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【最新|ハラスメントの種類一覧表】40のハラスメント詳細とリスクを解説

「ハラスメントの種類を調べたが、Webサイトによってあるものとないものがある」
「対処するためにしっかりと把握しておきたいが、一覧表でわかりやすくまとまっているものがない」

社内でハラスメントの問題が発生したときに適切に対処したり、そもそもハラスメントの問題が起こらないように予防したりしたいと考えているものの、ハラスメントの種類を把握しきれていないという人も多いのではないでしょうか? 

ハラスメントとしては、以下のようなものが挙げられます。

パワーハラスメント セクシャルハラスメント ケアハラスメント カスタマーハラスメント スメルハラスメント 就活ハラスメント カスタマーハラスメント パタニティーハラスメント エアーハラスメント エイジハラスメント エンジョイハラスメント お菓子ハラスメント カラオケハラスメント グルメハラスメント コロナハラスメント セカンドハラスメント ハラスメントハラスメント フォトハラスメント マッチングアプリハラスメント マリッジハラスメント 票ハラスメント 不機嫌ハラスメント ワクチンハラスメント 逆ワクチンハラスメント コミュニケーションハラスメント テクノロジーハラスメント リモートハラスメント ロジカルハラスメント 時短ハラスメント 就活セクシャルハラスメント 就活終われハラスメント 妊活ハラスメント ホワイトハラスメント 事後ハラスメント

ハラスメントは、暴力的な行為や発言、不当な扱いなどにより、相手を脅したり、不快な気持ちにさせたりすることを指すため、社会情勢によって新しいハラスメントが増えている状況です。

いろいろなハラスメントが増えている中で、適切に対応・予防していくには、詳細やリスクを把握しておくことが大切です。

詳細やリスクを把握できていなければ、ハラスメントを見過ごしてしまったり、軽視して放置してしまったりすることで大きなトラブルに発展する可能性があります。

そこで本記事では、ハラスメントによるリスクを回避するため、発生頻度や法的なリスクの観点から重要度別に3つのグループに分け、押さえておきたいハラスメントとその詳細、リスクについて解説します。

本記事を読むことで叶うこと

顕在化しているハラスメントを網羅的に把握できる
ハラスメントの種類と発生しやすいケースを重要度別に把握できる
ハラスメントの対処と未然に防ぐためにやるべきことがわかる

最後まで読めば、ハラスメントを防ぐ体制・仕組みづくりまでの流れも把握できるため、ハラスメントの全貌を把握した上で、組織的に対処・対策を行い、社員全員が安心して働ける職場環境を築けるはずです。

▼コンプライアンスやハラスメント防止についてはテーマに合わせて下記で解説しています。

▼コンプライアンス教育については下記にまとめています。

コンプライアンス教育 資料ダウンロード

目次[非表示]

  1. 1.40種類のハラスメント一覧表
  2. 2.【重要度3】法令で定義されている特に深刻なハラスメントの種類一覧表
    1. 2.1.パワーハラスメント(パワハラ)
    2. 2.2.セクシャルハラスメント(セクハラ)
    3. 2.3.就活ハラスメント
    4. 2.4.カスタマーハラスメント(カスハラ)
    5. 2.5.妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
  3. 3.【重要度2】法令に定めはないが発生頻度が高いハラスメントの種類一覧表
    1. 3.1.スメルハラスメント(スメハラ)
    2. 3.2.モラルハラスメント(モラハラ)
    3. 3.3.ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
    4. 3.4.アルコールハラスメント(アルハラ)
  4. 4.【重要度1】発生頻度は高くないものの知っておきたいハラスメントの種類一覧表
  5. 5.多種多様なハラスメントを防止するには組織的に体制・仕組みを改善する必要がある
  6. 6.さまざまな種類のハラスメントを予防するための体制・仕組みづくり
  7. 7.まとめ

