営業教育を成功させる実践ガイド!ポイントからAIの効果的な活用まで徹底解説

属人的なスキルに頼りがちな営業活動の中で、組織として営業力を高め、安定した成果を出し続けるために欠かせないのが「営業教育」です。

しかし、多くの企業が営業教育に課題を抱えています。「ベテラン社員の経験やノウハウをうまく共有できない」「教育に時間をかけても成果に結びつかない」「効果的な教育プログラムが確立できない」といった声をよく耳にします。

特に、デジタル化が進む現代では、営業教育の効果性を高めるには、デジタルテクノロジーのやAIの活用が必要不可欠になってきています。

本記事では、営業教育を成功に導くために必要な要素を、導入から実践、効果測定まで包括的に解説します。具体的な教育メソッドや、OJT制度の設計・運用方法、デジタル化を進め、教育効果を最大化するためのポイントなど、現場ですぐに活用できる実践的な情報をお届けします。

これから営業教育に取り組もうとしている方はもちろん、既存の教育プログラムの改善を検討している方にとっても、必ず参考になる内容となっています。営業組織の持続的な成長のために、まずは営業教育の基本から見ていきましょう。

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目次[非表示]

  1. 1.営業教育のあり方次第で業績は変わる!
  2. 2.動画を活用した営業研修で成果を上げた支援事例
  3. 3.これからの営業教育のポイントとは
    1. 3.1.効果的かつ効率的にインプットする
    2. 3.2.アウトプットを意識的に増やす
    3. 3.3.個別の関わりを増やす
    4. 3.4.研修終了時に「やれそうだ」という意識をつくる
    5. 3.5.日常的に学習できる環境を整備する
  4. 4.営業教育における現状の課題
    1. 4.1.属人的なスキルに依存する営業現場の実態
    2. 4.2.デジタル時代に求められる新しい営業スキル
    3. 4.3.新人育成の遅れが招く組織全体の機会損失
  5. 5.営業スキルを体系的に教育するためのスキルマップ
    1. 5.1.営業スキルマップとは
    2. 5.2.営業スキルマップの活用法
  6. 6.営業教育で成果を出す5つの基本メソッド
    1. 6.1.ベテラン営業同行による実践的なOJT
    2. 6.2.アウトプット重視のオンライン研修
    3. 6.3.動画・AIを活用したパーツロープレ
    4. 6.4.対面での総合ロープレ演習
    5. 6.5.定期的なスキルチェックとフィードバック
  7. 7.営業教育におけるOJT制度の設計と運用
    1. 7.1.3~5年目程度の先輩社員をOJT担当者に選定
    2. 7.2.スキルマップなどを基にOJT計画を作成
    3. 7.3.OJTの実施
    4. 7.4.定期的な振り返りと改善点の共有
  8. 8.これからの営業教育に必要な要素
    1. 8.1.自社で営業経験のある社内トレーナー
    2. 8.2.デジタルコンテンツ
    3. 8.3.AIの活用
    4. 8.4.ラーニングプラットフォーム
    5. 8.5.学習行動データとその分析
    6. 8.6.マネジャーの積極的な関与
  9. 9.営業教育の効果測定と改善サイクル
    1. 9.1.定量的・定性的な評価指標の設定
    2. 9.2.データに基づく教育プログラムの改善
    3. 9.3.組織全体の営業力向上度の測定
  10. 10.営業教育について悩んだらLDcubeにご相談ください
  11. 11.まとめ:個人と組織の成長を両立させる営業教育の実現へ

営業教育のあり方次第で業績は変わる!

営業は全てのビジネスにおけるスタート地点です。顧客がサービスや商品を購入することでビジネスは成り立っており、その最前線に立つのが営業パーソンです。

しかし、営業業務は個人の特性が強く反映され、営業成果が個人の経験や勘に大きく影響される傾向があります。この個人が持つ経験や勘を全体に共有できれば、組織力を底上げできるはずです。

トップ営業と新人営業の間には大きな成績の差があります。この差を生み出しているのは、単なる経験年数だけではなく、「ヒアリング力」「クロージング力」「人としての魅力」など、トップ営業が身に付けている特定のスキルや知識です。

しかし、これらのスキルは体系的に教育されることなく、各営業パーソンが個人的に習得してきたものであることが多いのが現状です。

営業教育の重要性が高まっている背景には、ビジネス環境の急速な変化もあります。デジタル化の進展、顧客の購買行動の変化、リモートワークの増加など、営業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。

このような変化に対応するためには、従来の「先輩の背中を見て学ぶ」という属人的な教育方法だけでは不十分です。体系的でデータに基づいた営業教育が、今、求められているのです。

デジタルテクノロジーやAIなどを取り入れた効果的な営業教育は、組織全体の営業力を向上させ、ビジネスの成長を加速させることができます。効果的な営業教育は、単に売上を増加させるだけでなく、顧客満足度の向上、営業サイクルの短縮、顧客あたりの単価アップなど、多方面に良い影響をもたらします。

動画を活用した営業研修で成果を上げた支援事例

社員数: 8,000名以上
事業:生命保険販売、資産運用

営業研修内容見直しの成果
~入社3カ月後の売上実績が従来の研修受講者と比較して3倍に~

アウトプット中心の学習で実践力を身に付けた上、研修中に学んだことを、動画でいつでもどこでも復習・確認ができる環境を作ることで、学習内容を実践につなげることができるようになりました。
その結果、 Teamsをつないでの従来の研修スタイルで学習した受講生集団と比較 しましたが、営業研修内容をバージョンアップした研修を受けた集団は、従来の研修を受講した集団と比較し、入社3カ月後の売上実績が3倍という飛躍的な成果を出しました。

