
企業の人材育成費用の相場と研修効果を最大化するコツとは?ポイントを解説!
企業の競争力強化において、人材育成は欠かせない重要な投資です。
しかし、「どの程度の費用をかけるべきか」「研修効果を最大化するにはどうすべきか」という疑問を持つ担当者は少なくありません。
人材育成費用は単なる「コスト」ではなく、企業の将来を左右する「戦略的投資」です。優れた企業では、研修費を惜しまず、1人当たりに年間50万円以上を投資する例もあります。
一方、限られた予算で最大の効果を上げるためには、研修内容の精査や適切な手法の選択が不可欠です。
本記事では、人材育成費用の現状と相場を徹底分析するとともに、研修タイプ別のコスト、費用対効果を高める6つの方法を紹介します。
社内トレーナーの設置やeラーニングの活用など、具体的な費用最適化の手法も解説します。「人への投資」を戦略的に行い、組織の成長と個人の成長を両立させる方法を一緒に考えてみましょう。
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目次[非表示]
- 1.企業の人材育成にかかる費用の現状と相場
- 1.1.日本企業における1人当たりの平均人材育成費用
- 1.2.企業規模別の人材育成費用
- 2.企業の人材育成費用の内訳と種類別コストの比較
- 2.1.集合研修(対面型)にかかる具体的な費用
- 2.2.オンライン研修の費用
- 2.3.eラーニングの費用
- 2.4.公開研修(スクール型)の費用
- 3.企業の人材育成費用を最適化する6つの方法
- 3.1.研修内容の優先順位付けと予算配分の見直し
- 3.2.オンライン研修の活用による諸経費の削減
- 3.3.社内トレーナー養成による外部依存度の低減
- 3.4.コンテンツのデジタル化による継続的コスト削減
- 3.5.学習データを活用した効率的な人材育成計画
- 3.6.研修内容のパーソナライズによる費用対効果向上
- 4.企業の人材育成の費用対効果を高めるポイント
- 4.1.社内トレーナーの設置
- 4.2.研修コンテンツのデジタル化
- 4.3.プラットフォーム運用による学習データ取得
- 5.企業の人材育成の費用対効果を正しく測定する方法
- 5.1.費用対効果を測定するための具体的な指標
- 5.2.研修効果の可視化とフィードバックの収集
- 5.3.長期的視点での投資評価
- 6.人材育成の費用の最適化に取り組んでいる企業事例を紹介
- 7.まとめ:企業の人材育成費用は「コスト」ではなく「投資」として最適化しよう
企業の人材育成にかかる費用の現状と相場
企業が持続的な成長を実現するためには、人材育成は欠かせない取り組みです。しかし、「適切な教育研修費用はいくらなのか」「業界標準と比べて自社の投資額は適切か」といった疑問を持つ担当者は少なくありません。まずは日本企業の人材育成費用の実態を把握することから始めましょう。
日本企業における1人当たりの平均人材育成費用
人事労務分野の情報機関である株式会社産労総合研究所が実施した「2024年度 教育研修費用の実態調査」によると、2023年度従業員1人当たりの研修費用の実績平均は34,606円でした。この調査は上場企業など約3,000社から抽出した企業を対象としており、日本企業の教育研修費用の実態を表す信頼性の高いデータといえます。
過去10年間の推移を見ると、2020年のコロナ禍で一時的に費用が減少したものの、その後は回復傾向にあり、現在は再びコロナ前の水準に戻りつつあります。これは、対面型研修からオンライン研修への移行など、研修形態の多様化が進み、新たな環境下での人材育成手法が確立されてきた証しでもあります。
人材育成を企業競争力の核と位置づける企業では、人材育成を単なるコストではなく、将来の企業価値向上のための戦略的投資と位置づけているのです。
企業規模別の人材育成費用
人材育成にかける費用は、企業の規模や業種によっても異なります。産労総合研究所の調査による企業規模別の1人当たり研修費用(2021年度実績平均)を見ると、300~999人の中堅企業が31,323円と最も高く、次いで1,000人以上の大企業が29,629円、299人以下の中小企業が28,682円となっています。
意外にも、大企業より中堅企業の方が1人当たりの投資額が大きいという結果からは、中堅企業が人材育成を通じて差別化を図り、成長を重視している姿勢がうかがえます。大企業では社内の教育システムが確立されていることが多く、また規模の経済が働くため、1人当たりの費用が相対的に抑えられる傾向にあります。一方、中小企業では予算に制約がありながらも、限られたリソースの中で効率的な人材育成を模索しています。
