
成果につなげる営業コーチングのやり方とは?部下のセールス力を引き出す5つのステップ
営業成績の向上や部下の育成に悩む営業マネジャーの方は多いのではないでしょうか。変化の激しい現代の営業環境において、従来の指示型マネジメントだけでは、持続的な成果を上げることが困難になっています。
そこで注目されているのが「営業コーチング」です。営業コーチングとは、部下に答えを教えるのではなく、対話を通じて部下自身が考え、気付きを得られるよう支援する手法です。単なる指導とは異なり、部下の主体性を引き出し、自立的な成長を促すことで、個人だけでなく組織全体の営業力向上につながります。
本記事では、営業コーチングの基本的な考え方から、具体的な実践方法まで5つのステップで詳しく解説します。また、成功させるためのポイントや活用できるツールも紹介しますので、すぐに実践できる内容となっています。部下の営業力を引き出し、強い営業組織を作りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
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営業へのコーチングで業績改善できる
営業業績の向上に悩む企業が増えている中、注目されているのが営業コーチングです。従来の指導方法とは一線を画すこのアプローチが、なぜ多くの企業で成果を上げているのでしょうか。
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営業へのコーチングとは?
営業コーチングという言葉は広く知られていますが、その本質を正しく理解している人は意外に少ないものです。効果的な営業組織を作るために、まずは営業コーチングの基本概念を明確にしましょう。
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営業へのコーチングの実践5ステップ
効果的な営業コーチングを実施するためには、体系的なアプローチが不可欠です。ここでは、実践で使える5つのステップを詳しく解説します。このプロセスを順番に実行することで、部下の営業力を確実に向上させることができます。
ステップ1:等身大の現状把握を行う
営業コーチングの第一歩は、部下の現在の状況を部下自身が等身大で正確に把握することです。「最近どう?」「案件は今どうなっている?」といった開放的な質問から始めて、部下が置かれている状況について丁寧に対話し気付きを促します。
この段階では、進捗状況だけでなく、部下が感じている課題や不安も表出することが重要です。適切な質問と対話により、部下自身も自分の状況を客観視できるようになり、問題の本質に気付くきっかけが生まれます。
「そうなってしまった原因に心当たりはある?」「何が原因で止まっているのかな?」といった質問を通じて、表面的な現象ではなく根本的な課題を明らかにしていきます。
ステップ2:目標の明確化と共有
現状が整理できたら、次は具体的な目標設定に移ります。「現状からどうなりたい?」「どんな結果を残したい?」といった質問を通じて、部下が目指すゴールを明確にします。目標は数値だけでなく、達成したときの状況や感情まで具体的にイメージできるレベルまで深掘りすることが大切です。
「それを達成できたら、どんな気持ちになるだろう?」「そのゴールを達成することは、自分にとってどんな意味がある?」といった質問により、目標達成への動機を強化します。また、目標達成によって得られるメリットだけでなく、そのために必要な犠牲や投資についても話し合い、現実的な目標設定を行います。
ステップ3:目標達成に向けた課題を洗い出す
目標が明確になったら、それを阻む可能性のある課題や障害要因を洗い出します。「今後、進捗がストップしてしまう可能性がある要因は何かな?」といった質問を通じて、予想される問題を事前に特定します。
同時に、目標達成に必要なリソース(時間、予算、人材、スキル、経験など)も明確化します。「課題を解決するためにはリソースが必要だけど、今どんなリソースを持っているかな?」という問いかけにより、部下が既に持っている強みや資源に気付かせることも重要です。
この段階で、部下自身では認識していなかった自分の能力や可能性を発見できることがあります。
ステップ4:課題解決のための選択肢を検討する
洗い出された課題に対して、複数の解決策を検討します。ここでは上司が答えを与えるのではなく、部下が自ら選択肢を考え出せるようサポートします。
「その課題をクリアするには、どんな方法が考えられる?」「過去に似たような状況を乗り越えた経験はある?」といった質問を通じて、部下の創造性と問題解決能力を引き出します。
