【リスキリング事例12選】大企業・中小企業それぞれのヒントが満載
「人材不足に苦しんでおり、リスキリングの取り組みが喫緊の課題」
「しかし、具体的にどう始めればよいのか、イメージできない」
このような悩みを抱える企業は、多いのではないでしょうか。
少子高齢化の進行や産業構造の変化により、日本企業の多くが人材不足に直面しています。
今、企業の成長と発展の鍵を握ると注目されているのが、「リスキリング」と呼ばれる社員の学び直しです。
リスキリングの意味・定義は「新しいスキルを習得するための従業員の職業能力の再開発」です。
本記事では、大企業と中小企業のリスキリングの成功事例 12選をご紹介し、リスキリングに取り組むポイントを解説します。
ご一読いただくと、自社の状況に合ったリスキリングの進め方が明確になり、スムーズに取り組みをスタートできるはずです。
社員の成長を後押しし、変革の時代を勝ち抜く強い組織づくりにぜひお役立てください。
▼リスキリングをeラーニングを活用して進めるポイントについては下記で詳しく解説しています。⇒リスキリングに最適なeラーニングの活用法と陥りやすい落とし穴とは?
目次[非表示]
- 1.リスキリングの取り組み動向
- 1.1.企業のリスキリングの機会の提供状況
- 1.2.経営者自身のリスキリングの取り組み状況
- 2.大企業のリスキリング事例 7選
- 2.1.ENEOSホールディングス株式会社
- 2.2.中外製薬株式会社
- 2.3.三菱商事株式会社
- 2.4.DMG森精機株式会社
- 2.5.株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ
- 2.6.株式会社山陰合同銀行
- 2.7.株式会社サイバーエージェント
- 3.中小企業のリスキリング事例 5選
- 3.1.株式会社八天堂
- 3.2.西川コミュニケーションズ株式会社
- 3.3.株式会社マツバラ
- 3.4.株式会社陣屋
- 3.5.久野金属工業株式会社
- 4.リスキリング成功の3つのポイント
- 5.まとめ
リスキリングの取り組み動向
具体的な事例をご紹介する前に、企業のリスキリングへの取り組み動向について、最新のデータを交えながら概観しておきましょう。
企業のリスキリングの機会の提供状況
近年、企業がリスキリングの重要性を認識し、社員に対してリスキリングの機会を積極的に提供する動きが広がっています。
「中小企業白書 2023年版」によると、役員・社員に対してリスキリングの機会を「提供している」と回答した企業は43.3%に上りました。
その内容については、「書籍・セミナー受講等による知識の収集」「社外での勉強会への参加」「新しいスキルに関する資格取得」が、それぞれ50%を超えています。
加えて、リスキリングの機会を提供している企業は、提供していない企業と比較して、売上高増加率が高い傾向にあることも明らかになりました。
リスキリングへの取り組みが、企業の成長力強化につながっている可能性が示唆されています。
経営者自身のリスキリングの取り組み状況
もうひとつ、企業がリスキリングを推進するうえで重要なのが、経営者自身の取り組みです。
前出の資料によると、経営者自身がリスキリングに「取り組んでいる」と回答した企業は44.6%となっています。
経営者が行っているリスキリングの内容は、「書籍・セミナー受講等による知識の収集」「社外での勉強会への参加」「新しいツール・設備の導入やプロジェクトを通じた学習と実践機会の確保」が上位を占めます。
経営者のリスキリングでは、新しい技術・事業の情報収集に重きがある点が、一般社員向けとの違いといえるでしょう。
たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)やサステイナビリティなど、経営に影響を及ぼす新しい潮流をいち早くキャッチアップすれば、スピード感を持って経営に生かせます。
以上のリスキリングを取り巻く全体像を踏まえつつ、続いて具体的な事例を見ていきましょう。
大企業のリスキリング事例 7選
まずは大企業のリスキリング事例からご紹介します。
|
ENEOSホールディングス株式会社