このように、企業の人材育成費用は一律ではなく、企業の戦略や特性に応じて適切な投資額が異なります。自社の状況を踏まえつつ、業界の相場を参考にしながら、最適な人材育成予算を設定することが重要です。
企業の人材育成費用の内訳と種類別コストの比較
人材育成費用を効率的に活用するためには、さまざまな研修タイプがどのような費用構造になっているかを理解することが重要です。研修タイプによって費用の相場や内訳は大きく異なり、それぞれに特徴があります。
ここでは、主要な研修タイプ別の費用相場と、費用に影響する要素について解説します。
集合研修(対面型)にかかる具体的な費用
集合研修は、講師を招いて社内や貸し会議室などで実施する従来型の研修スタイルです。集合研修の費用相場は、1日当たり80万~150万円が一般的ですが、実際にはさまざまな費用が発生します。
主な費用項目としては、研修講師への謝礼(講師のレベルや知名度により10万円〜50万円程度)、会場費用(自社施設利用なら不要、外部施設なら1日10万円〜20万円程度)、教材費(1人当たり数千円~1万円)に加え、参加者や講師の交通費・宿泊費(遠方からの参加者がいる場合)、昼食代などが発生します。さらに、プロジェクターやマイクといった備品・設備のレンタル費用も必要になることがあります。
集合研修は、対面での直接的なコミュニケーションやグループワークが可能というメリットがある一方で、総合的なコストは他の研修タイプと比較して高くなる傾向にあります。
オンライン研修の費用
オンライン研修は、ZoomやTeamsなどのWeb会議システムを活用した研修形式です。費用は集合研修よりも低く抑えられることが多く、講師料を中心に1日当たり30万円〜60万円程度が一般的です。
オンライン研修の最大のメリットは、会場費、交通費、宿泊費、食費などの付随コストが大幅に削減できる点です。また、地理的な制約がなくなるため、複数拠点の社員が同時に受講できることもコスト効率を高めます。
一方、オンライン研修は安定したインターネット環境やWebカメラ、マイクなどの機材準備が必要です。また、対面研修と同等の効果を得るためには、オンライン環境に適したカリキュラム設計や、オンラインでのファシリテーションスキルを持つ講師の選定が重要になります。
eラーニングの費用
eラーニングは、受講者が自分のペースでオンライン教材を学習するスタイルの研修です。費用相場は、一般的に1人当たり1~2万円程度となりますが、導入形態によって大きく異なります。
eラーニングの費用構造は、初期導入費用(システム構築費、カスタマイズ費用など)と、ランニングコスト(ライセンス費用、コンテンツ更新費用など)に分かれます。クラウド型の場合は、利用人数に応じた月額または年額のライセンス費用が継続的に発生します。
導入規模が大きいほど1人当たりの費用は下がる傾向にあり、数百人規模の利用であれば1人当たり年間5,000円〜1万円程度で運用できるケースも多くあります。一方、自社専用にカスタマイズする場合は数百万円の初期費用がかかることもあります。
eラーニングは、場所や時間の制約がなく柔軟に学習できるため、継続的な運用を考えると長期的にコスト効率の高い選択肢になりえます。
公開研修(スクール型)の費用
公開研修(スクール型)は、研修会社が主催する研修に社員を参加させる形式です。費用相場は1人当たり5~10万円程度が一般的で、宿泊を伴う合宿型の研修となると30~50 万円程度となり、内容や期間によって変動します。
公開研修のメリットは、1名から参加できるため少人数の教育に最適な点と、他社の参加者との交流により人的ネットワーク構築の機会が得られる点です。また、特定のスキルや知識に特化した専門的な研修を受けさせたい場合や、社内に類似の研修ノウハウがない場合に効果的です。
費用面では、参加人数に応じて明確な予算管理ができる反面、多くの社員が参加する場合は総コストが高くなる可能性があります。そのため、公開研修は全社一斉に研修を行うというよりは、選抜された社員や特定のスキルが必要な部門の社員への教育として活用されることが多いでしょう。
研修タイプによって費用構造や相場が異なるため、自社の人材育成の目的や予算に応じて最適な研修形態を選択することが重要です。次章では、これらの費用を最適化するための方法について詳しく解説します。
▼研修実施に伴う費用については下記で詳しく解説しています。
⇒研修実施に伴う費用とは?外部講師から内製化する相場まで徹底解説!
