
人的資本経営での従業員エンゲージメント向上とは?取り組むべき企業と施策例を解説
「人的資本経営を進めるときのエンゲージメントって、具体的になんだろうか」
「人的資本経営を進めるときのエンゲージメントってどう進めていけばいいのだろう」
いざ人的資本経営を進めるときには「エンゲージメント」の向上が欠かせませんが、具体的に何なのか、どうすればいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか。
人的資本経営においてエンゲージメントとは、従業員と企業の「相互理解・相思相愛度」を意味します。
簡単にいえば、会社と従業員双方が理解し合ってより良い環境を作るための指標です。
従業員のエンゲージメントを高めていくことで、やりがいやモチベーションが上がり、結果的に企業としての成長が付いてくるのです。
なかには人的資本経営においてエンゲージメント向上が自社にも必ず必要なのか、疑問を抱いている方もいるかもしれません。
現状経営がうまくいっているのであれば、エンゲージメント向上以外の施策を検討する方もいるでしょう。
しかし人的資本経営において、エンゲージメント向上はどの会社でも取り組むべきといえます。
従業員のエンゲージメントを重視せずにいると、モチベーションが下がって生産性が下がるほか、従業員が大切にされていないと感じれば離職につながり、大切な人材を失ってしまいかねません。
それゆえ、人的資本経営においてエンゲージメント向上はすべての会社に必須の取り組みといえます。
そこで本記事では、人的資本経営のエンゲージメントについて、以下の内容をお伝えします。
本記事を読んでわかること |
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ぜひ本記事を読み進めて、人的資本経営におけるエンゲージメントについて理解を深めましょう。
▼人的資本経営についてはテーマに合わせて下記で詳しく解説しています。
- 人的資本経営とは?人材を“資産”に変える実践プロセス【事例付き】
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人的資本経営の事例9選|成功事例から読み取る取り組みのポイント
- 人的資本経営に向けた課題と解決策!企業に求められる5つの取り組み
- 人的資本経営の実現に向けた研修とは?組織と個人に効果的な施策
- 人的資本経営で重要な指標とは?KPI設定の具体的な流れを紹介
- 人的資本開示の義務化7分野19項目と進め方をわかりやすく解説
▼人的資本経営については下記にまとめています。
目次[非表示]
- 1.人的資本経営のエンゲージメントとは従業員と企業の「相互理解・相思相愛度」
- 2.人的資本経営のエンゲージメントを高めるメリット
- 2.1.生産性や利益率の向上を図れる
- 2.2.離職を防いで人材の安定化が見込める
- 2.3.社会的評価を高められる
- 3.人的資本経営においてエンゲージメントを向上させた3つの事例
- 4.人的資本経営のエンゲージメント向上に取り組まない手はない
- 5.人的資本経営のエンゲージメントを向上させる施策例
- 5.1.社内コミュニケーションの活性化
- 5.2.フレックスタイム制やテレワークの導入
- 5.3.人員補充の社内公募制
- 5.4.福利厚生の充実化
- 6.人的資本経営のエンゲージメントを向上させるポイント
- 6.1.現状のエンゲージメントを把握して施策に落とし込む
- 6.2.仕事の意味や目的を感じてもらえる環境を作る
- 6.3.成果を評価する環境を構築する
- 6.4.ライフワークバランスを充実させる
- 6.5.施策の見直しを定期的に図る
- 7.まとめ
人的資本経営のエンゲージメントとは従業員と企業の「相互理解・相思相愛度」
人的資本経営のエンゲージメントとは、従業員と企業の「相互理解・相思相愛度」です。
人的資本経営は従業員自体を資本として価値を最大限に引き出す経営戦略で、会社が従業員を価値あるものとして大切に扱いながら理解を深め、良さを伸ばしていきます。
一方エンゲージメントは従業員が会社に対してどれだけ愛着があるか、思い入れがあるかであり、「この会社を成長させたい」「この会社の期待に応えよう」といった意識の高まりにつながります。
人的資本経営のエンゲージメントは会社と従業員双方が理解し合って、より良い環境を作るための