トレーナースキルに依存せず、均一なレベルの初期教育が可能に

ライブでの講義ではなく、動画を活用した研修運営をすることで、高品質な研修情報を余すことなく再現することが可能となりました。

トレーナーリソースの効果的活用

従来は、毎月入社するキャリア採用社員の導入研修を毎月実施するため、トレーナーの方々はかなりのリソースを割かなければなりませんでした。

しかし、マイクロラーニングの導入により初期教育を効率化することで、そのリソースを営業管理職教育に充てることができるようになりました。
それにより、現場の指導力強化につなげることができ、学習の好循環を生んでいます。


取り組みの詳細
職種別オンボーディングプログラムを展開

キャリア入社後1カ月間の導入研修を、マイクロラーニングを活用した研修にバージョンアップしました。

事前学習、研修当日、事後学習全ての場面においてマイクロラーニングで知識のインプットを行い、研修当日は確認テストの解説や、受講生同士のディスカッション、質疑応答に比重を置くことなどで、カスタマイズ性の高い学習の提供を実現しています。

マイクロラーニングはそれまで社内で活用されていた動画をベースに、新たなコンテンツも社内トレーナーの方が中心となって作成しました。

研修中は特に「学んだことが現場でも生かせそうだ、使えそうだ」と思ってもらうための支援や関わりを重視することで受講生のエンゲージメント向上にもつなげています。

これまでのインプットは社内トレーナーの方がレクチャーしてインプットしていましたが、リニューアルしてからはレクチャーは全て動画に代替しました。

アウトプットを意識した学習デザイン

インプットして終わりにならないように、動画を活用し、受講者が研修で学んだことを生かしながら1人でも何度もAIを相手にセールストークを練習し、動画で提出するという環境を提供されています。

動画を見た研修トレーナーから、直属の上司・先輩から、他部署の上司・先輩から、そして同期からフィードバックを受けることができ、学習の深化につなげています。

また、動画を閲覧した上で学んだことや仕事に生かせそうなことを共有することで、自分の考えを整理しながら、他の受講生の意見に触れながら新たな学びを得るという、学習の相乗効果を生んでいます。

導入前の課題

研修がイベント化してしまっている

集合研修で社員にいくら良い内容を提供しても 、現場に戻った後は目の前の仕事をこなすことに集中してしまい、学んだことがその場限りとなってしまうことが多く見受けられました。

集まった場だけではなく、事前と事後の学習活動を充実化させ、学習を続けながら学んだことを仕事に生かすことができる環境を作るため、 マイクロラーニング・コホート型学習を導入しました。

個人の経験がポケットノウハウになってしまっている

現場で得られた成功事例や失敗事例が個人のものにしかなっておらず、ポケットノウハウ化してしまっていることに課題を感じていました。

個人の学びを暗黙知から形式知に変えていくことで、受講生同士の学びを促進しながら、組織全体のナレッジとして好循環を生み出していきたいという思いがありました。

これからの営業教育のポイントとは

変化の激しいビジネス環境において、営業は企業の利益に直結する重要な役割を担っています。そのため、営業パーソンの教育と育成は組織の成功に不可欠です。

特に近年、デジタル化やAI活用が進む中で、営業スキルの再定義と、その教育方法の見直しが求められています。前章での成功事例など、最新のトレンドを踏まえながら、営業教育における5つの重要なポイントについて解説します。

効果的かつ効率的にインプットする

現代の営業教育では、多くの情報を短時間で身に付けることが求められます。

しかし、量だけを追求しても質が伴わなければ有効活用できません。営業パーソンは、顧客のニーズや市場の動向、競合情報を効率的にインプットする必要があります。そのためには、デジタルツールの活用が効果的です。

例えば、5分程度の動画で構成したマイクロラーニングを活用した隙間時間での学習や、欲しい情報を検索して学習できる検索性の向上により、最新の情報を素早くキャッチし、営業活動に反映することが可能となります。

現代では、オンラインでの講座や動画教材を使うことで、場所や時間に縛られずに学習が進められます。また、インタラクティブなコンテンツを導入することで、知識を深めるだけでなく、自発的な参加も促進できます。

アウトプットを意識的に増やす

インプットした情報を実際に使ってみることで、本当の意味での理解が深まります。営業教育においても、ただ知識を得るだけでなく、それを実際の場面で応用する機会を多く設けることが重要です。具体的には、理解度クイズやロープレを積極的に実施します。

例えば、新しいセールストークを学んだ後、それを基にしたロープレを行います。フィードバックをもらいながら、自分の話し方やプレゼンテーションスキルを改善することで、実際の顧客に対しても自信を持って対応できるようになります。

また、営業での失敗例や成功例を共有し合うことで、経験値を相互に高め合うことができます。これまでは、先輩社員などをつかまえてやることが一般的でしたが、現在ではAIを相手にロープレを行い、AIからフィードバックをもらい、スキルアップにつなげることが可能になっています。

個別の関わりを増やす

営業教育の効果を最大化するには、営業パーソン一人一人の状況に合わせたアプローチが必要です。全員に対して同じ内容を一律に教えるのではなく、それぞれの得意分野や改善点を考慮した指導を行うことで、個々の成長につながります。個別の関わりを増やすためには、各営業パーソンの進捗状況を把握し、具体的なアドバイスを提供していくことが求められます。