企業の人材育成費用を最適化する6つの方法
人材育成は企業の成長に不可欠な投資ですが、限られた予算の中で最大の効果を得るためには、費用の最適化が重要です。
ここでは、研修の質を維持・向上させながら費用対効果を高める6つの方法を紹介します。単なるコスト削減ではなく、投資効率を高めるという視点で取り組むことがポイントです。
研修内容の優先順位付けと予算配分の見直し
まず取り組むべきは、現在実施している研修内容の全体像を把握し、優先順位を付けることです。特にコロナ禍以降、企業環境は大きく変化しており、以前のままの研修内容が現在の状況に合っているとは限りません。
優先順位付けのポイントは以下の通りです。
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この分析を基に、効果の低い研修を削減または頻度を下げ、高い効果が見込める研修に予算を集中投下することで、総予算を増やさずに研修効果を高めることができます。
オンライン研修の活用による諸経費の削減
オンライン研修の戦略的導入は、研修の質を落とさずにコストを大幅に削減できる有効な手段です。オンライン会議システムを活用したライブ型のオンライン研修であれば、会場費、交通費、宿泊費、食費などの付随コストをゼロにすることが可能です。
また、地理的・時間的制約がなくなることで、以下のようなメリットも生まれます。
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ただし、オンライン研修の効果を最大化するには、一方的な講義形式ではなく、参加型のワークショップ形式を取り入れるなど、オンライン環境に適したプログラム設計が重要です。
社内トレーナー養成による外部依存度の低減
外部講師に依存せず、社内で研修を実施できる人材(社内トレーナー)を育成することで、長期的に研修コストを削減できます。特に繰り返し実施する基本的な研修や、自社特有のノウハウが必要な研修は、社内トレーナー制度の導入が効果的です。
社内トレーナー制度の構築ステップは以下の通りです。
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最初は外部講師のサポート役として経験を積ませ、徐々に主導的な役割へと移行させていくことで、無理なく社内トレーナーを育成できます。
コンテンツのデジタル化による継続的コスト削減
研修コンテンツをデジタル化することで、一度作成したコンテンツを繰り返し活用でき、長期的なコスト削減につながります。基礎的な知識の習得や、定型的な研修内容はデジタル教材化することで、対面研修の時間を短縮したり、より高度な内容に集中したりすることが可能になります。
デジタルコンテンツ化のメリットには以下があります。
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全ての研修をデジタル化するのではなく、基礎知識はデジタル学習、実践的スキルは対面研修といったブレンド型の設計がコスト効率と学習効果の両方を高める鍵となります。
学習データを活用した効率的な人材育成計画
研修の受講履歴や効果測定の結果など、学習に関するデータを収集・分析することで、より効率的な人材育成計画を立てることができます。データに基づいた意思決定により、効果の低い研修への投資を減らし、高い効果を生む研修に集中投資することが可能になります。
学習データの活用方法としては以下が挙げられます。
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このようなデータは、LMS(学習管理システム)などのツールを活用することで効率的に収集・分析できます。データに基づき継続的な改善サイクルを回すことで、研修投資の最適化が実現できるでしょう。
研修内容のパーソナライズによる費用対効果向上
一律の研修ではなく、個人の強みや課題、役割、キャリアパスに応じてカスタマイズされた研修を提供することで、学習効率が向上し、研修時間の短縮や習熟度の向上にもつながります。これにより、全体的な研修コストの削減と効果の最大化が同時に実現できます。
パーソナライズ研修の実現方法としては以下があります。
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最近のLMSには上記を実現するための機能が備えられており、人事部や運用担当者の負荷を増やすことなく、効率的な運用が可能になります。
