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心理的安全性を職場のマネジメントに取り入れるには?ポイントを解説!

「チームのパフォーマンスを組織的に向上させるために、心理的安全性をマネジメントしたい」

近年、このように組織開発の分野で、心理的安全性を戦略的に捉える動きが加速しています。

心理的安全性の高いチームでは、失敗を恐れずチャレンジでき、活発な議論を通じて、イノベーションを生み出せます。

多くの企業が心理的安全性の向上を目指していますが、マネジメントに効果的に取り入れるには、正しい理解と実践が不可欠です。 

心理的安全性をマネジメントに取り入れるには正しい理解と実践が不可欠!

この記事では、心理的安全性マネジメントの本質から実践的な施策、測定・分析の手法まで、体系的に解説します。

心理的安全性マネジメントを習得し、メンバーの能力を最大限に引き出して、強いチームの構築を目指していきましょう。

▼「心理的安全性」を提唱したエイミー・C・エドモンドソン博士の教えについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。⇒心理的安全性がビジネスに必要な理由?エドモンドソン博士の視点を解説

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▼心理的安全性の作り方については下記で解説しています。
⇒心理的安全性の作り方とは?今すぐリーダーが試したい20の具体策について解説!

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▼心理的安全性を醸成するための研修企画するアポイントは下記で詳しく解説しています

⇒心理的安全性の研修はどう企画する?具体的な内容や設計のポイント

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▼心理的安全性については下記にまとめています。

心理的安全性資料

目次[非表示]

  1. 1.心理的安全性マネジメントの本質を理解する  
    1. 1.1.心理的安全性マネジメントの定義と重要性
    2. 1.2.心理的安全性マネジメントにおけるマネジャーの役割
    3. 1.3.心理的安全性マネジメントの効果
    4. 1.4.心理的安全性の正しい理解はエドモンドソン教授の教えが本流
  2. 2.心理的安全性マネジメントの5つの柱と実践  
    1. 2.1.信頼関係の構築と維持
    2. 2.2.オープンコミュニケーションの促進
    3. 2.3.失敗を学びに変える文化の醸成
    4. 2.4.多様性の尊重と包摂的な環境づくり
    5. 2.5.透明性の高い意思決定プロセスの確立
  3. 3.心理的安全性マネジメントの効果測定と分析手法  
    1. 3.1.定量的評価:心理的安全性スコアの算出方法
    2. 3.2.定性的評価:1on1とチームミーティングでの観察ポイント
    3. 3.3.阻害要因の特定:真実に迫る真因分析
  4. 4.まとめ

心理的安全性マネジメントの本質を理解する  

心理的安全性マネジメントイメージ①

心理的安全性マネジメントを実践する前には、まずその本質を正しく理解することが大切です。

心理的安全性マネジメントの定義や重要性について、確認しておきましょう。

(心理的安全性マネジメントの本質理解)

  1. 心理的安全性マネジメントの定義と重要性
  2. 心理的安全性マネジメントにおけるマネジャーの役割
  3. 心理的安全性マネジメントの効果
  4. 心理的安全性の正しい理解はエドモンドソン教授の教えが本流


心理的安全性マネジメントの定義と重要性

心理的安全性マネジメントとは、チームの心理的安全性を意図的に高め、維持するためのマネジメントアプローチです。

メンバー同士の信頼関係の醸成、失敗を許容する文化の構築、多様性の尊重、透明性の高い意思決定など、包括的な取り組みを指します。

心理的安全性が高まると、メンバーは自由に意見を述べ、リスクを取ってチャレンジできるようになります。

【心理的安全性が高いチームの特徴】

  • 失敗を恐れずに新しいことにチャレンジできる:ミスを恐れずに新しいアイデアを提案し、実行に移せます。失敗を許容する風土があるため、メンバーは積極的に挑戦できるのです。

  • メンバー同士が活発に議論し多様な意見を出し合える:心理的安全性が高いチームでは、異なる視点や意見が尊重されます。メンバーは自由に発言でき、建設的な議論を通じて、より良いアイデアに昇華できます。

  • 上司に質問や提案をためらわずにできる:上司との心理的な距離が近く、どんな質問や提案でも受け止めてもらえる安心感があります。その結果、メンバーは上司に相談しやすくなり、問題解決のスピードが上がります。