指標として理解するといいでしょう。
またエンゲージメントとよく間違えやすい言葉に、「従業員満足度」がありますが、まったく異なる指標です。
従業員満足度は会社が従業員へ何かをした結果、どのくらい満足しているかを表します。
たとえば福利厚生や労働条件などに対して現状満足しているか、といった例がわかりやすいでしょう。
つまり従業員が何か行動するのではなく、会社が一方的にしたことへの評価です。
一方エンゲージメントは従業員が自発的に貢献しようとする意欲を評価するので、従業員と企業双方の関係性がかかわってきます。
また従業員満足度は「今このタイミングにおいて満足しているか」ですが、エンゲージメントは「これからどうしていくか」という未来の話です。
従業員満足度とエンゲージメントでは、時間軸も異なるので知っておきましょう。
人的資本経営のエンゲージメントは一方的なものではなく、従業員と企業双方向に矢印が向く「相互理解・相思相愛度」です。
人的資本経営のエンゲージメントを高めるメリット
人的資本経営のエンゲージメントが何なのかおわかりいただけたところで、高めることで得られるメリットを以下3つ解説していきます。
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順番にお伝えします。
生産性や利益率の向上を図れる
人的資本経営のエンゲージメントを高めると、生産性や利益率の向上を図れます。
なぜなら従業員のパフォーマンスが向上するので結果的に組織の生産性が上がり、利益がともなって付いてくるからです。
人的資本経営を推進すると、従業員は自分の能力を職場で活かして働きやすい環境になり、意欲ややりがいが大きくなるので一人ひとりの成果が高まります。
さらに従業員それぞれのモチベーションが高まれば、個々だけでなく職場間のコミュニケーションや協力体制も活発になり、チームワークによる業務効率の促進も期待できるでしょう。
結果的に、人的資本経営を促進することで組織としての生産性や利益率が向上していくのです。
離職を防いで人材の安定化が見込める
人的資本経営のエンゲージメントを高めると、離職を防いで人材の安定化が見込めます。
会社や仕事に対して従業員が愛着や誇りをもって働いているため、転職を検討する意思が生まれにくくなるからです。
「この仕事を取って、会社を一歩前進させるための成長につなげたい」
「この会社なら私をしっかり評価してくれるから自分がステップアップできる」
などと仕事へのやりがいや会社へ貢献したい気持ちがあれば、一般的に転職しようとはなりにくいものです。
実際にアメリカのコンサルティング会社CEB社の調査では、以下の結果が得られています。
参考:Driving Performance and Retention Through Employee Engagement
エンゲージメントが高いほど離職する可能性は少なく、長期的に会社へ貢献してくれることをおわかりいただけるでしょう。
転職する人が減れば貴重な人材を手放さなくて済み、さらには採用や教育にかける費用の削減にもつながります。
人的資本経営においてエンゲージメントを向上させられると、人材の長期的な定着を期待できるだけでなく、コスト面においても大きなメリットがあるので知っておきましょう。
社会的評価を高められる
人的資本経営においてエンゲージメント向上を図ると、社会的評価を高められます。
自発的・積極的に行動する従業員が増えるため顧客満足度の向上につながり、結果的に企業イメージも高まるからです。
エンゲージメントが高いと、自社のサービスの良さを知ってもらうために努力を惜しまず、新たな商品開発へも意欲的に取り組む姿勢をもつこととなります。
結果的に顧客側にしてみれば質の高いサービスを受けられたり、欲しい商品が手に入ったりして満足度が高まるのです。
「あそこの会社のサービスなら絶対大丈夫!いつも店員さん丁寧だから」
「この会社、いつもこんなの欲しかったんだよねっていうピンポイントな商品を販売してくれる」
といった社会的評価の向上につながり、自社のブランディングにもなるため、人的資本経営においてエンゲージメント向上は企業として欠かせない指標です。
人的資本経営においてエンゲージメントを向上させた3つの事例
人的資本経営におけるエンゲージメント向上によってどのようなメリットを得られるのか、おわかりいただけましたでしょうか。
ここからはイメージをわかせるために、実際にエンゲージメント向上の施策を打った企業の事例をお伝えしていきます。
