
人材育成の事例13選!有名企業からスタートアップまで成功施策まとめ
「従業員の育成や研修に、もっと効果的な方法があるのではないか?」
「人材育成に定評のある企業は、具体的にどんな取り組みをしているのだろう」
このように考えている方は、多いのではないでしょうか。
労働市場の流動化や働き方の多様化が進む現代において、企業の競争力の源泉は人材育成力にあります。
とくに急激なビジネス環境変化への対応や従業員のエンゲージメント向上には、戦略的な人材育成が欠かせません。
この記事では、有名企業からスタートアップまで、人材育成に成功している企業の事例を幅広く紹介します。実際に現場で行われている研修プログラムや各種制度などの施策には、実践的なヒントが満載です。
自社の人材育成戦略立案に生かせる重要視点を、本記事からお持ち帰りください。
▼人材育成についてはテーマに合わせて下記で詳しく解説しています。
- 人材育成で大切なこと!新時代の課題と成功のポイントなどを解説!
- 人材育成のフレームワーク7選!実践の重要ポイントや事例を解説!
- 人材育成のトレーナー認定資格とは?養成講座や養成研修などを紹介
-
eラーニングを活用した人材育成!導入メリットと最新トレンド
- 製造業の人材育成の方法とは?直面しやすい課題と成功への7つの方法
- 技術伝承の成功事例5選と人材育成の極意を徹底解説
- 研修制度とは?今が見直すタイミング!人材育成の成果を出すための概要を解説!
- 新たな現場教育で人材育成の効率と効果を高める方法とは?
▼人材育成で大切なことについては下記にまとめています。
目次[非表示]
人材育成に定評のある有名企業の事例
まずは、人材育成に定評のある有名企業の事例を4つ、ご紹介します。大企業の人材育成には長年かけて磨かれた独自の手法があります。
|
トヨタ自動車:徹底的な現場研修と「職場先輩制度」
トヨタ自動車株式会社では「人間がモノをつくるのだから、人をつくらねば仕事も始まらない」、「ものづくりは人づくり」という考え方を守り続け、OJT(On The Job Training:実地研修)を重視しています。
【トヨタの育成制度の特徴】 |
|
このような育成体制の結果、ベテランの知識・技術が若手に効率的に共有され、新人の離職抑制や立ち上がりの早さに効果を上げています。現場重視のOJTと体系的なカリキュラムにより、従業員の技術力と組織への帰属意識が高まっています。
出典:トヨタ企業サイト「トヨタ自動車75年史」、トヨタ自動車株式会社「人材育成」
ソニー:社内公募と従業員主体の研修企画
ソニーグループ株式会社は、従業員の自発的な成長を促す独自の仕組みを確立しています。長年にわたり社内の人材流動性を高める制度を整備し、多様な経験を通じた人材育成を実現しています。
【ソニーの人材育成の特徴】 |
|
こうした制度により従業員の主体性と挑戦心を伸ばし、結果的に高いエンゲージメントと社内定着率につなげています。個人の意思を尊重した人材育成方針が、ソニーらしいイノベーション創出の基盤となっています。
出典:ソニーグループポータル 「採用情報 | 挑戦を後押しする制度」、ソニーグループポータル「研修をきっかけに新機能を考え、半年で開発。ソニーの新入社員が本気で取り組む『新人テーマ研修』とは。」、ソニーグループポータル「採用情報|Sony's DNA」
パナソニック:職能別研修+タレントマネジメントシステム
パナソニック株式会社は「事業は人なり」という創業者の信念のもと、体系的な研修制度と戦略的な人材マネジメントを組み合わせた育成を行っています。階層別・専門別の両面から人材を育てる仕組みが特徴です。
【パナソニックの人材育成施策 】 |
|
このTMSと専門研修の連携により、従業員の成長を企業成長に結びつける好循環が生まれています。人材の能力・適性情報を一元管理し、部門を越えた育成と配置最適化を実現しています。
