
社内教育が属人化する原因とは?解消に向けた対策方法を解説
社内教育を任される立場になると、こんな悩みはありませんか?
「新人育成の質が教える人によってバラバラ…」
「結局“あの人”しか教えられない」
「ベテランが異動すると教育が止まってしまう」
多くの企業で見られるこれらの現象は、決して“人の問題”ではありません。
実は、教育の仕方やノウハウが個人の頭の中に閉じたままになっており、組織として扱う仕組みが整っていないことこそが本質的な原因です。
特定の先輩によって教え方が違ったり、新人の成長スピードが担当者次第で大きく変わったりするのは、属人化教育の典型的なサインです。この状態を放置すると、新人が育たないだけでなく、教育負担が特定の人に集中し、退職・異動のたびに育成体制が崩壊してしまう“組織の脆さ”につながります。
では、どうすれば属人化から抜け出し、「誰が教えても一定の質で育つ教育」を実現できるのでしょうか?
ポイントは、「いきなり完璧な仕組みをつくろうとしない」ということです。
まずは現場に眠っている教育内容を棚卸しし、暗黙知を言語化し、最低限の標準化を進める──こうした小さなステップを積み重ねることで、教育は少しずつ“人に依存しない状態”へと変わっていきます。
本記事では、属人化が起きる原因から放置リスク、そして具体的な解消ステップまで、実務で使える視点で徹底解説します。
「属人教育から脱却したい」「教育の再現性を高めたい」とお考えの方は、ぜひ続きをご覧ください。
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目次[非表示]
- 1.第一章|社内教育の属人化は「人の問題」ではなく「仕組みの問題」
- 2.第二章|社内教育の「属人化」とは何か?
- 2.1.社内教育が属人化している状態とは
- 2.2.属人化が問題視される理由
- 3.第三章|社内教育が属人化する5つの原因
- 3.1.① 教育が「現場任せ」になっている
- 3.2.② 教える内容が言語化・整理されていない
- 3.3.③ 教育の全体設計が存在しない
- 3.4.④ 教育担当者が育っていない
- 3.5.⑤ 属人化している自覚が組織にない
- 4.第四章|社内教育の属人化を放置するとどうなるか
- 4.1.新人・若手が育たない
- 4.2.教育負担が一部の人に集中する
- 4.3.退職・異動のたびに教育が崩壊する
- 4.4.組織として学習できなくなる
- 5.第五章|属人化から抜け出すための考え方
- 6.第六章|社内教育の属人化を解消する5ステップ
- 6.1.ステップ1:教育内容の棚卸し
- 6.2.ステップ2:暗黙知の言語化
- 6.3.ステップ3:最低限の標準化
- 6.4.ステップ4:学びの場を仕組みに乗せる
- 6.5.ステップ5:改善を回し続ける
- 7.第七章|社内教育の仕組み化に役立つ手段・ツール
- 7.1.ツール導入は目的ではなく手段
- 7.2.研修会社が提供しているノウハウ・教材
- 7.3.学習プラットフォーム
- 7.4.ツールだけでは解決しない
- 8.第八章|社内教育の属人化解消に成功した事例
- 9.まとめ|属人化は“人の問題ではなく、仕組みの問題”
第一章|社内教育の属人化は「人の問題」ではなく「仕組みの問題」

社内教育の属人化は、特定の人に依存している“ように見える”ため個人の問題だと誤解されがちですが、実際は教育内容やノウハウを組織として扱う仕組みが整っていないことが本質的な原因です。
多くの企業では、経験豊富なベテランが「なんとなく」教える形で教育が回っています。しかし、この状態は本人の力量に依存しているだけで、知識や指導方法が体系的に整理されていません。つまり、教える人が変われば質も変わり、再現性がありません。これは担当者が悪いのではなく、属人化せざるを得ない環境を組織がつくってしまっているためです。
例えば、OJTで「背中を見て覚えて」と言われる状況では、暗黙知が可視化されていないため、教える人が変わるたびに成果がばらつきます。また、新人がつまずいたとしても、教育方法の違いによるものなのか、本人の課題なのかが判断できません。これは仕組みがないことで発生する典型的な問題です。
つまり、社内教育の属人化は個人の能力不足ではなく、ノウハウを整理し、共有し、再現できる状態にする仕組みがないことが根本原因です。属人化を解消するには、人を責めるのではなく、仕組みづくりに目を向ける必要があります。
第二章|社内教育の「属人化」とは何か?