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順番に解説します。
事例1:生産性や利益率の向上|スターバックスコーヒージャパン株式会社
出典:Starbucks Coffee Japan - スターバックス コーヒー ジャパン
エンゲージメントを高めた結果、生産性や利益率の向上につながったスターバックスコーヒージャパン株式会社の事例を紹介します。
スターバックスといえば、メッセージの書かれたドリンクカップや迷ったときのおすすめドリンクの紹介など、きめ細かなサービスを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
このような行動は、マニュアルではなくスタッフの自発的な行動から生まれたものです。
実は、2007年頃のスターバックスは企業の成長や利益性ばかりを追求し、スタッフの研修がままならないまま店頭へ出す、コーヒー豆はまとめてセンターでひくといった時期がありました。
結果的に、生き生きとしたスタッフの提供する「スタバらしさ」のないサービスにより、業績悪化が止まらなくなったのです。
スターバックスは企業の成長や利益は二の次として、その後早急にスタッフとの関係性を見直しエンゲージメント向上に努めました。
現在スターバックスでは、サービスに関するマニュアルをほぼ作っていません。
エンゲージメントがマニュアルの核になるという考えだからです。
大切にしている会社の価値観とスタッフ個人の価値観が重なり合い、共感することでエンゲージメントは生まれるという考えをスターバックスはもっています。
そのためスターバックスはスタッフとのかかわり合い方からエンゲージメントを高め、自発的な行動を促しています。
「スタッフが本気でやりたいと考えているか?」
「スターバックスが正しいと思ったことにスタッフは共感しているか?」
このようなスタッフとの心の絆を重視し、3万3千人を超える従業員を会社と対等な立場として扱っています。
会社だけの考えで物事を進めては共感を得られず、エンゲージメントの向上にはつながりません。
今では利益を取り戻し、多くの人々に愛されるコーヒーチェーン店として、新たな商品を定期的に発売しています。
目先の利益を追求するのではなく、スタッフのエンゲージメントを高めることによって利益が付いてくるとスターバックスは考え、大切にしています。
事例2:人材の安定化|株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントはエンゲージメントを定量的に把握しながら、従業員が満足できる職場作によって、人材の安定化を図っています。
全社員のエンゲージメント状況を株式会社サイバーエージェントは毎月把握しており、打った施策がエンゲージメンと向上につながっているか評価できる仕組みを整えています。
活用しているのは、社員のコンディション把握ツール「GEPPO」です。
あらゆる質問へ「快晴・晴・曇り・雨・大雨」の5段階で回答してもらい、従業員のコンディションを客観的に評価しています。
たとえば以下を見ると、特定の曜日をリモートワークとする「リモデイ」を株式会社サイバーエージェントが導入した結果、現在従業員のエンゲージメントが導入以前とどう変化したかがわかります。
「GEPPO」で「晴れと回答した割合の推移」※ | ||
現在とコロナ禍以前の比較 |
現在 |
コロナ前 |
関係性 |
79% ↑ |
74% |
目標 |
76% ↑ |
72% |
挑戦 |
72% ↑ |
68% |
貢献 |
68% ↑ |
67% |
業務配分 |
64% ↑ |
54% |
※快晴~大雨まで5段階
参考:株式会社サイバーエージェント「87%の社員が「働きがいがある」と答える環境を実現ーーCHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策」
コロナ前よりもリモデイを導入したコロナ後のほうが、関係性や目標といったエンゲージメントに関する数値が高く、効果的な施策だったことがおわかりいただけるでしょう。
またGEPPOへの返信は100%、常務執行役員CHOの曽山さんが書いており、「会社内の誰か」ではないこともエンゲージメント向上に効果があります。
「曽山さんからレスがあった!」と社内でシェアされ、「そこまで見てくれるなら私も書こう」と記入する人が増え、現在では「GEPPO」の回答率はほぼ100%といいます。