これらの方法を自社の状況に合わせて適切に組み合わせることで、人材育成予算を最適に活用し、限られた資源の中でも最大の効果を生み出すことができるでしょう。
次章では、より具体的に費用対効果を高めるポイントについて解説します。
企業の人材育成の費用対効果を高めるポイント
前章ではさまざまな費用最適化の方法を紹介しましたが、本章ではその中でも特に費用対効果を高める3つのポイントについて掘り下げます。
これらのポイントは単にコストを削減するだけでなく、研修効果を向上させながら投資効率を最大化するための具体的な施策です。
社内トレーナーの設置
社内トレーナー制度は、外部講師への依存度を下げながら、自社の文化や実情に即した研修を提供できる効果的な仕組みです。
社内トレーナー制度を成功させるためには、以下の3つのステップが重要です。
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特に注目すべきは、社内トレーナーの活動を適切に評価・報酬化する仕組みです。通常業務との兼務になることが多いため、活動時間の確保や評価への反映を明確にしないと継続が難しくなります。一部の企業では、トレーナー活動を昇進要件の一つに組み込んだり、特別手当を支給したりするなどの工夫をしています。
また、トレーナーの質を担保するために、定期的なスキルアップ研修やトレーナー同士の情報交換会を設けることも重要です。このような取り組みにより、トレーナー自身の成長を促し、提供する研修の質を継続的に向上させることができます。
研修コンテンツのデジタル化
研修コンテンツのデジタル化は、費用効率と学習効果の両面で大きなメリットをもたらします。一度作成したデジタルコンテンツは繰り返し活用できるため、長期的に見れば非常にコスト効率が高いのが特徴です。
効果的なデジタル化を実現するポイントは以下の通りです。
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デジタル化に適しているのは、基礎知識や定型的な情報が中心の研修内容です。例えば、コンプライアンス研修、製品知識研修、基礎的なビジネススキル研修などは、デジタル化の効果が高いでしょう。
一方、リーダーシップやコミュニケーションなど、対人スキルを扱う研修は、完全なデジタル化よりも、基礎知識をデジタル学習で事前に習得し、実践はオンライン研修や集合研修で行うというブレンド型が効果的です。
また、デジタルコンテンツの作成方法も重要です。専門の制作会社に依頼すると高品質なものを作成することができますが高コストになるため、社内で簡易的に作成することでコストを抑えることがポイントです。
最近では、ナレーション付きスライドショーやオンライン会議システムを使って録画するなど、コストをかけずに効果的なコンテンツを作成できるツールも充実しているため、コンテンツの重要度や予算に応じて作成方法を選択すると良いでしょう。
プラットフォーム運用による学習データ取得
LMS(学習管理システム)などのプラットフォームを活用した研修運用は、学習データの収集・分析を可能にし、研修の費用対効果を継続的に改善するための基盤となります。学習データに基づいた意思決定により、効果の低い研修への投資を減らし、効果の高い研修に資源を集中できます。
効果的なプラットフォーム活用のポイントは以下の通りです。
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具体的に収集すべきデータとしては、研修の受講状況(受講率、完了率、学習時間など)、理解度(テスト結果、課題提出状況など)、満足度(アンケート結果、フィードバックなど)、日常的な学習行動(学習時間や完了セッション数、課題提出集、意見投稿数など)に関するデータが挙げられます。これらのデータを部門別、役職別、年齢別などの属性で分析することで、研修ニーズや効果の傾向を把握できます。
いずれのポイントも、単体での導入よりも、互いに連携させることで相乗効果が生まれます。例えば、社内トレーナーが作成した研修内容をデジタル化し、プラットフォームで配信し、データを収集することで、継続的な改善サイクルを低コストで回すことが可能になります。
次章では、これらの取り組みによる効果を正しく測定する方法について解説します。
