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技術伝承のデジタル化を進めるメリットとは?7つの実践ステップを解説!

熟練技術者の大量退職時代を迎え、多くの企業で技術伝承が喫緊の課題となっています。特に製造業では、熟練技術者が長年かけて培ってきた技術やノウハウを、いかに確実かつ効率的に次世代へ引き継ぐかが重要な経営課題として認識されています。

そんな中、注目を集めているのが「技術伝承のデジタル化」です。従来の対面による技術指導やOJTだけでは、人材の不足や時間的制約により、十分な技術伝承が難しくなってきました。そこで、動画やVRといったデジタル技術を活用することで、技術伝承の効率化と品質向上を図る企業が増えています。

デジタル技術を活用した技術伝承には、暗黙知の可視化や時間・場所の制約からの解放、技術習得の効率化など、数多くのメリットがあります。しかし、ただやみくもにデジタル化を進めても、現場の混乱を招くだけで効果は得られません。

本記事では、技術伝承のデジタル化がもたらすメリットと、成功に導くための7つの実践ステップを詳しく解説します。また、活用すべきデジタル技術や導入時の注意点なども踏まえて、確実かつ効率的に技術伝承を実現するためのポイントをご紹介します。

▼技術伝承については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

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目次[非表示]

  1. 1.技術伝承のデジタル化とは何か
  2. 2.技術伝承のデジタル化で得られる6つのメリット
  3. 3.技術伝承のデジタル化を進める7ステップ
  4. 4.技術伝承のデジタル化に活用すべきツール
  5. 5.技術伝承のデジタル化で気を付けるポイント
  6. 6.技術伝承のデジタル化に不可欠な要素
  7. 7.技術伝承のデジタル化でOJT格差問題を解決した支援事例
  8. 8.まとめ


技術伝承のデジタル化とは何か

デジタル化のイメージ画像

技術伝承のデジタル化とは、熟練技術者が持つ知識やノウハウをデジタルツールやテクノロジーを活用して確実かつ効率的に次世代へ継承していく取り組みです。

従来の対面による直接指導や紙のマニュアルによる伝承方法を、最新のデジタル技術を用いて補完・強化することで、より確実で効率的な技術継承を実現することを目指しています。

従来の技術伝承が抱える課題

従来の技術伝承方式では、熟練技術者の高齢化や人材不足により、十分な時間をかけた技術指導が難しくなっています。特に以下のような課題が深刻化しています。

まず、技術やノウハウの多くが「暗黙知」として熟練技術者の中に存在し、言語化や文書化が困難であるという問題があります。

また、技術指導には長時間の密着した関係性が必要ですが、現代の働き方改革や人材不足の中では、そのような時間を確保することが難しくなっています。

さらに、従来の紙ベースのマニュアルでは、微妙なニュアンスや動作の詳細を正確に伝えることができないという限界もありました。

技術伝承のデジタル化が注目される背景

技術伝承のデジタル化が注目を集める背景には、産業構造の大きな変化があります。

日本の製造業では、団塊世代の大量退職に伴う技術流出リスクが高まっており、従来の方法だけでは技術の伝承が間に合わない状況が発生しています。

同時に、AI、VR/ARなどのデジタル技術の発展により、これまで困難だった技能の可視化が可能になってきました。

また、コロナ禍を経て、リモートワークやデジタルツールの活用が一般化したことで、技術伝承においてもデジタル化の受容性が高まっています。

技術伝承のデジタル化がもたらす変革

技術伝承のデジタル化は、単なる伝承方法の変更にとどまらず、組織全体の知識管理の在り方を変革する可能性を秘めています。

デジタル技術を活用することで、これまで個人に属していた技術やノウハウを組織の資産として蓄積し、効率的に共有・活用することが可能になります。

具体的には、センサーやカメラを使用した動作の可視化、VR/ARを使用した実践的な訓練環境の提供、AIによるデータ分析と最適な学習プログラムの提案など、さまざまな革新的なアプローチが実現可能になります。