リクルート:対話とフィードバックによるリーダー育成
株式会社リクルートは、「フィードバックの文化」といわれる土壌があり、これが人材育成の基盤となっています。
【リクルートのフィードバック制度】 |
|
このようなフィードバック文化により、リーダー層の自己変革を促し、結果としてマネジメント層の質向上や従業員エンゲージメントの向上につなげています。対話を基盤とした人材育成は、リクルートの創造性とイノベーション力を支える重要な要素となっています。
出典:リクルート「人材育成・成長支援」、「リクルート流フィードバックとは? 大事なのは『受け止め方』」
スタートアップ・ベンチャー企業の人材育成事例
次に、スタートアップやベンチャー企業の事例を見ていきましょう。既存の大企業とは異なる独自の人材育成アプローチが見られます。限られたリソースの中で最大限の効果を上げるための工夫と、スピード感のある育成手法に注目していきましょう。
|
メルカリ:評価と育成を紐づけた独自の評価制度
フリマアプリ大手の株式会社メルカリは、評価と育成を密接に連携させた独自の人事制度を導入しています。創業当初から従業員の成長を後押しし公正に評価する仕組みづくりに注力してきました。
【メルカリの評価育成制度】 |
|
こうした制度により、従業員は成長実感が得られ、組織へのエンゲージメントが向上しています。評価と育成の連動が優秀人材の流出防止にもつながり、メルカリの急成長を人材面から支えています。
出典:あしたの人事オンライン「メルカリ人事 石黒さんが教えてくれた『超成長企業の人事評価制度』」、mercan「メンバーの活躍を“大胆に”報いる──大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図」
Sansan:部門横断のコラボレーションで社内連携強化
名刺管理サービスの株式会社Sansanは、社内の部門横断的なコミュニケーション制度がユニークです。部署間の壁を取り払い、組織全体の活性化を促す仕組みを多数導入しています。
【Sansanの社内連携施策】 |
|
結果として社内の連携が強まり、生産性向上やサービス品質向上につながっています。部門間の相互理解と協力関係が深まり、従業員の視野が広がって、会社全体としての成長にも寄与しています。
出典:Sansan「よいこ?コーチャ?それ全部Sansanの社内制度なんです!」、「社内制度責任者が質問に答えます。「全ての社員が活躍できる」環境をつくるために」
LIFE PEPPER:スピード優先の「超OJT」
グローバルマーケティング支援を行う株式会社LIFE PEPPERでは、新人を即戦力に鍛える “超OJT” を掲げています。スタートアップらしい実践的かつスピード感のある育成法が特徴です。
【LIFE PEPPERの超OJT特徴】 |
|
同社は、「全員経営者」というバリューを掲げ、社員全員が経営者マインドを持つことを目指しています。入社直後から主体性が重視される環境で成長し、ビジネスの第一線で活躍できるようになります。ネガティブ離職率は0%と定着率が高く、少数精鋭の組織運営を可能にしています。
出典:LIFE PEPPER「スタートアップの教育制度って、実際どうなん?」、Morebiz「社員の7割が海外在住経験者、バッググラウンドの異なるメンバーをまとめる「組織戦略」の考え方」
社内研修プログラムの工夫が際立つ事例
一方、独自の研修プログラムによって人材育成に成功している企業も少なくありません。とくに工夫が際立つ研修事例を通して、効果的な社内研修の設計ポイントを見ていきましょう。
|
三越伊勢丹:販売スキルの見える化
株式会社三越伊勢丹では、販売スタッフ(スタイリスト)のサービススキルを「見える化」して効果的なOJTに活用する独自の「販売の質向上プログラム(SSP)」を全店導入しています。接客サービスという目に見えにくいスキルを可視化する工夫が特徴です。
【三越伊勢丹の研修プログラムの特徴】 |