企業の人材育成の費用対効果を正しく測定する方法
人材育成を「コスト」ではなく「投資」として位置づけるためには、その効果を適切に測定し、投資対効果を証明することが重要です。
しかし、研修効果の測定は簡単ではありません。本章では、企業の人材育成における費用対効果を正しく測定するための具体的な方法について解説します。
費用対効果を測定するための具体的な指標
人材育成の費用対効果を測定するには、定量的指標と定性的指標を組み合わせて多角的に評価することが重要です。以下に主要な指標を紹介します。
定量的指標としては、以下のようなものが挙げられます。
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研修は直接的には企業の業績に貢献するわけではなく、「行動変容」を経由して、間接的に業績に貢献するため、研修による利益貢献度を正確に算出することは難しいです。そのため、業績向上のうち研修が貢献した割合を推定するなどの工夫が必要です。
定性的指標としては、以下のようなものを活用できます。
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これらの指標を組み合わせて総合的に評価することで、人材育成の多面的な効果を捉えることができます。
研修効果の可視化とフィードバックの収集
研修効果を正確に把握するためには、効果測定の方法と時期を適切に設計することが重要です。一般的な効果測定のタイミングとしては、以下の4段階が推奨されます。
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これらの異なるレベルの効果を測定するためには、多様なフィードバック収集方法を活用します。アンケートやテストだけでなく、上司・同僚へのインタビュー、業務データの分析、行動観察などを組み合わせることで、より立体的な効果測定が可能になります。
収集したデータの可視化も重要なポイントです。部門別、役職別、研修タイプ別などの多角的な分析を行い、ダッシュボードやレポートの形で経営層や関係者に共有することで、人材育成の価値を「見える化」することができます。
特に投資対効果の高い研修と低い研修を比較できる形で示すことで、研修予算の最適配分につなげられます。
長期的視点での投資評価
人材育成の真の価値は、短期的な効果だけでなく、長期的な組織力の向上にあります。そのため、短期的な視点だけでなく、中長期的な視点での評価も重要です。
長期的な投資評価の視点としては、以下が考えられます。
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これらの長期的効果を評価するためには、単発の研修評価ではなく、継続的なモニタリングと分析が必要です。
また、人材育成が組織にもたらす間接的なメリット(企業ブランド向上、採用力強化など)も考慮することで、より包括的な投資評価が可能になります。短期的なコスト削減に走るあまり、長期的な人材競争力を損なわないよう、バランスの取れた評価視点を持つことが重要です。
費用対効果の測定は難しい側面もありますが、だからこそ、適切な指標と測定方法を設計し、効果を継続的に検証していくことが重要です。
それにより、人材育成を「投資」として正当化し、その価値を最大限に引き出すことが可能になります。
人材育成の費用の最適化に取り組んでいる企業事例を紹介
ここでは人材育成の費用の最適化に取り組んでいる企業事例を紹介します。
社内トレーナーで機動力高く研修を実施し効果を上げている事例
背景・課題:
リコージャパン株式会社では、2010年の販売会社統合以降、各支社の固有の課題に対応できず、教育施策が本部主導で一方的になるなどの課題がありました。
また、コロナ禍以降、会食などの機会が減ったことにより、コミュニケーションの希薄化を招いていました。これらの課題を解決するために、社員自らが強みや弱みを理解し合い、横のつながりを強化する取り組みが求められていました。
LIFOプログラム(社内トレーナーライセンス)の導入:
その中で、LIFO(Life Orientations)を導入しました。LIFOの活用を通じて、社員一人一人の個性を診断し、自己理解と他者理解を促進しました。
これにより、非公式なコミュニケーションが減少する中でも、社員同士の相互理解を深めるための新たな手段を提供することができるようになりました。
