
1on1はなぜ形骸化する?原因と改善方法を実践ステップで解説!
「1on1を続けているはずなのに、なぜか手応えがない。」
「毎回似たような話題で終わり、部下の本音は引き出せず、気付けば形式的な時間になっている。」
そのようなもやもやを抱えたマネジャーは少なくありません。
実際、目的が共有されていなかったり、アジェンダが枯渇したり、時間確保が難しかったりと、1on1が形骸化してしまう理由は数多く存在します。そして厄介なのは、それらが複合的に絡み合い、気付かないうちに対話の質が落ちていくことです。
しかし、1on1は本来、部下の成長を支援し、信頼関係を築き、組織の課題をキャッチするための非常に価値の高いマネジメント手法です。うまく機能すれば、部下は主体的に動き始め、エンゲージメントは高まり、チーム全体の成果にも良い影響が広がります。
ポイントは、1on1を何のために行うのかを明確にし、どのような型で進めるのかを定め、その目的に応じた正しいステップを踏むことです。
本記事では、1on1が形骸化する典型的な原因を明らかにしながら、効果的な1on1を再設計するための三つの型や、明日から実践できる具体的なステップを分かりやすく解説します。
これまでの1on1に課題感を持っている方でも、今日から対話の質を劇的に高めるヒントが必ず見つかります。ぜひこの機会に、1on1を効果的なものへと変えていきましょう。
▼1on1については、テーマごとに以下で詳しく解説しています。
▼1on1や管理職のマネジメントについては、以下の資料もダウンロードしてください。
目次[非表示]
- 1.1on1が形骸化する主な原因
- 1.1.調査結果から分かったこと
- 1.2.目的が不明確:何のために1on1を行うのか共有されていない
- 1.3.知識・スキル不足:基本的な進め方が理解できていない
- 1.4.コミュニケーション不足:上司・部下間の信頼関係が弱い
- 1.5.アジェンダが枯渇:毎回の話題がなくなる
- 1.6.時間確保が困難:忙しさでこなすだけになる
- 1.7.評価と混同するなど、率直な会話ができていない
- 2.1on1の目的を再確認して形骸化を防ぐ「3つの型」
- 2.1.成長支援型:部下のスキル向上と自律を促す
- 2.2.エンゲージメント向上型:信頼関係と心理的安全性を育む
- 2.3.組織課題解決型:現場の声を吸い上げ改善につなげる
- 2.4.型の使い分けが曖昧だと、1on1が形骸化しやすくなる
- 3.形骸化を防ぎ、意味ある1on1にするための実践ステップ
- 3.1.目的とアジェンダの明確化:1on1の再設計
- 3.2.対話スキルの強化:上司が身に付けるべき質問・傾聴の技術
- 3.3.部下の本音を引き出すための事前準備シートの活用
- 3.4.1on1後のアクション設定とフォローの仕組み化
- 4.1on1の効果を引き出すための組織的な土台づくり
- 4.1.心理的安全性の確保:安心して話せる場の設計
- 4.2.フィードバック文化の醸成:対話を日常化する
- 4.3.評価と1on1を切り分ける仕組み
- 4.4.部下一人一人に合わせた関わり:部下理解と信頼関係を深める
- 4.5.1on1を組織の当たり前にする運用ルール
- 5.1on1を形骸化しないための効果的なツール
- 6.形骸化せず効果的に1on1を実施した事例
- 7.まとめ:1on1の形骸化は原因に合わせて適切に対処しよう
1on1が形骸化する主な原因
1on1が形骸化する背景には、複数の要因が重なっています。この要因を整理しないまま進めてしまうと、1on1は次第にやること自体が目的の形式的な時間となり、本来の成長支援や関係構築という価値が発揮されなくなります。
調査結果から分かったこと
弊社が2026年1月に実施した調査によると、1on1や定期面談の実施状況について、以下のような状況が明らかになりました。
▼質問:貴社における、評価面談以外の「1on1や定期面談」の実施状況を教えてください。

「定期的に実施できている」組織は全体の34%
「実施しているが不定期」「形骸化している」組織は全体の43%
「ほとんど実施していない/制度がない」組織は全体の23%
また、上司と部下のコミュニケーションがうまくいかない原因については、以下の通り明らかになっています。
▼質問:貴社において、上司と部下間のコミュニケーションがうまくいかないと考えられる主な原因を教えてください。

「対話の時間不足」と回答した組織が全体の27%で最多
次いで「信頼関係が弱い」と回答した組織が全体の21%と続く結果に
▼調査サマリー
つまり、「実施していない/制度がない」という組織を除くと、半数以上の組織で1on1が「形骸化している」ことが明らかになりました。
また、「対話の時間不足」や「信頼関係の弱さ」が、上司と部下のコミュニケーション悪化の原因となっていることが明らかになりました。
これらの課題を解決しながら、1on1の形骸化を防ぐことが重要です。
▼調査結果の詳細については以下をご覧ください。
⇒【調査レポート速報!】「上司・部下のマネジメントとコミュニケーションの実態」に関する調査結果を公開!