複数の選択肢が出てきたら、それぞれのメリット・デメリット、実現可能性、必要なリソースなどを整理し、比較検討を行います。この過程で、部下は自分なりの解決策についてオーナーシップを高めることができます。
ステップ5:選択肢の中から実行案を自己決定する
最終ステップでは、検討した選択肢の中から具体的な実行案を決定します。「いつまでに達成する?」「キーパーソンは誰?」「どのような手順にする?」といった質問を通じて、行動計画を具体化していきます。
重要なのは、部下自身が選択し、決定することです。上司に押し付けられた計画ではなく、自分で選んだ計画だからこそ、高いコミットメントと実行力が期待できます。計画には中間目標の設定や進捗確認のタイミングも含め、実行可能性を高めます。
最後に「本当にやれるのか?」という確認を行い、部下の決意を固めてコーチングセッションを終了します。
営業へのコーチングを成功させるポイント
営業コーチングの効果を最大化するためには、基本的なスキルと心構えを身に付けることが不可欠です。ここでは、成功に導くための5つの重要なポイントを詳しく解説します。
ベースとなる信頼関係の構築
営業コーチングの成功において、上司と部下の信頼関係は最も重要な基盤となります。部下が心を開いて本音を話せる環境がなければ、効果的なコーチングは実現できません。
信頼関係構築のためには、日頃から部下の話に真摯に耳を傾け、判断や評価を急がず、まずは理解することに徹する姿勢が大切です。
また、部下の成功を心から喜び、失敗に対しても責めるのではなく一緒に解決策を考える支援的な態度を示すことで、安心して相談できる関係性を築くことができます。
適切な質問スキルの習得
効果的な営業コーチングの核心は、適切な質問にあります。部下が自ら考え、気付きを得られるような開放的な質問を使い分けることが重要です。
「はい・いいえ」で答えられる閉鎖的な質問ではなく、「どう思う?」「何が原因だと考える?」といった開放的な質問を多用します。
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これらの質問により、部下の思考を刺激し、自発的な気付きを促すことができます。
傾聴力を高める
営業コーチングにおいて、傾聴は質問と同じく重要なスキルです。部下が話している内容を表面的に聞くだけでなく、その背景にある感情や真意を理解しようとする姿勢が大切です。
相づちやアイコンタクト、適切な間の取り方により、部下が安心して話せる雰囲気を作ります。また、部下の話を要約して確認することで、正しく理解していることを示し、さらに深い対話へとつなげることができます。
傾聴により得られた情報は、その後のコーチングの方向性を決める重要な手掛かりとなります。
フィードバックスキルの習得
建設的なフィードバックは、部下の成長を加速させる重要な要素です。良い点は具体的に評価し、改善点については批判ではなく提案として伝えることが重要です。
「○○の対応は素晴らしかった」といった具体的な称賛により、部下のモチベーションを高めます。一方、改善点については「次回は△△を試してみてはどうか?」という提案形式で伝え、部下が前向きに受け取れるよう配慮します。
フィードバックのタイミングも重要で、適切な時期に適切な内容を伝えることで、学習効果を最大化できます。
部下一人一人に合わせたアプローチ
営業担当者にはそれぞれ異なる性格、経験、スキルレベルがあるため、画一的なコーチングでは効果が限定的です。提案型営業が得意な部下とプレゼンテーション型営業が得意な部下では、コーチングのポイントも変わってきます。
また、経験豊富なベテランと新人では、必要なサポートの内容も大きく異なります。部下の特性を理解し、それぞれに最適化されたアプローチを取ることで、個人の能力を最大限に引き出すことができます。
定期的な観察と対話を通じて、部下の変化や成長に合わせてコーチング手法も柔軟に調整していくことが重要です。
営業へのコーチングを取り入れるには
営業コーチングの効果を組織に根付かせるためには、計画的で段階的なアプローチが必要です。ここでは、実際に営業コーチングを導入し、継続的に運用するための具体的な方法を解説します。
営業マネジャーへのコーチング研修
営業コーチング導入の第一歩は、営業マネジャーのスキル向上から始まります。多くのマネジャーは営業の実績は豊富でも、コーチングの専門知識や技術を体系的に学んだ経験がありません。そのため、効果的なコーチング研修の実施が不可欠です。
研修では、コーチングの基本理論、質問スキル、傾聴スキル、フィードバック手法などを実践的に学びます。ロープレやケーススタディーを通じて、実際の部下とのやり取りで起こり得る、さまざまな状況への対応方法を習得します。