|
このプログラムにより、販売スタッフのエンゲージメントが向上し、顧客サービス向上を通じて売上・利益の増加にも寄与しています。職場全体の活気が高まり、販売スタッフ同士の学び合いも活発になるなど、組織風土の改善にも効果を発揮しています。
三菱UFJ銀行:行動変容プログラム「CODO」
三菱UFJ銀行では従業員の自律的なキャリア形成を支援する行動変容プログラム「CODO」を導入しています。従来型の研修にとどまらず、従業員の主体性を引き出し、キャリアオーナーシップを高める独自のプログラムが特徴です。
【三菱UFJ銀行の人材育成プログラム特徴】 |
|
これらの施策により従業員のエンゲージメントが高まり、人材の定着率向上や組織の活性化にも寄与しています。自律的なキャリア形成の文化が根付き、変化の激しいビジネス環境においても従業員が主体的に学び続ける組織へと変革しています。
出典:三菱UFJフィナンシャル・グループ「社員の自律的なキャリア形成を支援! 」
社内研修の事例は、「社内研修の事例14選!ユニークな内容を受講者の階層別に詳しく紹介」もあわせてご覧ください。また、社内研修の作り方については下記にまとめています。
OJTを効果的に活用している事例
実務を通じて学ぶOJTは、多くの企業で重視されています。とくに工夫が凝らされている事例を通じて、効果的な現場育成のポイントを見ていきましょう。
|
東京海上日動火災保険:計画的OJTと面談制度
東京海上日動火災保険株式会社では、「日本で一番『人』が育つ会社」の実現を掲げ、人材育成の基本を職場OJTに置いています。目に見えない保険商品を扱う企業として、人材の質が競争力の源泉だと認識し、計画的かつ体系的な人材育成を実践しています。
【東京海上日動のOJT特徴】 |
|
この体系的OJTにより若手社員の早期戦力化と定着率向上につながり、従業員エンゲージメントも高まっています。計画的な人材育成により、職場全体の生産性が向上し、顧客満足度の向上や業績向上にも寄与する好循環が生まれています。
ヤマト運輸:二人三脚の配送研修とメンタリング
ヤマト運輸株式会社では、新人ドライバー育成の際にかならず経験豊富な先輩社員とペアを組ませるOJTを行っています。「二人三脚」での現場実践を通じて確実なスキル習得を実現しています。
【ヤマト運輸の現場OJT】 |
|
これらの仕組みにより、新人ドライバーの重大事故発生率は低水準に抑えられ、サービス品質も維持されています。現場のベテランが「教える責任」を持つ文化が根付いており、結果として新人定着率は向上し、人手不足の課題解消にも寄与しています。
OJTについて詳しくは以下の資料にて体系的にまとめています。
リスキリングへの取り組みが秀逸な事例
近年のビジネス環境変化に対応するため、既存従業員の能力開発「リスキリング」に注力する企業が増えています。先進的な取り組みを行っている企業の事例から、効果的なリスキリング戦略を学びましょう。
|
日立製作所:段階的なDXリテラシー向上プログラム
株式会社日立製作所では「デジタル対応力を持つ人材の強化」を重点課題に掲げ、従業員へのリスキリングを積極的に推進しています。
具体的には、人材育成の要となる “日立アカデミー” が中心となり、段階的なスキル習得を可能にするプログラムを開発しました。基礎から応用まで体系的に学べる仕組みです。
【日立のDX人材育成プログラム】 |
|
全従業員に共通のデジタル知識を習得させることで部門間の連携が強化され、従業員エンゲージメントの向上や事業のDX推進に寄与しています。社内のデジタル活用事例も増加し、新たなビジネスモデル構築にも貢献しています。
出典:日立アカデミー「DXを推進する人財育成」、PR TIMES STORY「社員の自律的な学びを促進する日立グループの「DX人財育成」と「リスキリング」」、リクルートワークス研究所「リスキリングとは DX時代の人材戦略と世界の潮流一」