社内教育の属人化とは、特定の人がいないと教えられない状態を指します。教育ノウハウが暗黙知となってしまい、教える人によって教育の質が左右されます。ここでは、その詳細を解説します。
社内教育が属人化している状態とは
社内教育の属人化とは、教育の成否が特定の個人に依存し、その人がいなければ教育が成立しない状態を指します。
属人化が起こる背景には、教育内容が暗黙知で管理され、経験や勘に頼った指導が当たり前になっている組織文化があります。つまり「ベテランのやり方」を教える本人しか説明できず、教育内容が標準化されていないため、教える側の力量がそのまま教育の質に直結します。この状態では、誰が教えるかによって成果や習熟スピードが大きく変わるという問題が生じます。
「Aさんは丁寧に教えるが、Bさんは実践重視で丸投げ気味」「Cさんで育った新人は伸びるが、Dさんについた新人は辞めてしまう」といった状況が典型です。教育が個人のスキルや価値観に依存しているため、組織全体として均一な育成ができません。
つまり属人化とは、教育そのものが明確に定義されず、個人の経験に頼るしかない状態を指します。
属人化が問題視される理由
属人化は「再現性がなく成果が安定しない」という点で、企業の成長に大きくマイナスになります。
特定の人に依存している限り、教育の質はバラバラになり、人材育成が“運任せ”になります。さらに、異動・退職が起これば教育が一瞬で崩壊し、組織として学びを蓄積できません。属人化を放置すると、育成スピードは上がらず、組織の生産性も改善しないため、中長期的には事業成長そのものに悪影響を及ぼします。
育成にばらつきがあると、新人の戦力化の速度が人によって大幅に違います。また、研修内容が体系化されていないため、教育担当が変わるたびに「ゼロから作り直し」になるケースも珍しくありません。
属人化の本当の問題は「会社として人を育てる仕組みが育たないこと」です。従って、担当者の力量ではなく、構造的な仕組みの欠如が問題の核心と言えます。
第三章|社内教育が属人化する5つの原因

社内教育の属人化は、偶然ではなく“構造的にそうならざるを得ない要因”が積み重なって起きています。特定の人の問題ではなく、仕組みや環境が整っていないために、教育が個人依存になってしまうのです。本章では、属人化を引き起こす5つの根本原因を明らかにします。
① 教育が「現場任せ」になっている
教育が個人任せの状態では、教え方も基準もバラバラになり、属人化が必然的に発生します。
多くの企業では、教育が正式な業務プロセスとして扱われず、「現場の経験者がその場で教える」形が常態化しています。しかし現場は本来の業務で多忙であり、教育設計や教材準備に時間を割けません。そのため、研修内容は担当者の頭の中にある知識に依存し、「今日はこれを教える」「この順番で説明しよう」といった判断が毎回異なります。組織として標準がない以上、教育の質が安定するはずがありません。
例えば、新人OJTを任された先輩社員が目の前の仕事で手一杯の場合、教える時間は“すき間時間”に限定されます。その結果、教える範囲も深さも担当者の状況によって変わり、新人によって学べる内容が大きく異なります。これは属人化の典型的な例です。
教育が現場任せである限り、育成は「偶然頼み」になり、組織として再現性が確保できません。教育は現場の善意に依存させるのではなく、正式な仕組みとして扱う必要があります。
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② 教える内容が言語化・整理されていない
仕事の進め方や判断基準が暗黙知のまま残っていると、教育は必ず個人に依存してしまいます。
言語化されていない知識は共有できず、担当者が頭の中で説明している内容がそのまま教育になります。この状態では教える人によって解釈が変わり、学ぶ側の理解にも大きな差が生まれます。
「なぜこの手順か」が説明されないまま作業だけ覚える状況では、応用力が身に付かず、担当者以外は教えられません。
暗黙知を言語化しない限り、組織は知識を蓄積できません。属人化を解消する最初の壁です。