▼調査結果の解説アーカイブウェビナーについては以下をご覧ください。
目的が不明確:何のために1on1を行うのか共有されていない
1on1が形骸化する最も大きな原因の一つが、目的の不一致です。目的が曖昧なまま始めると、上司と部下の期待がすれ違い、会話は表面的になりがちです。
例えば、上司は業務の進捗を確認したいのに、部下はキャリア相談だと思って参加しているなど、意図がずれているケースは珍しくありません。この状態では、部下は何を話していいのか分からず、上司も欲しい情報を得られず、双方にとって満足度の低い1on1になります。
だからこそ、1on1の冒頭で目的を明確に言語化し、共有することが不可欠です。今回は課題の振り返りを行う、成長テーマを深める、キャリアの方向性を整理するなど、テーマを一つに絞るだけで対話の軸ができます。
目的の共有は、1on1を意味のある時間に変える最初の一歩です。
知識・スキル不足:基本的な進め方が理解できていない
1on1がうまくいかない背景には、上司側の知識やスキル不足があります。よくあるのが、アドバイスや指示が中心になってしまい、部下が主体的に話せない状態になることです。
本来1on1は部下の考えや感情を引き出し、自己整理や成長を促す場であって、上司が一方的に教える時間ではありません。しかし、多くのマネジャーは正式な研修を受けた経験がなく、自己流の1on1を行ってしまう傾向があります。
必要なのは、オープンクエスチョンによって考えを引き出すこと、相手の話を遮らずに聴くこと(傾聴)、話の要点を整理すること(サマリー)、そして次のアクションを設定することなどの基本スキルです。これらを理解し実践することで、1on1は一方通行の会話から、成長を生み出す対話へと変化します。
スキルの習得は、形骸化を防ぐための重要なポイントです。
コミュニケーション不足:上司・部下間の信頼関係が弱い
信頼関係が弱いまま1on1を行っても、部下の本音はほとんど出てきません。部下が評価を気にしていたり、弱みを見せたくないと感じていたりすると、安心して話せないため、無難な報告だけで終わってしまいます。
特に普段のコミュニケーションが少ない上司ほど、1on1でいきなり深い話を求めても部下は構えてしまい、本音に触れることはできません。信頼関係は、日常の何気ない声掛け、意見を否定せず受け止める姿勢、努力を認める言葉など、小さな積み重ねによって築かれます。
この基盤が整うと、部下は仕事の悩みや感情、キャリアの迷いなど、普段は話しにくいことも自然と話せるようになります。信頼がなければ1on1は表面的な時間になり、信頼があるほど1on1は価値の高い対話になります。
信頼関係の強化は、形骸化を防ぐための最も重要な基盤です。
アジェンダが枯渇:毎回の話題がなくなる
1on1でよく起きる問題が、話すテーマが尽きてしまう状態です。これは毎回のアジェンダが場当たり的になっていたり、テーマ設定に継続性がなかったりすることが原因です。部下も何を話せばよいか分からず準備ができないため、浅い会話に終始し、形骸化が進みます。
アジェンダの枯渇を防ぐには、テーマを継続的に扱うことが重要です。例えば、短期の業務課題、中期のスキル向上、長期のキャリア検討といった時間軸でテーマを整理するだけでも、自然と扱う内容が生まれ続けます。
また、前回の振り返りや決めたアクションを毎回必ず確認することで、一回一回の1on1にストーリーが生まれます。
話題を探す1on1から、テーマに沿って深める1on1に変えることで、対話の質は大きく向上します。
▼1on1ミーティングのネタについては、以下で詳しく解説しています。
⇒1on1ミーティングのネタはこれで解決!おすすめ最新テーマ一覧を具体例でポイント解説
時間確保が困難:忙しさでこなすだけになる
いくら1on1の重要性を理解していても、時間が安定して確保できなければ必ず形骸化します。直前のキャンセルや時間短縮が続くと、部下は自分の時間が大切にされていないと感じ、信頼関係に悪影響を及ぼします。また、上司自身も準備が不十分になるため、対話が浅くなり、形式的な1on1になってしまいます。
重要なのは、頻度よりも確実に実施される安定感です。月1回でもその時間が確保されているだけで、部下は安心して準備ができ、深い対話がしやすくなります。
さらに、日常の短い振り返りや雑談を取り入れることで、1on1に負荷が集中せず、対話の質も自然と上がります。
