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役員研修とは何か?経営力強化と組織変革を実現する効果的アプローチ

「経営幹部の能力不足が懸念材料だが、どのように育成すればよいのかわからない」

このような課題意識を持つ企業は、少なくありません。

急速に変化する経営環境のなかで、役員には高い経営力とリーダーシップが求められています。役員研修は、そうした役員の能力開発と組織変革を実現する有効なアプローチとして、注目されています。

本記事では、役員研修の概要と重要性、扱うべき内容、効果を高めるポイントなどを詳しく解説します。

ご一読いただくと、自社に適した役員研修を設計し、実施に向けた具体的なアクションを描けるようになります。戦略的な人材育成を通じて、経営の質と組織力の向上を目指しましょう。

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目次[非表示]

  1. 1.役員研修とは何か?概要と重要性
    1. 1.1.役員研修とは何か
    2. 1.2.なぜ役員研修が必要とされているのか
    3. 1.3.役員研修が経営の質と組織力の向上につながるメカニズム
  2. 2.役員研修で扱うべき主要な内容
    1. 2.1.経営リーダーシップ
    2. 2.2.財務
    3. 2.3.外部環境分析
    4. 2.4.ESG
    5. 2.5.マーケティング
    6. 2.6.組織
    7. 2.7.経営戦略
    8. 2.8.人材マネジメント
  3. 3.役員研修の実施形態と特徴
    1. 3.1.企業内研修(インハウス):自社の課題に特化した設計が可能
    2. 3.2.公開講座:他社役員との交流と新たな気づきの機会
    3. 3.3.経営合宿:オフサイトでの集中的な学びと対話
    4. 3.4.エグゼクティブコーチング:個別の課題に応じた伴走支援
  4. 4.役員研修の効果を高める設計の重要ポイント
    1. 4.1.知識・スキルだけでなく「人間力」を育てる
    2. 4.2.インプット→整理→アウトプットの流れを重視する
    3. 4.3.研修の質に関して妥協しない
  5. 5.まとめ

役員研修とは何か?概要と重要性

役員研修①

まずは、役員研修とは何か、その概要から確認しましょう。

  1. 役員研修とは何か
  2. なぜ役員研修が必要とされているのか
  3. 役員研修が経営の質と組織力の向上につながるメカニズム


役員研修とは何か

役員研修とは、取締役や執行役員などの経営幹部を対象とした教育研修プログラムを指します。

その目的は、経営力とリーダーシップの強化を通じて、企業の持続的成長と価値創造を実現することです。

役員研修では、経営戦略・リーダーシップ・ガバナンスなど、役員に必要な知識とスキルを体系的に学びます。

役員個人の能力開発だけでなく、役員間の一体感醸成やベクトル合わせも重要なテーマとなります。
 

なぜ役員研修が必要とされているのか

近年、役員研修へのニーズが高まっている背景には、以下の要因があります。

【役員研修が求められる要因】

  • 経営環境の高度化・複雑化
    ビジネスのグローバル化やテクノロジーの進化など、経営判断の難易度が増しているため、役員に高度な知見とスキルが要求されるようになりました。
  • ステークホルダーからの期待
    株主や投資家、従業員、顧客など、ステークホルダー(利害関係者)が役員に求める能力や資質のハードルが上がっています。役員の言動や判断が企業の評価に直結するため、ステークホルダーの視線が厳しさを増しているのです。
  • 内部昇格者の増加
    少子高齢化や採用難の状況にあって、多くの企業で役員の社内登用が進んでいます。内部昇格者は、社外の客観的視点や多様な知見に触れる機会が限られているため、外部研修の重要性が増しています。
  • 世代交代・事業承継への備え
    次世代の経営を担う役員候補の育成が喫緊の課題となり、計画的な研修を通じた後継者育成が不可欠となっています。
  • 不祥事防止の観点
    企業不祥事の防止には、役員のコンプライアンス意識の醸成が欠かせないため、ガバナンス教育の重要性が高まっています。

