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心理的安全性の研修はどう企画する?具体的な内容や設計のポイント

「心理的安全性を高める研修を実施したいが、何を盛り込めばいいのかわからない……」

近年、組織パフォーマンスの向上と人材定着の鍵として、心理的安全性への注目が高まっています。

心理的安全性の概念は頭では理解できても、職場にどう浸透させればよいか、具体的な方法に苦慮する方少なくありません。

本記事では、心理的安全性を高める研修を企画する際のポイントを解説します。

心理的安全性の定義と重要性から、研修目的の設定、具体的な内容設計、階層別プログラム例まで、実践的な情報をお届けします。

ご一読いただき、自社の課題に即した心理的安全性研修を設計して、組織風土改革を推進するヒントをお持ち帰りください。

▼「心理的安全性」を提唱したエイミー・C・エドモンドソン博士の教えについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください(本人動画あり)。
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▼心理的安全性についてまとめた資料は下記よりダウンロードできます。

心理的安全性資料

この記事の監修者  株式会社LDcube 代表取締役 新井澄人  株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。

目次[非表示]

  1. 1.心理的安全性の研修を企画する前に
    1. 1.1.心理的安全性とは何か
    2. 1.2.心理的安全性が低い状態の特徴と組織に与える影響
    3. 1.3.心理的安全性を高めるメリット
  2. 2.心理的安全性の研修の目的をどう定めるか
    1. 2.1.アンケートとインタビューで現状を把握する
    2. 2.2.目指すゴールと達成基準を具体的に定める
    3. 2.3.リーダー層と一般社員で内容を変える
  3. 3.心理的安全性研修の具体的な内容と進め方
    1. 3.1.講義:心理的安全性の概念と重要性の解説
    2. 3.2.ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有
    3. 3.3.ワーク:学んだ知識の実践と体得
    4. 3.4.アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案
  4. 4.階層別の心理的安全性研修プログラム例
  5. 5.まとめ

心理的安全性の研修を企画する前に

心理的安全性研修①

研修を実施する前に、心理的安全性とは何か、なぜ必要とされているのかを正しく理解しておく必要があります。

最初に、心理的安全性の基本概念と、組織にもたらす影響について解説します。
 

心理的安全性とは何か

心理的安全性とは、チームのメンバーが安心して自分の意見を言ったり、失敗を恐れずに挑戦したりできる環境をいいます。

“心理的安全性が高い” とは、具体的に以下のような状態を指します。

【心理的安全性の高いチームの特徴】

  • ミスを恐れずに発言できる
    間違いを指摘されることを恐れず、自由に意見を言える雰囲気があります。失敗しても責められたりバカにされたりはしないという安心感から、新しいアイデアを積極的に提案できます。


  • 助け合いの意識が高い
    メンバー同士が支え合おうとする意識が強く、困っている人がいれば進んで手を差し伸べます。互いの成功を喜び合うため、チームの一体感が生まれやすくなります。


  • 率直なフィードバックができる
    遠慮なく建設的な指摘やアドバイスをし合える関係性があります。相手の成長を念頭にフィードバックするため、前向きに受け止められる土壌があります。

心理的安全性を正しく理解するには、「ストレスやプレッシャーのない環境」や「衝突のない仲良しチーム」とは区別することが大切です。

心理的安全性の高い環境では、むしろ衝突を恐れずに活発な議論が交わされ、間違いと感じればそれをストレートに指摘し合えるのです。
 

心理的安全性が低い状態の特徴と組織に与える影響

反対に、心理的安全性の低い状態だと、以下の特徴が見られ、組織のパフォーマンスに負の影響を及ぼします。

【心理的安全性の低いチームの特徴と弊害】

  • 意見を言いづらい雰囲気
    ミスを責められることを恐れ、積極的に発言できません。その結果、優れたアイデアが埋もれ、イノベーションが生まれにくくなります。


  • 不安や緊張を感じやすい
    常に上司や同僚の目を気にしながら働くことになり、心理的負担が大きくなります。モチベーションの低下やメンタルヘルスの悪化につながりやすいでしょう。


