人的資本経営の実現に向けた研修とは?組織と個人に効果的な施策
近年、人材を企業の資本として捉える人的資本経営が企業で導入されており、社員の能力を引き出せるような研修やスキルアップにつながる施策が求められています。
そのためにはeラーニングやLMSなどを活用し、社員の学習行動のデータ取得とその活用が重要になります。
概要とポイントを解説します。
▼人的資本経営を進める上での課題については下記で詳しく解説しています。
⇒人的資本経営に向けた課題と解決策!企業に求められる5つの取り組み
▼人的資本経営における指標については下記にて詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒人的資本経営で重要な指標とは?KPI設定の具体的な流れを紹介
▼人的資本経営についてまとめた資料はこちらからダウンロードできます。
目次[非表示]
- 1.人的資本経営の基本概念
- 2.人的資本経営に向けた研修とは
- 2.1.企画・推進部署向けの研修
- 2.2.従業員対象の研修
- 3.人的資本の充実に向けた研修例
- 3.1.①リーダーシップ研修
- 3.2.②マネジメント研修
- 3.3.③自社理解研修
- 3.4.④レジリエンス研修
- 4.人的資本経営によるメリット
- 5.人的資本の充実への研修のみならず継続的な学習環境づくり
- 5.1.eラーニングやLMSの活用
- 5.2.学習データの活用
- 5.2.1.学習時間数
- 5.2.2.学習コンテンツ数・受講数
- 5.2.3.学習進捗度合い
- 5.2.4.参加した研修やセミナー数
- 5.2.5.フィードバックデータ
- 6.学習行動のデータ取得が課題
- 7.まとめ
人的資本経営の基本概念
人的資本とは、従業員一人一人が持つスキルや知識を企業の付加価値を生み出す資本として捉える考え方です。
人的資本が注目される背景には、企業のグローバル化や働き方改革、女性の社会進出などに伴って人材が多様化したことが背景にあると考えられています。
多種多様な人材の価値や能力を引き出すことで企業にとってプラスの効果が期待できるとして、人的資本経営への取り組みが近年重要視されるようになりました。
人的資本経営とは人材を企業の重要な資本として捉え、適切に投資していくことで能力の向上やモチベーションの向上を目指す経営手法です。従業員の能力向上には研修やエンゲージメントなど、従業員が活性化を図れるような取り組みが有用であり、従業員の満足度の向上も期待できます。
人的資本経営にかかる費用はコストではなく、投資として考えることが重要であり、持続的な企業価値の向上を目指すことが大切です。
▼人的資本経営など、人材育成についての最新トレンドについては下記で案内しています。合わせてご覧ください。
⇒大注目の人材育成トレンドを紹介!企業の人事担当者必見!
人的資本経営に向けた研修とは
人的資本経営に向けた研修は大きく2種類あります。企画・推進部署向けの研修と、人的資本である従業員向けの研修です。
(人的資本経営に向けた研修)
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企画・推進部署向けの研修
人的資本経営について気角・推進する部署は、主に以下のとおりです。
- 人事部門
- 人材戦略を推進する部門
- 経営企画部門・経営層
- IR・広報部門 など
企業で人的資本経営を適切に行うためには、人事や経営方針に関する業務を担う従業員から理解を深めていくことが必要です。
経営層や人事、広報などが人的資本に対する理解があれば、企業が抱える現状の課題や将来的に起こり得る課題に対応できる人材の育成と採用を実現しやすくなります。
人的資本経営の実現を推進するためには、以下のような研修がおすすめです。
- 人的資本経営の基本
- 人材育成
- 従業員エンゲージメント
- 流動性(採用・維持・サクセッション)
- ダイバーシティ
- コンプライアンス など
人的資本経営を行うためには、まず企業全体で基本的な考え方や目的を理解しておく必要があります。
また、従業員一人ひとりの能力向上はもちろん、従業員同士がお互いを尊重する意識や多様性への理解など、幅広い分野の研修の実施が望ましいです。
従業員対象の研修
人的資本の増強を図っていくためには、人的資本である従業員への人材育成施策、研修の実施がかあせません。下記などがあります。
- リーダーシップ研修
- マネジメント研修
- 自社理解研修
- レジリエンス研修
各研修については次章で詳しく解説してます。
人的資本の充実に向けた研修例
ここでは、人的資本経営で社員に直接投資する施策例を紹介します。