従業員が役員に意見を伝えることのできる環境が、会社と従業員双方の信頼感を高める結果となりました。
株式会社サイバーエージェントで「働きがいがある」と答える従業員は全体の87%にのぼり、エンゲージメント向上を務めることは人材の定着化へ大きく寄与しています。
事例3:社会的評価向上|セールスフォース・ドットコム
セールスフォース・ドットコムでは、「1-1-1モデル」と呼ぶ社会貢献をおこない、エンゲージメントと社会的評価の両方を向上させています。
「1-1-1モデル」では製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してボランティアに貢献します。
ボランティアは会社から無理矢理やらされるのではなく、セールスフォース・ドットコム内のサイト上で一覧が表示されているので、好きなものを選べるしくみです。
たとえば子どもたちに楽しくプログラミングを学んでもらう「Kids Coding」への参加や、日本の食問題解決に関するプログラムなどがあり、興味のあるものへ参加が可能です。
1999年の創業以来、セールスフォース・ドットコムが製品提供により支援した非営利団体の数は、全世界で27,000団体以上です。
さらに提供した助成金は1億ドル以上にのぼり、従業員がボランティア活動に費やした時間は110万時間を超えています。
「1-1-1モデル」によって従業員は自社への誇りを高め、自分自身もハッピーな気持ちになれることが、セールスフォース・ドットコムの調査ではわかっています。
セールスフォース・ドットコムへの入社理由の第2位が、「社会貢献」であることからもおわかりいただけるでしょう。
またボランティアをすることで受けた側からの企業イメージはもちろん高まり、購買意欲における意思決定にも影響を与えます。
エンゲージメントを高めることで企業イメージを向上させ、結果的に消費者の購入ファクターとなって会社の成功につなげた事例です。
人的資本経営のエンゲージメント向上に取り組まない手はない
どのような会社でも、人的資本経営のエンゲージメント向上には取り組むべきです。
エンゲージメントを向上させるほど会社と従業員双方の絆は強くなり、会社を大きくさせられるからです。
「2. 人的資本経営のエンゲージメントを高めるメリット」でお伝えしたように、エンゲージメントを高めれば個々が意欲的に仕事に取り組み、チームワークも向上するので生産性や利益率が上がります。
「この会社が好き」「自分らしく働ける」という思いから長期的に働いてくれるため、スキルを向上させながら、会社を成長させる力にもなってくれるでしょう。
質の良い社員が多ければ社外からの評価が高まり、自社商品を好んで購入してもらえ、さらに利益へとつながります。
一方従来のヒトを管理の対象とする経営方針を続ければ、個々の能力を存分に発揮できる環境を作れません。
人事について従業員自らアピールできず、決められた部署へいくだけであれば働く意欲が高まりにくく、結果的に本来の能力以下の生産性にもなりかねないでしょう。
仕事について充実していると感じられなければ、もっとやりたいことのできる会社へ行きたいと考えることが当然の流れです。
そのような考えの従業員から受けるサービスには、高い顧客満足度を期待できません。
そのため、人的資本経営においてエンゲージメントを向上させる意義は大きく、ある程度のコストや時間がかかっても、会社の持続的成長へつなげるためには実施すべきだといえるのです。
人的資本経営のエンゲージメントを向上させる施策例
どのような企業も人的資本経営においてエンゲージメント向上を図ることが、重要であるとおわかりいただけたでしょう。
では実際にどのような方法でエンゲージメントを向上させたらいいのか、施策を解説していきたいと思います。
人的資本経営のエンゲージメントを向上させる施策例は、以下4つです。
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順番に見ていきましょう。
社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションの活発化を図ると組織内でつながりが深まり、エンゲージメント向上に結びつくので積極的に取り入れましょう。
上司や同僚へ相談・雑談をしやすい環境があると、日々の仕事で抱える小さなもやもやがそのままにならず、軽減させられます。