  • 問題を隠蔽する傾向
    失敗を恐れるあまり、問題が発生しても報告をためらったり、隠したりしがちです。小さな問題の解決が遅れ、取り返しのつかない事態を招くリスクがあります。


  • 人材流出のリスク増大
    心理的に居心地の悪さを感じている従業員は、離職を考えるようになります。優秀な人材の流出は、組織の競争力低下につながる深刻な問題です。

組織の競争力やリスク対応、従業員のメンタルヘルス・人材定着率など、組織が直面する多くの問題の根底に、心理的安全性が関わっているといえます。
 

心理的安全性を高めるメリット

一方、心理的安全性を高めると、以下のようなメリットが期待できます。


【心理的安全性を高めるメリット】

  • イノベーションの創出
    多様な意見を言い合える環境では、新しいアイデアが次々と生まれます。メンバーの知恵を結集させ、画期的な商品やサービスの開発につなげられるでしょう。


  • 生産性の向上
    対人関係の不安や緊張から解放され、仕事に集中できる環境が整えば、一人一人のパフォーマンスが上がります。チーム全体の生産性が高まり、業績アップが期待できます。


  • リスクの早期発見と対策
    些細な問題でもオープンに話し合える関係性があれば、リスク要因を早い段階で発見できます。深刻化する前に手を打てるため、損失を最小限に抑えられるでしょう。


  • 人材の定着と育成
    一人一人が心理的に安定して働ける環境は、従業員エンゲージメントの向上に貢献します。「この会社で成長したい」と思う従業員が増え、定着率が高まります。

このように、心理的安全性の高い組織ではメンバーの能力が最大限に引き出され、継続的な成長が実現します。ここに、研修などを通じて心理的安全性の理解を深め、醸成を図る意義があるのです。

なお、「チームの心理的安全性」の概念を提唱したのは、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授です。

チームの心理的安全性の源流に触れて本質を学びたい方は、エドモンドソン教授による書籍や教材の利用をおすすめします。

以下の資料では、エドモンドソン教授の教えを凝縮して解説していますので、ぜひご活用ください。

心理的安全性資料


心理的安全性の研修の目的をどう定めるか

心理的安全性研修②

ここからは、心理的安全性の研修に焦点を当て、より掘り下げた解説を進めていきます。

研修を企画する際、まずは「研修の目的」を明確にすることが大切です。

漠然と実施するのではなく、自社の課題に合わせた具体的な狙いを定めることが、研修の効果を高めます。目的設定のポイントを3つ、見ていきましょう。

  1. アンケートとインタビューで現状を把握する
  2. 目指すゴールと達成基準を具体的に定める
  3. リーダー層と一般社員で内容を変える


アンケートとインタビューで現状を把握する

1つ目のポイントは「アンケートとインタビューで現状を把握する」です。

研修の目的を検討する前に、自社の心理的安全性の現状を把握しておきましょう。全従業員を対象にしたアンケート調査と、一部の従業員へのインタビューを実施するのが効果的です。

参考として、エドモンドソン教授による意識調査の設問を以下に引用します。

【心理的安全性に関する意識調査】

  1. このチームでミスをしたら、きまって咎められる。(R)
  2. このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。
  3. このチームの人々は、他と違っていることを認めない。(R)
  4. このチームでは、安心してリスクを取ることができる。
  5. このチームのメンバーには支援を求めにくい。(R)
  6. このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を故意にする人は誰もいない。
  7. このチームのメンバーと仕事をするときには、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている。

出典:エイミー・C・エドモンドソン,『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』, 英治出版, 2021年

7段階(「非常にそう思う」から「全くそう思わない」まで)または5段階の尺度で回答を得て、スコアを算出します。(R)の設問(1. 3. 5.)は逆転項目のため、スコアを反転させます。