これにより、技術伝承の質を向上させながら、同時に効率化とスピードアップを図ることができるようになります。

技術伝承のデジタル化で得られる6つのメリット

メリットのイメージ画像

技術伝承のデジタル化は、組織に多面的な価値をもたらします。従来の対面による伝承方式の限界を超え、より効果的な技術継承を可能にするメリットについて詳しく見ていきましょう。

①暗黙知が形式知へ変わる効果

デジタル技術を活用することで、熟練技術者の持つ暗黙知を形式知として可視化し、保存することが可能になります。センサーやカメラによる動作の記録、音声認識による作業手順の文書化、動画による作業シーンの録画など、さまざまな技術を組み合わせることで、これまで言語化が困難だった技能やコツを具体的なデータとして残すことができます。これにより、ベテラン技術者の引退後も、その貴重な知見を組織の資産として活用し続けることが可能になります。

②時間と場所の制約からの解放される

デジタル化された技術伝承コンテンツは、時間や場所の制約を受けることなく、必要な時に必要な分だけ学習することができます。例えば、動画マニュアルやeラーニングシステムを活用することで、学習者は自分のペースで繰り返し学習することが可能になります。また、リモートでの指導や学習も容易になり、地理的な制約を超えた技術伝承が実現できます。

③技術習得の効率が大幅に向上する

デジタルツールを活用することで、学習効率が飛躍的に向上します。VR/ARによる実践的な訓練環境では、危険な場所にいくことなく安全に繰り返し練習することができます。また、AIによる学習進捗の分析と最適な学習カリキュラムの提案により、個々の学習者に合わせた効率的な技能習得が可能になります。さらに、動画やシミュレーションを活用することで、複雑な作業手順も視覚的に理解しやすくなります。

④教育コストが削減・最適化される

技術伝承のデジタル化により、教育にかかるコストを大幅に削減することができます。従来の1対1の対面指導に比べ、デジタルコンテンツは一度作成すれば何度でも活用できます。また、基礎的な学習をデジタル化することで、熟練技術者の指導時間を本当に必要な高度な技能伝承に集中させることができます。さらに、学習データの分析により、効果の高い教育投資を選択的に行うことも可能になります。

⑤品質の標準化が実現できる

デジタル化された技術伝承システムでは、標準的な作業手順や品質基準を統一的に共有することができます。これにより、指導者による教え方のばらつきや、地域による技術レベルの差を最小限に抑えることが可能になります。また、作業データの収集と分析により、品質のばらつきをリアルタイムで検知し、必要な改善措置を迅速に講じることもできます。

⑥習得度の可視化と分析が可能になる

デジタルツールを活用することで、技術習得の進捗状況をデータで定量的に評価し、可視化することができます。学習履歴やスキル評価データの分析により、個々の学習者の強みや弱みを特定し、適切なフォローアップを行うことが可能になります。また、組織全体の技術レベルの把握や、将来的な人材育成計画の立案にも、これらのデータを活用することができます。

技術伝承のデジタル化を進める7ステップ

ステップのイメージ画像

技術伝承のデジタル化を効果的に推進するためには、段階的なアプローチが重要です。ここでは、成功に導くための具体的な7つのステップについて解説します。各ステップを確実に実行することで、組織に適した技術伝承の仕組みを構築することができます。

STEP1: 現状の技術伝承を可視化する

デジタル化の第一歩は、現状の技術伝承プロセスを詳細に把握することから始まります。この段階で特に重要となるポイントは以下の通りです。

  • 現場での作業観察と詳細な記録
  • 熟練技術者へのインタビューによる暗黙知の特定
  • 既存マニュアルの棚卸しと評価
  • ボトルネックとなっている工程の特定
  • デジタル化による改善可能性の評価