このように、役員を取り巻く環境変化や内外の要請を受けて、戦略的な研修の必要性が増しているのです。

自社の経営課題や役員の育成ニーズを踏まえた研修の設計が求められます。
 

役員研修が経営の質と組織力の向上につながるメカニズム

役員研修は、組織のパフォーマンス向上に大きな効果をもたらします。

役員の意識改革と行動変容が、組織全体の変革のきっかけとなるのです。

具体的には、以下のようなメカニズムを通じて、経営の質と組織力の向上につながります。

【役員研修が組織に与えるポジティブな効果】

  • 経営判断の精度向上
    経営環境や戦略、リーダーシップなどに関する知識・スキルの習得を通じて、役員の意思決定の質が高まります。
  • 役員の意識改革
    固定観念や前例主義から脱却し、イノベーティブな発想や挑戦する姿勢が身に付きます。
  • 社内変革の推進力
    役員自身が変革の重要性を認識し、強いコミットメントを示すことで、組織全体の変革マインドが醸成されます。
  • 一体感の醸成
    役員間の活発な議論や相互理解を通じて、ビジョンの共有と一体感が高まり、経営の推進力が強化されます。
  • 後継者育成の土壌
    次世代リーダーの計画的育成や、役員間の本音の議論を通じて、持続的な経営を支える人材育成の土壌ができあがります。

このように、役員研修は役員の意識と行動を変えるとともに、組織全体に良質なリーダーシップ効果をもたらすのです。

役員研修で扱うべき主要な内容

役員研修②

役員研修では、経営リーダーとして必要な知識とスキルを体系的に学びます。

ここでは、役員研修で扱うべき主要な内容について、8つの領域に分けて解説します。

  1. 経営リーダーシップ
  2. 財務
  3. 外部環境分析
  4. ESG
  5. マーケティング
  6. 組織
  7. 経営戦略
  8. 人材マネジメント

いずれも経営の意思決定や組織運営に直結する重要なテーマばかりです。

全般的にカバーするためには、半年〜1年の長期的な視点でカリキュラムを組むことが、推奨されます。

【参考:役員研修のスケジュール例】

役員研修③

 
それぞれの内容について、以下で見ていきましょう。
 

経営リーダーシップ

1つめは「経営リーダーシップ」です。

経営リーダーシップは、役員研修の根幹をなすテーマのひとつです。役員には、組織をけん引するビジョンの構築力や、変革を推進する実行力が求められます。

研修では、以下のような観点から、経営リーダーシップの強化を図ります。

【経営リーダーシップに関する研修内容の例】 

  • ビジョン構築
    組織の進むべき方向性を示し、メンバーの心に火をつけるビジョンを描く力を養う。
  • 意思決定
    不確実性の高い環境下での決断力や、正しくリスクテイクする姿勢を身に付ける。
  • コミュニケーション
    部下の才能を引き出し、組織の一体感を生むコミュニケーション力を磨く。
  • 変革リーダーシップ
    既存の枠組みを打ち破り、組織変革を推進するリーダーシップを習得する。
  • 自己認識
    自らの強みと弱みを客観的に捉え、リーダーとしてのあり方を問い直す。

経営リーダーシップは、役員個人の資質に負うところも大きいテーマです。

自己認識を深めながら、リーダーとしての意識と行動を磨き上げることが重要となります。
 

財務

2つめは「財務」です。

財務は、経営判断の基盤となる重要な領域です。役員は、財務諸表の理解はもちろん、投資判断や財務戦略立案の能力が問われます。

研修では、以下のような観点から、財務リテラシーの向上を目指します。

【財務に関する研修内容の例】

  • 財務諸表分析
    貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の読み方を習得する。
  • 管理会計
    原価計算や予算管理など、経営管理に必要な会計知識を身に付ける。
  • 投資評価
    NPV(正味現在価値:将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いた値)やIRR(内部収益率:投資案件の収益性を示す指標)など、投資案件の評価手法を学ぶ。
  • 財務戦略
    最適資本構成(企業価値を最大化する負債と資本の割合)や配当政策(株主への利益配分の方針)など、財務戦略の立案プロセスを理解する。
  • M&A・アライアンス
    M&A(企業の合併・買収)やアライアンス(企業間の提携)の財務的な考え方や留意点を押さえる。