③ 教育の全体設計が存在しない
知識やノウハウが暗黙知のまま放置されていると、教える人によって解釈が変わり、属人化が避けられません。
教育で最も問題なのは、教える内容が「言葉になっていない」という状態です。暗黙知は本人の経験の中にしか存在しないため、別の人が担当した瞬間に再現できません。また、暗黙知は説明されないまま受け手に伝わるため、新人は表面的な作業だけを覚えてしまい、背景の理解が欠けます。その結果、判断力や応用力が育たず、成長スピードにもばらつきが生じます。
例えば営業職で「この順番で商談を組み立てる理由」を言語化しないまま、手順だけを教えると、新人は“なぜその順番なのか”を理解できません。すると状況が少し変わっただけで対応できなくなり、「経験豊富な人でないと教えられない」という状態が続いてしまいます。
言語化されていない教育内容は、組織の資産にはなりません。暗黙知を形式知化しなければ、属人化は永遠に解消されません。
④ 教育担当者が育っていない
教える側が「教え方」を学んでいなければ、教育の質が個人能力に依存し、属人化は避けられません。
優秀なプレーヤーと優秀な教育者は別の能力を必要とします。しかし多くの企業では、「経験があるから」という理由だけで教育担当に任命されることが多く、指導方法を学ぶ機会がありません。そのため、教え方は担当者の感覚や過去の経験に頼ったものになり、教える内容やレベルが人によって大きく違ってきます。結果として、育成の質が安定せず、「あの人でないと育たない」という状況が生まれます。
「私はこうやって覚えたから」と、自分の成功パターンを新人に押し付けてしまう例もあります。しかし、本人には効果的だった方法が、別の新人には合わないことも多く、それがミスマッチの原因になります。
教育担当者自身の育成を行わない組織では、育成プロセスが個人の力量に左右されます。教育担当者の育成は、属人化解消の重要なピースです。
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⑤ 属人化している自覚が組織にない
組織が属人化の問題を自覚できていないと、改善が行われず、属人化が固定化します。
属人化が長年続いている組織では、それが“当たり前”として扱われ、問題視されません。「ベテランがいるから大丈夫」「今までこのやり方でやってきた」という思い込みが強く、仕組み化に着手する動機が生まれないのです。また、属人化は表面化しにくいため、育成の非効率さやリスクが見えづらいという特徴もあります。
「この人が辞めたら教育が回らない」と感じながらも対策を打たない状況は、属人化の典型です。本来は高リスクの状態なのに、その危険性が共有されていないため、改善が先送りされます。
属人化への「気付き」がなければ、仕組み化は進みません。まずは現状を正しく捉えることが、属人化解消の第一歩です。
第四章|社内教育の属人化を放置するとどうなるか

社内教育の属人化は、「特定の人に依存しているだけ」と軽視されがちですが、放置すると組織全体に深刻なダメージを与えます。新人の成長速度が鈍化し、教育負荷が一部に集中し、担当者の退職・異動が起きるだけで教育の基盤そのものが崩れる。最終的には、組織が学習し続ける力を失うという重大な問題につながります。
新人・若手が育たない
属人化を放置すると、新人・若手の成長スピードが著しく遅くなり、戦力化までに時間がかかります。
属人化した教育では、教える内容・順序・深さが担当者によって全く異なります。新人は「何をどこまでできればいいか」が理解できず、学習の軸が定まりません。また、暗黙知が多いため、理由が分からないまま作業だけを覚えてしまい、応用力が身に付きません。その結果、自信が持てず、成長実感も乏しくなり、離職リスクも高まります。
ある新人は丁寧な指導でスムーズに育つ一方、別の新人は「見て覚えて」のスタイルで不安を抱えたまま仕事を進める──同じ組織とは思えないほど育成格差が生まれるケースは珍しくありません。これは属人化を放置した典型的な結果です。
新人・若手の成長は、組織の未来そのものです。属人化を放置することは、将来の人材育成力を弱体化させることに直結します。