  • 失敗から学ぶことを重視する文化がある:失敗をネガティブに考えず、学びを得る機会と捉える文化があります。失敗の原因を分析し、次の行動に生かすため、メンバーの成長とチームの継続的な改善が実現します。

  • メンバーの多様性が尊重される:年齢・性別・国籍・バックグラウンドなどが異なるメンバーの多様性が尊重される風土があります。多様な視点からのアイデアが奨励され、誰もが平等に発言の機会を得られます。

    マネジメントを通じて、ぬるま湯ではない、このような心理的安全性の高いチームを築いていくことが、組織の成功の鍵を握っています。

    心理的安全性マネジメントにおけるマネジャーの役割

    心理的安全性のマネジメントでは、心理的安全性の自然発生を期待するのではなく、意図的に取り組むことが重要です。

    ここで中心的な役割を果たすのが、チームのリーダーであるマネジャーです。

    【マネジャーに求められる役割】

    • メンバー同士の関係構築を支援する:マネジャーは、メンバー同士の交流の場を設けたり、コミュニケーションを促進したりして、信頼関係の醸成を支援します。普段から1on1などで個別のコミュニケーションを取ることも大切です。

    • 失敗を許容する文化を言動で示す:マネジャー自身が失敗を恐れず、チャレンジする姿勢を見せることが重要です。メンバーが失敗したときには、前向きにフィードバックを行い、挑戦を奨励する言動を心掛けます。

    • メンバーの多様性を尊重し公平に扱う:メンバーの属性や背景に関わらず、一人一人と公平に向き合います。多様な意見を尊重し、インクルーシブ(包括的)な環境づくりに努めます。アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に注意して、公正な評価を行います。

    • 意思決定プロセスを透明化する:重要な意思決定を行う際は、その理由や背景をメンバーに説明します。意思決定のプロセスを明らかにし、メンバーの理解と納得を得ることが大切です。

    • 定期的に心理的安全性を測定し改善策を講じる:アンケート調査などを用いて、チームの心理的安全性を定期的に測定します。結果をもとに、チームで改善策を話し合い、実行します。PDCAサイクルを回し、継続的に心理的安全性を高めていきます。

      実践方法の詳細は後ほど解説しますが、組織としては、各マネジャーに心理的安全性の重要性を理解してもらい、適切な施策を実施するためのツールやリソースを提供することが不可欠です。

      心理的安全性マネジメントの効果

      ここで、なぜ、心理的安全性のマネジメントに取り組むべきなのか、その効果を確認しておきましょう。

      【心理的安全性マネジメントの効果】

      • イノベーションの促進:メンバーが新しいアイデアを恐れずに提案し、実行できる環境が整います。多様な意見の交換を通じて、革新的なソリューションが生まれやすくなります。

      • パフォーマンスの向上:メンバーが自由に発言でき、協力し合える雰囲気のなかで、チームは最大限のパフォーマンスを発揮できます。心理的安全性の高さとチームの生産性には、強い正の相関があることが研究で示されています。

      • 離職率の低下:心理的に安心できる職場環境があれば、メンバーの満足度とエンゲージメントが高まります。その結果、人材の定着率が上がり、離職率の低下につながります。

      • 組織文化の改善:心理的安全性を重視する文化は、組織全体に波及します。部門を超えた協力体制が生まれ、全社的な一体感の醸成につながります。変化に強い、柔軟な組織づくりの土台になるでしょう。

        心理的安全性は、組織の中長期的な成果に直結する重要な要素だといえます。

        心理的安全性の正しい理解はエドモンドソン教授の教えが本流

        近年、心理的安全性が注目され、さまざまな人物や団体が心理的安全性について発信しています。

        そのような状況にあって、

        「派生した教えや亜流の論理ではなく、本流を学びたい」
        「自社のマネジャーには、本質を学んでほしい」

        という声もよく聞かれます。

        そのニーズには、チームの心理的安全性の提唱者であるエイミー・C・エドモンドソン教授から学ぶことが最適です。

        エドモンドソン教授の教えは、心理的安全性の本質を理解し、実践するための貴重な指針となります。組織のマネジャーには、エドモンドソン教授のコース受講が強く推奨されます。