財務リテラシーは、経営判断の質を大きく左右する重要な要素といえるでしょう。

役員には、数字を駆使し、財務の視点から経営の羅針盤を握ることが強く求められます。
 

外部環境分析

3つめは「外部環境分析」です。

外部環境分析は、経営戦略の出発点となる領域です。自社を取り巻く環境変化を機敏に察知し、競争優位の源泉見極める力が問われます。

研修では、以下のような観点から、外部環境分析力の強化を図ります。

【外部環境分析に関する研修内容の例】

  • マクロ環境分析
    PEST分析(Politics 政治・Economy 経済・Society 社会・Technology 技術を観点とする分析手法)など、マクロ環境の動向を俯瞰するフレームを学ぶ。
  • 業界構造分析
    ファイブフォース分析(新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手の交渉力・売り手の交渉力・業界内の競合の5つの競争要因から分析する手法)など、業界構造や競争要因を分析する力を身に付ける。
  • 競合分析
    競合他社の戦略や競争優位性(他社と比較して優れている点)を多角的に分析する視座を得る。
  • 市場分析
    市場セグメンテーション(市場を特定の基準で細分化すること)など、市場の特性や将来性を見極める力を高める。
  • シナリオプランニング
    不確実性に対応するためのシナリオ(複数の将来の想定)策定の考え方を理解する。

外部環境分析は、自社の置かれた立ち位置を客観的に把握するための重要な活動です。社内の常識に閉じこもることなく、外部の目線を養うことがポイントとなります。
 

ESG

4つめは「ESG」です。

ESGは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取った概念で、企業価値評価の新たな尺度として注目を集めています。

これからの経営では、環境・社会・ガバナンスの観点から、自社を見つめ直す力が問われます。研修では、以下のような視点から、ESG経営の考え方を学びます。

【ESGに関する研修内容の例】

  • ESGの基礎概念
    ESG投資(環境・社会・ガバナンスに配慮している企業を重視・選別して行う投資)の広がりなど、ESGを巡る動向と基本的な考え方を理解する。
  • 環境経営
    気候変動リスク(地球温暖化などの気候変動が企業に与える影響)への対応や、循環経済(資源を無駄なく繰り返し使う経済)への移行など、環境経営の実践事例を学ぶ。
  • 社会的責任
    人権尊重やダイバーシティ推進(多様な人材の活用)など、企業の社会的責任の意味を問い直す。
  • ガバナンス改革
    取締役会の実効性評価(取締役会の役割や責任が適切に果たされているかを評価すること)など、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の動向を押さえる。
  • サステナビリティ経営
    ESGを経営戦略の中核に据えたサステナビリティ経営(環境・社会・経済のバランスを取りながら持続的な成長を目指す経営)の考え方を理解する

ESG経営は、企業の持続可能性を高めるうえで、欠かせない視点だといえます。

中長期的な企業価値の向上につなげるESG経営を実践することが、役員の重要な責務となっているのです。
 

マーケティング

5つめは「マーケティング」です。

マーケティングは、顧客価値の創造と顧客獲得を目指す経営の要です。市場ニーズを的確に捉え、競争優位性ある価値を提供する力が問われます。

研修では、以下のような観点から、マーケティング力の強化を図ります。

【マーケティングに関する研修内容の例】

  • マーケティング戦略
    STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)など、マーケティング戦略の基本的な枠組みを学ぶ。
  • ブランディング
    ブランド構築の考え方や、ブランドエクイティ(ブランドの資産価値)の向上策を理解する。
  • デジタルマーケティング
    デジタル時代のマーケティング手法や、データ活用のあり方を学ぶ。
  • 顧客体験
    カスタマージャーニー(顧客の一連の体験プロセス)の設計など、顧客体験の革新につながる発想を得る。
  • マーケティングROI(投資収益率)
    投資対効果の考え方を理解し、マーケティング施策の選択と集中を図る力を養う。

マーケティングは、事業の収益基盤を支える重要な領域です。

役員の立場からは、マーケティング戦略の全体像を俯瞰し、事業戦略との整合性を図ることが肝要です。市場動向やテクノロジーの変化を敏感に察知し、先を見据えた布石を打つ先見性を養います。
 