教育負担が一部の人に集中する
属人化を放置すると、教育担当者が固定化し、負荷が特定の人に集中します。
属人化が進むと「教えられる人=限られたベテラン」になります。その結果、同じメンバーに教育が偏り、業務と教育の二重負担が発生します。負担が増えれば当然、教育の質も低下し、疲弊によって担当者自身のモチベーションも下がります。さらに「この人しかできない」という構造は、組織として非常に脆弱です。
ベテラン社員が新人指導・OJT・実務を同時にこなし、結果として残業が増える一方、新人育成は思うように進まない。こうした状況は、教育が仕組み化されていない組織で頻発します。
教育負担を個人に依存させている限り、組織全体の生産性は低下します。教育を仕組み化することは、担当者を守るための施策でもあります。
退職・異動のたびに教育が崩壊する
属人化した教育では、担当者が退職・異動するだけで育成基盤が一瞬で崩壊します。
教育内容が言語化・構造化されていないため、担当者の頭の中にしか情報がありません。そのため、担当者がいなくなると「どう教えていたのか」が分からず、後任がゼロから育成方法を考える必要が生じます。これは大きな非効率であり、組織の成長を止めるリスクが高い状態です。
「Aさんがいないと新人を育てられない」という状況は、その人が異動した瞬間に教育が途絶えることを意味します。その結果、新人育成が止まり、現場の生産性も落ち、混乱が広がります。
教育が人依存である限り、退職・異動によるダメージは避けられません。持続可能な教育には“人が変わっても回る仕組み”が不可欠です。
組織として学習できなくなる
属人化は、組織が知識を蓄積し、成長し続ける力そのものを奪います。
本来、教育は組織にとって「学習資産」を増やす行為です。しかし属人化が進むと、知識やノウハウは個人の中にとどまり、組織全体に広がりません。これでは、同じ失敗を繰り返したり、部署ごとに別のルールが存在したりと、非効率が増大します。さらに、学習のプロセスが組織に残らないため、事業環境の変化に対応する力も弱まります。
特定のベテランの経験が伝承されず、次世代の社員が同じ課題でつまずく、一方で別の部署では同じテーマに対して全く違うやり方が存在する──こうした状態は“組織として学習できていない”証拠です。
属人化は「知識が貯まらない仕組み」を生みます。これは長期的に見て、組織の競争力を大きく損なう要因となります。
▼社内研修・研修内製化については、以下の調査結果も参考にしてください。
第五章|属人化から抜け出すための考え方

社内教育の属人化は「全てを仕組み化すれば一気に解決する」と考える方もいますが、実際にはそう簡単ではありません。属人化には良い面もあり、急に仕組み化を進めると現場が混乱することもあります。本章では、属人化を“悪”と決めつけず、段階的に仕組み化していくための正しい考え方を解説します。
「属人化=悪」ではない
属人化は必ずしも悪ではなく、むしろ組織の成長初期には自然であり、必要なプロセスでもあります。
ビジネスは、最初はベテランの経験や感覚を頼りに進むものです。小規模組織や成長フェーズでは、完全な仕組み化よりも、スピード重視で経験者が現場で判断する方が合理的なことも多いのです。実際、どの企業でも初期段階は“人が教える”ことが中心であり、そこから学びが生まれます。問題は、その状態が長期間続き、知識が蓄積されないまま固定化されることです。
創業初期のスタートアップでは、代表や幹部が直接新人に指導することもあります。これは属人化ですが、意思決定のスピードを考えれば自然な形です。しかし、社員数が増えても同じやり方を続けると、属人化がリスクに変わります。
属人化は“出発点”としては正常です。問題は、そこから組織として知識を蓄積し、次の段階へ移れるかどうかです。
重要なのは「いきなり仕組み化しない」こと
属人化を解消しようとした際、最も失敗しやすいのは「いきなり完全な仕組み化」を目指してしまうことです。