        詳しくは、以下のページにてご確認ください。

        エドモンドソン博士のマイクロラーニングコース

        心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①(マイクロラーニング)

        心理的安全性マネジメントの5つの柱と実践  

        心理的安全性マネジメントイメージ②

        続いて、心理的安全性マネジメントを実践するうえで重要な5つの柱を見ていきます。

        (心理的安全性マネジメント5つの柱)

        1. 信頼関係の構築と維持
        2. オープンコミュニケーションの促進
        3. 失敗を学びに変える文化の醸成
        4. 多様性の尊重と包摂的な環境づくり
        5. 透明性の高い意思決定プロセスの確立


        信頼関係の構築と維持

        1つ目の柱は「信頼関係の構築と維持」です。

        心理的安全性の土台となるのが、メンバー同士の信頼関係です。信頼があれば、自分の意見を安心して発言できますし、ミスを恐れずにチャレンジできます。

        マネジャーは、メンバー間の信頼関係を構築し、維持するために、以下のような取り組みを行います。

        【信頼関係を築くためのマネジャーの取り組み】

        • 1on1ミーティングを定期的に実施する:メンバー一人一人と定期的に個別面談を行います。業務の進捗だけでなく、メンバーの考えや悩みに耳を傾け、理解を深めます。面談の際は、メンバーの話に集中し、適切なアドバイスやサポートを提供します。

        • チームビルディングの機会を設ける:日常業務とは別に、メンバーが協力してゲームやワークショップに取り組む機会を設けます。共通の目標に向かって協力し、メンバー同士の結束力を深めます。活動後は振り返りの時間を持ち、お互いの良い点を認め合います。

        • インフォーマルなコミュニケーションを促進する:オフィスの一角にカフェスペースを設けたり、固定席をなくしたりして、普段から気軽に雑談できる場を用意します。マネジャー自身も、率先して雑談に参加し、メンバーとの距離を縮めます。

        • 約束を守り言行一致を心がける:マネジャー自身が、メンバーとの約束を守り、言行が一致した行動を取ることが大切です。期日を守る、報告を怠らない、メンバーの意見を尊重するなど、信頼に足る行動を積み重ねます。

          信頼関係は一朝一夕では築けません。マネジャーが率先して模範を示し、継続的に取り組むことが重要です。

          メンバーとの信頼関係が深まれば、チームの心理的安全性は自然と高まっていくでしょう。

          オープンコミュニケーションの促進

          2つ目の柱は「オープンコミュニケーションの促進」です。

          心理的安全性の高いチームでは、メンバーが自由に意見を言い合い、建設的な議論が行われます。

          これを実現するには、メンバーが率直に意見を交換し、互いの考えを尊重し合う双方向のコミュニケーションスタイル(オープンコミュニケーション)を推進する必要があります。

          具体的には、以下のような取り組みが効果的です。

          【オープンコミュニケーションを促進する方法】

          • 傾聴のスキルを身に付ける:前述の1on1の技術とも通じますが、メンバーの意見に耳を傾け、最後まで聞く姿勢を大切にします。批判や否定をせずに、メンバーの考えを受け止め、発言を促しましょう。

          • 質問を奨励する雰囲気を作る:「わからないことは恥ずかしいことではない」というメッセージを伝え、質問を歓迎する雰囲気を作ります。マネジャー自身も、わからないことがあれば率先して質問をします。質問に対しては、丁寧に回答し、メンバーの理解度を確認します。

          • 対話型の会議スタイルを導入する:一方的に話すのではなく、メンバー同士が対話する会議スタイルを取り入れます。議題ごとに、司会進行役を決めて、全員が発言できるように配慮します。意見が出にくい場合は、ブレインストーミングやグループワークを取り入れて、対話を活性化させます。

          • オープンコミュニケーションの意義を伝え続ける:日常的なコミュニケーションのなかで、オープンに意見を言い合うことの大切さを、メンバーに伝え続けます。具体的なエピソードを交えながら、オープンコミュニケーションがチームの成果につながることを説明します。

            マネジャー自身が、積極的にメンバーとコミュニケーションを取ることも大切です。普段からメンバーを気にかけ、メンバーの話に耳を傾ける姿勢を示しましょう。

            オープンコミュニケーションが当たり前になれば、メンバーは自然と自分の考えを言葉にするようになります。

            ▼職場のコミュニケーションについては下記で詳しく解説しています。
            ⇒​​​​​​​職場コミュニケーションが引き起こす問題とは?原因と活性化施策21個を徹底解説!