40種類のハラスメント一覧表

40種類のハラスメント一覧表 イメージ

ハラスメントに対する問題意識が高まっていることもあり、相手が苦痛を感じる発言や行動が言語化され、新しい「〇〇ハラスメント」が生まれています。

聞き馴染みのないハラスメントもあるかもしれませんが、発生頻度を基準に3つの段階に区分し、見聞きしやすく、法律により罰則の対象となる主要ハラスメントから順に一覧で紹介します。

★3つ|【重要度3】法令で定義されている特に深刻なハラスメント
★2つ|【重要度2】法令に定めがないが発生頻度が高いハラスメント
★1つ|【重要度1】発生頻度は高くないものの知っておきたいハラスメント

ハラスメントの具体例についても紹介しているので、各ハラスメントの行為や言動について、理解を深めましょう。

頻度

名称

★★★

パワーハラスメント
(パワハラ)

・業務上必要のない過度な叱責や暴言を吐かれた
・スキルや能力に見合わない業務を押し付けられ、達成できないと罵倒された
・リモート勤務を理由に、監視アプリで常に行動をチェックされる

★★★

セクシャルハラスメント
(セクハラ)

・職場で同僚から性的な冗談を言われた
・業務と無関係に身体的特徴について言及され、不快な気持ちになった

★★★

ケアハラスメント

(ケアハラ)

・要介護の家族がいて休む頻度が多くなったことで、「仕事に集中できないなら辞めたら?」と圧力をかけられた。​
・介護休暇の取得を申し出ると「他の人に迷惑がかかるからやめてほしい」と言われ、申請を受け付けてくれなかった。

★★★

マタニティハラスメント
(マタハラ)

・「この忙しい時期に妊娠するなんて非常識だ」と非難された​
・産休・育休の取得を理由に、昇進ができなくなった

★★★

パタニティー・ハラスメント
(パタハラ)

・(男性社員が)育児休業を申請すると「男のくせに育休なんて必要ないだろう」と嫌味を言われた
・育児休業の取得を理由に、重要なプロジェクトから外された

★★★

就活ハラスメント

・採用面接で、業務に関係のない個人的な質問を何度もされる
・内定をちらつかせながら、飲み会や個人的な誘いをされる

★★★

カスタマーハラスメント
(カスハラ)

・理不尽な要求を繰り返して従業員を困らせる
・サービスに直接関係ないクレームや暴言を繰り返された

★★

スメルハラスメント
(スメハラ)

・周囲が不快に感じるほど、香水のにおいが強い

★★

モラルハラスメント
(モラハラ)

・同僚に無視し続けられて、孤立させられた
・陰でありもしない悪口を言いふらされて、評判を落とされる

★★

ジェンダーハラスメント
(ジェンハラ)

・「男なんだから泣くな」「女だからお茶出しをして」と性別による固定観念を押し付けてくる
・性別を理由に、特定の業務や大きいプロジェクトから外された

★★

アルコールハラスメント
(アルハラ)

・飲み会で一気飲みを強要される
・アルコールが飲めない人に対して、「飲めないなんてつまらない」と非難したり、無理やりお酒を勧めたりする

エアーハラスメント
(エアハラ)

・エアコンの温度設定を一方的に決め、他人の意見を聞き入れてくれない

エイジハラスメント

・年齢を理由に、仕事を任せない
・「〇年目なのにこんなことも知らないの?」と馬鹿にする

エンジョイハラスメント

・休日の過ごし方について、もっと楽しむべきだと意見してくる
・趣味や楽しみを「つまらない」と否定される

お菓子ハラスメント

・「おやつを用意したのに食べてくれないの?」とお菓子を食べることを強要する
・アレルギーがある人に対し、アレルギー食品を勧める

カラオケハラスメント
(カラハラ)

・職場の飲み会後に、カラオケの参加を強要される
・歌う曲を指定され、断ると「場の空気を乱した」と不機嫌になる

グルメハラスメント
(グルハラ)

・自分の好みを押し付け、「食べない(苦手・嫌い)なんて信じられない」と非難する

コロナハラスメント

・新型コロナウイルスに感染した人に対して、「自己管理ができていない」と非難する

セカンドハラスメント

・ハラスメント被害を訴えた人に対し、「大げさだ」「被害妄想だ」と言って聞き入れない
・相談したことで、逆に孤立させられた

ハラスメントハラスメント
(ハラハラ)