このようなアンケートの回答結果を分析すれば、会社全体の心理的安全性の状態と、部門・部署ごとの傾向を可視化できます。

加えて、一部の従業員にインタビューを行い、アンケートの数値からは読み取れない、具体的な悩みや問題点を把握しましょう。
 

目指すゴールと達成基準を具体的に定める

2つ目のポイントは「目指すゴールと達成基準を具体的に定める」です。

現状分析の結果を踏まえ、心理的安全性の研修で目指すゴールを設定しましょう。抽象的な目標ではなく、具体的で測定可能な達成基準を定めることが大切です。


【心理的安全性研修の目標設定例】

  • 社内の心理的安全性スコアを現状の3.2から4.0以上に引き上げる。
  • 全従業員の8割以上が「職場で自分の意見を言いやすい」と回答できるようにする。
  • 管理職の9割が部下とのコミュニケーションに自信を持てるようにする。
  • 1on1ミーティングの実施率を50%から100%に高める。

数値目標の設定により、研修の成果を評価しやすくなります。目標に向けて着実に行動を積み重ねれば、確実に心理的安全性の向上が期待できるでしょう。
 

リーダー層と一般社員で内容を変える

3つ目のポイントは「リーダー層と一般社員で内容を変える」です。

研修は、それぞれの立場や習熟度に応じたカスタマイズによって、効果の向上が期待できます。

たとえば、リーダー層は、心理的安全性の重要性の理解に加え、部下の心理的安全性を高めるマネジメント手法の習得を目指します。

一般社員向けには、心理的安全性の意義を伝えつつ、自身のコミュニケーション力やストレス対処法の強化に重点を置くとよいでしょう。

対象者に合わせた学びの機会を提供し、それぞれの気づきを引き出すことが鍵となります。

具体的なカスタマイズの例は、後ほど解説しますので、続けてご覧ください。

心理的安全性研修の具体的な内容と進め方

心理的安全性研修③

続いて、心理的安全性研修の具体的な内容設計について解説します。

座学だけでなく、ディスカッションやロールプレイングなどを織り交ぜ、体験的な学びを促進することを意識しましょう。

以下、研修の進め方の例をご紹介します。

  1. 講義:心理的安全性の概念と重要性の解説
  2. ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有
  3. ワーク:学んだ知識の実践と体得
  4. アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案


講義:心理的安全性の概念と重要性の解説

1つ目のパートは「講義」です。

研修の冒頭では、心理的安全性の基本的な概念と重要性について、座学形式で伝えます。講義の設計においては、以下の点に留意するとよいでしょう。

【講義設計のポイント】

  • 受講者の興味を引く導入
    身近な実例やインパクトのあるデータを冒頭で示し、心理的安全性のテーマに興味を持ってもらいます。受講者の問題意識を喚起する工夫が大切です。


  • 論理的な構成
    心理的安全性の概念を体系立てて説明し、理解を深めていきます。基本的な定義から始まり、重要性、組織への影響、リーダーシップの役割へと話を展開していくと、スムーズに理解が進みます。


  • 具体的な事例の活用
    説得力を高めるために、具体的な事例を適宜織り交ぜます。数字や実例は、抽象的な概念をイメージしやすくし、受講者の納得感を高める効果があります。


  • 質疑応答の時間確保
    一方的な知識伝達に終わらないよう、質疑応答の時間を十分に設けます。受講者の疑問に丁寧に答え、理解度を高めて、主体的な学びを促します。双方向のコミュニケーションを大切にしましょう。

心理的安全性の概念理解は、研修の土台となる重要なパートです。受講者の興味を引き、わかりやすく伝えることに細心の注意を払います。

また、研修に先立って、eラーニング教材などで基礎知識を習得してもらう「反転学習」の手法も有効です。

反転学習とは、基本的な知識は個人で事前に学習し、研修の場では演習やディスカッションに時間を割くアプローチです。予習と実践の組み合わせで、学習効果を最大化できます。

事前学習用の教材としては、エドモンドソン教授による動画講義を通じて心理的安全性について学べる以下のコースがおすすめです。

【心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①】

  • 心理的安全性とは
  • 率直に話せる文化の価値
  • 心理的安全性が持続的なパフォーマンスを生む
  • 従業員を守るための発言
  • 権力者が持つ過度な自信の危険性
  • 回避可能な失敗が起こる理由
  • 沈黙の文化を壊す
  • 職場のセクハラをなくす

出典:心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①

【心理的安全性がつくる恐れのない職場コース②】

  • 心理的安全性のつくり方
  • 心理的安全性の土台づくり
  • 参加の促し方
  • 生産的に対応するには
  • 失敗の科学
  • 効果的な試験事業
  • 改革への抵抗を克服する
  • チーミングとは?