STEP2: 重要技術の優先順位を付ける

すべての技術を一度にデジタル化することは現実的ではありません。組織にとって特に重要な技術、早急なデジタル化が必要な技術を優先的に選定する必要があります。選定の基準としては、技術の重要度、失われるリスク、デジタル化の難易度、期待される効果などを総合的に評価します。また、熟練技術者の退職時期なども考慮に入れ、時間的な制約も加味した優先順位付けを行います。

STEP3: デジタルツールを選定する

優先順位付けされた技術に対して、最適なデジタルツールを選定します。選定に際しては、利用者のデジタルリテラシー、コスト、導入の容易さなどを考慮します。特に、現場での実用性を重視し、過度に複雑なシステムは避け、使いやすさを優先することが重要です。また、将来的な拡張性や他システムとの連携可能性も考慮に入れた選定を行います。

STEP4: 技術情報をデジタル化する

選定したツールを使用して、実際の技術情報のデジタル化を進めます。この段階では、熟練技術者の協力を得ながら、作業の様子を動画撮影したり、詳細な手順を文書化したりします。重要なのは、単なるデータの変換ではなく、デジタルならではの特性を生かした教材づくりを心がけることです。例えば、複雑な工程はスローモーション動画で表現したり、重要なポイントには注釈を加えたりするなど、理解を促進する工夫を施します。

STEP5: データの収集と分析を行う

デジタル化された技術伝承コンテンツを学習教材として運用を開始し、学習データの収集と分析を行います。学習者の進捗状況、理解度、つまずきやすいポイントなどのデータを収集し、学習の効果測定と改善に活用します。この段階では、定量的な指標だけでなく、利用者からのフィードバックも積極的に集め、実際の使用感や改善要望も把握します。

STEP6: デジタル教育の仕組みを作る

収集したデータと現場のフィードバックを基に、効果的なデジタル教育の仕組みを構築します。基礎知識の習得から実践的なスキル訓練まで、段階的な学習プログラムを設計します。また、対面指導とデジタル学習を適切に組み合わせたブレンド型の教育体系を確立し、それぞれの長所を生かした効率的な技術伝承を実現します。

STEP7: 継続的な改善を実施する

デジタル化された技術伝承コンテンツは、定期的な評価と改善を行うことで、その効果を最大化することができます。学習データの分析結果や現場からのフィードバックを基に、コンテンツの更新、システムの改善、教育プログラムの最適化を継続的に実施します。また、新しいデジタル技術の導入も検討し、より効果的な技術伝承の実現を目指します。

技術伝承のデジタル化に活用すべきツール

ツールのイメージ画像

技術伝承のデジタル化を効果的に進めるためには、目的に応じて適切にデジタルツールを選択し、活用することが不可欠です。ここでは、特に効果が高いと考えられる主要なツールとその具体的な活用方法について解説します。

動画による技術伝承の実践

動画は、技術伝承において最も基本的かつ効果的なデジタルツールの一つです。高精細なビデオカメラやスマートグラスを活用することで、熟練技術者の細かな動作や手順を正確に記録することができます。

特に注目すべき点として、スロー再生や複数アングルからの撮影、詳細な解説の追加など、デジタルならではの機能を活用することで、従来の対面指導では伝えきれなかった微細な技術ポイントも効果的に伝達することが可能になります。また、AI技術と組み合わせることで、動作の解析や重要ポイントの自動抽出なども実現でき、より効果的な学習教材の作成が可能となっています。

VR・ARで実現する実践トレーニング

バーチャルリアリティー(VR)や拡張現実(AR)技術は、実践的な技術訓練を安全かつ効率的に行うことを可能にします。これらの技術を活用することで、危険な場所に行ったり、実機を使用したりせずとも本番さながらの環境で繰り返し練習することができます。

VR技術では、完全な仮想空間内で作業を体験できるため、危険を伴う作業や、高額な設備を必要とする作業の訓練に特に効果を発揮します。一方、AR技術は実際の作業現場にデジタル情報を重ね合わせることで、リアルタイムのガイダンスや作業手順の確認を可能にします。これにより、作業者は必要な情報を即座に参照しながら、実践的なトレーニングを行うことができます。