忙しさを理由に後回しにされるほど1on1は価値を失うため、時間を確保する姿勢こそが、マネジメントにおける信頼のサインとなります。
評価と混同するなど、率直な会話ができていない
1on1と評価が混同されると、部下は本音を話せなくなります。評価される可能性がある場では、弱みや悩み、キャリアへの不安などを率直に話すことは難しく、結果として1on1は評価対策の場へと変質します。
本来の1on1は、部下の成長やキャリアの方向性を支援するための場であり、評価とは切り離して行うべきものです。ここで評価が扱われると、心理的安全性が低下し、部下は当たり障りのない話しかできません。
だからこそ、評価と1on1は明確に分け、上司がこの場では評価の話はしないと明言することが重要です。この安心感があるだけで部下は本音を話しやすくなり、1on1は本来の価値を取り戻します。
1on1の目的を再確認して形骸化を防ぐ「3つの型」
1on1が形骸化する大きな要因は、そもそも何のために行うのかという目的が明確でないことです。目的に応じた型を理解し、状況に合わせて使い分けることで、1on1の質は大きく向上し、深い対話が実現しやすくなります。
成長支援型:部下のスキル向上と自律を促す
成長支援型の1on1は、部下のスキル向上や自律性を高めることを目的とした型です。形骸化を防ぐためには、部下自身が成長課題を認識し、具体的なアクションにつなげられるような対話が求められます。
この型では、何ができるようになりたいか、最近の成功と課題は何か、どのような支援があれば成長が進むかなど、成長の軸で対話を進めます。また、単なるアドバイスだけでなく、問い掛けも行うことで部下の内省を促すことができ、学びの質が高まります。
重要なのは、1on1のたびに成長テーマがリセットされるのではなく、継続して深めていくことです。前回の振り返りと次のステップを明確にすることで、成長の軌道が可視化され、部下は自分の成長実感を得やすくなります。
成長支援型の1on1は、部下のスキルだけでなく、主体性の向上にもつながります。
基本的には、この成長支援型をベースに進めることがポイントです。
エンゲージメント向上型:信頼関係と心理的安全性を育む
エンゲージメント向上型の1on1は、信頼関係を深め、心理的に安心して働ける環境をつくることを目的とする型です。この型の本質は、部下が安心して気持ちや悩みを話せる場をつくることにあります。
業務の相談に限らず、最近感じていること、ストレス要因、モチベーションの源泉など、感情や価値観に関わるテーマを扱うことが多くなります。
エンゲージメントは生産性に直結するため、この型を定期的に取り入れることで、離職率の低下やチームの安定にもつながります。また、傾聴や共感を重視した姿勢が求められ、上司が安心できる空気をつくれるかどうかが1on1の成功を左右します。
エンゲージメント向上型の1on1が機能すると、部下は本音で話せるようになり、信頼関係が強化され、他の型の1on1も圧倒的に進めやすくなります。
新しく異動してきたメンバーとの関係構築や、自身が新しくマネジャーとしてチームに配属された場合などに活用すると効果的な型です。
組織課題解決型:現場の声を吸い上げ改善につなげる
組織課題解決型の1on1は、現場で起きている課題や改善ポイントを把握し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることを目的とした型です。
現場の声はトップには届きにくいため、1on1を通じて細かな課題や働きづらさを収集することは非常に重要です。
この型では、業務プロセスの改善点、ボトルネック、チームの雰囲気、連携の課題などをテーマとして扱います。ただし、単なる愚痴の受け皿にするのではなく、課題を事実ベースで整理し、何ができるかを一緒に考える姿勢が求められます。
部下は自分の意見が組織に活かされている実感を得られ、上司は現場改善のヒントを得ることができます。組織課題解決型は、部下の視点を組織運営に反映させるための重要な1on1の型です。
型の使い分けが曖昧だと、1on1が形骸化しやすくなる
1on1が形骸化してしまう理由の一つは、この型の使い分けが曖昧なことです。毎回同じような話題で終わってしまったり、目的が固定されて深まりがなくなったりすると、1on1は形骸化してしまいます。
例えば、業務の進捗ばかりを確認してしまい、成長支援やエンゲージメント向上に時間を割けないケースは少なくありません。また、部下によって必要な型は異なるため、どの型を優先するのかを見極めることも大切です。