1つ目の事例は「ENEOSホールディングス株式会社」です。
脱炭素・循環型社会への移行に伴い、エネルギー業界は変革期を迎えています。エネルギー事業を手がける同社は、社員のリスキリングによって、激動の時期をチャンスに変えています。
なかでも、社員がENEOSに所属しつつ1年間ベンチャー企業で働く「レンタル移籍制度」は、非常にユニークかつ大胆な取り組みといえるでしょう。
加えて、人材の能力開発に資する研修やリスキリングの推進を施策として掲げており、オンライン学習プラットフォームの利用者数などを具体的な目標指標として開示しています。
同社のように、リスキリング施策のKPI(重要業績評価指標)を具体的に設定して開示する試みは、ぜひお手本として取り入れたいポイントです。
中外製薬株式会社
2つ目の事例は「中外製薬株式会社」です。
同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対するコミットメントが際立っており、DX人材育成のための施策が秀逸です。
2021年には「Chugai Digital Academy」を設立しました。同施策では、DX人材育成コンテンツを、マネジメント層向け・一般社員向けなどのレイヤーごとに提供しています。
社外へのプログラム展開や社外人材交流、コミュニティ参画にも積極的に取り組んでおり、得た技術・人材を、社外にも還元している点が特徴的です。
DXを主体としたリスキリング施策を検討している企業にとっては、先進の好例としてチェックしておきたい事例です。
三菱商事株式会社
3つ目の事例は「三菱商事株式会社」です。
同社も、DX人材の育成に積極的に取り組んでいる企業です。以下の具体的なデジタル人材育成プログラムの事例は、参考になる企業が多いのではないでしょうか。
同社では、全社員対象のオンデマンド講座「IT・デジタルリテラシー講座」により、IT・デジタルスキルを底上げしています。
加えて、「MCイノベーション・ラボ」を立ち上げ、6か月にわたる座学と実践演習により、自力でプログラミングができるレベルまでリスキリングを実施しています。
このように、人材育成への投資を惜しまず実力を高める企業の存在を知ると、危機感を覚える方も多いでしょう。自社が取り残されないためには、一刻も早くリスキリングに着手すべきと実感せざるを得ません。
DMG森精機株式会社
4つ目の事例は「DMG森精機株式会社」です。
世界最大手の工作機械製造会社である同社は、計測装置やソフトウェアの開発も行っています。
給与を国際水準へ大幅に引き上げ、博士人材など専門人材の採用を進めるとともに、高度なリスキリングを推進しています。具体的には、東京大学と連携した施策を実施しています。
加えて、「よく遊び、よく学び、よく働く」という経営理念の実践に向けた取り組みも、際立っています。
単に学習リソース(研修や教材)を提供するだけでなく、組織のカルチャーとして「学ぶ」を組み込むことは、リスキリングの本質といえるかもしれません。
株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ
5つ目の事例は「株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ」です。
同社は横浜銀行と東日本銀行を傘下に置く金融持株会社ですが、環境変化に適応してソリューションビジネスを強化するための「人づくり」に注力しています。
その一環として特徴的なのが、新たな職務への挑戦機会となる「リスキリングチャレンジ」です。
ガイダンスや研修を経て、行内公募により選ばれた社員は、6か月間のトレーニー期間(育成期間)に入ります。その後、スキル修得状況の評価を経て、正式に新たな職務へ配属されます。
また、営業人材の育成にあたっては、3段階に設定したスキルレベルに応じた研修体系を整備しています。
半期ごとに、スキル習熟度・教養・実践の3要素から社員のスキルレベルを評価し、それをさらなる成長機会の付与に反映しているという取り組みは、秀逸です。
学びを形骸化させずに、企業の戦力として昇華させる秘訣といえるでしょう。
株式会社山陰合同銀行
