心理的安全性の研修はどう企画する?具体的な内容や設計のポイント
「心理的安全性を高める研修を実施したいが、何を盛り込めばいいのかわからない……」
近年、組織パフォーマンスの向上と人材定着の鍵として、心理的安全性への注目が高まっています。
心理的安全性の概念は頭では理解できても、職場にどう浸透させればよいのか、具体的な方法に苦慮する方は少なくありません。
本記事では、心理的安全性を高める研修を企画する際のポイントを解説します。
心理的安全性の定義と重要性から、研修目的の設定、具体的な内容設計、階層別プログラム例まで、実践的な情報をお届けします。
ご一読いただき、自社の課題に即した心理的安全性研修を設計して、組織風土改革を推進するヒントをお持ち帰りください。
▼「心理的安全性」を提唱したエイミー・C・エドモンドソン博士の教えについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください(本人動画あり)。
⇒心理的安全性がビジネスに必要な理由?エドモンドソン博士の視点を解説
▼心理的安全性の作り方については下記で解説しています。
⇒心理的安全性の作り方とは?今すぐリーダーが試したい20の具体策について解説!
▼心理的安全性をマネジメントに取り入れるポイントについては下記で詳しく解説しています。
⇒心理的安全性を職場のマネジメントに取り入れるには?ポイントを解説!
▼心理的安全性についてまとめた資料は下記よりダウンロードできます。
目次[非表示]
- 1.心理的安全性の研修を企画する前に
- 1.1.心理的安全性とは何か
- 1.2.心理的安全性が低い状態の特徴と組織に与える影響
- 1.3.心理的安全性を高めるメリット
- 2.心理的安全性の研修の目的をどう定めるか
- 2.1.アンケートとインタビューで現状を把握する
- 2.2.目指すゴールと達成基準を具体的に定める
- 2.3.リーダー層と一般社員で内容を変える
- 3.心理的安全性研修の具体的な内容と進め方
- 3.1.講義:心理的安全性の概念と重要性の解説
- 3.2.ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有
- 3.3.ワーク:学んだ知識の実践と体得
- 3.4.アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案
- 4.階層別の心理的安全性研修プログラム例
- 5.まとめ
心理的安全性の研修を企画する前に
研修を実施する前に、心理的安全性とは何か、なぜ必要とされているのかを正しく理解しておく必要があります。
最初に、心理的安全性の基本概念と、組織にもたらす影響について解説します。
心理的安全性とは何か
心理的安全性とは、チームのメンバーが安心して自分の意見を言ったり、失敗を恐れずに挑戦したりできる環境をいいます。
“心理的安全性が高い” とは、具体的に以下のような状態を指します。
【心理的安全性の高いチームの特徴】
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心理的安全性を正しく理解するには、「ストレスやプレッシャーのない環境」や「衝突のない仲良しチーム」とは区別することが大切です。
心理的安全性の高い環境では、むしろ衝突を恐れずに活発な議論が交わされ、間違いと感じればそれをストレートに指摘し合えるのです。
心理的安全性が低い状態の特徴と組織に与える影響
反対に、心理的安全性の低い状態だと、以下の特徴が見られ、組織のパフォーマンスに負の影響を及ぼします。
【心理的安全性の低いチームの特徴と弊害】
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組織の競争力やリスク対応、従業員のメンタルヘルス・人材定着率など、組織が直面する多くの問題の根底に、心理的安全性が関わっているといえます。
心理的安全性を高めるメリット
一方、心理的安全性を高めると、以下のようなメリットが期待できます。
【心理的安全性を高めるメリット】
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このように、心理的安全性の高い組織ではメンバーの能力が最大限に引き出され、継続的な成長が実現します。ここに、研修などを通じて心理的安全性の理解を深め、醸成を図る意義があるのです。
なお、「チームの心理的安全性」の概念を提唱したのは、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授です。
チームの心理的安全性の源流に触れて本質を学びたい方は、エドモンドソン教授による書籍や教材の利用をおすすめします。
以下の資料では、エドモンドソン教授の教えを凝縮して解説していますので、ぜひご活用ください。
心理的安全性の研修の目的をどう定めるか
ここからは、心理的安全性の研修に焦点を当て、より掘り下げた解説を進めていきます。
研修を企画する際、まずは「研修の目的」を明確にすることが大切です。
漠然と実施するのではなく、自社の課題に合わせた具体的な狙いを定めることが、研修の効果を高めます。目的設定のポイントを3つ、見ていきましょう。
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アンケートとインタビューで現状を把握する