今は成長支援が必要なのか、感情面のケアが必要なのか、あるいは組織課題の整理が必要なのか。こうした判断を上司が意識することで、1on1の質は大きく向上します。
型を意識して選ぶことは、1on1を意図的にデザインすることであり、部下の成長やチームの生産性向上に直結します。型の選択は、形骸化を防ぐ重要なポイントです。
形骸化を防ぎ、意味ある1on1にするための実践ステップ
1on1が形骸化するのを防ぐためには、具体的な実践ステップを押さえる必要があります。本章で紹介する実践ステップを丁寧に整えることで、1on1は確実に質が高まり、部下の成長とチームの成果の両方を引き上げる場になります。
目的とアジェンダの明確化:1on1の再設計
意味ある1on1を実現するための最初のステップは、目的とアジェンダを明確に再設計することです。目的が曖昧なままだと、会話は場当たり的になり、どうしても浅い内容で終わります。
まずは1on1の大枠として、成長支援、エンゲージメント向上、組織課題の吸い上げのいずれかを目的とするのかを整理し、その上で回ごとにアジェンダを設定します。アジェンダは部下と事前に共有し、話したいテーマがあれば追加してもらうことで、双方が主体的に参加する1on1になります。
また、アジェンダは長期テーマと短期テーマを混ぜると効果的です。例えば、今の業務の課題、スキルアップの方向性、キャリアの長期視点などをバランスよく入れることで、継続的な対話が可能になります。
目的とアジェンダの設計がブレなくなると、1on1は一気に質の高い場へと変わります。
対話スキルの強化:上司が身に付けるべき質問・傾聴の技術
1on1の質を左右するのは、上司の対話スキルです。中でも、質問と傾聴の技術は最も重要なポイントです。
質問では、部下の考えを広げるオープンクエスチョンを中心に使い、なぜそう思うのか、他に選択肢はあるか、もし制約がなかったらどうしたいかなど、気付きを促す問いが効果的です。
また、傾聴では相手の言葉を遮らず、受け止め、要点をまとめて返すことが重要です。これにより、部下は自分の話が理解されているという安心感を持ち、本音が出やすくなります。
さらに、アドバイスを急がず、まず相手の考えを引き出す姿勢が1on1の質を決めます。上司が対話スキルを意識的に鍛えることで、部下が主体的に考え、自ら成長できる1on1へと変化します。
スキルの強化は、1on1の形骸化を防ぐために即効性のあるアプローチです。
部下の本音を引き出すための事前準備シートの活用
1on1を深い対話にするためには、部下の事前準備が欠かせません。そのために役立つのが、事前準備シートの活用です。シートには、最近の出来事、良かったこと、課題に感じていること、相談したいテーマ、成長に向けた振り返りなどを書けるようにします。
部下はこれを記入することで、自分の状態を整理しやすくなり、1on1での話題が自然と明確になります。また、上司側も事前に内容を把握することで、何を深掘りすべきかを事前に準備でき、より価値のある対話が可能になります。
事前準備シートは、1on1の時間を有効に使うための土台であり、場当たり的な会話を防ぎます。特に内向的な部下や、話題探しが苦手な部下にとっては、有効性が高い仕組みです。
1on1後のアクション設定とフォローの仕組み化
1on1の価値を最大化するためには、1on1後のアクションとフォローを仕組み化することが重要です。対話の場が良くても、行動につながらなければ成長も改善も進みません。
まず、1on1の最後には次回までに何を実践するのか、部下と上司の双方が何をするのかを明確に決めます。小さなステップで構いませんが、具体的であるほど効果が高まります。
また、決めたアクションは次回の1on1で必ず振り返ることで、継続性が生まれます。このサイクルが確立すると、部下は自分の成長を実感しやすくなり、上司も支援ポイントを見失わずにすみます。
さらに、1on1直後にメモを共有する仕組みを作ると、双方の認識がずれず、次回への準備がしやすくなります。アクションとフォローの仕組み化は、1on1を成長のエンジンへと変える最も強力な手法です。
1on1の効果を引き出すための組織的な土台づくり
1on1を個々の上司任せにすると形骸化しやすく、組織全体として定着しません。1on1を文化として根づかせるためには、組織的な土台づくりが必要です。
心理的安全性の確保:安心して話せる場の設計