業務を進行するうえでわからないことがあれば相談できることはもちろん、上司や同僚ともっとこうしてほしい、こうしたらどうだろうかと議論でき、人材の育成環境が整います。
積極的に声を挙げられる環境であればモチベーションを保ちやすく、仕事へのやりがいも感じられるためエンゲージメントの向上を期待できるのです。
事実、「月刊総務」が全国の総務担当者へおこなった調査では、社内コミュニケーションが生産性や離職率、モチベーションなどのエンゲージメントへ大きく影響を与えることがわかる結果となりました。
参考:月刊総務「8割以上の企業が社内コミュニケーションに課題あり。課題内容は「社員の参加意識の醸成」が最多」
社内コミュニケーションを活発化させることでエンゲージメントを向上させられ、会社の成長へ大きく貢献してもらえるのです。
社内コミュニケーションを活発化させる方法を以下にまとめましたので、導入しやすいものから取り入れてみてください。
社内コミュニケーションを活発化させる方法 |
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フレックスタイム制やテレワークの導入
フレックスタイム制やテレワークの導入によりワークライフバランスを充実させられ働きやすくなり、エンゲージメント向上を期待できます。
介護や育児などで思い通りに働けなかったり、プライベートの時間を充実させにくかったりすると、エンゲージメントは下がり、離職を考える人は少なくありません。
フレックスタイムは月の労働時間さえ守れば好きな時間に出勤・退勤ができるので、プライベートと仕事を両立させやすくなります。
テレワークは出勤する必要がないので、通勤時のストレスがありません。
さらに子育て世代にとっては子どもの体調不良時に仕事に穴を開けずに済む、下校時刻が早くても在宅できるなど大きなメリットがあります。
ザイマックス不動産総合研究所が就活生を対象に企業選びにおける調査を実施したところ、「ハイブリッドワーク」が理想的との回答が最多でした。
「ハイブリッドワーク」とは、オフィス出社とテレワークの両方を使い分けながら働ける環境です。
参考:ザイマックス不動産総合研究所「首都圏就活生の企業選びに関する意識調査2024」
出社もテレワークも両方選べる環境があれば随時社内でコミュニケーションを取りつつ、プライベートの充実も図れます。
今いる必要な人材を手放さず、これから新たに才能のある従業員を確保していくには、多様な働き方の推進が求められます。
人員補充の社内公募制
人員補充の社内公募制は、エンゲージメント向上に効果的です。
ポジション公募制や社内公募制度ともいわれ、人員が不足しているポジションに対して新たな人材を採用するのではなく、社内で募集をかける仕組みです。
従業員自らがやりたいポジションにつけるチャンスができ、実際に異動できたらやりがいやモチベーションは上がるのでエンゲージメント向上につながります。
また新たに人を採用するコストがいらず、人事部の立場から見れば異動したい人と人を募集する部署をマッチングさせられるので、双方の希望を満たせるメリットがあります。
人事白書調査レポート2024によると社内公募制を導入済みの企業は34.8%にのぼり、従業員規模の大きい企業ほど導入率は高く、5001人以上の企業では81.1%でした。
(出典:日本の人事部「社内公募制「導入している」は約3割。5001人以上では約8割」)
大手企業では今や社内公募制はあたりまえといえ、エンゲージメント向上によって従業員のパフォーマンスを最大限に引き出せる可能性を期待できます。
福利厚生の充実化
給与や賞与以外に企業が従業員に提供する施策である福利厚生の充実化は、エンゲージメント向上につながります。
社員のサポート体制が整うので働きやすくなり、プライベートの充実を図れるからです。
ベター・プレイスが全国20〜50代の会社員を対象に「福利厚生制度に関するアンケート調査」をおこなったところ、福利厚生が充実していると答えた人は約8割にのぼりました。
参考:ベター・プレイス「福利厚生の充実で8割が「エンゲージメント向上」 不要だと思う制度は「社員旅行」—ベター・プレイス調べ」
ほとんどの人が福利厚生によってエンゲージメントを向上させていることをおわかりいただけるでしょう。
実際に以下のような福利厚生が取りれられているので、導入の参考にしてください。
福利厚生の例 |