1つ目のポイントは「アンケートとインタビューで現状を把握する」です。
研修の目的を検討する前に、自社の心理的安全性の現状を把握しておきましょう。全従業員を対象にしたアンケート調査と、一部の従業員へのインタビューを実施するのが効果的です。
参考として、エドモンドソン教授による意識調査の設問を以下に引用します。
【心理的安全性に関する意識調査】
- このチームでミスをしたら、きまって咎められる。(R)
- このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。
- このチームの人々は、他と違っていることを認めない。(R)
- このチームでは、安心してリスクを取ることができる。
- このチームのメンバーには支援を求めにくい。(R)
- このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を故意にする人は誰もいない。
- このチームのメンバーと仕事をするときには、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている。
出典:エイミー・C・エドモンドソン,『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』, 英治出版, 2021年
7段階(「非常にそう思う」から「全くそう思わない」まで)または5段階の尺度で回答を得て、スコアを算出します。(R)の設問(1. 3. 5.)は逆転項目のため、スコアを反転させます。
このようなアンケートの回答結果を分析すれば、会社全体の心理的安全性の状態と、部門・部署ごとの傾向を可視化できます。
加えて、一部の従業員にインタビューを行い、アンケートの数値からは読み取れない、具体的な悩みや問題点を把握しましょう。
目指すゴールと達成基準を具体的に定める
2つ目のポイントは「目指すゴールと達成基準を具体的に定める」です。
現状分析の結果を踏まえ、心理的安全性の研修で目指すゴールを設定しましょう。抽象的な目標ではなく、具体的で測定可能な達成基準を定めることが大切です。
【心理的安全性研修の目標設定例】
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数値目標の設定により、研修の成果を評価しやすくなります。目標に向けて着実に行動を積み重ねれば、確実に心理的安全性の向上が期待できるでしょう。
リーダー層と一般社員で内容を変える
3つ目のポイントは「リーダー層と一般社員で内容を変える」です。
研修は、それぞれの立場や習熟度に応じたカスタマイズによって、効果の向上が期待できます。
たとえば、リーダー層は、心理的安全性の重要性の理解に加え、部下の心理的安全性を高めるマネジメント手法の習得を目指します。
一般社員向けには、心理的安全性の意義を伝えつつ、自身のコミュニケーション力やストレス対処法の強化に重点を置くとよいでしょう。
対象者に合わせた学びの機会を提供し、それぞれの気づきを引き出すことが鍵となります。
具体的なカスタマイズの例は、後ほど解説しますので、続けてご覧ください。
心理的安全性研修の具体的な内容と進め方
続いて、心理的安全性研修の具体的な内容設計について解説します。
座学だけでなく、ディスカッションやロールプレイングなどを織り交ぜ、体験的な学びを促進することを意識しましょう。
以下、研修の進め方の例をご紹介します。
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講義:心理的安全性の概念と重要性の解説
1つ目のパートは「講義」です。
研修の冒頭では、心理的安全性の基本的な概念と重要性について、座学形式で伝えます。講義の設計においては、以下の点に留意するとよいでしょう。
【講義設計のポイント】
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心理的安全性の概念理解は、研修の土台となる重要なパートです。受講者の興味を引き、わかりやすく伝えることに細心の注意を払います。
また、研修に先立って、eラーニング教材などで基礎知識を習得してもらう「反転学習」の手法も有効です。
反転学習とは、基本的な知識は個人で事前に学習し、研修の場では演習やディスカッションに時間を割くアプローチです。予習と実践の組み合わせで、学習効果を最大化できます。
事前学習用の教材としては、エドモンドソン教授による動画講義を通じて心理的安全性について学べる以下のコースがおすすめです。
【心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①】
- 心理的安全性とは
- 率直に話せる文化の価値
- 心理的安全性が持続的なパフォーマンスを生む
- 従業員を守るための発言
- 権力者が持つ過度な自信の危険性
- 回避可能な失敗が起こる理由
- 沈黙の文化を壊す
- 職場のセクハラをなくす
【心理的安全性がつくる恐れのない職場コース②】
- 心理的安全性のつくり方
- 心理的安全性の土台づくり
- 参加の促し方
- 生産的に対応するには
- 失敗の科学
- 効果的な試験事業
- 改革への抵抗を克服する
- チーミングとは?