6つめの事例は「株式会社山陰合同銀行」です。
同社は「法人営業を強化する」という明確な目的のために、大胆な構造改革によるリスキリング施策を実施しました。
他業務から法人営業担当への転身を目指す行員154名を、eラーニング研修やOJTによる現場での育成により、約1年間かけて集中的に教育しています。
自社内からの戦略的な人材捻出を目指す企業にとって、お手本となる好例といえます。
株式会社サイバーエージェント
7つ目の事例は「株式会社サイバーエージェント」です。
メディア事業やインターネット広告事業を手がける同社は、事業の変化に応じたリスキリングを、会社を挙げて推進してきました。
社内に十分なスキルがない領域は、社外人材も活用しながら社員同士が学び合う「勉強会形式」でリスキリングするカルチャーがあります。
現在は社内向けの「リスキリングセンター」と社外向けの「アカデミー」が設置されています。
社内だけでなく、社外にも取り組みを広げており、業界全体の底上げ(例:エンジニアの総母数の増加)を見据えた長期的な取り組みが印象的です。
中小企業のリスキリング事例 5選
続いて、中小企業のリスキリング事例を見ていきましょう。
|
株式会社八天堂
1つ目の事例は「株式会社八天堂」です。
広島県に所在する菓子メーカーである同社は、健康経営に積極的に取り組んでおり、その過程でリスキリングに着目しています。
「接客(SDGs含む)」「パンづくり(GX含む)」「改善(DX含む)」といったスタンダード能力の強化を掲げ、各スキルのリスキリング実践を進めていきました。
その際には、まず「リスキリング推進宣言」を明文化しています。
実践フェーズでは、「育成成長マップ」を作成して、「見える化」および「できるところからやる」という方針での進め方が卓逸しています。
これからゼロベースでリスキリング施策に取り組みたい企業にとって、非常に参考になる点が多い事例といえます。
詳しくは、以下の資料にて紹介されていますので、ご覧ください。
西川コミュニケーションズ株式会社
2つ目の事例は「西川コミュニケーションズ株式会社」です。
愛知県名古屋市に所在する同社は、印刷業を祖業とする企業です。しかしながら、近年、印刷事業だけでは生き残りが難しいと判断し、デジタル分野を中心とする事業構造への転換を決意しました。
具体的な取り組みを時系列で追ってみましょう。
|
結果として、デジタル分野の知見を持つ社員が少ない状況から、「ITパスポート」は220名以上、「G検定」は70名以上、「E資格(G検定の上位資格)」は3名が取得するなど、デジタル人材の育成に成功しています。
同社のケースは、社長自身が新たなスキルの習得に積極的な姿勢を見せ続けたことが、学び続ける組織風土の定着に大きく寄与した好例といえます。
株式会社マツバラ
3つ目の事例は「株式会社マツバラ」です。
同社は岐阜県に所在する鋳物専業メーカーです。中部経済産業局による事例集の「賃上げ・リスキリング」の好例として取り上げられており、従業員を大切にする取り組みが非常に印象的です。
出典:中部経済産業局「多様な人材活躍/働きやすい 中小企業事例集」
リスキリングに関係する部分を抜粋すると、以下のとおりです。
|
上記に加えて、有給休暇の取得促進や賃上げにより、従業員の心に余裕があることも、学習意欲を促進する要因といえるのではないでしょうか。
株式会社陣屋
4つ目の事例は「株式会社陣屋」です。
神奈川県で温泉旅館を運営する同社は、創業から100年以上の歴史を持ちますが、かつては経営危機に陥ったこともありました。ターニングポイントとなったのは、デジタル化とそれに伴う人材開発の推進です。
当初はデジタル端末に慣れていない従業員が多く、さまざまな苦労がありましたが、以下のようなプロセスでリスキリングを実現していきました。
|
同社がデジタル化とリスキリングを通じて経営改革を実現したのは、定着するまで根気強く従業員と向き合う、粘り強いアプローチにあったといえるでしょう。
久野金属工業株式会社
5つ目の事例は「久野金属工業株式会社」です。
同社は愛知県に所在する金属加工メーカーですが、「変化を自ら創出する過程で学び直しを進めていく」というスタイルが特徴的です。