これらの研修は外部講師派遣による研修でも社内講師による研修でも、どちらでも良いです。また、位置づけとしては、単発の研修もあれば、階層別研修として実施されることもあります。(組織により名称などは異なる場合があります。)
①リーダーシップ研修
リーダーシップ研修とは、多様な人材とのコミュニケーション力や、課題の発見・解決力を養う研修です。
企業におけるリーダーシップは、これまでにない製品やサービスを考えたり企業の将来的な課題や目標を考えたりするなど、重要な役割を担っています。
企業の発展に欠かせない創造力を持つ人材を育てることで、経営の安定化や成長が期待できます。
▼リーダーシップ開発については下記で詳しく解説しています。
⇒リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント
②マネジメント研修
マネジメント研修とは、ダイバーシティ経営の理解促進、多様性を生かす職場マネジメントの考え方・行動を学ぶ研修です。
近年では企業で働く人材の価値観や属性、働き方などが多様化しており、ダイバーシティ推進を通して新たな成果や価値を生み出せる組織づくりが求められます。
社員の多様性を理解して生かすことで、お互いに高めあえる職場環境が実現できます。
▼管理職研修については下記で詳しく解説しています。
⇒理職研修におすすめの内容10選|プログラム・対象階層・効果を紹介
③自社理解研修
自社理解研修とは、新人社員・若手社員が仕事や職場にスムーズに適応するのに必要な先輩や上司への働きかけや、主体性の発揮などを養うための研修です。
新人や若手社員のなかには、入社前の理想と入社後の現実のギャップに衝撃を受けるリアリティショックに陥ることがあります。
リアリティショックは将来への不安や喪失感を覚える要因となり、モチベーションの低下や離職につながるケースも少なくありません。
社員のリアリティショックを克服するためには、自社理解研修を通して適切な考え方や行動について学ぶ必要があります。
▼職場メンバーでワークショップを実施することもおすすめです。
⇒行動特性を踏まえた自分・自己理解を深めるワークショップ(研修)とは!
④レジリエンス研修
レジリエンス研修はストレスや逆境、トラブルなどに直面した際にスムーズに適応し、速やかに立ち直れる力を養う研修です。
常に環境が目まぐるしく変化する現代では、そのストレスに耐えられずメンタル不調に陥る場合があります。
レジリエンスを実施することで、あらゆる困難や逆境下でも自ら立ち直り、本来のパフォーマンスを発揮し続けられる人材を育成できます。
いずれの施策も集合研修やwebを活用したオンライン研修を実施して終わりではなく、プラットフォームを活用して研修の前後含め、社員の学習行動データを取得していくことが必要になってきます。
▼レジリエンス研修については下記で詳しく解説しています。
⇒レジリエンス研修とは?実施で得られる効果と代表的な5つの要素
▼基礎から応用まで体系的に学ぶ階層別研修については下記で解説しています。合わせてご覧ください。⇒階層別研修とは?達成すべき目標や習得させたい知識・スキルを徹底解説
人的資本経営によるメリット
ここでは、人的資本経営を実現することで得られるメリットを5つ紹介します。
①社員の能力の見える化 ②適材適所の人材配置が可能になる ③エンゲージメントの向上 ④組織力と生産性の向上 ⑤多様性のある組織づくりの推進 |
人的資本の充実への研修のみならず継続的な学習環境づくり
人的資本の充実化を図るためには、社員への研修などの施策も重要です。
しかし、研修にとどまらず、eラーニングなどの学習環境を整備し、社員のスキルアップやリスキリングにつなげて行くことが必要です。
eラーニングやLMS(Learning Management System: 学習管理システム)の活用によって、社員の学習行動のデータを取得できます。
これらのデータを取得し分析することで、人的資本への投資度合いを具体的に示すことも可能になります。
▼全社員研修などの施策については下記で詳しく解説しています。
⇒社員研修会にはeラーニング・LMSの活用が効果的!?
eラーニングやLMSの活用
人的資本を充実させるためには、パーソナライズされた学習環境の整備が極めて重要です。eラーニングやLMSを活用することで、その実現が可能です。
これらのシステムを用いれば、学習者は自己の学習進度や興味に合わせた内容を、いつでも、どこでも、何度でも学ぶことができます。
学習環境の整備により、時間や場所にとらわれず、自由な学習を社員に提供することが可能です。
これは、一対一の指導が難しい大規模な組織でも有効で、個々の学習者のニーズを捉えて最適化した学習プログラムを提供することが可能になります。
▼現代のLMSに求められる機能については下記で解説しています。
⇒現代に求められるLMSとは?世界NO.1学習管理システムを解説!