また、部下の行動スタイル別アプローチや、コーチングとティーチングの使い分けについても詳しく学ぶことで、個々の部下に最適な指導ができるようになります。研修後は定期的なフォローアップを行い、継続的なスキル向上を支援します。
営業マネジャーが職場でコーチングを実践
研修で学んだ理論を実際の職場で実践することが、営業コーチング定着の鍵となります。
まずは月1回の1on1ミーティングから始めて、徐々にコーチングの機会を増やしていきます。日常の営業活動の中で発生する課題や機会を題材にして、リアルタイムでコーチングを実施することが効果的です。
例えば、商談後の振り返りや週次の目標達成状況確認の際に、学んだコーチング技法を活用します。最初は型通りに進めることを意識し、慣れてきたら部下の反応を見ながら柔軟にアプローチを調整します。
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実践の過程で得られた成功事例は、他のマネジャーとも共有し、組織全体のコーチングレベル向上に活用します。
コーチング研修は社内トレーナーでも実施できる
営業コーチングの導入と継続的な運用を効率的に行うためには、社内にコーチング研修を実施できるトレーナーを育成することが有効です。
外部の専門機関でのトレーニングを受けた後、社内トレーナーとしてコーチング研修を実施することで、継続的で一貫性のある研修体制を構築できます。社内トレーナーには、現場の営業経験が豊富で、かつ人材育成に熱意のあるマネジャーが適しています。
彼らが自社の営業プロセスや顧客特性を踏まえてカスタマイズした研修を実施することで、より実践的で効果的な学習が可能になります。また、社内トレーナーによる研修は、コスト面でも長期的なメリットが大きく、組織の成長に合わせて柔軟に研修内容を調整できるというメリットもあります。
▼コーチング研修については下記で詳しく解説しています。
⇒コーチング研修に必要な内容とは?研修後の実践ポイントなど解説!
▼営業研修の社内トレーナーについては下記で詳しく解説しています。
⇒営業研修・セミナーは社内講師での実施が最適!?おすすめの理由を紹介!
営業へのコーチングにAIを活用する
AIの進歩により、営業コーチングの分野でも新たな可能性が広がっています。人間の営業マネジャーとAIがそれぞれの強みを生かしながら連携することで、より効果的で効率的なコーチング体制を構築できます。
活動の方向性は営業マネジャーがコーチングする
営業活動の戦略的な方向性や大きな判断については、経験豊富な営業マネジャーが引き続きコーチングを担当します。
顧客の心理的な変化の読み取りや、複雑な商談状況での判断、チーム内の人間関係への配慮など、人間ならではの感性と経験が必要な領域です。
また、部下のモチベーション管理やキャリア相談、個人的な悩みへの対応といった感情面でのサポートも、信頼関係に基づく人間同士のコミュニケーションが不可欠です。営業マネジャーは全体的な方向性を示し、部下の成長を長期的な視点でサポートする役割に集中することができます。
スキルアップはAIによるコーチングに任せる
一方、具体的な営業スキルの練習や知識の習得については、AIコーチングが効果を発揮します。
AIは事実データに基づいて一貫性のある指導を提供でき、個人の学習ペースや理解度に合わせてカスタマイズされたプログラムを実行できます。
例えば、商談でのセールストークの練習、プレゼンテーションスキルの向上、顧客対応のロープレなどを、AIを相手に繰り返し練習できます。AIは感情的な判断をしないため、客観的で建設的なフィードバックを提供し、営業担当者は安心してスキル向上に集中できます。
また、学習履歴や進捗状況をデータとして蓄積し、個人に最適化された学習計画を継続的に調整していきます。
AIはいつでもどこでも相手をしてくれる
コーチングにAIを活用する最大のメリットは、時間と場所の制約を受けないことです。
営業担当者は、移動中や隙間時間、早朝や夜間など、自分の都合に合わせていつでも練習し、コーチングを受けることができます。急な商談前の準備などでもタイムリーな練習とコーチングが可能になります。
また、人間のマネジャーに時間を取ってもらうには躊躇するような基礎的な練習や、何度も同じことを練習したい場合でも、AIなら気兼ねなく利用できます。この手軽さにより、学習の頻度と継続性が大幅に向上し、着実なスキルアップが期待できます。
従来のコーチングでは難しかった個人学習の習慣化も、AI活用により実現しやすくなります。
▼AIによるコーチングについては下記で詳しく解説しています。
⇒AIコーチングで人材育成!その効果と成功のカギ
AIコーチングを活用して業績向上につながった支援事例