ナレッジシステムの効果的な活用

デジタル化された技術情報を効率的に管理・活用するためには、包括的なラーニングプラットフォームの構築が重要です。最新のプラットフォームは、単なる情報の保存・検索機能だけでなく、AIを活用した高度な機能を備えています。

例えば、画像とスクリプトを投入することで動画を生成してくれたり、学習履歴から推奨コンテンツをレコメンドしてくれたりします。また、ソーシャル機能を組み込むことで、技術者間の知識共有や質問対応もシステム上で効率的に行えるようになります。

これらのツールを組み合わせることで、より効果的な技術伝承の環境を構築することができますが、重要なのは組織の実情や目的に応じて適切なツールを選択し、段階的に導入していくことです。過度に複雑なシステムは逆効果となる可能性があるため、現場の受容性を考慮しながら、着実に実装を進めていく必要があります。

技術伝承のデジタル化で気を付けるポイント

ポイントのイメージ画像

技術伝承のデジタル化を成功に導くためには、いくつかの重要な注意点に留意する必要があります。ここでは、実装時に特に気を付けるべきポイントについて、具体的な対応策とともに解説します。

現場のデジタル活用レベルを見極める

デジタル化を進める際には、現場の実態に即したアプローチが不可欠です。最新のデジタル技術を導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ効果は限定的となってしまいます。

まず、現場のデジタルリテラシーの現状を正確に把握することから始めましょう。世代による技術習熟度の差や、部門ごとのIT活用状況なども考慮に入れる必要があります。その上で、必要に応じて基礎的なデジタルスキル研修を実施したり、段階的な機能導入を計画したりすることで、円滑な移行を実現することができます。

無理のない導入ペースを維持する

デジタル化への移行は、組織に大きな変化をもたらします。急激な変更は現場に混乱を招き、かえって生産性の低下を引き起こす可能性があります。そのため、適切な導入ペースを設定し、現場が新しいシステムに順応できる時間を確保することが重要です。

具体的には、パイロット部門での試験運用から始め、その結果を基に改善を重ねながら、段階的に展開範囲を広げていくアプローチが推奨されます。また、各段階で現場からのフィードバックを積極的に収集し、必要に応じて計画を修正することで、スムーズな導入を実現することができます。

対面指導との適切なバランスをとる

デジタル化は、従来の対面による技術伝承を完全に置き換えるものではありません。むしろ、両者の長所を生かした補完的な関係を構築することが、効果的な技術伝承の鍵となります。

デジタルツールは、基礎的な知識の習得や標準的な作業手順の学習には非常に効果的です。一方で、現場での微妙な判断や、予期せぬ状況への対応など、経験に基づく高度なスキルを伝承する際には、依然として対面指導が重要な役割を果たします。

そのため、デジタル学習と対面指導の適切な組み合わせを設計することが重要です。例えば、基礎知識や標準的な手順はデジタルコンテンツで学習し、実践的なスキルや応用力は対面指導で養成するといった、段階的な教育プログラムを構築することが効果的です。また、オンラインでの質問対応や、実地での確認指導を組み合わせることで、より効率的な学習環境を実現することができます。

技術伝承のデジタル化に不可欠な要素

経営層がコミットしているイメージ画像

技術伝承のデジタル化を成功させるためには、技術的な側面だけでなく、組織的な要素も重要な役割を果たします。ここでは、デジタル化推進に不可欠な3つの核となる要素について詳しく解説します。

経営層のコミットメント

技術伝承のデジタル化は、単なるツールの導入以上に、組織全体の変革を伴う重要な取り組みです。経営層には特に以下の役割が求められます。

デジタル化推進において経営層が果たすべき重要な役割

  • 組織全体へのデジタル化の重要性を明確に提示する
  • 必要な経営資源を適切に配分する
  • 部門を超えた協力体制を構築する
  • 定期的な進捗確認と軌道修正をする
  • 長期的視点での投資判断をする