これまで営業教育で行っていた講師からのレクチャーを動画に置き換えることで、講師はレクチャーをしなくて済むようになります。レクチャーを動画に任せることで、空いた時間を個別の関わりを行う時間に充てることができます。営業教育のやり方を見直すことで、これまで以上の教育効果を期待することができます。

研修終了時に「やれそうだ」という意識をつくる

研修後に参加者が「やれそうだ」と感じることは、今後の行動に直結します。研修の設計段階でそれを目指した構成にすることが肝要です。具体的には、小さなアウトプットを繰り返し、実際にやってみる体験を多く積み重ねることを重視します。

また、ポジティブなフィードバックをこまめに行い、参加者の自信を引き出します。「この方法なら自分にもできる」という感覚を培うために、研修の中で複数回成功体験を得るのが理想です。それにより、次の日からでも学んだことを実務に適用したいと思えるようになります。

日常的に学習できる環境を整備する

学びを一過性のものにしないために、日常的に学習できる環境を整えておくことが必要です。職場として学習する文化を醸成するには、継続的に学べる機会と体制を提供する必要があります。オンラインの学習ライブラリや定期的な勉強会、読書会など多様な形式で学びの場を設けます。

また、最近のAI技術を活用してAIからフィードバックをもらえるロープレトレーニング環境や、AIチャットボットを相手に会話のやり取りができるロープレトレーニング環境などが効果的です。

営業教育は、単なるスキルアップの手段ではなく、長期的な成果を生む投資です。効果的なインプットとアウトプット、その応用力を引き出すための個別対応、研修後の行動意欲の醸成、そして日常的な学びの環境整備が、その投資を最大化するための鍵です。

現代の多様で変化の激しいビジネス環境において、これらのポイントを押さえた教育プランが、組織のさらなる成長を確実にサポートします。

▼営業研修のカリキュラムづくりについては下記で詳しく解説しています。
⇒営業研修で成果につながるカリキュラムとは?ポイントを解説!

  営業研修で成果につながるカリキュラムとは?ポイントを解説! 営業研修の内容をオンラインに置き換えて実施するということが増えました。しかし、置き換えるだけでは研修の効果が低下するケースもあります。学習トレンドを踏まえながら効果的に営業スキルを身につけるためのポイントやカリキュラムを組み立てる上での注意点などをご紹介します。 株式会社LDcube


営業教育における現状の課題

多くの企業で営業教育の重要性は認識されていながらも、効果的な教育プログラムの実現にはさまざまな課題が存在します。これらの課題を正しく理解し、解決策を見いだすことが、営業力強化の第一歩となります。

ここでは、現在の営業教育が直面している主な課題について詳しく見ていきましょう。

属人的なスキルに依存する営業現場の実態

多くの企業では、営業のノウハウやスキルが「属人的」になっている現状があります。つまり、トップセールスが持つ知識や経験、営業テクニックは個人に蓄積されたままで、組織全体に効果的に共有されていないのです。このような状況では、新人が成長するためには「優秀な先輩の背中を見て学ぶ」しかなく、体系的な学習が難しくなります。

また、個人の感覚や経験に基づいた営業手法は、再現性やスケーラビリティに欠けるという問題も抱えています。「なぜ成功したのか」「どのような要素が成約につながったのか」といった因果関係が明確でないため、他のメンバーがそのノウハウを自分のものにすることが困難です。営業プロセスの標準化と可視化が進んでいない組織では、属人的なスキルへの依存がさらに強くなり、組織全体の成長を阻害してしまいます。

デジタル時代に求められる新しい営業スキル

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、営業に求められるスキルセットも大きく変化しています。従来の対面営業中心のスタイルからオンライン商談を活用した営業活動への移行が進む中、デジタルツールの活用能力や、オンラインコミュニケーションスキルの重要性が増しています。

しかし、多くの企業では新しいデジタルスキルに対する教育が追いついていません。例えば、CRMやSFAといった営業支援システムの効果的な活用法、オンライン商談におけるプレゼンテーションスキル、デジタルマーケティングの基礎知識などを体系的に学ぶ機会が不足しています。また、データ分析に基づいた営業戦略の立案や、顧客インサイトの発掘といった、より高度な思考力を要するスキルの教育も課題となっています。

新人育成の遅れが招く組織全体の機会損失

新人営業が一人前として成果を出せるようになるまでの期間は、業界や商材によって異なりますが、一般的には6カ月から1年以上、長ければ3年程度かかると言われています。この期間が長ければ長いほど、企業は事業成長が遅くなります。

効果的な教育プログラムがない状態では、新人は試行錯誤しながら自己流で学ぶことになり、成長に無駄な時間がかかります。また、基本的なスキルの不足から商談の失敗率が高くなり、顧客の信頼を損なうリスクも高まります。

さらに、成長の遅れから来る挫折感や不安によって、優秀な人材の早期離職につながるケースも少なくありません。これらは単なる個人の問題ではなく、組織全体の生産性や競争力に直接影響を与える重大な課題なのです。

営業スキルを体系的に教育するためのスキルマップ

営業教育を効果的に行うためには、まず「何を教えるべきか」を明確にする必要があります。トップ営業パーソンが持つスキルや知識を体系的に整理し、可視化するツールとして「営業スキルマップ」が注目されています。

ここでは、営業スキルマップとは何か、そしてその活用法について詳しく解説します。

営業スキルマップとは

営業スキルマップとは、営業活動に必要なスキルや知識を体系的に整理し、一覧化したものです。営業プロセスの各段階で必要となるスキルを可視化することで、個々の営業パーソンの現在の能力レベルと成長課題を明確にすることができます。