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人的資本経営のエンゲージメントを向上させるポイント
人的資本経営のエンゲージメントを向上させる施策例を知っていただいたところで、実施するにはポイントも押さえておくとより高い効果を期待できます。
以下5つのポイントを押さえて、人的資本経営のエンゲージメントを向上させていきましょう。
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順番に解説します。
現状のエンゲージメントを把握して施策に落とし込む
人的資本経営のエンゲージメントを向上させるには、現状を把握して施策に落とし込みます。
今どのような現状であるかを把握せずにむやみやたらと施策を打っても、コストと時間の無駄です。
エンゲージメントを図るには、以下2通りの方法があります。
エンゲージメント測定方法 | |
エンゲージメントサーベイ |
半年から1年程度の間隔でアンケートを実施 |
パルスサーベイ |
アンケートの間隔を週1回や月1回など短いスパンで実施 |
このうち従業員のエンゲージメントを図るには長期的な視点で見られるエンゲージメントサーベイが適しています。
パルスサーベイは短期間での改善を期待できるので、方向性のフィードバックとして活用するといいでしょう。
エンゲージメントサーベイを実施するには「カオナビ」や「タレントパレット」などさまざまな企業からツールが販売されています。
以下のようなポイントを比較しながら、自社に合ったツールで現状を把握しましょう。
エンゲージメントサーベイツールの比較ポイント |
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以下の記事ではエンゲージメントサーベイについて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
⇒従業員エンゲージメント調査とは?実施する重要な目的と期待できる効果
仕事の意味や目的を感じてもらえる環境を作る
仕事の意味や目的を感じてもらえる環境を作ると、エンゲージメントは向上しやすいです。
自分の仕事が会社に前向きな変化を与えていたり、自分自身のスキルや知識を高める機会につながっていたりすれば、ただ「給与がもらえるから働いている」という認識ではなくなるからです。
仕事の意味や目的を感じてもらえる環境を作るには、まず会社のビジョンや価値観を従業員に明確に伝え、理解してもらう必要があります。
「何のためにこの仕事をしているんだっけ?」ではなく、「この仕事をすることで会社にとってこんな利益をもたらしている」と認識してもらうのです。
さらに個々がモチベーションを高めながら成長できるように、スキルアップのための研修やキャリアパスを明確にするといった支援も重要です。
「5-3. 人員補充の社内公募制」でお伝えしたような、社内公募制を導入して自分自身で人事を選べる仕組みを取り入れることもひとつでしょう。
従業員一人ひとりが自分の仕事に対して意味があることを認知し、より自身を高めていくための目的をもって取り組んでもらう環境を作れれば、エンゲージメントを向上させられます。
企業理念を浸透させて風通しのいい職場を作るならLDcube |
LDcubeが提供する『CrossKnowledge CK-Connect』では、従業員の興味・強み・課題を洗い出すパーソナリティタイプ診断とパーソナライズ化した学習で、エンゲージメントを向上させることが可能です。 パーソナリティタイプ診断では、従業員に対して68問の質問で16種類のタイプに分けを行い、自分自身を客観的に知る機会を与えます。 そして、パーソナライズ診断結果に基づいて個人の強みと課題を整理して、最適な学習コースを自動的に配信します。 従業員一人一人に最適なスキルパスを提案することで、学習と成長に対する意欲を高め、エンゲージメント向上につなげることができます。 気になる方は、下記無料資料ダウンロードからぜひ詳細をご確認ください。 |
成果を評価する環境を構築する
成果を評価する環境の構築によって、エンゲージメントは高められます。
人は誰からも評価されなければ徐々にモチベーションや自信はなくなっていき、活力も生まれなくなります。
従業員が適切に自分の成果を認められ、評価される体制を整えましょう。
成果を評価する環境を構築するには、以下のような施策が効果的です。