仕組み化には時間と工数がかかります。にもかかわらず、いきなり「全部マニュアル化しよう」「全研修を体系化しよう」とすると、現場の負担が急増し、結局は形だけの資料が作られ使われなくなる──これが典型的な失敗パターンです。特に、教育内容がまだ暗黙知だらけの段階でマニュアルを作ると、薄っぺらい内容になり、現場のリアリティーが失われます。
「マニュアルだけ作って終わる」「教育体系をつくったが運用されていない」という状況は、多くの企業で起こりがちです。これは、仕組み化の前段階で必要な“整理・言語化”が行われていないまま始めてしまったことが原因です。
属人化解消は、段階的に進めることが成功のポイントです。いきなり100点の仕組みをつくる必要はありません。
段階を踏む:属人化 → 半属人化 → 仕組み化
属人化から抜け出すには、「属人化 → 半属人化 → 仕組み化」という3段階で進めることが最も現実的で効果的です。
属人化している状態では、知識が人の頭の中にしかありません。まずはその内容を取り出し、部分的でも共有できる状態(半属人化)にする必要があります。半属人化とは、担当者が複数人になり、最低限の基準や資料が整った状態です。この段階があることで、初めて仕組み化がスムーズに進みます。いきなり仕組み化しようとしても、素材が未整備のため機能しません。
例えば、新人研修を担当する先輩が1人しかいない場合、まずは2〜3名のサブ担当者をつくり、簡易版の指導ポイントやチェックリストを共有します(半属人化)。これにより知識が複数人に渡り、教育負荷の分散や品質の平準化が可能になります。その上で、研修プロセスや教材を整理し、誰でも一定のレベルで教えられるようにするのが“仕組み化”です。
属人化からの脱却は、段階的にステップアップしていくことで成功します。いきなり仕組み化ではなく、まず“半属人化”が鍵です。
第六章|社内教育の属人化を解消する5ステップ

属人化は「特定の人に依存している状態」であり、感覚的に見える問題ですが、実際には“手順を踏めば必ず解消できる構造的な課題”です。本章では、組織が段階的に属人化を解消し、誰が教えても一定品質の教育を再現できるようになるための5つのステップを、実務レベルで解説します。
ステップ1:教育内容の棚卸し
属人化を解消する第一歩は、「何を教えているのか」を可視化し、教育内容を棚卸しすることです。
属人化した教育の特徴は、教える内容が頭の中にしか存在せず、担当者によって伝えているポイントがバラバラなことです。これを統合するには、まず現状を“見える化”し、どんな指導が行われているのかを一覧化することが必須です。棚卸しによって初めて、教育の重複や漏れ、不要な指導、逆に不足しているスキルなどが分かります。
棚卸しには、OJTで教えていることを全て書き出す、研修資料を集めて分類する、教育担当者にヒアリングする、チェックリスト化する──といった方法が有効です。特に、複数の担当者が教える内容を並べて比較すると、ばらつきが一気に可視化されます。
棚卸しは「属人化の正体」を明らかにするプロセスです。ここを丁寧に行うことが、後の標準化・仕組み化の精度を大きく左右します。
ステップ2:暗黙知の言語化
棚卸しによって教育内容の全体像が把握できたら、次に取り組むべきは「暗黙知の言語化」です。暗黙知とは、担当者の経験や勘に基づいており、言語化されていないため他者が再現できない知識のことです。この暗黙知こそが属人化の最大の原因となります。
暗黙知を言語化する際に重要なのは、「なぜその教え方をしているのか」「何を根拠に判断しているのか」といった「思考のプロセス」を抽出することです。例えば、熟練者が「ここは感覚で分かる」と表現する場面でも、実際には特定の着眼点や判断基準が存在しているはずです。それを一つひとつ言葉にし、他者にも理解できる形式で整理します。
効果的な方法には、以下のようなものがあります。
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こうした作業を通じて、初めて熟練者のノウハウが他者に伝えられる「形式知」へ変換されます。
暗黙知の言語化は、単なるマニュアル作成ではなく、「再現できる判断基準」をつくるためのステップです。このプロセスを丁寧に行うことで、誰が担当しても一定の品質で教えられる土台が整い、属人化解消へ大きく前進します。