典型的な営業スキルマップでは、スキルや求められる要素を大きく以下のようなカテゴリに分類します。

  • 基礎スキル:
    ビジネスマナー、コミュニケーション力、自己管理能力など
  • 専門知識:
    商品知識、業界知識、競合分析力など
  • セールススキル:
    リサーチ力、アポイント獲得力、ヒアリング力、提案力、クロージング力など
  • マインドセット:
    顧客志向、達成意欲、レジリエンス(回復力)など
  • デジタルスキル:
    CRM/SFA活用力、データ分析力、オンライン商談スキルなど

各カテゴリのスキルについて、レベル分けを行い(例:レベル1〜5)、それぞれのレベルで具体的に何ができるようになるべきかを定義します。これにより、成長の道筋が明確になり、目標設定がしやすくなります。

▼スキルマップについては下記で詳しく解説しています。
⇒営業スキルマップとは?業績向上につながる効果的な作成・運用方法を解説!

  営業スキルマップとは?業績向上につながる効果的な作成・運用方法を解説! 営業の業績向上には、営業スキルマップ作成がおすすめです。営業スキルマップを作成することで、自組織の営業パーソンの課題点を導き出すことができます。本記事では、営業スキルマップの活用メリットや作成方法を、具体的な作成例などを交えて解説します。必須の基本スキルや、営業スキルマップの運用に活用できるツールも併せて紹介します。 株式会社LDcube


営業スキルマップの活用法

営業スキルマップは、営業教育を体系化するための基盤となるツールです。その具体的な活用法は以下の通りです。

まず、スキルマップを用いて各営業パーソンの現状のスキルレベルを診断します。セルフチェックと上司による評価を組み合わせることで、客観的な現状把握が可能になります。この診断結果から、個人ごとの強みと弱みが明らかになり、重点的に教育すべき項目が見えてきます。

次に、診断結果に基づいて個人別の育成計画を策定します。例えば、ヒアリングスキルに課題がある営業パーソンには、質問力向上のためのトレーニングプログラムを提供するといった具合です。また、役職や経験年数に応じた期待スキルレベルを設定することで、キャリアパスに沿った成長計画も立てられます。

さらに、スキルマップは教育プログラムの設計にも活用できます。例えば、多くの営業パーソンに共通する弱点が見つかれば、その部分に焦点を当てた集合研修を企画するといった具合です。また、特定のスキルに秀でた営業パーソンを講師として活用することもできます。

定期的にスキル診断を行うことで、教育プログラムの効果測定も可能になります。介入前後でのスキルレベルの変化を追跡することで、どのような教育施策が効果的だったかを客観的に評価できるのです。

営業スキルマップは、単なる評価ツールではなく、個人と組織の成長を促進する羅針盤としての役割を果たします。属人的だった営業ノウハウを見える化し、共有可能な形にすることで、組織全体の営業力向上を加速させることができるのです。

営業教育で成果を出す5つの基本メソッド


営業スキルを効果的に教育するためには、単一の方法ではなく、複数のアプローチを組み合わせることが重要です。ここでは、多くの企業で成果を上げている、5つの基本的な営業教育メソッドについて解説します。

これらのメソッドを自社の状況に合わせて取り入れることで、営業チームの能力向上を効率的に進めることができるでしょう。

ベテラン営業同行による実践的なOJT

実践的なOn-the-Job Training(OJT)は、営業教育の中核をなす重要な手法です。経験豊富なベテラン営業パーソンに新人が同行し、実際の商談の場で学ぶことで、座学では得られない生きた知識やスキルを習得することができます。

OJTの効果を最大化するためには、単に同行させるだけでなく、事前の商談内容のすり合わせと事後の振り返りを丁寧に行うことが重要です。事前に「この商談で何を学んでほしいか」を明確にし、事後には「どのような学びがあったか、自分の活動にどのように生かせそうか」を具体的に振り返ります。

こうした意図的なOJTによって、新人は商談の細部にまで目を向け、深い学びを得ることができます。

また、同行する先輩営業パーソンは必ずしもトップセールスである必要はありません。むしろ、新人とのコミュニケーションギャップが少ない、入社5年目程度の中堅営業パーソンが適任であることも多いです。重要なのは、教える側のコミュニケーション能力と指導意欲です。

アウトプット重視のオンライン研修

デジタル時代の営業教育では、時間や場所に縛られないオンライン研修の活用が欠かせません。しかし、単に動画を視聴するだけの一方通行の研修では効果が限定的です。アウトプット重視のオンライン研修がより高い学習効果を生み出します。

具体的には、eラーニングコンテンツの視聴後に、学んだ内容を実践する課題に取り組む、理解度を確認するクイズに答える、オンラインディスカッションで他の参加者と意見交換する、ロープレ動画を提出しAIからフィードバックをもらい、AI相手にチャットボットで練習するなどの「アウトプット」の機会を設けます。こうした能動的な学習によって、知識の定着率は大幅に高まります。

また、オンライン研修のメリット、学習者が自分のペースで繰り返し学べる点にあります。特に基礎知識の習得や標準的な営業プロセスの理解には、このような「いつでも・どこでも・何度でも」学べる環境が効果的です。

ただし、オンライン研修だけでは限界があるため、次に紹介するロールプレイングなど対面での学習と組み合わせることが重要です。

動画・AIを活用したパーツロープレ

ロールプレイング(役割演技)は古典的な営業トレーニング手法ですが、最近ではテクノロジーを活用した「パーツロープレ」が注目されています。パーツロープレとは、営業プロセスの特定の部分だけを切り取って集中的に練習する方法です。