              職場コミュニケーションが引き起こす問題とは?原因と活性化させる21の施策を徹底解説! 近年、テレワークの普及などにより、職場のコミュニケーションの希薄化が進行しています。コミュニケーション不全を放置すると、生産性の低下や優秀な人材の流出など、企業に大きな損失をもたらしかねません。本記事では、職場コミュニケーションの問題点と、それを改善するための21の施策を詳しく解説します。 株式会社LDcube


            失敗を学びに変える文化の醸成

            3つ目の柱は「失敗を学びに変える文化の醸成」です。

            心理的安全性の高いチームでは、失敗を恐れずにチャレンジできる文化があります。

            失敗しても、ばかにされたり、自分の立場が脅かされたりしないという安心感が、まず必要です。

            と同時に、真の心理的安全性を高めるには、失敗を許容するだけでは不十分です。失敗から学びを得て、次のアクションにつなげる姿勢も必要となります。

            マネジャーは、以下のようなアプローチで、失敗を学びに変える文化を醸成します。

            【失敗を学びに変える5つのアクション】

            • 失敗の事実を迅速に共有する:失敗(ミス・エラー・目標未達など)が発生したら、速やかにチーム内で共有します。責任追及ではなく、事実関係の把握と原因究明に注力します。

            • 失敗の背景にある課題を探る:表層的な原因だけでなく、深層にある課題を洗い出します。多忙、プロセスの不備、スキル不足、コミュニケーション不全など、多角的に分析します。

            • 失敗を未然に防ぐ仕組みを整える:分析で得た教訓をもとに、再発防止策を立案します。マニュアルの整備、研修の実施など、具体的な施策を講じます。

            • 小さな失敗を奨励し、学びを促す:イノベーションの源泉は、小さな失敗の積み重ねにあります。チャレンジを推奨し、失敗から得た学びを評価します。

            • 失敗の活用事例を組織内に展開する:失敗を糧に成功した事例を共有し、失敗の価値を浸透させます。失敗を恐れず挑戦する組織風土を醸成します。

              失敗を学びに変えるには、組織全体の意識改革が必要です。マネジャーがまず範を示し、失敗を恐れない姿勢を見せることが功を奏します。

              失敗から学ぶ文化が根付けば、メンバーは新しいことにどんどんチャレンジするようになるでしょう。

              ▼今日の失敗を明日の成功につなげるポイントについては下記で詳しく解説しています。
              ⇒マネジャー必見!今日の失敗を明日の成功につなげる方法とは!

                マネジャー必見!今日の失敗を明日の成功につなげる方法とは! 失敗は人生において避けられないものでありビジネスにおいても同様です。 失敗は不幸なことではありますが、将来の成功のために必要なステップとなります。 しかし、失敗やそれに対する批判を恐れるからこそ、まさに失敗から学びを得ることが難しくなるのです。このため、人々は失敗を隠したり、挫折から逃げ出したり、忘れようとします。そして、非難や人のせいにする行為が起きると、信頼が失われ、やる気が下がり、新しいアイデアを生み出す力が弱まるのです。 この記事では、失敗から学ぶことの大切さと、リーダーたちがどのようにしてチーム内で誠実さと創造性を育てるかについて紹介します。 株式会社LDcube


              多様性の尊重と包摂的な環境づくり

              4つ目の柱は「多様性の尊重と包摂的な環境づくり」です。

              心理的安全性の高いチームでは、メンバーの多様性が尊重され、誰もが自分らしく働ける環境があります。

              ここで、あらためておさらいしたいのが、

              「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、多様性と包摂性)」

              という言葉です。

              年齢・性別・国籍・価値観などが異なるメンバー(多様性のあるメンバー)が、お互いを認め合い、ともに活動すること(インクルージョン)が、D&Iにおける考え方です。

              マネジャーは、以下のような取り組みで、多様性を尊重するインクルーシブな環境を作ります。

              【多様性を尊重する取り組み】

              • 多様性を尊重する行動指針を作成する:チーム全体で、多様性を尊重する行動指針を作成します。お互いの違いを認め合い、多様な意見を歓迎することを明文化します。行動指針は、定期的に見直し、実践状況を確認します。