ステップ3:最低限の標準化
標準化は完璧を目指す必要はなく、「誰がやっても最低限できるレベル」をつくるのがポイントです。
多くの仕組み化が失敗する理由は、「100点のマニュアル」をつくろうとすることです。教育は現場によって細かい違いがありますし、業務も常に変化します。そのため、最初から完璧を目指すと現場に運用されず、逆に属人化が進んでしまいます。
最低限の標準化とは、例えば「指導ポイントのチェックリスト」「基本の流れを示したフローチャート」「座学とOJTの役割分担」といった“基準となる骨格”を整えることです。これだけでも教育のばらつきは大幅に減少し、担当者の負担も軽くなります。
標準化は「まずは60点」で十分です。小さくつくって改善する方が、現実の業務でははるかに効果的です。
ステップ4:学びの場を仕組みに乗せる
属人化を防ぐためには、研修・OJT・eラーニングなどの教育手段を組み合わせ、“仕組みとして回る”状態をつくることが重要です。
標準化した内容があっても、それを実際に運用する仕組みがなければ機能しません。組織として、育成の場・方法・教材を一貫して管理する仕組みが必要です。特に学習プラットフォームを活用すれば、教材管理・受講履歴・理解度の可視化ができ、教育の再現性を飛躍的に高められます。
集合研修は「共通認識の形成」、OJTは「実践の習得」、eラーニングは「反復学習と知識定着」、学習プラットフォームは「教材管理と効果測定」という役割分担ができます。また、動画教材やマニュアルを一元管理すると、担当者が変わっても同じ内容を教えられるため、属人化を確実に防げます。
学びの場を仕組みに乗せることで、教育は“人が変わっても回る”状態になります。これこそが属人化解消のゴールです。
ステップ5:改善を回し続ける
教育は1度仕組み化して終わりではなく、改善を継続することで初めて組織の資産になります。
業務が変われば求められるスキルも変わります。教育内容が更新されないと、仕組みが実態と乖離し、結局また属人化に逆戻りしてしまいます。そのため、定期的に教材・研修・OJTの進め方を見直し、改善サイクルを回すことが重要です。
新人のつまずきポイントをフィードバックとして集める、受講データを分析する、担当者会議で改善案を議論する──といった取り組みを定期的に行うことで、教育は常に最新化されていきます。
仕組み化の完成はゴールではなくスタートです。「改善し続ける仕組み」こそが、属人化しない教育を維持する鍵です。
▼改善するためには、施策の効果測定が重要です。
第七章|社内教育の仕組み化に役立つ手段・ツール

属人化を解消し、教育を仕組み化するためには、組織の知識を蓄積し共有する“仕組み”が必要です。その実現を助けるのが、研修会社のノウハウや学習プラットフォームなどのツール類です。
ただし、ツール導入=仕組み化ではなく、「目的を達成するために使いこなすこと」が最も重要です。本章では、その考え方と活用法を解説します。
ツール導入は目的ではなく手段
どんなに優れたツールでも、導入すること自体が目的になると効果は出ません。ツールは“仕組み化のために使うもの”であり、目的を明確にすることが重要です。
属人化した教育の課題は「知識が個人に閉じている」「情報が散らばっている」「教育プロセスが再現されない」という点です。ツールはこれらを解決するために存在しますが、目的が曖昧なまま導入すると、“操作方法を覚えるだけで満足してしまい、現場で使われない”という状態が生まれます。最悪の場合、ツールが新たな負担となり、属人化を加速させることもあります。
「eラーニングを導入したが、誰も見ない」「教材管理ツールを入れたが、更新されない」という失敗例はよくあります。これはツール導入前に“何を実現したいのか”が定義されていないためです。
ツールは目的達成のための手段です。導入前に「どの課題を解決するのか」を明確にすることが成功の鍵です。
研修会社が提供しているノウハウ・教材
研修会社の教材やノウハウを活用することで、教育内容の質と再現性を高め、属人化を防ぐことができます。