例えば、「初回訪問での自己紹介」「価格交渉」「クロージングのタイミング」といった特定のシーンに焦点を当て、短時間で反復練習します。この際、自分の営業トークを動画で撮影し、客観的に振り返ることで改善点を見つけやすくなります。

また、AIを活用したチャットボットを使うことで、さまざまなシナリオを相手の反応に応じて練習することも可能になっています。

パーツロープレのメリットは、特定のスキルを短期間で集中的に向上させられる点と、失敗を恐れずに安全な環境で何度も練習できる点にあります。特に苦手意識のある営業シーンを克服するには効果的な手法です。

▼AIを活用したロープレについては下記で詳しく解説しています。
⇒AIを活用した効果的なロープレとは? ポイントや営業研修の新たなステージについて解説!

  AIを活用した効果的なロープレとは? ポイントや営業研修の新たなステージについて解説! 営業スキルを磨くための効果的な手法「ロープレ」について解説し、その活用方法や注意点を共有します。即戦力となる新入社員や若手社員を育成したい企業担当者の方へ、高業績を実現するためのトレーニング法や、AIテクノロジーを駆使した練習方法まで詳しくご紹介しています。 株式会社LDcube


対面での総合ロープレ演習

パーツロープレで個別のスキルを磨いた後は、実際の商談全体を通したロールプレイングに取り組むことで、より実践的な営業力を身に付けることができます。

対面での総合ロープレ演習では、一人が営業役、もう一人が顧客役を演じ、商談の開始から終了までの一連のプロセスを実践します。

効果的な総合ロープレを行うためには、できるだけリアルなシナリオ設定が重要です。顧客役には、実際に起こりそうな質問や反論を準備してもらい、営業役が臨機応変に対応する訓練をします。また、第三者が観察者として参加し、営業プロセス全体を通して気づいた点をフィードバックする仕組みも有効です。

総合ロープレ演習は、個別のスキルがどのように連携し、全体として機能するかを体感できる貴重な機会です。特に、複数の営業パーソンが集まって行うロールプレイングでは、他者の優れた営業手法を観察し、自分のスタイルに取り入れることもできます。

▼営業活動に取り入れたい心理学テクニックについては下記で詳しく解説しています。
⇒営業の心理学テクニック14選|商談の成功率が上がるすぐに使えるアプローチを解説!

  営業の心理学テクニック14選|商談の成功率が上がるすぐに使えるアプローチを解説! 使える営業テクニックを解説します!明日から使える14の実践的アプローチ法です。心理学を活用した商談術で成約率アップを実現できます。本記事では、初回面談から価格交渉まで、状況別の営業テクニックと実践ステップを紹介します。 株式会社LDcube


定期的なスキルチェックとフィードバック

営業教育の効果を持続させるためには、定期的なスキルチェックとフィードバックのサイクルを確立することが不可欠です。具体的には、四半期に1度程度、先に紹介した営業スキルマップをベースにした評価を行い、成長点と課題を明確にします。

効果的なフィードバックの鍵は、「具体性」と「建設性」にあります。単に「もっと頑張りましょう」といった抽象的なコメントではなく、「初回訪問での質問の仕方が改善され、顧客の課題をより深く引き出せるようになった」といった具体的な成長を認め、「次のステップとして、提案時の数値データの活用を強化すると、より説得力が増すでしょう」といった建設的な提案を行います。

また、フィードバックは上司からだけでなく、同僚や場合によっては顧客からも得ることで、多角的な視点での成長が促進されます。特に、「なぜこの営業パーソンから買いたいと思ったか」という顧客の生の声は、営業力向上に大きなヒントをもたらします。

営業教育におけるOJT制度の設計と運用

OJTは、実際の業務を通じて行う教育方法であり、営業スキルの習得に特に効果的です。

しかし、ただ「先輩について回って学べ」というような無計画なOJTでは効果は限定的です。効果的なOJT制度を構築するためには、計画的な設計と運用が必要です。

ここでは、失敗しないOJT制度の設計と運用について、ステップ別に解説します。

3~5年目程度の先輩社員をOJT担当者に選定

OJT制度の成否を左右する重要な要素の1つが、OJT担当者(トレーナー)の選定です。多くの企業では、営業成績のトップクラスのベテラン営業パーソンをOJT担当者に任命する傾向がありますが、必ずしもそれが最適とは限りません。

理想的なOJT担当者の条件は、以下のような要素を兼ね備えた人材です。

  • 新人とのコミュニケーションギャップが少ない(世代が近い方が共感性が高い)
  • 一定の営業実績がある(必ずしもトップでなくても良い)
  • 教えることに意欲がある(自分の知識を共有する意欲)
  • 忍耐強く、フィードバックが的確である

入社3~5年目程度の先輩営業パーソンは、自身の新人時代の記憶が鮮明で、新人が直面する課題や感じる不安に共感しやすい立場にあります。

また、OJT担当者として活躍することで、彼ら自身のキャリアアップにもつながります。教えることでさらに学び、自分のスキルを整理する良い機会になるのです。

スキルマップなどを基にOJT計画を作成

効果的なOJTを実施するためには、明確な計画が不可欠です。この計画作成にあたっては、先に紹介した営業スキルマップを活用することが効果的です。OJT計画には以下の要素を含めることが重要です。