組織

6つめは「組織」です。

組織は、経営戦略の実現を担う基盤です。役員には、組織の力を最大限に引き出し、高いパフォーマンスを生み出すマネジメントが求められます。

研修では、以下のような観点から、組織マネジメントの力量を高めます。

【組織に関する研修内容の例】

  • 組織デザイン
    戦略に即した組織構造や、意思決定プロセス(組織内での意思決定の流れや手順)を設計する考え方を習得する。
  • 組織開発
    組織診断(組織の強み・弱みを分析すること)など、組織の問題解決力を高めるための理論と実践を学ぶ。
  • 組織文化
    組織文化(従業員が共有する価値観や行動様式)の醸成や、価値観の共有を促すリーダーシップを理解する。
  • チームマネジメント
    心理的安全性(自分の意見を自由に言えると感じられる環境)の高いチームを作り、チームの生産性を高める手法を学ぶ。
  • 変革マネジメント
    組織変革に必要なプロセスやスキルを習得し、変革を先導する力を養う。

組織マネジメントは、人と組織の力を結集し、経営目標を達成するための核心といえます。

組織と個人の持続的な成長を促すスキルを、役員一人一人が高めることが求められます。

経営戦略

7つめは「経営戦略」です。

経営戦略は、役員研修の中核をなすテーマです。自社の強みを生かし、競争優位を築く戦略の立案力が問われます。

研修では、以下のような観点から、経営戦略力の強化を図ります。

【経営戦略に関する研修内容の例】

  • ドメイン(事業領域)定義
    自社の事業ドメインを見直し、経営資源の選択と集中を図る視座を得る。
  • 競争戦略
    差別化戦略(他社と差別化を図る戦略)や低コスト戦略(コスト優位性を追求する戦略)など、競争戦略の基本型を理解し、自社の戦略を練り直す。
  • イノベーション戦略
    破壊的イノベーション(既存市場を破壊するような革新的な製品・サービス)やオープンイノベーション(外部との協業によるイノベーション)など、イノベーション創出の戦略を学ぶ。
  • 経営管理
    バランススコアカード(財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点から経営を管理する手法)など、戦略を実行に移すための経営管理の手法を習得する。
  • 戦略思考
    フレームワーク思考(複雑な問題を整理・分析するための思考の枠組み)など、戦略立案に必要な思考法を身に付ける。

経営戦略は、外部環境の分析と自社の強み・弱みの理解の上に成り立つものです。

社内外の情報を読み解き、大局観を持って戦略を構想する力を高めることが肝心だといえるでしょう。

人材マネジメント

8つめは「人材マネジメント」です。

人材マネジメントは、経営戦略の実現を支える重要な基盤です。人材の力を最大限に引き出し、組織の競争力の源泉とする力が問われます。

研修では、以下のような観点から、人材マネジメント力の強化を図ります。

【人材マネジメントに関する研修内容の例】

  • 人材戦略
    経営戦略と連動した人材戦略の立案プロセスを理解する。
  • タレントマネジメント
    後継者計画の策定など、戦略的なタレントマネジメント(高い潜在能力を持つ人材の発掘・育成・活用)の考え方を学ぶ。
  • リーダー育成
    次世代リーダー育成の研修体系や、育成施策の設計・運用方法や仕組みづくりを学ぶ。
  • パフォーマンスマネジメント
    目標管理制度の運用など、組織と個人のパフォーマンス(業績)を最大化する手法を習得する。
  • エンゲージメント
    従業員エンゲージメント(仕事へのモチベーションや会社への貢献意欲)を高めるマネジメントを理解し、一人一人が生き活きと働ける環境づくりを学ぶ。

人材マネジメントは、人材を最大の資産と捉え、その力を存分に引き出すための舵取りです。

経営戦略と表裏一体の人材戦略を描き、その実現に向けて率先して行動する力を養います。

役員研修の実施形態と特徴

役員研修④

役員研修には、企業内で完結させるインハウス型、外部機関を活用するオープン型など、さまざまな実施形態があります。

自社の目的や課題、予算などに応じて、最適な形態を選択することが重要です。

ここでは、代表的な研修形態の特徴を解説します。

  1. 企業内研修(インハウス):自社の課題に特化した設計が可能
  2. 公開講座:他社役員との交流と新たな気づきの機会
  3. 経営合宿:オフサイトでの集中的な学びと対話
  4. エグゼクティブコーチング:個別の課題に応じた伴走支援