また、LIFOプログラムライセンスを取得することで、社内トレーナーが自主的に研修を行えるようになり、組織風土改革を進めました。
LDcubeとの協力により、多様なワークショップを展開し、各支社・部門が抱える具体的な課題に対応できるようになりました。
社内展開:
プログラムの展開においては、事前のLIFO診断、ワークショップの実施、職場での実践、効果検証のサイクルを組み込みました。
参加者は、研修後の職場実践を通じて得られたスキルを評価し合い、PDCAサイクルを回すことで、持続的なスキルアップを図っています。
ラーニングプラットフォーム「UMU」を活用し、受講者同士が学び合う環境も整備しました。
社内トレーナーによる研修実施後の反応:
導入後、プログラム受講者の満足度は高く、多くの支社で「対人関係」や「マネジメント能力」などにおいて数値的な改善が見られました。
LIFOを活用したレクチャーは「人」の問題の解決に寄与し、特にアウトプット重視の体験学習が効果的でした。
UMUの活用と一連の学習サイクルの設計により、事務局の負担軽減と学習効果の向上が実現しました。
今後に向けて:
今後は、各支社や部門の課題に寄り添い、人材育成を継続的にサポートすることで、社員個々の自己成長と組織全体の活性化をさらに推進する予定です。
また、LIFO以外のライセンスプログラムも組み合わせ、人材育成のプログラムラインナップを増やしていきます。
これにより、組織内のさまざまな課題を解決し、全体の一体感をさらに高められることを期待しています。
▼本事例はインタビュー記事の一部です。インタビュー記事全文はこちらからご覧ください。
⇒リコージャパン株式会社様 ライセンスプログラム導入事例
パーソナライズ学習でeラーニング受講率100%を達成した事例
支援事例:専門商社(400名)
【これまでの課題】
- eラーニングを「必修」にしなければ学習しない
- 流し見で「完了」することが目的になってしまっている
- 業務が忙しくて受講することを忘れてしまう ・・・など
【受講率100%を実現】
- 「必修」「受講期限」の設定がない中で、受講率100%を実現
- 診断結果を基に自動でリコメンドされるコースを自主的に受講
- 1人平均5.7コースの受講(多い人は16コースの受講)
今回のポイント
- パーソナライズ学習:パーソナル診断結果を基にした個々人に合わせた学習コンテンツを自動配信
- いつでも学べる環境:学習者が必要なときに必要な学習にアクセスできる環境
- 学習データの蓄積:学習者の学習状況をトラッキングするために学習行動のデータを取得
お客さまの声
- 社内ではeラーニングを導入しても、結局やってくれないのではないかという声が出ていました。なぜなら、eラーニングを「必修」にしないと学習者が積極的に取り組まないといったことがあったからです。同じことを繰り返していても効果は上がらないと思っていましたが、パーソナライズ学習を取り入れたところ、受講率が100%になったので正直驚きました。
- また、これまではコンテンツ数にも限りがあり、自社のオリジナルコンテンツの搭載ができなかったのですが、自社オリジナルコンテンツの搭載もできるようになったことで、学習してもらう幅が広がりました。
- また、診断結果のレポートには、自身の強みや課題の啓発だけではなく、職場メンバーとの関係性の中で起こりうることや周囲が必要なことについてもアドバイスがあり、そのレポートを基に、他メンバーと対話することで、職場の中でのコミュニケーションが取りやすくなり、仕事がスムーズに進むようになりました。
AIを活用して3倍の成果を上げた事例
社員数: 8,000名以上
事業:生命保険販売、資産運用
営業研修内容見直しの成果
~入社3カ月後の売上実績が従来の研修受講者と比較して3倍に~
アウトプット中心の学習で実践力を身に付けた上、研修中に学んだことを、動画でいつでもどこでも復習・確認ができる環境を作ることで、学習内容を実践につなげることができるようになりました。
その結果、 Teamsをつないでの従来の研修スタイルで学習した受講生集団と比較 しましたが、営業研修内容をバージョンアップした研修を受けた集団は、従来の研修を受講した集団と比較し、入社3カ月後の売上実績が3倍という飛躍的な成果を出しました。
トレーナースキルに依存せず、均一なレベルの初期教育が可能に