  • 教育目標
    OJT期間終了時に達成すべき具体的なスキルレベル
  • 期間設定
    全体のOJT期間と各フェーズの期間(例:3カ月のOJTを3つのフェーズに分ける)
  • 学習項目
    フェーズごとに学ぶべき具体的なスキルや知識
  • 評価方法
    各フェーズの終了時にどのように習熟度を評価するか

OJT計画の作成は、OJT担当者に一任するのではなく、営業マネジャーやOJT担当者、場合によっては人事部門が連携して行うべきです。これにより、現場の実態に即した実践的な計画と、会社全体の教育方針との整合性が取れた計画を策定することができます。

▼OJT計画については下記で詳しく解説しています。
⇒OJT計画とは?テンプレートや効果的なプランの立て方・注意点

  OJT計画とは?テンプレート例や効果的なプランの立て方・注意点 組織も少なくありません。また、OJTプランの作成方法に悩む企業は少なくありません。本記事では、基本から、効果的なプラン作成方法、ポイント、注意点までを詳しく解説します。 株式会社LDcube


OJTの実施

計画ができたら、いよいよOJTの実施段階に入ります。効果的なOJTの実施には、以下のポイントに注意します。

まず、OJTの初日には、新人に対してOJTの目的や進め方、達成目標などを丁寧に説明し、相互理解を図ることが重要です。また、新人が質問しやすい関係性を構築するために、定期的な1on1ミーティングの時間を設けることも効果的です。

OJTの進行中は、単に同行させるだけでなく、「見せる→やらせる→振り返る」のサイクルを意識します。最初はOJT担当者が実際の営業活動を見せて解説し、次に新人に部分的に実施させ、最後に振り返りを行うという流れです。この振り返りでは、「何がうまくいったか」「なぜそうなったか」を共に分析することで、深い学びにつなげます。

また、新人の成長に合わせて徐々に任せる範囲を広げていくことも重要です。初期は部分的な業務から始め、成長に応じて全体的な営業プロセスを任せるようにしていきます。その際、比較的売りやすい商品から担当させることで、成功体験を積ませることも効果的です。

定期的な振り返りと改善点の共有

OJTを真に効果的なものにするためには、定期的な振り返りと改善点の共有が不可欠です。OJT期間中は週次や月次で振り返りの機会を設け、進捗状況や課題を確認します。

振り返りの際には、OJT担当者による評価だけでなく、新人による自己評価も重視します。「自分はどこまでできるようになったか」「どこに課題を感じているか」を新人自身に考えさせることで、自律的な成長を促します。

また、この振り返りには営業マネジャーも定期的に参加し、OJT担当者とは別の視点からのフィードバックを提供することが効果的です。OJT担当者と新人の二者間だけでは見落としがちな点や、組織全体の視点からのアドバイスを得ることができます。

振り返りで明らかになった課題や改善点は、翌日からのOJT計画に反映させます。「この部分の教育が不足していた」「この順序で教えた方が効果的だった」といった気づきを蓄積し、OJT制度自体を継続的に進化させていくことが、組織全体の営業力強化につながります。

▼OJT制度については下記で詳しく解説しています
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これからの営業教育に必要な要素

デジタル技術の進化や働き方の多様化に伴い、営業教育のあり方も大きく変わりつつあります。従来型の対面研修やOJTだけでは、VUCA時代(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高まった時代)の営業人材を育成するには不十分です。

ここでは、これからの時代に求められる、営業教育の6つの重要な要素について解説します。

自社で営業経験のある社内トレーナー

外部コンサルタントやトレーナーによる汎用的な営業研修も有益ですが、自社の商材や顧客特性、営業プロセスを熟知した社内トレーナーの存在はより重要性を増しています。社内トレーナーは、一般的な営業理論を自社の文脈に落とし込み、より実践的な教育を提供できるからです。

理想的な社内トレーナーは、単に営業経験があるだけでなく、教育のスキルも持ち合わせていることが重要です。そのため、トレーナー育成のための「トレーナー養成プログラム」を実施している企業も増えています。このプログラムでは、ファシリテーションスキル、フィードバック手法、研修設計の基本などを学び、効果的な教育を行うための素地を作ります。

また、社内トレーナーは一部の専任者だけでなく、各部署や地域のスキルリーダーとして複数人を育成することで、よりきめ細かな教育体制を構築することができます。

▼営業研修の講師については下記で詳しく解説しています。
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  営業研修・セミナーは社内講師での実施が最適!?おすすめの理由を紹介! 営業研修は社内講師での実施が最適です。自社でのセールス経験があるためリアルな研修を開催することができます。自社で起こりがちな営業活動上の課題などを具体的に取り上げ、営業担当者のスキルアップをサポートできます。意外となり手がいないため会社に貢献できます。 株式会社LDcube


デジタルコンテンツ

オンデマンドで学習できるデジタルコンテンツは、これからの営業教育において欠かせない要素です。動画、eラーニング、デジタルワークブック、AIチャットボットなどのコンテンツを整備することで、場所や時間に縛られない学習環境を提供できます。

特に基礎知識の習得や、繰り返し練習が必要なスキルの向上には、デジタルコンテンツが効果的です。例えば、商品知識や業界用語、基本的な営業トークなどは、短い動画コンテンツとして提供し、空き時間に繰り返し視聴できるようにすることが有効です。

また、実際の成功事例や失敗事例を共有するデジタルケーススタディーも、営業パーソンの判断力や応用力を養うのに役立ちます。ベテラン営業の「暗黙知」をデジタルコンテンツとして形式知化することで、組織全体での共有が可能になります。