学習データの活用
人的資本経営の実現には、以下のような社員の学習行動のデータが重要です。そして、そのようなデータを効果的に活用したり、開示したりすることがポイントです。
学習時間数
社員がどれだけの時間を学習に投資しているかを明確にすることができます。これは社員の学習への参画度を測る目安となり、また学習時間とパフォーマンスとの相関関係を調査することも可能になります。
学習コンテンツ数・受講数
組織内にどれだけの学習コンテンツがあり、社員がどのような学習コンテンツを受講しているか、または組織が指定したコンテンツをどの程度完了しているかを把握することが重要です。これにより、組織として重要視しているスキルの習得と、社員が関心を持っている分野やスキルを理解できます。
学習進捗度合い
社員が学習をどの程度進めているか、試験や課題の結果などの成果についてのデータも重要です。これは社員の学習状況や学習意欲、理解度を評価すると同時に、学習コンテンツの効果性を評価するのにも役立ちます。
参加した研修やセミナー数
eラーニングコンテンツのみならず、研修などの受講履歴も管理することができます。それにより、社員一人ひとりがどの研修やセミナーに参加したかを把握することができます。
フィードバックデータ
社員から得たフィードバックは、社員の学習ニーズや感じている課題などを理解するのに役立ちます。学習プログラムや研修会の改善や、今後充実化を図っていく方向性などを検討する際に活用できます。
しかし多くの場合、組織は研修実施回数や研修受講者数のようなデータしか把握できていません。
人的資本経営を推進していくためには、より詳細で、今後活用可能な学習行動のデータ取得が求められます。
そして、そのようなデータをタレントマネジメントシステムなどを活用して運用していくことで、人的資本の価値を高めることにつながり、効果的なタレントマネジメントの実現にもつながっていきます。
学習行動のデータ取得が課題
2023年7月に、株式会社LDcubeでは「ポスト・コロナのOJTの人財育成の実態」についてのアンケート調査を実施しました(有効回答数223件)。
アンケートでは、「人的資本経営が重要になってきているという状況下で、貴社では『社員がどれくらい学習しているか』といった、社員の学習行動についてのデータを取得・可視化できていますか?」という問いを投げかけました。
データ取得の結果、77%の組織が社員の学習行動のデータを取得できていないことが明らかとなりました。
これからの人的資本経営を推進する上で、まず立ちはだかる課題と言えるかもしれません。人的資本である社員が研修会のみならず日ごろからどれくらい学習行動を取っているのかのデータを活用して、人的資本の充実化を図る施策のPDCAを回し、投資効率を高めていくことが必要となります。
▼人的資本経営実現に向けた課題については下記で案内しています。合わせてご覧ください。
⇒人的資本経営に向けた課題と解決策!企業に求められる5つの取り組み
まとめ
この記事では、人的資本経営の実現に向けた研修について以下の内容で解説しました。
- 人的資本経営の基本概念
- 人的資本経営を実現するための研修とは
- 人的資本の充実に向けた研修例
- 人的資本経営によるメリット
- 人的資本の充実への学習環境
- 学習行動のデータ取得が課題
人的資本経営の実現に向けた研修にはさまざまな形や学習方法がありますが、人材の能力を引き出し成長させて企業価値を向上させるという目的は共通です。
企業で人的資本経営を適切に実施するためには、研修を通して企業全体で人的資本の考え方や目的を理解して実践していく必要があります。
より効果的・効率的に社員に研修を受けてもらいたいと考えているのであれば、学習管理システムの導入がおすすめです。
それにより、社員の学習行動データが取得でき、人的資本経営の実現状況をモニタリングしていくことが可能になります。
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