・些細な注意も「ハラスメントだ」と過剰反応する
・正当な指導に対して「パワハラだ」と言って、他人の意見を聞き入れない

フォトハラスメント

・写真撮影を嫌がる人に対して、無理に写真を撮ろうとする
・許可を得ず、会社のHPやSNSアカウントで写真を投稿する

マッチングアプリハラスメント(マチハラ)

・マッチングアプリの利用を強要する
・アプリでの出会いを否定・批判する

マリッジハラスメント

・結婚の予定がない人に対して、「手遅れになるよ」とプレッシャーをかける
・独身者に対して「一人でいるのはおかしい」と、人格を否定するような発言をする

票ハラスメント
(票ハラ)

・特定の候補者への支持を強要する
・選挙行動について「どの候補者へ入れたのか?」を詮索する

不機嫌ハラスメント
(フキハラ)

・不機嫌な態度で委縮させたり、周囲にプレッシャーを与えたりする

ワクチンハラスメント
(ワクハラ)

・ワクチン接種を受けていない人に対し、ワクチン接種をするよう圧力をかける

逆ワクチンハラスメント

・ワクチン接種を受けた人に対し、「ワクチンを打つなんて」と非難する

コミュニケーションハラスメント

・業務上必要な情報なのに、意図的に共有しない
・業務に関係のない雑談を強要される

テクノロジーハラスメント
(テクハラ)

・IT機器の操作が苦手な人を馬鹿にする
・最新ツールの使用を強要する

リモートハラスメント
(リモハラ)

・ビデオ会議でカメラONを強要される

ロジカルハラスメント
(ロジハラ)

・「論理性がない」と意見を一方的に否定される

時短ハラスメント

・時短勤務者に対し、「フルタイムと同じ待遇はおかしい」という
・時短勤務が理由で、重要な仕事を任せてもらえない

就活セクシャルハラスメント

・就活中に面接官から「恋人はいるの?」などプライベートな質問をされる
・面接後に個人的な連絡を求められる

就活終われハラスメント

・「内定決まっていないのはあなただけ」と焦らせる発言を繰り返す
・内定を複数取っていることを責める

ソジハラスメント
(ソジハラ:SOGIハラ)

・性的指向・性自認を否定する
・本人に無断で、性自認を職場で言いふらす

パーソナルハラスメント
(パーハラ)

・髪型や服装など個人の外見について意見する
・家族構成・恋人がいるかといったプライベートな質問をしてくる

2人目ハラスメント|ひとりっ子ハラスメント

・「ひとりっ子はかわいそう」「2人目の予定は?」と無神経に聞いてくる

妊活ハラスメント

・「子どもはまだ?」「妊活してるの?」などと詮索される
・不妊治療による通院を理由に、昇進の機会を奪われる

ホワイトハラスメント
(ホワハラ)

・「働き方改革」を理由に定時帰宅を強制される
・無理に休暇を取らされるものの、実質的な業務調整をしてくれないので仕事が終わらず困る

事後ハラスメント

・ハラスメントを相談した後に、職場で孤立させられる

このように知名度や実際に起こる頻度に差があるものの、さまざまなハラスメントの種類があります。

次章以降は、以下の3つに分類し、詳しく解説します。

★3つ|【重要度3】法令で定義されている特に深刻なハラスメントの種類一覧表
★2つ|【重要度2】法令に定めがないが発生頻度が高いハラスメントの種類一覧表
★1つ|【重要度1】発生頻度は高くないものの知っておきたいハラスメントの種類一覧表