ライブでの講義ではなく、動画を活用した研修運営をすることで、高品質な研修情報を余すことなく再現することが可能となりました。
トレーナーリソースの効果的活用
従来は、毎月入社するキャリア採用社員の導入研修を毎月実施するため、トレーナーの方々はかなりのリソースを割かなければなりませんでした。しかし、マイクロラーニングの導入により初期教育を効率化することで、そのリソースを営業管理職教育に充てることができるようになりました。それにより、現場の指導力強化につなげることができ、学習の好循環を生んでいます。
取り組みの詳細
職種別オンボーディングプログラムを展開
キャリア入社後1カ月間の導入研修をマイクロラーニングを活用した研修にバージョンアップしました。
事前学習、研修当日、事後学習全ての場面においてマイクロラーニングで知識のインプットを行い、研修当日は確認テストの解説や、受講生同士のディスカッション、質疑応答に比重を置くことなどで、カスタマイズ性の高い学習の提供を実現しています。
マイクロラーニングはそれまで社内で活用されていた動画をベースに、新たなコンテンツも社内トレーナーの方が中心となって作成しました。
研修中は特に「学んだことが現場でも生かせそうだ、使えそうだ」と思ってもらうための支援や関わりを重視することで受講生のエンゲージメント向上にもつなげています。
これまでのインプットは社内トレーナーの方がレクチャーしてインプットしていましたが、リニューアルしてからはレクチャーは全て動画に代替しました。
アウトプットを意識した学習デザイン
インプットして終わりにならないように、動画を活用し、受講者が研修で学んだことを生かしながら1人でも何度もAIを相手にセールストークを練習し、動画で提出するという環境を提供されています。
動画を見た研修トレーナーから、直属の上司・先輩から、他部署の上司・先輩から、そして同期からフィードバックを受けることができ、学習の深化につなげています。
また、動画を閲覧した上で学んだことや仕事に生かせそうなことを共有することで、自分の考えを整理しながら、他の受講生の意見に触れながら新たな学びを得るという、学習の相乗効果を生んでいます。
導入前の課題
研修がイベント化してしまっている
集合研修で社員にいくら良い内容を提供しても 、現場に戻った後は目の前の仕事をこなすことに集中してしまい、学んだことがその場限りとなってしまうことが多く見受けられました。
集まった場だけではなく、事前と事後の学習活動を充実化させ、学習を続けながら学んだことを仕事に生かすことができる環境を作るため、 マイクロラーニング・コホート型学習を導入しました。
個人の経験がポケットノウハウになってしまっている
現場で得られた成功事例や失敗事例が個人のものにしかなっておらず、ポケットノウハウ化してしまっていることに課題を感じていました。
個人の学びを暗黙知から形式知に変えていくことで、受講生同士の学びを促進しながら、組織全体のナレッジとして好循環を生み出していきたいという思いがありました。
まとめ:企業の人材育成費用は「コスト」ではなく「投資」として最適化しよう
本記事では、企業の人材育成費用の現状と費用対効果を最大化する方法について解説してきました。
重要なのは、人材育成費用を「削減すべきコスト」ではなく「最適化すべき投資」として捉える視点です。研修内容の優先順位付け、オンライン研修の活用、社内トレーナーの養成、コンテンツのデジタル化など、単純なコスト削減ではなく、投資効率を高める工夫が求められます。
人材こそが企業の最大の資産です。適切な投資と効果測定のサイクルを回すことで、限られた予算の中でも最大の成果を生み出し、企業の持続的な成長を支える人材育成を実現しましょう。
株式会社LDcubeは、時代の変化に合わせて人材育成の施策展開を支援しています。研修やセミナーの実施から、社内トレーナーの養成、デジタルツールの提供などを行っています。これからの時代に必要な学習行動のデータ取得と活用など、多くの組織からいただいた課題の解決を中心にサービスを提供しています。予算を抑えながら効果を高めたいという目標をお持ちの人事の方々に貢献できると考えています。
無料での研修プログラムの体験会やデジタルツールのデモ体験会、導入事例の紹介なども行っています。お気軽にご相談ください。
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