▼営業研修での動画活用については下記で詳しく解説しています。
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  営業研修での動画活用でスキルを高め業績向上につなげるには?メリットや作成方法を解説! 営業研修に動画やeラーニングを活用することでスキルを効果的に高め、業績向上の再現性を高めることができます。本記事では、営業研修にメディアを活用するメリット、の作り方、具体的な活用シーン、理解を深める工夫、成功事例まで徹底的に解説しています。 株式会社LDcube


AIの活用

AI技術の進化により、営業教育の新たな可能性が開かれています。AIを活用した営業教育の例としては、以下のようなものがあります。

  • AIチャットボット:
    さまざまな顧客シナリオに対応するバーチャル顧客との対話練習
  • 音声解析AI:
    営業トークの明瞭さ、スピード、流暢さ、トーンを分析し、改善点を提案
  • 行動分析AI:
    アイコンタクトやジェスチャーを分析し、個人に合わせたアドバイスを提供

例えば、商品についての質疑応答についての練習をAIチャットボットで行うことで、実際の顧客とやり取りする前に、よくある質問に対する切り返し対応などの十分な練習ができ、初期段階での失敗を減らすことができます。

また、実際の商談を録音・分析することで、「この部分でもっと深掘りする質問をした方が良い」「この説明は顧客の関心を引いていない」といった具体的なフィードバックが得られます。

AIは人間の講師を置き換えるものではなく、人間による教育を補完し、その効果を高めるツールとして活用することが重要です。

ラーニングプラットフォーム

さまざまな学習コンテンツやツールを統合し、一元管理するラーニングプラットフォームの導入も重要です。ラーニングプラットフォームは、単なるコンテンツの保管庫ではなく、学習者の活動を管理し、パーソナライズされた学習体験を提供するシステムです。

ラーニングプラットフォームの主な機能には以下のようなものがあります。

  • 学習コンテンツの管理と配信
  • アウトプット学習の提供と管理
  • スキルマップとの連携による個人別学習計画の提案
  • ソーシャルラーニング機能(ディスカッション、Q&A、ナレッジ共有)
  • 学習成果の評価とフィードバック

特に、モバイル対応のプラットフォームであれば、移動時間や待ち時間などの隙間時間を活用した学習が可能になります。フィールドワークが多い営業職にとって、このような「いつでもどこでも学べる」環境は極めて重要です。

学習行動データとその分析

デジタル化された学習環境の大きなメリットの1つは、学習行動データを収集・分析できることです。営業パーソンがどのようなコンテンツをどれくらい学習しているか、どのスキルに苦手意識があるか、どのような学習パターンが成績向上に結びついているかなど、さまざまなデータを分析することで、教育プログラムの継続的な改善が可能になります。

学習行動データの分析からは、以下のような示唆が得られます。

  • 特定の学習コンテンツの効果測定
  • 学習ニーズの把握と優先順位付け
  • 学習している時間帯など学習スタイルの把握
  • 営業成績と学習行動の相関分析

これらのデータを経営層や営業マネジャーに提供することで、「どのような教育投資がビジネスの成果に貢献するのか」という視点での意思決定が可能になります。データに基づいた教育投資は、より高いROI(投資収益率)を生み出す可能性が高いのです。

マネジャーの積極的な関与

どれだけ優れた教育プログラムやツールを導入しても、営業マネジャーの積極的な関与がなければ、その効果は限定的です。マネジャーは単なる結果管理者ではなく、チームメンバーの育成者としての役割を担っています。

効果的な営業教育におけるマネジャーの役割には、以下のようなものがあります。

  • 個々のメンバーの、成長目標の設定と定期的なレビュー
  • 日々の業務の中での指導機会の創出
  • 学習内容の実践を促進する環境づくり
  • 成長を評価し、認める文化の醸成

特に重要なのは、「学びを実践に移す機会」を意図的に作ることです。例えば、研修で学んだ新しい提案手法を実際の顧客に試してみる機会を設けたり、新しいスキルを発揮できる適切な難易度の案件をアサインしたりすることで、学びが定着し、実践力に変わっていきます。

営業教育の効果測定と改善サイクル

営業教育を単なるコストとしてみるのではなく、ビジネス成果に直結する投資として位置づけるためには、その効果を適切に測定し、継続的に改善していくサイクルを確立することが重要です。

ここでは、営業教育の効果測定と改善サイクルについて解説します。

定量的・定性的な評価指標の設定

効果測定の第一歩は、適切な評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の設定です。営業教育の評価指標は、大きく定量的指標と定性的指標に分けられます。

定量的指標の例としては、以下のようなものがあります。

  • 営業成績指標
    売上高、成約率、客単価、営業サイクルの短縮など
  • 行動量指標
    アポイント数、提案数、フォロー率など
  • スキル習熟度
    スキルチェックテストのスコア、認定試験の合格率など
  • 組織指標
    離職率、従業員満足度、顧客満足度など

一方、定性的指標としては、以下のようなものが考えられます。

  • 自己評価
    特定のスキルに対する自信の向上、業務遂行の自己効力感など
  • 上司・同僚評価
    行動変容の観察、チームへの貢献度など
  • 顧客からのフィードバック
    顧客対応の質に関するコメント、信頼関係の構築度など

これらの指標を組み合わせて多角的に評価することで、営業教育の真の効果を把握することができます。また、教育プログラムの特性や目的に応じて、重視すべき指標を選定することも重要です。