各見出しへ遷移できるようリンク設定をしているので、気になるハラスメントの種類から読み進めてくださいね。

【重要度3】法令で定義されている特に深刻なハラスメントの種類一覧表

【重要度3】法令で定義されている特に深刻なハラスメントの種類一覧表

この章で解説するのは、法令によって定義された5種のハラスメントです。

  • パワーハラスメント(パワハラ)
  • セクシャルハラスメント(セクハラ)
  • 就活ハラスメント
  • カスタマーハラスメント(カスハラ)
  • 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
    ┗ケアハラスメント(ケアハラ)
    ┗マタニティハラスメント(マタハラ)
    ┗パタニティー・ハラスメント(パタハラ)

各ハラスメントが与える影響は大小ありますが、上記の5つについては、深刻なハラスメントとして厚生労働省が定義づけしているハラスメントの代表格です。

雇用管理上、事業主が必要な措置を取るよう、義務化されています。

そのため、各ハラスメントの詳細を把握し、企業が負うリスクについてもしっかりと理解しておくことが大切です。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントは、職場において立場的に優位な人が、業務範囲を超えて心身に苦痛を与える言動や行為のことを言います。

厚生労働省によると、職場のパワーハラスメントは次の①~③の要素をすべて満たすものと定義されています。

①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

引用:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について 平成30年10月17日 雇用環境・均等局

具体的には、以下のような言動や行為がパワーハラスメントに該当します。

  • 指導に熱が入り、頭を小突く
  • 胸倉を掴む
  •  「馬鹿」「役立たず」「給料泥棒」といった暴言を吐く
  • 特定の人物をを意図的に会議や打ち合わせから外す

上司から部下に対する発言や行為というイメージがあるかもしれませんが、部下が上司に対して行う場合も①~③の要素を満たすとパワーハラスメント(逆パワハラ)になります。

パワーハラスメントは、民事事件として裁判沙汰になることも少なくありません。

実際、勤務中に子どもが自殺したことについて、家族から上司によるいじめが原因であるとし、損害賠償を求める裁判の事例では、一部内容が容認され、慰謝料の支払いを命じられています。
出典:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について 平成30年10月17日 雇用環境・均等局 N事件(福岡高判 平20.8.25)

セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクシャルハラスメントは、性的な言動を意味するハラスメントです。

男女雇用機会均等法で、以下のような発言や行為がセクシャルハラスメントに該当するとされています。

・性的な冗談やからかい
・食事やデートへの執拗な誘い
・性的な関係を強要する
・わいせつな写真や画像を配布・掲示する

出典:厚生労働省「事業主の皆さん職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!

事業主や上司・先輩、同僚に限らず、取引先や顧客などもセクシャルハラスメントの対象者です。異性に対する行為や言動だけでなく、同性に対する発言や行為もセクシャルハラスメントに含まれます。

法令により、セクハラ防止措置を取ることが義務づけされているため、違反すると企業は指導や勧告などの行政措置を取られる可能性があります。

就活ハラスメント

就活ハラスメントは、就職活動中やインターンシップの際に、学生等に対して行われるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントのことです。

  • オンライン面接時に「全身を見せて」と言ってくる
  • 採用する見返りにデートを強要し、「断れば不採用にする」と圧力をかける
  • インターンシップ中の学生に対して、できないことに対して必要以上に𠮟責し、人格を否定する暴言を吐いた

このような発言や行為が、就活ハラスメントに該当します。

労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法において、立場の弱い学生を守る内容も含まれており、違反すればセクシャルハラスメントと同様で指導や勧告といった行政指導を受ける可能性があります。

学生に大きな心理的ダメージを与えるだけでなく、企業としても「就活ハラスメントを起こした企業」というレッテルを貼られ、社会的信用を落とすことになります。

学生からの応募が減少し、働いている従業員も会社に対して不信感を抱き、貴重な人材の転職や退職につながる可能性もある重大な問題であるため、就活ハラスメントを起こさない対策をしましょう。

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスタマーハラスメントは、簡単に言うと、顧客が企業に対して理不尽なクレームや要求を行うことです。

消費者と企業という関係性だけでなく、取引先と担当者という関係でもカスタマーハラスメントは起こり得るため、取引先に対して威圧的な態度を取る従業員がいる場合、企業の管理責任が厳しく問われます。