若手社員というデジタル化を進めるリソース

デジタル技術に慣れ親しんでいる若手社員は、技術伝承のデジタル化を推進する上で重要な戦力となります。彼らは新しいデジタルツールへの適応力が高く、また、従来の方法にとらわれない柔軟な発想を持っているため、デジタル化推進の中核として活躍が期待できます。

特に注目すべき点として、若手社員は学習者の視点から、より効果的な学習方法や改善点を提案できる立場にあります。また、デジタルネーティブとしての経験を生かし、新しいツールやシステムの導入時のサポート役としても重要な役割を果たすことができます。ただし、若手社員の活用に際しては、彼らの意見や提案を積極的に取り入れる仕組みづくりと、適切な権限委譲が必要となります。

現場で使いやすいデジタルツール

技術伝承のデジタル化を成功に導くためには、現場で実際に使用される人々のニーズに合致したデジタルツールの選定が極めて重要です。世の中にはさまざまな製品がありますが、いくら高機能なシステムでも、使いにくければ現場での活用は進まず、結果として投資が無駄になってしまう可能性があります。

理想的なデジタルツールの要件としては、以下の点が挙げられます。

  • 直感的な操作性であること
  • 分かりやすいインターフェースであること
  • 現場の作業フローに自然に組み込めること
  • 既存のシステムとの連携が容易であること
  • 必要に応じて機能のカスタマイズや拡張が可能であること


技術伝承のデジタル化でOJT格差問題を解決した支援事例

建設業のイメージ画像

建設業でOJTのデジタルを図り、効果的に技術伝承を推進したご支援事例を紹介します。
社員数:100名以上
事業:土木建築工事、建設工事の設計と監理

課題・背景
技術教育に十分な時間を割けない
ベテラン社員が現場作業に追われ、若手社員の技術教育を十分にできていないという課題がありました。
また、時間だけでなく、人員にも余裕がないため、本来教えるべき技術やノウハウが現場で伝達できていないという事態に陥っていました。

OJT格差と離職率が上昇
現場のOJTは主にベテラン社員が担当していましたが、人によって言うことが違う、厳しい口調の上司が多いなど、 OJT格差がありました。その結果、若手社員の離職率が高くなり、新入社員の採用に悪影響が出ました。

取り組みの詳細
全社プロジェクトの立ち上げ
課題解決のため、人を介さず業務知識が学べるコンテンツの配信環境を構築するプロジェクトを立ち上げました。まずは各現場で「わが社の新人に必要な学習内容は何か」という観点で棚卸しを行いました。このプロジェクトの初期は、中堅社員をコンテンツ作成作業の中心に据えました。

全社員アンケートを実施
現場所長や各部署の社員を対象とした「現場に配属になった際に覚えてほしいこと」アンケートを実施しました。そこで集まった声を基にし、業務フローと照らし合わせながら、必要なコンテンツリストをブラッシュアップしました。

コンテンツ作成のサポート体制を強化
中堅社員の目線でコンテンツ作成を行った結果、自身が新入社員だった頃の感覚を忘れていることもあり、どのようなポイントを伝えれば新入社員にとって分かりやすいかという観点が抜けた内容になっていました。また、コンテンツ一つ一つの情報量が多いことや、自身が普段当たり前のように行っている業務を、コンテンツに落とし込むことができないという課題が浮上しました。そこで具体的な作業に関するコンテンツ作成を若手社員が担当するように切り替えました。さらに、各部に配置したアシスタントによる動画撮影・編集のバックアップなど、コンテンツ作成サポートの強化を行いました。