1on1の効果を最大限に発揮するためには、部下が安心して話せる心理的安全性の確保が欠かせません。心理的安全性が低い組織では、部下は弱みや悩みを隠し、表面的な報告だけを行い、本音の対話は生まれません。
上司がどれだけ丁寧に1on1を運用しようとしても、組織の空気が緊張していれば深い話は出てきません。心理的安全性を高めるには、否定をしない姿勢、感情を受け止める対応、小さな意見でも肯定的に扱う文化が必要です。
また、ミスを責めず、学びに変える習慣がある組織は、1on1でも本音が引き出されやすくなります。心理的安全性は、1on1の技術以前に整えるべき基盤であり、これが整うことで部下は安心して課題や希望を語り、1on1の質が劇的に向上します。
▼心理的安全性が低い上司については以下の記事で詳しく解説しています。
⇒心理的安全性が低い上司との関係改善の方法とは? 特徴や原因から解説!
フィードバック文化の醸成:対話を日常化する
フィードバックが日常的に行われていない組織では、1on1が数少ない対話の場となり、重くなりすぎて形骸化しやすくなります。日常的にフィードバックが行われる文化があると、1on1はさらに深い議論に進める貴重な場となり、毎回充実した内容が生まれます。
上司は成果や行動に対するポジティブフィードバックを普段から行い、成長の方向性を明確に伝えることが求められます。また、部下も上司に意見を伝えやすい環境を整えることで、双方向のコミュニケーションが活発になります。
フィードバック文化が根づくと、1on1の場でもスムーズに振り返りや改善の話ができ、対話が促進されます。日常的な対話の積み重ねがある組織ほど、1on1の効果は何倍にも高まります。
▼フィードバックについては、以下で詳しく解説しています。
⇒効果的なフィードバックのやり方とは?心構えと具体的な手法を解説!
評価と1on1を切り分ける仕組み
1on1が評価と結びついてしまうと、部下は本音を語れなくなります。評価される場では、弱みや迷い、課題などは話しにくく、当たり障りのない報告だけになりがちです。
そのため、1on1を成長支援の場として機能させるためには、評価面談とは完全に切り分ける仕組みが必要です。組織として、評価の話は評価面談で行う、1on1では成長や感情、キャリア支援を扱うといった明確なルールを決めることが不可欠です。
また、上司自身が1on1の冒頭でここでは評価の話をしないと伝えることで、部下の安心感は格段に高まります。評価と1on1を切り離すことは、心理的安全性を守り、部下が主体的に成長テーマに向き合える環境をつくるための必須条件です。
部下一人一人に合わせた関わり:部下理解と信頼関係を深める
1on1を効果的にするには、組織の仕組みだけでなく、上司が部下一人一人の個性に合わせて関わることが不可欠です。
性格、価値観、強み、弱み、話し方のクセ、モチベーションの源泉などは人それぞれ異なります。同じ型や同じアプローチを全員に当てはめようとしても、相性の合わない部下には響きません。
例えば、論理的に話したい部下には事実を整理しながら議論を深めることが有効です。一方、感情を重視する部下には安心して感情を話せる雰囲気づくりを優先することが重要です。また、話すことが得意な部下もいれば、問いを使ってゆっくりと引き出す必要がある部下もいます。
部下理解を深めて関わり方を調整できる上司ほど、部下の本音を引き出し、信頼関係を強固にすることができます。これにより、1on1は形式的な面談から、成長と心理的安心を生み出す価値ある時間へと変化します。
部下一人一人に合わせた関わりは、仕組みだけでは実現できない、1on1成功の本質的な要素です。
1on1を組織の当たり前にする運用ルール
1on1を文化として根づかせるには、運用ルールの整備が欠かせません。上司任せにしていては実施率にばらつきが生まれ、形骸化しやすいため、組織として頻度、時間、準備方法、記録方法を明確に定めると効果的です。
例えば、月1回は必ず実施する、30分以上の時間を確保する、事前にテーマを共有する、振り返りメモを簡単に残すなど、一定の基準を作ることで運用が安定します。また、管理職研修などを通じて1on1のスキルや考え方を標準化することも重要です。
1on1の質を高める仕組みが整うと、部下は毎回の対話を成長のチャンスとして捉えやすくなり、上司も負担を感じずに運用できます。そして、1on1が組織の当たり前になることで、継続性が生まれ、組織全体の成長に結びつく文化として浸透します。