企業内研修(インハウス):自社の課題に特化した設計が可能

1つめの形態は「企業内研修(インハウス)」です。

企業内研修(インハウス)とは、従業員教育の一環として、企業が自社内で主催する研修を指します。

自社の経営課題や人材育成ニーズに即した内容設計が可能な点が、最大の特長です。機密情報を交えた深い議論ができるのも、インハウス研修ならではのメリットといえるでしょう。

また、全役員の参加を義務付けることで、役員間の一体感醸成やコミュニケーション活性化も期待できます。

◎メリット

△デメリット

  • 自社の経営課題に特化した設計が可能
  • 機密情報を交えた深い議論ができる
  • 全役員の参加による一体感醸成が期待できる
  • 外部の客観的視点が入りにくい
  • 他社の知見が得にくい

一方で、外部の客観的視点や他社の知見を取り入れにくいことがデメリットとして挙げられます。
自社の常識や固定観念に縛られない研修とするためには、外部講師の起用など工夫が必要です。

企業内研修は、自社の実情に合わせた実践的な学びを通じて、課題解決に直結する研修を実施したい企業におすすめの形態だといえるでしょう。

企業内研修の実施については、以下の記事もあわせてご覧ください。

  社内研修の作り方!効果的なプログラムとは?ポイントを解説 企業内では人材育成のためにさまざまな研修プログラムが実施されています。社内講師で実施することもあれば、外部に依頼することもあります。 人材育成担当者が社員研修の計画作成、実施から効果測定まで流れや、研修を内製化して展開していくポイントについて解説します。 株式会社LDcube


公開講座:他社役員との交流と新たな気づきの機会

2つめの形態は「公開講座」です。

公開講座とは、研修会社などの外部機関の主催で、複数の企業の役員が参加する研修を指します。

他社役員との交流を通じて新たな発想や気づきを得られる点が魅力です。異業種の役員とのディスカッションは、視野の拡大や相対化に役立ちます。

一方で、機密情報を交えた議論がしづらいことや、自社の状況に即した内容設計が難しいことがデメリットとなります。

◎メリット

△デメリット

  • 他社役員との交流による新たな気づきが得られる

  • 多様な業界の知見に触れられる

  • 機密情報を交えた議論がしづらい

  • 自社の文脈に即した内容設計が難しい

企業内研修の補完的な位置づけとして、戦略的に公開講座を活用することが望ましいでしょう。
役員一人一人の育成ニーズに合わせて、適切なプログラムを選ぶことが肝要です。