              • 多様なバックグラウンドのメンバーを採用する:性別、国籍、専門分野など、多様なバックグラウンドを持つメンバーを積極的に採用します。チームに多様な視点が取り入れられると、互いの違いを尊重し合う文化が形成されやすく、心理的安全性が高まります。

              • 個人の能力と成果で評価する:年齢、性別、学歴など、個人の属性に関係なく、その人の能力と成果で公正に評価します。評価基準を明確にし、メンバーに開示します。評価の際は、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に注意し、客観的な視点を心がけます。

                注意点として、多様性の尊重は、一部のマネジャーだけでは実現できません。経営層のコミットメントのもと、全社的に取り組みを進める必要があります。

                ▼D&Iについて詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
                ⇒ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味や違い・取り組み事例

                  ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味や違い・取り組み事例 ダイバーシティ&インクルージョンとは多様性を包摂(包み込むこと)して、新たな価値を創造する概念です。本記事ではダイバーシティインクルージョンについて解説します。また、企業の取り組みとして何をすべきか、行動ベースでの理解が深まるよう事例もご紹介します。 株式会社LDcube


                透明性の高い意思決定プロセスの確立

                5つ目の柱は「透明性の高い意思決定プロセスの確立」です。

                心理的安全性の高いチームでは、意思決定のプロセスが明確です。透明性が高く、メンバーは、なぜその意思決定がなされたのか、その背景を十分に理解できています。

                透明性の高い意思決定プロセスを確立するために、マネジャーは以下のような取り組みを行います。

                【意思決定の透明性を高める5つのアクション】

                • 意思決定における優先順位の基準を提示する:意思決定を行う際、何を優先するのか、その基準をメンバーに説明します。「コスト」「スピード」「品質」など、意思決定の軸となる要素を明確にし、優先順位の理由を説明します。

                • 意思決定の根拠となるデータを開示する:意思決定の根拠となる事実データを、できる限りメンバーに開示します。機密情報など、開示できないデータがある場合は、その理由を説明します。データに基づいた意思決定の重要性を、メンバーに伝えます。

                • 決定前に幅広いメンバーから意見を募集する:重要な意思決定を行う前に、メンバー全員に意見を求めます。データを示しながら背景を説明し、それぞれの立場からの意見を募ります。出された意見は、議事録にまとめ、後日共有します。

                • 意思決定内容をタイムリーに共有する:意思決定がなされたら、速やかにメンバー全員に決定内容を共有します。できれば、口頭とメール(チャット)の両方で伝達します。メンバーからの質問には真摯に回答し、決定事項の理解を深めてもらいます。

                • 意思決定プロセスを振り返り、改善につなげる:意思決定後、一定期間を置いてから、プロセスを振り返る機会を設けます。メンバーから率直な意見を聞き、プロセスの改善点を話し合います。とくにメンバーの納得度が低かった意思決定は、重点的に振り返ります。

                自分の知らないところで、物事が一方的に決定され、決定事項だけ下りてくる状況は、心理的安全性を損ないます。メンバーの心に、「どうせ言っても無駄だ」といった諦めの心境が生まれるからです。

                だからこそ、常に透明性を高め、メンバーの納得感と主体性に配慮することが重要です。

                たとえ自分の意見が通らなくても、プロセスが明確であれば、決定を受け入れやすくなるでしょう。

                以上、心理的安全性マネジメントにおける5つの柱を解説しました。

                心理的安全性マネジメント5つの柱まとめ

                続いて以下では、効果測定について解説します。

                心理的安全性マネジメントの効果測定と分析手法  

                心理的安全性マネジメントイメージ③

                心理的安全性マネジメントにおいて、現状を把握し、施策の効果を検証するためには、測定と分析が欠かせません。

                自社の状況に合わせて、適切な測定と分析の仕組みを作ることが重要です。ここでは以下3つの手法を解説します。

                (心理的安全性マネジメントの効果測定)