1on1を形骸化しないための効果的なツール
1on1を形骸化しないためには、心理的安全性を高め、部下一人一人に合わせた関わりをすることが重要です。ここでは、LDcubeが提供する主な2つのツールをご紹介します。
心理的安全性を高めるにはeラーニングで学習しよう
ここでは心理的安全性を学ぶ際に利用できる動画によるeラーニングコンテンツを紹介します。
心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①② |
【コース概要】 組織やチームにとって重要な内容であるにもかかわらず、自分の考えを言わず、質問を控え、黙っていたことが何度ありますか? 従業員が安心して発言できるようにするには、心理的に安全な環境を整える必要があります。本コースでは、対人関係の不安がいかに組織をむしばむか、そして、その乗り越え方をさまざまな事例を通じて学習します。 【講師略歴】 エイミー・C・エドモンドソン エイミー・C・エドモンドソンは、ハーバード・ビジネススクールのノバルティス記念講 座教授として、リーダーシップとマネジメントを教えています。 2年に1度発表される経営思想家の世界的なランキング、Thinkers50では、2011年、2013年、 2015年、2017年に選出され、2017年にはTalent Awardも受賞しました。 リーダーシップ、チーミング、組織学習に関する教育や執筆に従事し、ハーバード・ビジネス・レビューやカリフォルニア・マネジメント・レビューなどの経営誌や一流 の学術誌に寄稿しています。 心理的安全性に関する先駆的な研究で最もよく知られており、過去15年間に わたって経営、医療、教育分野のさまざまな学術研究に貢献してきました。 『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(英治出版)や『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)などの著書があります。 |
▼詳細はこちらから
⇒心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①(マイクロラーニング)
部下一人一人に合わせた関わりにはLIFOを活用しよう
部下との効果的な1on1ミーティングを実施するためには、相手に合わせたコミュニケーション能力を高めることが必要です。
そこで役立つのが行動特性診断を活用したコミュニケーション研修です。研修を通じて、自身の行動特性の把握や、他社理解を深めることが可能になり、1on1ミーティングのための実践的なスキルを身に付けることができます。
その中でも、有力なツールの一つとして知られているのが LIFO(ライフォ)です。
■ 自己診断ツールLIFOとは
LIFO(Life Orientations)は、個人の行動スタイルを診断する自己診断ツールです。このツールは、自分の強みや行動パターンを理解するために役立ちます。
LIFOは4つの基本スタイルに基づいており、これらのスタイルはそれぞれ異なる行動特性や価値観を持っています。
自分がどのスタイルに属しているかを知ることで、より良いコミュニケーション方法やストレス時の行動傾向を把握することができます。
■ LIFOを活用したコミュニケーション研修
LIFOを活用したコミュニケーション研修では、まず参加者が自己診断を行い、自分の行動スタイルを理解します。この診断結果を基に、どのように他者と効果的にコミュニケーションを取るかを学びます。
研修では以下のような内容が含まれます。
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LIFOを取り入れた研修に参加することで、個人のコミュニケーションスタイルを理解し、それをベースに他者との関係を改善するスキルを獲得できます。
これにより、職場や日常生活でのコミュニケーションはもちろん、1on1ミーティングがよりスムーズで効果的になることが期待できます。
▼LIIFOの詳細はこちら
⇒LIFO|LDcube(エルディーキューブ)
形骸化せず効果的に1on1を実施した事例
株式会社山梨放送/放送業
■ 導入前の課題
新型コロナウイルス感染症の流行以前は、社内イベントを通じて活発にコミュニケーションが行われていましたが、コロナ禍により社内の人間関係が希薄化し、特に若手社員の早期離職が顕著になりました。