公開講座は、自社の枠を超えて、広い視野で経営を捉え直したい企業におすすめです。

経営合宿:オフサイトでの集中的な学びと対話

3つめの形態は「経営合宿」です。

経営合宿とは、日常の職場から離れたオフサイト(職場以外の場所)の環境で、役員が合宿形式で行う研修を指します。

日常業務から離れて集中的に学び、議論できる点が特長です。普段はなかなか深められない本音の対話が可能となるため、役員間の相互理解と一体感醸成に効果的です。

また、1泊以上の合宿とすることで、インフォーマルなコミュニケーション(懇親会や雑談など)の機会も生まれ、役員間の人間的な絆を深められます。

◎メリット

△デメリット

  • 日常から離れた環境で集中的な議論ができる

  • 役員間の本音の対話と相互理解が深まる

  • インフォーマルな交流による人間的な絆の醸成につながる

  • 日程調整が難しい

  • 一定の予算が必要となる

ただし、日程調整の難しさや、一定の予算が必要となる点には留意が必要です。

経営合宿は、腰を据えて中長期的な経営テーマを議論したい企業におすすめだといえるでしょう。

エグゼクティブコーチング:個別の課題に応じた伴走支援

4つめの形態は「エグゼクティブコーチング」です。

エグゼクティブコーチングとは、経営幹部(エグゼクティブ)を対象に、個別の課題解決に向けて専門家(コーチ)が伴走支援を行う研修を指します。

各役員の課題や強み、特性に合わせたオーダーメイド型のアプローチにより、個人の能力開発を効果的に進められます。

キャリアの棚卸しや、リーダーシップ開発、後継者育成計画の策定など、個人の内省を伴う内容に適しています。

◎メリット

△デメリット

  • 個人の課題に特化した支援が受けられる
  • 内省を伴うテーマに適している
  • 役員のモチベーション向上につながる
  • 相応のコスト負担が発生する

  • コーチの質により効果が左右される

最近は、オンラインでのコーチングも一般的になっており、スケジュールの制約を軽減する工夫も可能です。

一方で、相応のコスト負担が発生する点や、コーチの質により効果が左右される点には注意が必要です。

エグゼクティブコーチングは、各役員の個別課題の解決を重視する企業におすすめのアプローチだといえるでしょう。

役員研修の効果を高める設計の重要ポイント

役員研修⑤

役員研修の効果を最大限に引き出すには、自社の経営課題や役員の特性に合わせたプログラム設計が不可欠です。

最後に、押さえるべき設計の重要ポイントを解説します。

  1. 知識・スキルだけでなく「人間力」を育てる
  2. インプット→整理→アウトプットの流れを重視する
  3. 研修の質に関して妥協しない


知識・スキルだけでなく「人間力」を育てる

1つめのポイントは「知識・スキルだけでなく『人間力』を育てる」です。

役員研修では、知識やスキルの習得だけでなく、人間力の向上にも焦点を当てることが重要です。経営リーダーには、高い倫理観や人格的な魅力など、人としての総合的な力が求められるからです。

研修では、以下のような観点から、役員の人間力を高める工夫を盛り込みましょう。

【役員の人間力を高めるための研修設計のポイント】

  • 倫理観の醸成
    企業倫理(企業活動において守るべき道徳的規範)やコンプライアンス(法令遵守)に関する議論を通じて、高潔な倫理観を養います。
  • 自己認識の深化
    360度評価(上司・同僚・部下など周囲の評価を多面的に受けること)などを活用し、自己の強みと弱みを多面的に認識する機会とします。
  • 感情知性(EQ)の向上
    コミュニケーションスキルの訓練を通じて、他者の感情を理解し、適切に対応する力を高めます。※感情知性(EQ)とは、自己や他者の感情を理解し、適切に管理・対応する能力のことです。
  • 人間性の探求
    ケーススタディ(実際の事例を用いた学習)やグループディスカッション(複数人による討議)を通じて、リーダーとしての人間性について考察を深めます。
  • 志の醸成
    企業の社会的使命や役員の責務について議論し、高い志(高い理想や目的意識)を持って行動する意識を啓発します。

このように人間力の向上を意識した研修設計が、知識とスキルを兼ね備えた品格ある経営リーダーの育成につながります。

インプット→整理→アウトプットの流れを重視する

2つめのポイントは「インプット→整理→アウトプットの流れを重視する」です。

研修の学びを定着させ、実践に移すためには、インプット→整理→アウトプットの流れを重視することが大切です。

単に知識を詰め込むだけでなく、学びを自分の言葉で語れるようになるまでの一連プロセス研修中に組み込むことが、鍵となります。

具体的には、以下の3ステップを意識した研修設計が有効です。

役員研修⑥

【インプット→整理→アウトプットの3ステップ】

  • STEP1 インプット(習得)
    講師による講義形式の学習やeラーニングプログラムを通じて、各テーマの基本的な考え方や全体像を理解します。
  • STEP2 整理(置き換え)
    インプットした内容を自社の文脈に置き換えて咀嚼し、経営課題を整理します。学びを自分事化していくプロセスを通じて、認識をすり合わせていきます。
  • STEP3 アウトプット(語り、伝える)
    整理した内容を自分の言葉で説明し、役員としての当事者意識を持ってプレゼンテーションします。「経営」を自分の言葉で語れるようになることを目指します。