デジタルOJTとリアルOJTの連動で業績向上へ【UMU導入事例】 社員数:3000名以上 事業:住宅メーカー |
導入前の課題~環境変化に対応した教育を提供したい~
働き方改革など、時代や環境の変化に伴い、従来通りの詰め込み型教育では新入社員がなかなか育たないという課題を抱えていました。
この課題を解決するため、2018年に新入社員の教育方針を「全社の人材育成システムを確立し、共通認識の下、営業人材を長期的視点で組織的・計画的に育成する」というものに変更しました。
3年で一人前とする本計画の元、「研修は事前学習→集合研修→職場実践サイクルによる、OJTとの連動形式を取る」「計画的なロールプレーイングの実施で営業のスキル向上を図る」「個々の学習の進捗状況と習得度の把握」をしながら持続的学習を促進していくために、マイクロラーニングによるインプットとAIによるロープレ(ラーニングプラットフォーム:UMU(ユーム)の活用)の導入を決定しました。
取り組みの詳細
① マイクロラーニングによるインプットで本部・現場の負担減へ
現場のハイパフォーマー社員に依頼し、1人当たり2テーマの模範ロープレ動画を提供してもらい、その動画をプラットフォーム上に掲載しました。
動画学習+AIロープレ導入前は現場でのOJTの質にばらつきがあるという課題もありましたが、動画学習の導入を機に、学習の質を均一化することができ、今では入社1年目~3年目の必須コンテンツとなっています。
② 研修後の確認テストで学びの定着を図る
研修の最後にまとめとして、受講生にはプラットフォーム上で確認テストに回答してもらうことで、研修の理解度を測るとともに、学習内容の定着化を図る取り組みをしました。
講師はリアルタイムで受講生たちの理解が浅いポイントが分かり、その場で解説や補足説明を行うことで、効率的な学習を実現できました。
③ 48のテーマに細分化したロープレの提供で営業スキル向上へ
一人前になるまでに必要な知識を48テーマに細分化し、それをロープレの課題として受講生に提示、順次プラットフォーム上に動画をアップロードしてもらうことで、営業スキルの向上を図っています。
1週間に1本ずつ、模範ロープレ動画を視聴した上で、自身のロープレ動画を提出してもらいます。上司から70点以上の評価を受けることができればテーマクリアという運用を実施することで、デジタルで体系的な学習をしながら、リアルでOJTを促進するという連動を図っています。
導入後の成果
① 一人前として必要な知識を漏れなく学習
プラットフォーム導入前は、3年間営業活動をしていても、人によっては現場で遭遇しないテーマもありましたが、48テーマを計画的に展開していくことで、体系的に、漏れのない学習の提供が可能となりました。
② 学習と上司からのフィードバック率と業績の相関が分かった
受講生が動画を提出すると、AIからのフィードバックを受けられるため、1人でも自分のロープレにおける啓発ポイントを確認しながら、何度もロープレの練習をすることが可能です。また、トークの中身についても上司からのフィードバックを受けることで、トークのブラッシュアップを図ることができます。
実際に受講生の学習や上司のフィードバック率のランキングデータを確認すると、上位者には好業績者の顔ぶれが並んでおり、学習と上司からのフィードバック率と業績が相関していることが分かりました。
これまで現場でのOJT実施状況は不透明でした。しかし、学習状況やフィードバック率がデータとして可視化することで、実施状況を把握しながら上司の関わりを促進し、全体の学習・育成を促進することができました。
まとめ:営業へのコーチングにもAIを活用しよう
成果につなげる営業コーチングのやり方とは?部下のセールス力を引き出す5つのステップについて紹介してきました。
営業コーチングは、部下の潜在能力を引き出し、組織全体の営業力を向上させる効果的な手法です。5つのステップに従って体系的に実施することで、営業担当者の自主性と思考力を育て、持続的な成長を実現できます。
成功のためには信頼関係の構築、適切な質問スキル、傾聴力、フィードバックスキル、そして部下それぞれに合わせたアプローチが重要となります。さらに、AIの活用により、従来の人間主導のコーチングを補完し、24時間365日利用可能な学習環境を構築することが可能になりました。
営業マネジャーは戦略的な方向性の指導に集中し、AIがスキル向上をサポートする役割分担により、さらに効率的で効果的なコーチング体制が実現できます。営業組織の競争力強化のために、ぜひ営業コーチングの導入を検討してみてください。
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