具体的な取り組みを見てみましょう。
|
同社の場合は、デジタル化の環境を会社が用意して適応を促すのではなく、デジタル化の提案から実装までを社員が行うことで、リスキリングとデジタル化を同時に実行しています。
イノベーションと機動力を重視する企業にとって、おおいに参考になる事例といえるのではないでしょうか。
出典:リクルートワークス研究所「リスキリングをめぐる 内外の状況について」
リスキリング成功の3つのポイント
最後に、リスキリングを成功に導く3つの重要ポイントをお伝えします。
|
経営トップのコミットメントと明確なビジョンの共有
1つ目のポイントは「経営トップのコミットメントと明確なビジョンの共有」です。
企業がリスキリングを成功させるには、経営トップの強力なリーダーシップが欠かせません。
トップ自らがリスキリングの重要性を認識し、全社的な取り組みを推進する原動力となる必要があります。
加えて、リスキリングのビジョンを明確に定めて、社員と共有することも大切です。
社員が「なぜリスキリングに取り組むのか」「どのような人材を目指すのか」を理解すれば、学ぶ意欲が高まり、自律的な学びへとつながります。
【コミットメントを示す経営トップの具体的アクション例】
|
戦略的・長期的視点に立った体系的な取り組み
2つ目のポイントは「戦略的・長期的視点に立った体系的な取り組み」です。
リスキリングは一朝一夕で成果が出るものではありません。戦略的・長期的な視点に立ち、人材育成の土台を築く必要があります。
まずは自社の経営課題や目指す方向性を明らかにし、そこから必要な人材像を導き出し、育成の方針を固めます。
どのような知識・スキルを身に付けるべきかを体系立てて整理することが不可欠です。
そのうえで、研修やeラーニング、OJTを通じた育成プログラムを階層別に設計し、時間をかけて着実に知識とスキルを習得できるカリキュラムを用意します。
そのためには、まずは複数のサービスやシステムを比較検討し、選択肢を知ったうえで最適解を検討する必要があります。
以下にリスキリング向けの学習リソース資料をリンクしますので、参考にしていただければと思います。
社員の主体性を引き出す動機づけとサポート体制の整備
3つ目のポイントは「社員の主体性を引き出す動機づけとサポート体制の整備」です。
リスキリングの主役はあくまで社員一人一人です。
自ら学ぶ意欲を持ち、能動的に知識・スキルの習得に励む姿勢を促す仕組みが、学習効果を高めます。
【社員の主体性を引き出す動機づけの例】
|
企業には、時間面・費用面・情報面など、あらゆる角度から社員の学びをサポートする工夫が求められます。
自社の状況に合ったリスキリングのあり方を、模索していきましょう。
まとめ
本記事では「リスキリング事例」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
大企業のリスキリング事例として、以下をご紹介しました。
|
中小企業のリスキリング事例として、以下をご紹介しました。
|
リスキリングを成功に導く3つの重要ポイントは以下のとおりです。
|
変化の時代を勝ち抜く人材育成戦略の鍵はリスキリングにあるといえます。先進企業の事例を参考にしながら、自社ならではのリスキリング施策を実行し、社員個人のキャリアの再構築の支援をしていきましょう。
株式会社LDcubeでは世界のLMS市場トップ50リストで2020年に1位に輝いたCrossKnowledgeのLMS/eラーニング製品を日本で展開しています。
もちろん自社コンテンツの制作や搭載も可能なため、リスキリングするための学習環境を整えることができます。
汎用的なコンテンツはCrossKonwledgeにお任せください。
CrossKnowledgeのLMS/eラーニングは多言語対応しており、世界レベルの著名なMBA教授らが監修した高品質なコンテンツを有しており、24時間365日稼働しています。
無料のデモIDの発行や導入事例の紹介なども行っています。受講者からの評判や受講費用など含めて、お気軽に問合せ、ご相談ください。
▼ 関連資料はこちらからダウンロードできます。
▼関連記事はこちらから。