加害者の法的責任だけでは済まされず、ビジネスパートナーとの信頼関係が崩れ、契約の打ち切りや商談の白紙化など、企業の社会的信頼を大きく揺るがす事態に発展します。

民事・刑事事件化されると、ブランドイメージが低下して一般消費者にも影響する可能性もあるため、被害を防止する措置を検討しましょう。

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、ライフスタイルに合わせた働き方や休み方に関連した嫌がらせの事です。

具体的には、次の3つが該当します。

マタニティハラスメント
(マタハラ)

妊娠・出産・育児のための制度を希望・利用したり、時短勤務をしたりする女性社員に対して、妨害や差別、嫌がらせをする行為・言動
 
例:
・育児休業を理由に、降格させられる
・時短勤務を希望したことで、昇格できなくなった
・妊娠中に退職を促される

パタニティハラスメント
(パタハラ)

妊娠・出産・育児のための制度を希望・利用したり、時短勤務をしたりする男性社員に対して、妨害や差別、嫌がらせをする行為・言動
 

・育児休業を利用したことで、降格させられる
・時短勤務を理由に、プロジェクトから外される
・「男が育児する必要はない」と固定観念を押し付けてくる

ケアハラスメント
(ケアハラ)

介護休業など介護のための制度を希望・利用したり、時短勤務をしたりする従業員に対して、妨害や差別、嫌がらせをする行為・言動
 

・「介護が大変ならやめればいい」と退職を促される
・「こんなに忙しいのに残業しないのか?」「本当に介護しているのか?」など、不快になる発言を繰り返す

育児・介護にともなう休業は、育児介護休業法第25条で「不利益取扱いの禁止」を定めており、当然の権利として認められています。

違反すれば、企業は労働基準監督署からの指導や勧告につながります。また、人権的問題になることで、訴訟リスクもあり、報道されれば社会的な避難を受けることにもなるでしょう。

法的なリスクだけでなく、職場においては、働く人のモチベーション低下につながり、退職による人材流出の可能性が高くなります。

【重要度2】法令に定めはないが発生頻度が高いハラスメントの種類一覧表

【重要度2】法令に定めはないが発生頻度が高いハラスメントの種類一覧表

続いては、法令に定めはないものの、一般的に発生頻度が高いとされる4つのハラスメントについて解説します。

  • スメルハラスメント(スメハラ)
  • モラルハラスメント(モラハラ)
  • ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
  • アルコールハラスメント(アルハラ)

これらは、価値観の変化や社会情勢の中で生まれたハラスメントの一種です。特定の事柄や対象に向けた嫌がらせからつくられた造語となっています。

法令に定めはないものの、行き過ぎた行為は訴訟問題に発展するケースもあるため、詳細を知って未然に防ぎましょう。

スメルハラスメント(スメハラ)

スメルハラスメントは、ニオイで周囲の人を不快にさせる行為のことです。

具体的には、体臭や強い香水・洗濯洗剤のニオイ、食後のニオイなどが挙げられます。

  • 汗や皮脂、ワキガ、加齢臭などの体臭
  • 喫煙後のタバコのニオイ
  • 過度な香水やコロン、柔軟剤などのにおい

スメルハラスメントには、「対応を誤るリスク」と「放置するリスク」の2つのリスクがあります。

ニオイは繊細な問題で、「スメルハラスメント」という訴えがあったとしても、企業側が対応を誤ると体質でニオイを発している人を傷つける可能性があります。

ですが、放置すれば「企業が対応してくれない」という不満につながり、その不満の矛先がニオイを発している人に向き、いじめや嫌がらせの原因になる可能性があります。

最悪の場合、パワハラや名誉毀損などで訴えられる可能性もあるため、企業が介入する場合も慎重な対応が求められます。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラルハラスメントは、道徳や倫理に反するいじめや嫌がらせをする行為・言動を指します。