このように、単なる知識の習得に留まらず、それを実践知へと転換するためには、インプットとアウトプットを有機的に連動させた研修設計が不可欠です。

研修の質に関して妥協しない

3つめのポイントは「研修の質に関して妥協しない」です。

役員研修は、経営リーダーを育成する重要な機会です。そのクオリティを高めることは、今後の経営状況を左右する要因といっても過言ではありません。

研修の質に関して妥協することなく、最高水準のプログラムを提供することが、焦点となります。

【研修の質を高めるためのポイント】

  • 一流講師の起用
    各分野で定評のある専門家を講師として招き、質の高い学びを提供します。
  • 事前準備の徹底
    受講者のニーズや課題感を丁寧にヒアリングし、研修内容に反映させます。
  • 学習プラットフォームの活用
    事前課題や振り返りの共有、受講者同士の情報交換など、継続的な学びを支援する環境を提供します。
  • 事前学習の充実
    eラーニングを活用した予習や、自身の考えを整理するワークシートの作成により、研修の効果を高めます。
  • 公開講座の併用
    最新のマネジメント理論やリーダーシップを学ぶ公開講座を組み合わせ、視野を広げる機会とします。
  • ディスカッションの活性化
    参加者の積極的な発言を促し、双方向の議論を通じて学びを深めます。
  • フィードバックの充実
    講師や他の参加者から、多面的なフィードバックを行う機会を設けます。
  • フォローアップの実施
    研修後の行動計画の策定とフォローアップを行い、学びの実践を支援します。

このように、研修の質を高める角的な工夫を凝らすことで、学習効果を最大化できます。


役員研修には経営シミュレーション「Biz-Ex(ビジックス)」をご活用ください

役員にどのような教育をするべきか悩んだときは、ぜひ「Biz-Ex(ビジックス)」をご活用ください。

Biz-Ex(ビジックス)は、社長の立場で6年間分の会社経営を疑似体験できる経営シミュレーション型eラーニングプログラムです。

このプログラムには以下のような特徴があり、御社の後継者育成をサポートします。

  • 本格的な意思決定を疑似体験できる高度な経営シミュレーションシステム
  • 戦略/財務/マーケティングなどを学習できる120以上の図解付きコンテンツ
  • シミュレーションから導き出された受講者の能力や行動志向などを可視化できるレポート

これらの特徴で、後継者に必要な知識やノウハウを体系的に習得させることが可能です。
後継者候補の教育にお悩みの際は、ぜひBiz-Ex(ビジックス)の利用をご検討下ください。

▼ 経営シミュレーション研修については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

  経営シミュレーションとは?人材育成の新手法・研修について解説! 今回は経営シミュレーションの意義や内容、対象者、必要なスキル、進め方について解説します。ビジネススキルや戦略思考、意思決定力を高め、経営力を育てる研修として、企業の成長を支える人材育成に役立つでしょう。 株式会社LDcube

なお、「具体的に、どう設計すべきか迷ってしまう」という場合には、お気軽に弊社LDcubeにご相談ください。

LDcubeではプロの研修トレーナーが活用する理論・モデル・ツールをご提供しており、卓逸した高レベルの役員研修を実施可能です。

お問い合わせはこちらのページより承っております。

サービス資料を確認されたい方は、以下のページよりダウンロードしてご確認ください。

Biz-Ex資料


まとめ

本記事では「役員研修」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

役員研修で扱うべき主要な内容として、以下をご紹介しました。

  1. 経営リーダーシップ
  2. 財務
  3. 外部環境分析
  4. ESG
  5. マーケティング
  6. 組織
  7. 経営戦略
  8. 人材マネジメント

役員研修の実施形態は、以下のとおりです。

  1. 企業内研修(インハウス):自社の課題に特化した設計が可能
  2. 公開講座:他社役員との交流と新たな気づきの機会
  3. 経営合宿:オフサイトでの集中的な学びと対話
  4. エグゼクティブコーチング:個別の課題に応じた伴走支援

役員研修の効果を高める設計の重要ポイントとして、以下を意識しましょう。

  1. 知識・スキルだけでなく「人間力」を育てる
  2. インプット→整理→アウトプットの流れを重視する
  3. 研修の質に関して妥協しない

役員の能力開発は、経営の持続性を左右する重要な経営課題です。

経営トップのリーダーシップのもと、役員の能力開発に取り組むことが、変化の時代を勝ち抜く鍵となります。

役員研修を、単なる知識習得の場ではなく、役員の意識と行動を変革する学びの機会と捉え、組織力を強化していきましょう。

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LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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