詳しくは以下のページよりご確認ください。
ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有
2つ目のパートは「ディスカッション」です。
習得した基礎概念をベースに、受講者同士のディスカッションを通じて、学びを深めていきます。
少人数のグループに分かれ、以下のようなテーマで意見交換を行うとよいでしょう。
【ディスカッションのテーマ例】
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グループダイナミクス(集団における相互作用)により、一人一人の気づきを引き出し、深化させます。ディスカッションの成果は全体で共有し、学びの還流を促進しましょう。
ワーク:学んだ知識の実践と体得
3つ目のパートは「ワーク」です。
講義とディスカッションを経て、ワークで実践的なスキルを身に付けていきます。
【心理的安全性を高めるワークの例】
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例として、コミュニケーション演習のロールプレイングの進め方を見てみましょう。
【コミュニケーション演習のロールプレイング例】
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このように、実践的な演習を通して、スキルの定着を図ることが大切です。インプットした知識を、「明日から仕事で使えるスキル」へ昇華していきましょう。
アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案
4つ目のパートは「アクションプラン」です。
研修の締めくくりに、学びを実践するためのアクションプランを立案します。
【アクションプラン作成の手順例】
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このように研修内容を自分事として落とし込み、学びを行動に移す仕掛けを作りましょう。一人一人の小さな変化の積み重ねが、組織全体の心理的安全性を底上げします。
階層別の心理的安全性研修プログラム例
ここからは、対象者別の研修プログラム例を紹介します。
リーダー層向けには組織づくりの視点、一般社員向けにはコミュニケーション能力の視点など、それぞれの習熟度に合わせたカリキュラムを組むのがポイントです。
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経営層向け:リーダーシップと組織風土改革の重要性理解
経営層向けには、心理的安全性の観点から組織変革をリードする役割の自覚を促す内容が求められます。
以下のようなプログラム設計が有効でしょう。
【経営層向け研修のポイント】
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経営層の強力なリーダーシップが、組織の心理的安全性を引き上げる原動力となります。
トップ自らが心理的安全性の重要性を認識し、体現することが何より大切だといえるでしょう。
管理職向け:部下の成長を支援するコーチングスキル習得
管理職向けには、部下の心理的安全性を高め、成長を後押しするマネジメント手法の習得を目指す内容が効果的です。
コーチング力を身に付ける研修設計がポイントになります。
【管理職向け研修のポイント】
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部下の心理的安全性を守り、能力開発を支援することは、管理職の重大な責務です。
コーチング型マネジメントを実践できる管理職を増やすことは、組織の心理的安全性を底上げするひとつの鍵です。
コーチングに関しては、以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。
リーダー向け:セルフリーダーシップと関係構築力強化
リーダー向けには、セルフリーダーシップ(*1)とメンバーとの関係構築力を高める内容を盛り込むことが効果的です。
*1:セルフリーダーシップとは、自分自身をマネジメントして自己を主体的に率いる能力を指します。目標を設定し行動をコントロールするスキルであり、リーダーには不可欠です。
心理的安全性の観点からは、リーダー自身が自己の感情や行動をコントロールし、メンバーにポジティブな影響を与えられるよう、自らを律することが求められます。
【リーダー向け研修のポイント】
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組織の心理的安全性を高めるには、リーダー一人一人が自己変革の火付け役となることが欠かせません。
研修を通じて、セルフリーダーシップと対人関係力の双方を強化していきましょう。
▼セルフリーダーシップの発揮にはセルフエスティームが必要です。セルフエスティームについては下記で解説しています。⇒セルフエスティーム(自尊感情)とは?
一般社員向け:コミュニケーション能力とレジリエンス向上
一般社員向けには、前向きな対人関係を築くスキルとレジリエンス(*2)を高める内容が有用です。
*2:レジリエンスとは、ストレスや困難な状況に直面してもポジティブな態度を維持し、柔軟に適応する力を指します。
各メンバーのレジリエンスが高い組織は、トラブルやミスが発生しても、感情的になったりパニックに陥ったりしにくく、心理的安全性を高く保ちながら建設的な対応が可能です。
【一般社員向け研修のポイント】
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一人一人が自分らしさを発揮しながら、周囲と支え合う関係を築くことが、組織の心理的安全性の礎になります。
そのためには、個人のメンタル面を支援する研修が有効です。
自己肯定感やセルフエスティーム(自尊感情)を高める具体的な研修例として「HEP(ヒューマン・エレメント・プログラム)」があります。
詳細は以下の資料にてご確認ください。
まとめ
本記事では「心理的安全性の研修」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
心理的安全性の研修の目的をどう定めるかについて、以下のポイントを解説しました。
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心理的安全性研修の具体的な内容と進め方として、以下をご紹介しました。
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階層別の心理的安全性研修プログラム例は以下のとおりです。
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心理的安全性の研修は、自社の風土として、定着を目指しましょう。
一人一人の意識と行動を変え、組織文化そのものを進化させていく取り組みを通じて、ポジティブさと強靱さを兼ね備えた心理的安全性の高い職場を実現できます。
株式会社LDcubeでは、エドモンド博士から学ぶ心理的安全性のマイクロラーニングコースの提供や、セルフエスティームを高めるためのヒューマン・エレメント・プログラムの提供などを行っています。
心理的安全性を高めたいとお考えの際にはお気軽にご相談ください。
▼ 関連資料はこちらからダウンロードできます。
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