出典:心理的安全性がつくる恐れのない職場コース②

詳しくは以下のページよりご確認ください。

  心理的安全性がつくる恐れのない職場コース①(マイクロラーニング) マイクロラーニングコンテンツのご紹介です。組織やチームにとって重要な内容であるにもかかわらず、自分の考えを言わず、質問を控え、黙っていたことが何度ありますか? 従業員が安心して発言できるようにするには、心理的に安全な環境を整える必要があります。 本コースでは、対人関係の不安がいかに組織をむしばむか、そして、その乗り越え方を様々な事例を通じて学習します。 講師:エイミー・エドモンドソン 株式会社LDcube
  心理的安全性がつくる恐れのない職場コース②(マイクロラーニング) マイクロラーニングコンテンツのご紹介です。組織やチームにとって重要な内容であるにもかかわらず、自分の考えを言わず、質問を控え、黙っていたことが何度ありますか? 従業員が安心して発言できるようにするには、心理的に安全な環境を整える必要があります。 本コースでは、対人関係の不安がいかに組織をむしばむか、そして、その乗り越え方を様々な事例を通じて学習します。 講師:エイミー・エドモンドソン 株式会社LDcube


ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有

2つ目のパートは「ディスカッション」です。

習得した基礎概念をベースに、受講者同士のディスカッションを通じて、学びを深めていきます。

少人数のグループに分かれ、以下のようなテーマで意見交換を行うとよいでしょう。

【ディスカッションのテーマ例】

  • 自職場の心理的安全性の現状
    自由に発言できる雰囲気があるか、ミスが許容される文化があるかなど、職場の心理的安全性の状態を振り返ります。


  • 弊害経験の共有
    アイデアを言いづらい経験、ミスを責められて萎縮した経験など、心理的安全性の低さによる弊害体験を出し合います。


  • 部下の心理的安全性を高める工夫
    管理職が、部下の発言を引き出すために実践できる働きかけを考えます。認め合う場づくりなど、具体策を議論しましょう。


  • 高心理的安全性チームの要件
    お互いの長所を認め合う、全員が平等に発言機会を持つなど、心理的安全性の高いチームの特徴を挙げ、意見交換します。

グループダイナミクス(集団における相互作用)により、一人一人の気づきを引き出し、深化させます。ディスカッションの成果は全体で共有し、学びの還流を促進しましょう。
 

ワーク:学んだ知識の実践と体得

3つ目のパートは「ワーク」です。

講義とディスカッションを経て、ワークで実践的なスキルを身に付けていきます。

【心理的安全性を高めるワークの例】

  • コミュニケーション演習
    対立する意見にも耳を傾け、自分の考えを建設的に伝える方法を練習します。ロールプレイングを通じて、効果的な主張の仕方を体験的に学びます。


  • 傾聴スキルトレーニング
    相手の話に共感的に耳を澄まし、理解を深める方法を習得します。ペアワークで傾聴のコツを体得します。


  • フィードバック練習
    称賛と改善提案をバランスよく盛り込んだ、建設的なフィードバックの伝え方を学びます。模擬場面で実践し、スキルを磨きます

例として、コミュニケーション演習のロールプレイングの進め方を見てみましょう。

【コミュニケーション演習のロールプレイング例】

  • 体制
    3人1組で、上司役、部下役、オブザーバー役を設定します。
  • 状況設定
    「新プロジェクトのメンバー選定」「ミス発生時の原因究明」など、リアルな場面を想定します。
  • 上司役の動き
    自分の見解を伝えつつも、部下の話を真摯に聞き、意見や気持ちをくみ取る姿勢で臨みます。
  • 部下役の動き
    上司の言葉に耳を傾けながら、自分の考えも率直に伝えます。
  • オブザーバー役の動き
    客観的な視点で観察し、上司役と部下役の双方に建設的なフィードバックを提供します。
  • 役割交代
    メンバー全員が3役を経験し、多角的な視点を身に付けられるよう、役割を交代します。