また、放送業界の人手不足と業務の多忙さから、社員教育には力を入れられずにいました。そこで、70周年プロジェクトの一環として「シゴトバ改革」を推進することが決まり、社員が自発的に提案し実行に移すボトムアップ型のアプローチを採用しました。
■ 出会いと導入の決め手
各局や地元企業の事例調査によって、1on1ミーティングが効果的であると分かりましたが、社員の個性を理解するまでには至りませんでした。
キャリアコンサルタントの提案で、相互理解を深めるためにLIFO診断を導入しました。LIFOはその場で診断結果を得られるため、柔軟な勤務時間を抱える社員にも受講しやすく、コミュニケーション改善のツールとして活用が決定されました。
■ 展開ステップと取り組み
1on1ミーティングを実施前に、全社員を対象にLIFOの活用法などを盛り込んだセミナーを実施しました。管理職と一般社員に分けたセミナーで、ミーティングの目的やLIFOの活用法を学びました。
セミナーを契機に、多くの社員が参加し、テーマへの高い関心が示されました。セミナー内容を随時アーカイブとして提供し、参加できなかった社員にも情報を共有しました。
■ 導入後の感想と成果
LIFOの活用で、上司と部下の相互理解が進み、コミュニケーションのきっかけとなりました。1on1ミーティングでは、定期的にLIFOのスコアが話題となるなど、一歩踏み込んだ対話が実現しています。
中には、得られた結果を基に改善に取り組む社員も出始めています。このツールは、管理職のガイドとなり得る可能性があり、引き続きLIFOを活用していく方針です。
■ 取り組みにおける課題と今後の展望
「シゴトバ改革」はボトムアップ式で進行しているため、部署ごとに進捗に差があります。また、1on1ミーティングの目的が理解されず、不満のぶつけ合いになるケースもあるため、意識改革が必要です。
社内通信などでLIFOの考え方を広め、1on1以外にも日常のコミュニケーションやチームビルディングに活用することを目指しています。特に新体制時や社員異動時に効果的であり、職場の活気を向上させることを期待しています。
▼事例の詳細については下記をご覧ください。
⇒株式会社山梨放送様 LIFO導入事例
まとめ:1on1の形骸化は原因に合わせて適切に対処しよう
本記事では、1on1が形骸化してしまう典型的な原因から、その改善方法、そして組織として効果を高めるための仕組みづくりまで幅広く解説してきました。
まず、1on1がうまく機能しない背景には、目的の不明確さや対話スキル不足、信頼関係の弱さ、アジェンダの枯渇、時間確保の不安定さ、評価との混同など複数の要因が重なっている点が挙げられます。
これらが積み重なることで、1on1は徐々に形式的となり、本来期待される成長支援や関係構築の価値を発揮できなくなります。
その課題を乗り越えるために重要なのが、1on1の目的を明確化し、成長支援型、エンゲージメント向上型、組織課題解決型という三つの型を使い分けることです。目的に応じた型を選ぶことで、対話の方向性が定まり、部下にとっても安心して話せる場がつくられます。
また、目的とアジェンダの再設計、質問と傾聴のスキル強化、事前準備シートの活用、アクション設定といった具体的な実践ステップを整えることで、1on1は格段に質が高まり、継続的な成長につながります。
さらに、心理的安全性を育むことやフィードバックを日常化すること、評価と1on1を明確に切り分けること、そして運用ルールを整備することは、組織として1on1を根づかせるために欠かせません。
1on1は単なる制度ではなく、組織の文化そのものです。今日から一つでも取り入れることで、部下の成長とチームの成果は確実に変わり始めます。ぜひ、自組織に合った1on1の型と運用を再設計し、意味ある対話へと進化させていきましょう。
株式会社LDcubeでは、効果的な1on1ミーティングの実施を支援すべく、LIFOプログラムを活用した研修会、eラーニング、LIFOプログラムの社内インストラクター養成など幅広くご支援をしています。また、心理的安全性を学習するためのeラーニングコースの提供もしています。無料体験会なども行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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