成果を評価する環境の施策例 | |
明確な評価基準を設定 |
業績評価の基準を透明で理解しやすいものにして、社内で共有する |
個人に合わせた目標設定 |
従業員一人一人が今の成長段階における無理にない目標設定をおこない、着実にクリアしていくようサポートする |
即時のフィードバック |
良い成果が出たらすぐに褒めたり、具体的な行動や成果を評価したりする |
公式な表彰制度 |
月間・四半期・年間MVPなどの表彰制度を設ける |
多様な報酬制度を用意 |
ボーナスや昇給などの金銭的報酬から特別休暇や研修機会といった非金銭的報酬制度を設ける; |
ライフワークバランスを充実させる
仕事とプライベートのバランスである、ライフワークバランスを充実させると、エンゲージメントを高めていけます。
ライフワークバランスが充実していると仕事をしやすい環境であり、精神的に安定した状況で取り組めます。
「組織が従業員のことを考えてくれている」という信頼感にもつながるでしょう。
働きやすい職場であれば生産性や利益率は上がり、人材の安定化を図れるため、エンゲージメントを高めるにはライフワークバランスの充実が欠かせません。
ライフワークバランスを充実させるには仕事と私生活のどちらも犠牲にせず、いかに休息をきちんと取れる環境を整えられるかが重要です。
労働時間の見直しや休暇制度の整備が必須といえ、以下のような施策を検討するといいでしょう。
ライフワークバランスを充実させる施策例 |
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施策の見直しを定期的に図る
エンゲージメントを向上させるための施策はただやったら終わりではなく、定期的に見直していく必要があります。
「この施策良さそう」と思って取り入れても、自社には合わないケースも少なくありません。
重要なのは自社の従業員のエンゲージメントが向上しているかなので、効果の得られない施策を継続しても時間やコストが無駄になってしまいます。
施策を打ってもうまくいかないときは、以下のような原因が隠れている可能性が高いです。
施策を打ってもうまくいかないときに考えられる原因 | |
施策の目的が従業員に浸透していない |
そもそも施策がどのような目的でおこなわれているか、従業員へ伝わっていなければうまくいかない |
期待する効果設定が曖昧である |
どのような効果を期待できるのか、明確に設定していなければ、施策の善し悪しを判断できない |
一部門でしかおこなっていない |
エンゲージメントを向上させたのち、持続させるには管理職や他部門との関わりが欠かせない |
施策を打ってもただただ従業員がやらされていると感じていればエンゲージメントは向上せず、効果設定が曖昧であれば適切な評価はできません。
施策によってどのような目的を達成し、どのような変化を望むのかを事前に想定してください。
また「手始めに一部のメンバーにだけやってみよう」という方法はついやってしまいがちですが、エンゲージメントを向上させたのち、持続させるには管理職や他部門との関わりが欠かせません。
管理職や他部門がエンゲージメントの重要性を理解していなければ、エンゲージメントが向上し、積極性が増した従業員の変化に戸惑うケースもあります。
施策の打ち方に注意しながら「エンゲージメントサーベイ」を定期的に実施し、従業員の意識変化をモニタリングしていきましょう。
まとめ
人的資本経営におけるエンゲージメントがどのようなものなのか、おわかりいただけましたでしょうか。
最後に、本記事の要点をまとめていきます。
◎人的資本経営のエンゲージメントとは、従業員と企業の「相互理解・相思相愛度」です。
◎人的資本経営のエンゲージメントを高めることで得られるメリットは、以下3つです。
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◎どのような会社でも、人的資本経営のエンゲージメント向上には取り組むべきです。
◎人的資本経営のエンゲージメントを向上させる施策例は、以下4つです。
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◎以下5つのポイントを押さえて、人的資本経営のエンゲージメントを向上させていきましょう。
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