モラルハラスメントは、背景に優越的な関係がない場合に行われる行為が要件となります。具体的には、以下のようなケースです。

  • 仕事ができない同僚に対して、「能無し」「バカ」などとからかう
  • 特定の同僚から無視される
  • 活躍している同僚の悪口を広め、昇進を妨害する

パワハラと似ていますが、上司と部下のような優越的な関係が背景にあるかどうかが大きな違いです。

モラルハラスメント

パワーハラスメント

優越的な関係がない
(同僚同士など)

優越的な関係がある
(上司と部下、先輩と後輩など)

モラルハラスメントを直接禁止する法律はありません。

ただし、企業には「労働環境配慮義務」が課せられており、職場環境を改善する義務があります。

それを怠り、人格権の侵害や、精神的苦痛により体調を崩し、休職や退職をせざるを得ない状況になった場合に、慰謝料や損害賠償を請求されるリスクはあります。

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

ジェンダーハラスメントは、性別を理由とした差別や嫌がらせのことです。

例えば、性別によって異なる扱いや評価をするだけでなく、「男だから」「女だから」という理由で社会的立場や役割を決めつけるなどの行為がジェンダーハラスメントに該当します。

セクシュアルハラスメントとの違いは、性別に対する思い込みや価値観による行為・言動という点です。

ジェンダーハラスメント

セクシュアルハラスメント

「男性だから」「女性だから」といった固定観念の押し付け
(「男だから泣くな」「お茶汲みは女性の仕事だ」など)

相手の容姿や体型などに対する性的な行為・言動(体を触る、性的な発言をするなど)

ジェンダーハラスメントを行う人の中には、相手を傷つけているという意識がない場合もあり、理解されにくい問題となっています。

ジェンダーハラスメントに対する法律はありませんが、企業には「使用者が従業員の安全に配慮する義務」(労働契約法第5条)があり、問題を放置すると安全配慮義務違反に該当する可能性があります。

被害者から損害賠償を請求されるリスクがあり、民事責任を問われることで社会的信用に悪影響を与えてしまう可能性もあるため、適切な対処・被害を最小限に抑える対策が必要です。

アルコールハラスメント(アルハラ)

アルコールハラスメントは、飲酒にまつわる嫌がらせや迷惑行為、人権を侵害することを言います。

場を盛り上げるための一気飲みや、アルコールを飲めない人に対してお酒を勧めるなど、心理的な圧力をかけて飲まざるを得ない状況に追い込むなどの行為が該当します。

  • 上司が部下に対して「俺の酒は飲めないのか」と飲酒を強要する
  • 飲酒で嘔吐した人に対して、「吐いたら飲める」と言ってお酒を飲まされ続ける

お酒を強要する行為は、たとえ相手がお酒を飲まなかったとしても強要未遂罪になる可能性があります。

【重要度1】発生頻度は高くないものの知っておきたいハラスメントの種類一覧表

【重要度1】発生頻度は高くないものの知っておきたいハラスメントの種類一覧表

ここまでご紹介したハラスメントほど発生頻度は高くありませんが、ほかにもさまざまなハラスメントがあります。

馴染みのないハラスメントもあるかと思いますが、無意識にハラスメントをしてしまっているケースもあり、放置することで職場環境の低下につながる可能性があります。

そのため、顕在化しているハラスメントについても、理解を深めましょう。

「重要度1」のハラスメントは、大きなくくりで見たとき、「重要度3」で紹介したパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの主要なハラスメントに分けることができます。

各ハラスメントによるリスクの例と一緒に見ていきましょう。

区分

ハラスメントの名称

ハラスメントによるリスクの例

パワーハラスメント/モラルハラスメント

エンジョイハラスメント

被害者のメンタル不調による労災認定、退職者の増加など

コロナハラスメント

差別放置による行政指導など

エアーハラスメント
(エアハラ)

多様性欠如・若手離職の要因

お菓子ハラスメント

贈与の強要・拒否による従業員間の関係悪化

グルメハラスメント
(グルハラ)

働きにくさによるチームワーク低下、離職リスク

ハラスメントハラスメント
(ハラハラ)

過剰な正義感によって組織内の萎縮風土を助長するなど

フォトハラスメント

プライバシー侵害やコンプライアンス違反による処罰など

票ハラスメント
(票ハラ)