研修会社の教材は、長年の教育実績から構築されており、“汎用的で再現性の高い教育コンテンツ”として最適化されています。組織内でゼロから教材をつくるには非常に時間がかかり、担当者の負担も大きいですが、既存の教材を活用すれば品質を担保しつつ、短期間で教育基盤を整えられます。また、研修会社のノウハウを取り入れることで、教育設計の考え方そのものを自社に持ち帰ることができ、仕組み化に役立ちます。
新人研修でよく使われるビジネスマナーやコミュニケーション研修は、外部教材を活用した方が効率的です。また、階層別教育や管理職研修などは、体系化された外部ノウハウを取り入れることで、社内教育の均一化と品質向上が期待できます。
外部ノウハウを“賢く借りる”ことは、属人化解消の近道です。
▼LDcubeでは、社内教育で活用できるノウハウや教材の提供を行っています。
学習プラットフォーム
学習プラットフォームは、教育内容の蓄積・共有・可視化を実現し、属人化しない教育体制をつくる上で非常に有効です。
教育の属人化は、「知識が人の頭の中にある」という構造が原因です。学習プラットフォームは教材を一元管理し、誰でも同じ情報にアクセスできるようにするため、教育内容が組織に蓄積されます。また、受講履歴や理解度をデータとして残せるため、「どの教育が効果的か」を分析でき、改善にもつながります。担当者が変わっても教育品質を維持できる点も大きなメリットです。
動画教材をプラットフォームに集約しておけば、新人は必要なときに何度でも学習できます。さらに、チェックテストを組み合わせれば理解度を可視化でき、OJTに活用することも可能です。担当者が交代しても同じコンテンツが使えるため、“属人化しない教育”が実現できます。
学習プラットフォームは、属人化解消の“土台”となる存在です。組織の知識を資産化し、教育を持続可能にします。
▼学習プラットフォームについては、以下で詳しく解説しています。
ツールだけでは解決しない
ツールはあくまで仕組み化を支える手段であり、導入するだけでは属人化は解消されません。
属人化の本質は「教育内容が整理されていない」「プロセスが設計されていない」という仕組み上の問題です。この部分が未整備のままツールだけ導入しても、現場は使いこなせず、結局は従来の属人的な教育に戻ってしまいます。ツールは、整理された教育内容や設計された育成プロセスがあってこそ力を発揮します。
「教材がないのにプラットフォームだけ導入する」「教育設計がないままLMSに動画を置くだけ」というケースでは、結局ツールが“資料置き場”になり機能しなくなります。属人化の構造は何も変わらないままです。
ツールは万能ではありません。仕組み化の“土台”があって初めて、ツールは真価を発揮し、属人化を根本から解消できます。
第八章|社内教育の属人化解消に成功した事例

日鉄テックスエンジ株式会社 UMU導入事例
UMU活用で、「属人教育からの脱却」と「効果的な研修設計」を実現
~新入社員向け専門教育のデジタル化から始める教育改革への挑戦~
■ UMU導入前の課題:コロナ禍が露わにした“属人的な教育”の脆さ
日鉄テックスエンジ株式会社では、コロナ禍により集合研修が突然成立しなくなったことで、教育の属人化が深刻な課題として浮き彫りになりました。
特に新入社員向けの専門教育は60代のベテラン講師に依存しており、教える内容や講義品質にばらつきが生じていました。研修資料はフォルダに保存されていましたが、「どう教えるか」は講師の判断に委ねられており、講師が変わると研修の質が下がることもありました。
さらにオンライン研修に切り替えた際は、受講者の反応が見えにくく集中力の維持も難しく、教育を持続できない構造的な問題が明らかになりました。
■ UMU導入の決め手:「属人性からの脱却」を実現できると確信
教育のあり方を根本から見直そうとしていたタイミングで紹介されたのが「UMU」でした。ショート動画によるマイクロラーニング、学習データの分析、テストの自動集計など、学びの再現性を高められる点が魅力でした。