このように、実践的な演習を通して、スキルの定着を図ることが大切です。インプットした知識を、「明日から仕事で使えるスキル」へ昇華していきましょう。
 

アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案

4つ目のパートは「アクションプラン」です。

研修の締めくくりに、学びを実践するためのアクションプランを立案します。

【アクションプラン作成の手順例】

  • アクション洗い出し
    研修で得た気づきを振り返り、これから実践する具体的な行動を書き出します。「普段からメンバーの良い点を見つけ、称賛する」「ほかのメンバーの意見に耳を傾け、建設的な議論をする」「失敗を恐れずに新しいアイデアを提案する」など、実行可能な形で落とし込みます。


  • 宣言
    アクションプランを、上司やチームメンバーに共有し、自分の決意を表明します。周囲にコミットメントを示すことで、実行力を高めます。宣言によって、周りからの支援や協力体制も整います。


  • 振り返り
    一定期間後に進捗確認の場を設けて、設定したアクションプランの実行状況を振り返ります。振り返りの際は、自分の行動変容だけでなく、周囲への影響も確認します。小さな変化が組織全体に波及していく手応えを感じられるはずです。

このように研修内容を自分事として落とし込み、学びを行動に移す仕掛けを作りましょう。一人一人の小さな変化の積み重ねが、組織全体の心理的安全性を底上げします。

階層別の心理的安全性研修プログラム例

心理的安全性研修④

ここからは、対象者別の研修プログラム例を紹介します。

リーダー層向けには組織づくりの視点、一般社員向けにはコミュニケーション能力の視点など、それぞれの習熟度に合わせたカリキュラムを組むのがポイントです。

  1. 経営層向け:リーダーシップと組織風土改革の重要性理解
  2. 管理職向け:部下の成長を支援するコーチングスキル習得
  3. リーダー向け:セルフリーダーシップと関係構築力強化
  4. 一般社員向け:コミュニケーション能力とレジリエンス向上



経営層向け:リーダーシップと組織風土改革の重要性理解


経営層向けには、心理的安全性の観点から組織変革をリードする役割の自覚を促す内容が求められます。

以下のようなプログラム設計が有効でしょう。

【経営層向け研修のポイント】

  • 経営ビジョンとの関連づけ:心理的安全性が高い組織づくりを、経営ビジョン実現のための重要施策と位置づけます。トップの強いコミットメントにつながります。

  • 定量的効果の可視化:エンゲージメント向上や生産性向上など、心理的安全性がもたらすビジネス効果を数値で示します。投資対効果をイメージしやすくする工夫をするとよいでしょう。

  • 企業文化変革への決意表明:リーダーシップを通じて組織の心理的安全性を高める決意を表明してもらいます。経営層自身が率先して行動変容に取り組む姿勢を示すことが重要です。

  • 管理職の行動変容方針の議論:管理職に求める行動変容のポイントを議論し、具体的な支援策を検討します。経営層が管理職の育成・支援に関与すれば、現場への浸透力が高まります。

経営層の強力なリーダーシップが、組織の心理的安全性を引き上げる原動力となります。

トップ自らが心理的安全性の重要性を認識し、体現することが何より大切だといえるでしょう。
 


管理職向け:部下の成長を支援するコーチングスキル習得


管理職向けには、部下の心理的安全性を高め、成長を後押しするマネジメント手法の習得を目指す内容が効果的です。

コーチング力を身に付ける研修設計がポイントになります。

【管理職向け研修のポイント】

  • 部下の成長と心理的安全性の関係理解
    部下の主体性やチャレンジ精神を引き出すには、心理的安全性が不可欠だと認識してもらいます。双方を関連づけて考える視座を養成します。


  • 傾聴スキルの体得
    部下の話に耳を傾け、理解や共感を示す傾聴の技術を体験しながら学びます。部下に寄り添い、心理的安全性を高める第一歩となるスキルの定着を図ります。