政治信条の自由侵害による訴訟リスクなど

不機嫌ハラスメント
(フキハラ)

部下の精神的不調によるパワハラ、モラハラ認定など

ワクチンハラスメント(ワクハラ)/逆ワクチンハラスメント

健康情報の不適切な扱いによる訴訟リスクなど

テクノロジーハラスメント
(テクハラ)

能力差別と受け取られ、場合によってはパワハラ認定されるなど

リモートハラスメント
(リモハラ)

過干渉によるパワハラ認定やプライバシー侵害など

ロジカルハラスメント
(ロジハラ)

高圧的態度による上司や先輩の信用失墜、組織の士気の低下など

ホワイトハラスメント
(ホワハラ)

過剰なコンプライアンスが原因で離職率が増加するなど

事後ハラスメント

恋愛関係のもつれが業務に波及など

カラオケハラスメント
(カラハラ)

強制参加による精神的苦痛で、パワハラ認定さることによる訴訟リスクなど

セクシャルハラスメント

マッチングアプリハラスメント(マチハラ)

プライベート侵害や情報管理不備による信用失墜

マリッジハラスメント

ジェンダーハラスメントとして法的問題に発展など

ソジハラスメント
(ソジハラ:SOGIハラ)

性的指向・性自認への差別による人権侵害など

パーソナルハラスメント
(パーハラ)

精神的不調・離職・訴訟リスク

就活ハラスメント

就活セクシャルハラスメント

明確なセクハラによる報道リスク、訴訟・行政指導など

就活終われハラスメント

企業ブランド価値の低下など

セカンドハラスメント

組織の信頼崩壊など

妊娠・出産・育児休暇に関するハラスメント

エイジハラスメント

年齢差別による雇用機会均等法違反など

時短ハラスメント

女性活躍推進の妨げとして報道されるなど

2人目ハラスメント|ひとりっ子ハラスメント

個人の生き方への干渉による労働基準監督署指導など

妊活ハラスメント

パワハラ・セクハラとして労働基準監督署から指導を受けるなど

ここで紹介したリスクは一例ですが、大きな問題に発展する可能性があります。

昔はハラスメントにならなかった行為や言動も、昨今はハラスメントに該当することも少なくありません。

相手が不快に思うことや、苦痛を感じることは、ハラスメントになる可能性が高いため、何がハラスメントになるのかということの理解を深め、どのようなハラスメントであっても、企業として防止措置を講じる必要があります。

多種多様なハラスメントを防止するには組織的に体制・仕組みを改善する必要がある

多種多様なハラスメントを防止するには組織的に体制・仕組みを改善する必要がある イメージ

さまざまな種類のハラスメントがあり、それらを防止するためには、全社的に体制や仕組みを整えることが不可欠です。

被害者が声を上げにくい環境では、「気づかれないまま」「表面化しないまま」になることも少なくありません。

そのため、被害者本人や周囲の人が違和感を覚えたときに安心してハラスメントの事実を申告できる体制・環境づくりが求められます。

また、本人はただ事実を言ったり、ほめたりしたつもりでも、相手の中には圧力に感じたり、不快感を覚えたりする可能性があります。

「え?まだ終わっていないの?」
「〇〇さんはもっと早かったよ。」
「女の子なのに理系って、珍しいね。」
「その服、色っぽいね。」

このように、本人に悪気はなくても、相手を不快にさせたり傷つけたりしてしまう言動をしてしまうことがあります。

いつどこで問題やトラブルが起こるかわからないからこそ、ハラスメント防止を推進する人事部などの部署や担当者だけが努力して体制を整えるだけでは防ぎきれません。

全社員が共通の認識を持って適切に行動できる体制や仕組みがなければ、小さなハラスメントの芽を見逃してしまい、大きな問題へと発展してしまう可能性があります。

自然発生的に生じるハラスメントは、小さな火種も見逃さず、「被害者・加害者」を生み出す前に対処することが重要です。

そのためにも、全社的にハラスメントを防止する体制や仕組みづくりに取り組み、従業員一人ひとりが安心して働ける職場環境を実現しましょう。

さまざまな種類のハラスメントを予防するための体制・仕組みづくり

さまざまな種類のハラスメントを予防するための体制・仕組みづくり イメージ

最後に、さまざまな種類のハラスメントを防ぐための体制や仕組みづくりについて解説します。

ハラスメント防止の体制・仕組みづくりにおいて、「どのようなハラスメントが起きやすいのか」を把握した上で、順序立てて「見える化」し、状況に応じた対策を講じることが重要です。