KDDI:社内大学方式による集中育成
KDDI株式会社では、「人財ファースト企業への変革」を掲げています。中期経営戦略でDXを最重要領域に位置付け、社内大学という独自のアプローチでリスキリングを推進し、DX時代をけん引する人材を集中的に育成しています。
【KDDIのリスキリング体制】 |
|
これらの取り組みにより、従業員のデジタルスキル習得とエンゲージメント向上を図り、DX推進に向けた社内人材の職種転換を実現しています。既存従業員のスキルアップデートにより外部採用コストを抑制しながら、新規事業開発に必要な人材を社内から供給できる体制が整っています。
出典:KDDI「求む!未来のDX人財 「KDDI DX University」を設立したKDDIのDXに懸ける本気度」、「KDDIグループのDX人財を2023年度までに4,000名規模に拡大」
リスキリングの事例については、「【リスキリング事例12選】大企業・中小企業それぞれのヒントが満載」の記事もあわせてご覧ください。
人材育成に成功している企業に共通している重要ポイント
さまざまな業界・規模の企業の事例を見てきましたが、人材育成に成功している企業には共通する特徴があります。これらのポイントを理解すれば、自社の人材育成戦略に生かせる普遍的な原則が見えてきます。
|
OJTとメンタリングの体系化による早期戦力化と定着
多くの企業は現場OJTと先輩社員の1対1サポートを制度として体系化しています。多くの成功企業に共通するのは、個人の裁量に任せず組織的な仕組みとして確立している点です。
【OJT・メンタリングの成功ポイント】
|
これらの取り組みにより、新人だけでなく教える側の先輩も指導力が評価されモチベーションが上がる好循環が生まれています。結果として人材の定着と早期育成という成果(離職率低下、研修後の即戦力化、生産性向上)が各社で確認されています。
従業員主体のキャリア開発支援と挑戦機会の提供
人材育成が成功している企業は、従業員の主体的なキャリア形成を会社が支援する制度を持っています。従業員の自律性を尊重しながら、成長の機会を豊富に提供する点が共通しています。
【キャリア開発支援の特徴】
|
このように、従業員に裁量と機会を与えることで内発的動機づけ(自己成長欲求)が高まり、結果的に高い業績貢献やエンゲージメント向上に結びついています。
経営ビジョンに即した人材育成と成果の見える化
成功企業は、人材育成を経営戦略の一部として位置付け、トップダウンで推進している点も共通しています。単なる研修やOJTではなく、会社の将来像と連動した育成が行われています。
【戦略的人材育成の要素】
|
こうした定量・定性の効果測定とフィードバックを通じて、人材育成施策に経営層も現場も納得感を持って取り組み続けることができています。総じて、戦略と人材育成の一貫性と成果の検証・改善を回す仕組みが、持続的な人材育成成功の鍵となっています。
さらに、これからの人材育成で大切なことは、「人材育成で大切なこと!新時代の課題と成功のポイントなどを解説!」の記事にまとめました。ぜひ続けてご覧ください。
まとめ
本記事では「人材育成の事例」として、以下の13の事例をご紹介しました。
|
昨今の経営環境は変化が激しく、人材育成の重要性は増す一方です。成功事例のエッセンスを取り入れ、人が成長し続ける組織を構築していくことが実務上の鍵となります。
株式会社LDcubeは、時代の変化に合わせて人材育成の施策展開を支援しています。
これからの時代に必要な学習行動のデータ取得と活用など、多くの組織からいただいた課題の解決を中心にサービスを提供しております。
無料での研修プログラムの体験会やデジタルツールのデモ体験会、導入事例の紹介なども行っています。お気軽にお声がけください。
▼これからの人材育成施策を模索する際のお役立ち資料も用意しています。お役立ち資料はこちらからご覧ください。
▼関連記事はこちらから。