
・取引先や社会全体への信頼損失につながる ・企業として法に抵触する可能性がある

法的範囲

主に労働環境を取り巻く法律
刑事・民事も含めた社会秩序を守る法律全般

こうした違いはありますが、コンプライアンス違反を防ぐ対応を徹底することで、ハラスメントのリスク回避も期待できます。

ただし、ハラスメントとコンプライアンス違反の両方を防ぐためには、組織的に対策を行い、全社員がそれぞれの違いを理解し、間違いを指摘できる環境であることが理想です。

理解や環境がなければ、意図しないハラスメントが起こり得るだけでなく、部下が上司のコンプライアンス違反を見かけても二次被害を恐れて見て見ぬふりをしてしまう可能性もあります。

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  心理的安全性を組織・職場のマネジメントに取り入れるには?測定から実践まで解説! 多くの企業が職場の心理的安全性向上を目指していますが、組織のマネジメントに効果的に取り入れるには、正しい理解と実践が不可欠です。本記事では、心理的安全性についての本質について紹介し、高める具体的な方法、測定・分析の手法まで、体系的に解説します。 株式会社LDcube
  「心理的安全性」その本質・作り方とは?今すぐ取り組みたい20の具体策を解説! 組織や職場の心理的安全性が高い状態をつくる上では、ただ知識を知っているだけでなく、実践が大切です。本記事では心理的安全性の作り方について、阻害要因やその除去方法、注意点など解説し、リーダーが自分ですぐに試せる効果のある具体的な方法について紹介します。 株式会社LDcube
  心理的安全性を高めるリーダーシップのあり方とは?リーダーの覚悟がカギ! 心理的安全性が注目されています。本記事では心理的安全性を高めるカギとなるリーダーシップについて、リーダーの言動が職場に与える影響や効果的に高めていくための実践方法について解説します。 株式会社LDcube
  心理的安全性を高めるコミュニケーションのあり方とは?本質と具体策について解説! 心理的安全性は職場の生産性を高めるために重要です。本記事では、心理的安全性とコミュニケーションの関係性、個人と組織の観点から本質的な考え方、すぐに生かせる自分の行動面や組織マネジメントに効果的に取り入れるポイントなど詳しく解説します。 株式会社LDcube
  心理的安全性が低い上司との関係改善の方法とは? 特徴や原因から解説! 組織・職場の生産性を高めるために心理的安全性が注目されています。職場では上司の影響が大きいです。本記事では、心理的安全性が低い上司の特徴、そうなってしまう原因、関係を前向きに改善するためのコツ、組織づくりのポイントを詳しく解説します。 株式会社LDcube
  エドモンドソン博士の視点を解説!心理的安全性がビジネスに必要な理由とは? 現代企業に最重要な要素とは何でしょうか?最重要なのは、「心理的安全性」です。本記事では、ハーバード大学の著名な教授である、エイミー・C・エドモンドソン博士の視点を通じて、なぜ心理的安全性が重要視されるのか、そしてそれを高める方法などを解説します。本人動画もご覧ください。 株式会社LDcube


LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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