具体的なステップは4つです。各STEPの進め方の参考例と一緒に紹介します。

【STEP1】ハラスメントの実態把握とリスク分析

▼例
・社内アンケートや社員との面談で実態を調査する
・ハラスメントの種類と発生しやすいケースを分類する

【STEP2】重要度が高いハラスメントから段階的に対策

▼例
・過去のパワハラ事例を参考に、「指導」と「ハラスメント」の線引きについて研修をする
・顕在化しづらいマタハラについて、本人の意思を尊重する風土を推進する

【STEP3】具体的な「体制」と「仕組み」の整備

▼例
<体制>
・客観的視点で判断するため、社内だけでなく外部機関含むハラスメント相談窓口を2つ以上設置する
・匿名で通報できるフォームや目安箱などを用意する

<仕組み>
・ハラスメント行為の具体例や、処分規定などを明文化して全社員に周知する
・年1回以上の全社員向けに研修を実施する

【STEP4】ハラスメントをさせない意識の定着と評価

▼例
・ハラスメント防止月間を展開して周知・意識させる
・アンケートを実施し、相談件数や環境の変化を定点観測する

対策してすぐに成果につながるわけではありませんが、対策を講じることで、「企業の信頼性」が改善され、心理的安全性が高まり、「この職場で働き続けたい」と思える社員が増える可能性があります。

「自分を大事にしてくれている」と感じやすく、体制整備によって組織の透明性も向上するため、優秀な人材の定着やエンゲージメントの向上も期待できます。

ハラスメントを防ぐ体制・仕組みづくりを行い、社員全員が安心して働ける職場を目指しましょう。

誤った価値観を矯正してハラスメントを予防したいならLDcubeのeラーニングがおすすめ

LDcubeでは、コンプライアンスやハラスメントについてのeラーニングコンテンツを提供しており、ハラスメントについて体系的に学ぶことができます。

  • ハラスメント防止コース①:風通しが良い職場づくり
  • ハラスメント防止コース②:アサーション(相手を尊重しつつ、自分の意見・思いを伝えるコミュニケーション)を活用する
  • ハラスメント防止コース③:職場づくりにおいて一人ひとりができること

eラーニングコンテンツを2週間、無料トライアルで利用できるためぜひこの機会にお試しください。

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まとめ

ハラスメントの種類を重要度別に一覧で紹介してきました。
改めて、ポイントをおさらいしていきましょう。

▼ハラスメントの種類一覧

ハラスメントの種類

青色背景は、発生頻度が高いハラスメントです。個人間のトラブルでは済まされず、企業としての法的責任を問われる可能性もあるため、しっかりと対策をして未然に防ぐことが重要です。

▼ハラスメントを予防するための体制・環境づくり

ハラスメントは、いつどこで発生するかわからないため、予防という観点では、「ハラスメントはおかしいことだ」という意識を高めることが重要です。

そのためには、ハラスメントを取り扱う部署の人材だけでなく、従業員全体・組織全体が共通認識のもとハラスメントを防げるように、組織的に体制や環境を整えることが求められます。

LDcubeでは、そんなハラスメントを防ぐための基礎を学べるeラーニングコンテンツを提供しており、全社員が一定のスキルを身につけるのに役立ちます。

eラーニング研修をうまく取り入れ、ハラスメントに対する組織的な体制・環境づくりを構築しましょう。

無料のデモIDの発行や導入事例の紹介も行っていますので、お気軽にご相談ください。

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LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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