                1. 定量的評価:心理的安全性スコアの算出方法
                2. 定性的評価:1on1とチームミーティングでの観察ポイント
                3. 阻害要因の特定:真実に迫る真因分析

                定量的評価:心理的安全性スコアの算出方法

                心理的安全性の定量的評価には、アンケート調査を用いるのが一般的です。

                代表的なのは、チームの心理的安全性の提唱者であるエドモンドソン教授が開発した尺度です。以下の7つの質問項目で構成されています。

                【心理的安全性に関する意識調査】

                1. このチームでミスをしたら、きまって咎められる。(R)
                2. このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。
                3. このチームの人々は、他と違っていることを認めない。(R)
                4. このチームでは、安心してリスクを取ることができる。
                5. このチームのメンバーには支援を求めにくい。(R)
                6. このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を故意にする人は誰もいない。
                7. このチームのメンバーと仕事をするときには、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている。

                出典:エイミー・C・エドモンドソン,『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』, 英治出版, 2021年

                回答は、7段階または5段階の尺度で得て、スコアを算出します。(R)の設問(1. 3. 5.)は逆転項目のため、スコアを反転させます。

                心理的安全性マネジメント調査票のイメージ画像

                仮に5段階尺度で調査を実施し、7つの設問すべてが中央値(どちらともいえない=3点)だった場合のスコアは「21」となります。このスコアが高いほど、チームの心理的安全性が高いことを示します。

                全社的に統一された調査票で調査を実施すれば、部門別・チーム別の比較や経年変化の把握が可能です。

                【調査結果を活用した心理的安全性の向上ステップ】

                • 設問ごとの回答傾向の詳細分析を行う:スコアの高低だけでなく、設問ごとの傾向を丁寧に分析します。各設問が表す心理的安全性の要素(信頼関係、失敗の許容、多様性の尊重など)に着目し、チームの強みと弱みを明確にします。

                • 強みと弱みに応じた改善策を立案する:分析結果をもとに、チームの強みをさらに伸ばし、弱みを補強するための具体的な施策を立案します。たとえば、コミュニケーションの活性化、リスクテイクの奨励、協力体制の強化など、優先順位をつけて実行プランを作成します。

                • 定期的な調査で経時的な変化を追跡する:半年ごと・1年ごとなど、一定の間隔で調査を実施します。スコアの推移を時系列でモニタリングし、改善施策の効果を定量的に評価します。スコアが向上していれば施策の継続を、伸び悩んでいれば施策の修正を検討します。

                  定量的評価は、チームの心理的安全性を可視化し、改善のための指針を得る有効な手段です。

                  調査結果を多角的に分析し、PDCAサイクルを回していくことが、心理的安全性の着実な向上につながるでしょう。

                  定性的評価:1on1とチームミーティングでの観察ポイント

                  一方、心理的安全性の評価は、定量データだけでなく、定性的に評価することも重要です。

                  具体的には、1on1やチームのミーティングにおいて、以下のようなポイントを観察するとよいでしょう。

                  【観察すべきポイント】

                  • 自発的な発言が活発に行われているか:会議の場で、進行役が指名しなくても、メンバーが自発的に発言しているかを観察します。活発な発言は、心理的安全性の高さを示すサインです。

                  • 建設的な議論が交わされているか:メンバー同士が、建設的な議論を活発に行っているかを確認します。異なる意見を否定するのではなく、新しいアイデアに昇華させられているかがポイントです。

                  • ミスを恐れずに行動しているか:メンバーが、小さなミスを恐れるあまり、行動を躊躇していないかを観察します。ミスを恐れずにチャレンジできる姿勢は、心理的安全性の表れです。

                  • 困ったときに助けを求められているか:メンバーが、困ったときに周囲に助けを求めているかを確認します。弱みを見せることを恐れず、支援を求められる関係性は、心理的安全性の高さを示しています。

                  • 多様な意見を尊重し合えているか:年齢、性別、専門分野など、バックグラウンドの異なるメンバーの意見を、互いに尊重し合えているかを観察します。多様性を受け入れる姿勢は、心理的安全性の基盤となります。