  • 承認の伝え方トレーニング
    部下の成果や頑張りを言葉で認める承認の伝え方を練習します。適切な承認が部下の意欲とパフォーマンスを高めることを実感できるようにします。


  • 質問力の強化
    部下の考えや感情を引き出す質問の仕方を学びます。オープンクエスチョンの使い方など、対話力向上のコツを習得します。


  • ティーチングとコーチングの使い分け
    状況に応じて、指示的なティーチングと、自発的な気づきを促すコーチングを使い分けるスキルを身に付けます。部下の成長度合いに合わせた関わり方を見出していきます。

部下の心理的安全性を守り、能力開発を支援することは、管理職の重大な責務です。

コーチング型マネジメントを実践できる管理職を増やすことは、組織の心理的安全性を底上げするひとつの鍵です。

コーチングに関しては、以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。

ビジネスにおけるコーチング資料



リーダー向け:セルフリーダーシップと関係構築力強化


リーダー向けには、セルフリーダーシップ(*1)とメンバーとの関係構築力を高める内容を盛り込むことが効果的です。

*1:セルフリーダーシップとは、自分自身をマネジメントして自己を主体的に率いる能力を指します。目標を設定し行動をコントロールするスキルであり、リーダーには不可欠です。

心理的安全性の観点からは、リーダー自身が自己の感情や行動をコントロールし、メンバーにポジティブな影響を与えられるよう、自らを律することが求められます。

【リーダー向け研修のポイント】

  • 自己認識の深化
    360度評価や資質診断ツールなど用いて、自己理解を深めます。自分自身の強みと課題を知ると、より効果的なセルフマネジメントが可能になります。


  • ロールモデルとしての意識醸成
    リーダーの言動は、メンバーに大きな影響を与えます。ロールモデル(他者の手本となる存在)としての自覚を持ち、模範となる行動を取る決意を促します。


  • メンバーとの1on1トレーニング
    メンバー一人一人と向き合う1on1ミーティングの進め方を練習します。信頼関係を築くための聞き方や質問の仕方などを体得します。


  • 関係構築を阻害する言動の振り返り
    無意識の言動が、メンバーとの心理的距離を生んでいないか振り返ります。自分の課題に気づき、改善策を考えるワークを行います。


  • ストレスマネジメントのポイント習得
    リーダーのストレスは、メンバーにも伝染しやすいものです。ストレス対処法を学び、セルフケア力を高めると、周囲への良い影響力を生み出せるようになります。

組織の心理的安全性を高めるには、リーダー一人一人が自己変革の火付け役となることが欠かせません。

研修を通じて、セルフリーダーシップと対人関係力の双方を強化していきましょう。

▼セルフリーダーシップの発揮にはセルフエスティームが必要です。セルフエスティームについては下記で解説しています。⇒セルフエスティーム(自尊感情)とは?

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一般社員向け:コミュニケーション能力とレジリエンス向上


一般社員向けには、前向きな対人関係を築くスキルとレジリエンス(*2)を高める内容が有用です。

*2:レジリエンスとは、ストレスや困難な状況に直面してもポジティブな態度を維持し、柔軟に適応する力を指します。

各メンバーのレジリエンスが高い組織は、トラブルやミスが発生しても、感情的になったりパニックに陥ったりしにくく、心理的安全性を高く保ちながら建設的な対応が可能です。

【一般社員向け研修のポイント】

  • アサーティブな自己表現の練習
    アサーティブ(自他の権利を尊重しながら率直に自己表現する姿勢)に、自分の考えや感情を伝えるスキルを身に付けます。ロールプレイングで、アサーティブに意見を主張する体験を積み重ね、実践力を磨いていきます。


  • ストレス対処法の習得
    ストレスの原因を見極め、効果的な対処法を身に付けます。ストレス解消法を複数持っていれば、状況に応じて柔軟に活用できるようになります。


  • 自己肯定感を高める方法の理解
    自分の存在には価値があるという確信を高める方法を学びます。小さな成功体験を積み重ねることの大切さを知り、自己肯定感を向上させる手立てを見出します