データに基づく教育プログラムの改善

効果測定で得られたデータは、教育プログラムの改善に活用します。データに基づく改善プロセスは、以下のようなステップで進めます。

まず、測定結果の分析を行います。単に「目標達成したか否か」だけでなく、「なぜそのような結果になったのか」を深く掘り下げることが重要です。例えば、特定のスキル領域で多くの営業パーソンが伸び悩んでいる場合、その原因は教育内容の不足なのか、実践機会の不足なのか、あるいは別の要因があるのかを探ります。

次に、分析結果に基づいて改善案を検討します。改善には、コンテンツの見直し、教育方法の変更、学習環境の整備など、さまざまなアプローチが考えられます。重要なのは、「仮説に基づいた改善」を行うことです。「このような変更を加えれば、こういった効果が期待できる」という仮説を明確にした上で改善を実施します。

最後に、改善策の効果検証を行います。改善前後で同じ指標を測定し、変化を確認することで、改善策の有効性を評価します。効果が見られなかった場合は、さらに分析を深め、別の改善策を検討します。

このPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を継続的に回すことで、教育プログラムは徐々に洗練され、より高い効果を生み出すようになります。

組織全体の営業力向上度の測定

個々の営業パーソンのスキル向上だけでなく、組織全体としての営業力がどれだけ向上したかを測定することも重要です。組織レベルでの効果測定には、以下のような指標が有効です。

  • チーム全体の売上の推移
  • 営業パーソン間の売上のばらつき度合い
  • 新人の早期戦力化(初成約までの期間の短縮)
  • 組織内でのナレッジ共有度(ベストプラクティスの活用度)
  • 顧客満足度や顧客継続率の組織全体での向上

これらの指標は、個人の成果の単純合計ではなく、組織としての相乗効果や持続可能性を測る指標です。特に、「トップ営業パーソンへの売上依存度の低下」や「営業プロセスの標準化による再現性の向上」などは、教育の組織的効果を示す重要な指標となります。

また、組織レベルでの効果測定では、長期的な視点も重要です。短期的な売上向上だけでなく、「営業組織としての継続的な成長能力」という観点での評価も行うべきでしょう。例えば、市場環境の変化への適応力や、新しい営業手法の導入スピードなどが、この視点での評価指標となります。

営業教育について悩んだらLDcubeにご相談ください

株式会社LDcube は営業研修のデジタル化を通じて、従来のトレーニング方法を革新するサポートを行っています。ロープレトレーニングの強みを最大限に生かしながら、デジタルテクノロジーを駆使した学習プラットフォームを提供することで、多くの企業のロープレのデジタル化を支援しています。

ロープレは、現実の業務シナリオをシミュレーションし、実務スキルを向上させるための重要な手法です。

しかし、働き方改革の流れの中、営業パーソンの忙しさもあり、従来のロープレは時間や場所の制約から、効率的に実施するのが難しくなったという課題があります。

ロープレをデジタル化することで、参加者は自身のスケジュールに合わせて、いつでもどこでもロープレトレーニングを行うことができるようになります。業務に支障が出ることなく、効果的なトレーニングが可能です。

AIによる即時フィードバックを活用すると、参加者はトレーニング後にすぐに改善点などをつかむことができます。ロープレはフィードバックを基に改善することがポイントですが、AIの活用により、上司や先輩がいなくてもAIからフィードバックを受けることが可能です。

LDcubeはこれまでに数多くの企業で、デジタル化を取り入れたロープレによって実際に成果を上げたケースを見てきました。ロープレのデジタル化を検討している企業は、ぜひLDcubeにご相談ください。

まとめ:個人と組織の成長を両立させる営業教育の実現へ

営業教育を成功させる実践ガイド!ポイントからAIの効果的な活用まで徹底解説!について紹介してきました。

  • 営業教育のあり方次第で業績は変わる!
  • 動画を活用した営業研修で成果を上げた支援事例
  • これからの営業教育のポイントとは
  • 営業教育における現状の課題
  • 営業スキルを体系的に教育するためのスキルマップ
  • 営業教育におけるOJT制度の設計と運用
  • これからの営業教育に必要な要素
  • 営業教育の効果測定と改善サイクル
  • 営業教育について悩んだらLDcubeにご相談ください

本記事では、営業教育の現状と課題から始まり、スキルマップの活用、効果的な教育メソッド、OJT制度の設計と運用、これからの時代に必要な教育要素、そして効果測定と改善サイクルまで、営業教育の全体像を解説してきました。

効果的な営業教育は、単に「売れる営業パーソン」を増やすだけでなく、個人の成長と組織の業績向上を両立させるものであるべきです。営業パーソン一人一人が自らの可能性を最大限に発揮できる環境を整え、その結果として組織全体の営業力も強化される──そんな好循環を生み出すことが理想的な姿です。

そのためには、教育を「イベント」としてではなく「プロセス」として捉え、日々の業務の中に学びの機会を組み込むこと、デジタルとリアルを適切に組み合わせたブレンド型の学習環境を整備すること、そして何より「学び続ける文化」を組織に根付かせることが重要です。

営業教育は一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、本記事で紹介したさまざまなアプローチを組み合わせ、継続的に改善していくことで、着実に組織の営業力は向上していきます。ぜひ、自社の状況に合わせて、できるところから営業教育の改革に取り組んでみてください。個人の成長と組織の成長が両立する営業組織の実現に向けて、一歩を踏み出しましょう。


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企画・作成・編集:代表取締役 新井澄人
企画・作成・編集:代表取締役 新井澄人
株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。 資格: ・全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC2023002) ・LIFOプログラムライセンス(LIFO-MSSプログラム開発者)

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