取り組み後の成果
若手社員の知識習得レベルの底上げ

若手社員が中心となり、自身が新入社員だった頃の目線を思い出しながらコンテンツ作成を行い、2年間で600個が完成しました。これにより、初めて業務を覚える新入社員にとっても分かりやすく、必要な情報が十分にそろった学習環境を提供することができました。また、マイクロラーニングの考え方に基づき、全ての動画コンテンツの長さを5分以内収めました。これによって、隙間時間に効果的な学習をすることが可能になりました。その結果、新入社員の知識習得レベルの底上げにつながりました。

OJT格差の是正とコミュニケーションの活性化
コンテンツを活用した教育によって社員の学習の機会が標準化されたことで、OJT格差が縮小しました。また、業務内容については新入社員と若手社員がベテラン社員に習い、現場で活用するスマートフォンやタブレットなどについては上司が新入社員と若手社員から学ぶという動きも出てくるようになりました。この動きは、ベテラン社員と新入社員、若手社員のコミュニケーションの活性化にもつながっています。

入社希望者の増加
OJTのデジタル化を導入したことが、県内の入社希望者数の増加につながりました。新卒の採用説明会やメディアの取材において、OJTのデジタル化を図った取り組みを紹介し、企業の教育体制の優位性をアピールしました。その結果、県内の学生が選ぶ建設業知名度ランキングで1位を獲得しました。そのおかげで、多くの学生から選ばれる企業となりました。

まとめ

技術伝承のデジタル化を進めるメリットとは?7つの実践ステップを解説!について紹介してきました。

  • 技術伝承のデジタル化とは何か
  • 技術伝承のデジタル化で得られる6つのメリット
  • 技術伝承のデジタル化を進める7ステップ
  • 技術伝承のデジタル化に活用すべきツール
  • 技術伝承のデジタル化で気を付けるポイント
  • 技術伝承のデジタル化に不可欠な要素
  • 技術伝承のデジタル化でOJT格差問題を解決した支援事例

技術伝承のデジタル化は、組織の持続的な成長と競争力維持のために避けては通れない重要な課題です。本記事では、デジタル化の意義から具体的な実践方法、さらには将来展望まで、包括的に解説してきました。ここでは、技術伝承のデジタル化を成功に導くための重要なポイントを改めて整理します。

技術伝承のデジタル化は、単なるツールの導入ではなく、組織全体の変革プロジェクトとして捉える必要があります。成功の鍵となるのは、以下3つの要素の適切なバランスです。

第一に、確固たる推進体制の構築です。経営層の強力なコミットメントの下、現場のニーズを十分に理解した上で、段階的かつ計画的な導入を進めることが重要です。特に、デジタル化の目的と期待される効果を組織全体で共有し、全員が同じ方向を向いて取り組める環境を整えることが不可欠です。

第二に、適切な技術選択とその活用です。VR/AR、AIなど、さまざまなデジタル技術の中から、自社の状況や目的に最適なものを選択し、効果的に組み合わせることが求められます。その際、現場の受容性や使いやすさを重視し、必要に応じて段階的な機能拡張を図ることで、持続可能な仕組みを構築することができます。

第三に、人材育成と組織文化の醸成です。デジタル技術の活用に長けた若手社員と、豊富な経験を持つ熟練技術者が、それぞれの強みを生かして協働できる環境を整えることが重要です。また、継続的な学習と改善を推奨する組織文化を育てることで、技術伝承の質を持続的に向上させることができます。

これらの要素を適切に組み合わせることで、確実かつ効果的な技術伝承のデジタル化を実現することができます。重要なのは、デジタル化を目的とせず、あくまでも技術伝承をより効果的に行うための手段として位置づけ、継続的な改善を図っていくことです。

技術伝承のデジタル化は、組織の未来を左右する重要な取り組みです。本記事で解説した内容を参考に、自社の状況に合わせた最適な方法を見いだし、確実な一歩を踏み出していただければ幸いです。

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代表取締役 新井澄人
代表取締役 新井澄人
株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。 資格: ・全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC2023002) ・LIFOプログラムライセンス(LIFO-MSSプログラム開発者)

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