また、管理のシンプルさも決め手となり、管理者ID1つで教材の登録・更新・管理ができるため、特定の担当者のスキルに依存しない運用が可能でした。
これにより、「誰が教えるか」ではなく「何をどう学ぶか」に軸足を移した教育設計ができるという確信を得ることができました。
■ 取り組み内容:UMUを軸とした研修設計の再構築(反転学習)
UMU導入後は、単なるオンライン化にとどまらず、教育設計そのものの見直しに踏み込みました。中心に据えたのは「反転学習」です。事前にUMUで基礎知識を動画やスライドで学び、研修の場では理解を深めるための議論や演習に集中するスタイルに切り替えました。
そのためにまず、新入社員が半年かけて学ぶ専門教育の全講義を棚卸しし、UMU用に細分化・標準化したコンテンツを制作しました。講義録画を切り分けるだけでは不十分だったため、スライドに音声ナレーションをつけて再構成するなど、「誰が見ても分かる教材」づくりを徹底しました。
これらの作業により、講師の頭の中にあった暗黙知を可視化し、属人教育を“組織の資産”へ変換する基盤を整えました。
■ 取り組みの成果:「誰が教えても同じ質」を実現
UMUを活用した結果、教材が標準化され、講師による内容のばらつきが大幅に減りました。受講者は事前学習で基礎を理解しているため、集合研修での議論の質が向上し、研修時間の価値も高まりました。
また、学習データが可視化されたことで、受講者の理解度を把握しながら必要なサポートができるようになりました。さらに若手講師でも一定の品質で研修が実施できるようになり、ベテラン依存から脱却できた点も大きな成果です。
これにより、「講師が変わっても研修レベルが下がらない」継続的な教育体制が構築されました。
■ 今後の展望:UMU × AI × 人で“学びが自走する組織”へ
今後は、UMUで整備した教材をさらに拡充し、AI活用も視野に入れていく方針です。
AIによるフィードバックやデータ分析を通じて、学習者一人一人に合った最適な学習環境を整備し、社員自身が「自走して学ぶ組織」の実現を目指しています。
デジタルと人が連携する新しい学習文化をつくることで、持続的に学び続ける企業への進化を期待していると述べられています。
▼詳細は以下をご覧ください。
まとめ|属人化は“人の問題ではなく、仕組みの問題”
社内教育の属人化は、一見すると「教える人の能力差」や「現場の工夫不足」が原因のように思えます。しかし本記事で見てきた通り、実際の原因は 教育内容が整理されていない、暗黙知が残り続けている、育成プロセスが設計されていない といった“仕組みの欠如”にあります。
属人化を放置すれば、新人が育たず、教育負担が特定の人に集中し、退職や異動が起きるたびに育成体制が崩壊するという大きなリスクを招きます。
一方で、属人化は悪ではなく、どの組織も必ず通る“出発点”です。重要なのは、そこから 半属人化 → 仕組み化 へと段階を踏んで移行すること。そのためには、
まず「何を教えているか」を棚卸しする
暗黙知を言語化し、最低限の標準をつくる
学習プラットフォームや研修設計を活用し、学びを仕組みに乗せる
といった小さな改善の積み重ねが不可欠です。
そして仕組み化は1度つくって終わりではありません。改善を続け、教育内容を常に最新化し続けることで、初めて“人が変わっても回る教育”が実現します。
社内教育の属人化は、どんな組織にも起こりえる課題です。しかし、正しいステップを踏めば必ず解消できます。今日からできる一歩を踏み出し、持続可能な育成の仕組みづくりに取り組んでいきましょう。
株式会社LDcubeでは、社内教育の標準化を実現するためのプログラムライセンスの提供や、社内トレーナー養成支援を行っています。また、人に依存せず組織のノウハウをデジタルやAIで標準化するための学習プラットフォーム「UMU」の提供も行っています。いずれにしても、社内教育の属人化はツールの導入だけでは解決しません。LDcubeは、ツールの提供のみならず、お客さまの真に効果のある学びを実現すべく、効果的な学習設計と運用を伴走します。
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