                    このような定性的な評価は、定量データでは見えない細かいニュアンスを捉えるために有用です。

                    メンバーの言動を丁寧に観察し、本音に耳を傾け、小さな変化も見逃さないよう心がけましょう。1on1やミーティングでの観察結果は、都度記録に残し、チームの状態把握に役立てます。

                    阻害要因の特定:真実に迫る真因分析

                    心理的安全性が低い状態にある場合、その阻害要因を特定することが重要です。表面的な現象だけでなく、真の原因を追究するためには、真因分析の手法を用います。

                    代表的なのは、「なぜなぜ分析(5 Whys)」です。問題の原因を特定するために、「なぜ?」を5回繰り返し質問していきます。

                    たとえば、現在の状態が「メンバーが自由に発言できていない」だとします。これを起点に、以下のように分析を進めます。

                    【「メンバーが自由に発言できていない」状態の真因を探る5つのWhy】

                    • (Why1)なぜメンバーは自由に発言できていないのか:まずは、直接的な原因を探ります。考えられる仮説を複数挙げ、最も可能性の高いものを特定します。この例では、「上司に意見を否定されるのが怖いから」という仮説に行き着きました。

                    • (Why2)なぜ意見を否定されるのが怖いのか:1つめの仮説をさらに掘り下げて、根本原因に近づきます。この例では、「否定された経験があるから」という過去の出来事が、発言をためらう要因になっていることがわかりました。

                    • (Why3)なぜ否定された経験があるのか:さらに深掘りして、過去に否定された理由を探ります。「上司が一方的に自分の意見を押し通すから」という上司の行動パターンが浮かび上がってきました。

                    • (Why4)なぜ上司は自分の意見を押し通すのか:上司の行動の背景にあるものを考えます。この例では、「自分の意見が絶対に正しいと思っているから」という上司の価値観が見えてきました。

                    • (Why5)なぜ上司は自分の意見を絶対視するのか:最後に、上司の価値観の根源を探ります。「他者の意見を聞く姿勢が不足しているから」という、上司自身の課題が明らかになりました。

                      このように、「なぜ?」を繰り返し質問していくと、表面的な現象の背後にある真の原因が見えてきます。

                      真因分析には、根気強さと深掘りする力が必要です。阻害要因が明確になれば、それを取り除くための的確な施策を実施できます。

                      なお、着眼点としては、心理的安全性を高める真の鍵は、チームのリーダー(上司)にあるケースが多く見られます。リーダーシップの開発こそが、根本的な解決策につながることが少なくありません。

                      ▼リーダーシップ開発については、以下の記事もあわせてご覧ください。
                      ⇒​​リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント

                        リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント 本記事ではリーダーシップ開発の基礎知識から、企業における実践ステップ、効果的な進め方のコツまで、 実務に役立つ情報を網羅的に解説します。従業員の潜在能力を引き出し、組織力を高める手がかりが見つかるはずです。 株式会社LDcube


                      まとめ

                      本記事では「心理的安全性のマネジメント」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

                      心理的安全性マネジメントの5つの柱と実践として以下を解説しました。

                      1. 信頼関係の構築と維持
                      2. オープンコミュニケーションの促進
                      3. 失敗を学びに変える文化の醸成
                      4. 多様性の尊重と包摂的な環境づくり
                      5. 透明性の高い意思決定プロセスの確立

                      心理的安全性マネジメントの効果測定と分析手法として、以下を紹介しました。

                      1. 定量的評価:心理的安全性スコアの算出方法
                      2. 定性的評価:1on1とチームミーティングでの観察ポイント
                      3. 阻害要因の特定:真実に迫る真因分析

                      心理的安全性の醸成は、組織の生産性とイノベーションを高めるうえで欠かせません。心理的安全性を大切にするマネジメントを通じて、強い組織を作っていきましょう。

                      株式会社LDcubeでは、心理的安全性を提唱したエドモンド博士が自ら講義を行う心理的安全性のマイクロラーニングコースの提供や、セルフエスティームを高めるためのヒューマンエレメントプログラムの提供などを行っています。心理的安全性を高めたいとお考えの際にはお気軽にご相談ください。

                      ▼関連資料はこちらからダウンロードできます。

                      心理的安全性資料

                      マイクロラーニングカタログ

                      HEP資料

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                      LDcube編集部
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                      株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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