一人一人が自分らしさを発揮しながら、周囲と支え合う関係を築くことが、組織の心理的安全性の礎になります。

そのためには、個人のメンタル面を支援する研修が有効です。

自己肯定感やセルフエスティーム(自尊感情)を高める具体的な研修例として「HEP(ヒューマン・エレメント・プログラム)」があります。

HEP資料

詳細は以下の資料にてご確認ください。

HEP資料ダウンロード


まとめ

本記事では「心理的安全性の研修」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

心理的安全性の研修の目的をどう定めるかについて、以下のポイントを解説しました。

  1. アンケートとインタビューで現状を把握する
  2. 目指すゴールと達成基準を具体的に定める
  3. リーダー層と一般社員で内容を変える

心理的安全性研修の具体的な内容と進め方として、以下をご紹介しました。

  1. 講義:心理的安全性の概念と重要性の解説
  2. ディスカッション:受講者同士の対話と気づきの共有
  3. ワーク:学んだ知識の実践と体得
  4. アクションプラン:職場での実践につなげる行動計画立案

階層別の心理的安全性研修プログラム例は以下のとおりです。

  1. 経営層向け:リーダーシップと組織風土改革の重要性理解
  2. 管理職向け:部下の成長を支援するコーチングスキル習得
  3. リーダー向け:セルフリーダーシップと関係構築力強化
  4. 一般社員向け:コミュニケーション能力とレジリエンス向上

心理的安全性の研修は、自社の風土として、定着を目指しましょう。

一人一人の意識と行動を変え、組織文化そのものを進化させていく取り組みを通じて、ポジティブさと強靱さを兼ね備えた心理的安全性の高い職場を実現できます。

株式会社LDcubeでは、エドモンド博士から学ぶ心理的安全性のマイクロラーニングコースの提供や、セルフエスティームを高めるためのヒューマン・エレメント・プログラムの提供などを行っています。
心理的安全性を高めたいとお考えの際にはお気軽にご相談ください。

▼ 関連資料はこちらからダウンロードできます。

心理的安全性資料

マイクロラーニング

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  レジリエンス研修とは?実施で得られる効果と代表的な5つの要素 ストレスや逆境に直面しやすい現代のビジネスシーンでは、困難な状況でも立ち向かって前に進む力、つまり、高いレジリエンスを持った人材が必要です。そんな人材育成のためにはレジリエンス研修が有用です。研修の概要や得られる効果、代表的な要素について詳しく解説します。 株式会社LDcube
  レジリエンスを高めるには?高い人・低い人の特徴と具体的な実践方法 レジリエンスとは、逆境やストレスに直面した時に、それを乗り越えて適応していく心の力のことです。高いレジリエンスを持つ人は、困難な状況でも前を向いて歩いていくことができます。レジリエンスとは何か、高い人・低い人の特徴、そしてレジリエンスを高める具体的な方法について詳しく解説します。 株式会社LDcube
  従業員エンゲージメントを高める効果的な取り組みとは?おすすめの方法6選も紹介! 企業の持続的成長に従業員エンゲージメントを高める取り組みは不可欠です。従業員エンゲージメントが低い場合は、さまざまな取り組みで改善する必要があります。この記事では、従業員エンゲージメント向上に効果的な取り組み6選や具体的な方法・施策について解説します。 株式会社LDcube
  エンゲージメントを高める研修とは?カリキュラムと成功させる秘訣を解説! 従業員の定着率向上や企業の成長につながるとして、エンゲージメントの重要性が認識されはじめています。エンゲージメントを向上させるためには、研修の実施がおすすめです。今回は、研修プログラムの概要と実施すべき企業や組織の特徴、おすすめのカリキュラムなどについて詳しく解説します。 株式会社LDcube
  従業員エンゲージメントとは?向上につながる5つの施策【人事担当必見】 企業において従業員エンゲージメントは、個人のモチベーションやパフォーマンス、組織の労働生産性などに影響する重要なものです。様々な施策を通じて具体的に向上させる必要性があります。この記事では、従業員エンゲージメントを高める方法や施策について詳しく紹介します。 株式会社LDcube


LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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