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サクセッションプランの好事例とは?|作り方や成功させるコツ3つも交えて5事例徹底解説!

「サクセッションプランの他社事例を教えてください。弊社のサクセッションプランの参考にしたいです」

このように、自社でサクセッションプランを作るときは、参考にするためにも他社のサクセッションプラン事例を知りたいですよね。

しかし、残念なことに具体的なサクセッションプランの制作事例や取り組みについて詳しく公開している会社は多くありません

そこで今回は、サクセッションプランを公開している企業だけではなく、後継者教育や事業継承の事例を公開している企業も含め、以下の企業から参考になる事例を紹介します。

事例(1)株式会社荏原製作所

サクセッションプランの特徴

後継者の選任

選定基準が公開されており信頼性が高い

後継者の資質

役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている

後継者の育成

約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している

事例(2)コニカミノルタ株式会社

サクセッションプランの特徴

後継者の選任

内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する

後継者の資質

CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする

後継者の育成

育成チャートを活用し計画的に行う

事例(3)マニー株式会社

サクセッションプランの特徴

後継者の選任

候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する

権限の委譲

CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る

事例(4)SOMPOホールディングス株式会社

サクセッションプランの特徴

後継者の選任

性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める

後継者の育成

後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する

事例(5)株式会社山本海苔店

サクセッションプランの特徴

後継者の育成

経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる

事業の継承

後継者候補と社員との関係性を重要視している

サクセッションプランの詳細を公開できない理由は候補者の名前や育成プログラムを公表することで、次ような問題が生じる可能性があるためです

  • 優秀な人材が他社に引き抜かれてしまう
  • 候補者間の競争が激化して社内政治に悪影響を与える
  • 個人評価に含まれる能力評価や弱点分析、個人情報が流出する
  • 人材育成戦略が競合他社に知られてしまう

また、サクセッションプランは株主などのステークホルダーから注目される重要な取り組みです。

そのため、詳細な計画を公表すると、候補者の変更や教育プランの修正が必要になった場合、ステークホルダーに不信感を抱かれるリスクがあります。

これらの理由によって、具体的なサクセッションプランの制作事例や取り組みについては、公開されていないことが一般的です。

とはいえ、自社のサクセッションプラン制作のためには、参考になる情報が必要ですよね。
この記事を読めば、サクセッションプランの制作事例だけではなく、参考となる後継者教育や事業継承の事例をチェックすることができます。

具体的には、以下の内容について紹介しています。

この記事を読むとわかること

  • サクセッションプランの制作事例
  • 後継者教育や事業継承の事例
  • 【他社事例から学ぶ】サクセッションプランを成功させるコツ

サクセッションプランを体系的に構築していない企業でも、事業継承や取締役の引き継ぎに関するノウハウを持つ企業は多く存在します。

このようなノウハウを持つ企業の実践例は、サクセッションプラン制作の成功率を高める貴重な参考資料となるでしょう。

この記事を読んでサクセッションプランについて理解を深め、自社のサクセッションプラン作成の参考にしてください。

▼ サクセッションプランとは何かについては下記で詳しく解説しています。

  サクセッションプランの作り方と効果的な次世代の経営者人材の育成とは? サクセッションプランの概要と必要性、検討の流れ、テクノロジーの活用まで解説します。企業が長期的に存続していくには後継者育成が重要です。後継者に当たる次世代リーダー層の育成を効果的に行えるツールとして注目されている経営シミュレーションなどについても紹介します。 株式会社LDcube

▼ 次世代の経営者育成については下記でも詳しく解説しています。

  次世代の経営者を育成する!新時代の人材教育ソリューション! 急速な環境変化に対応するために、次世代の経営者を育成するニーズが高まっています。デジタルスキルへの対応などこれまでの幹部研修や人材育成プログラムでは対応できなくなっています。これからの時代に必要なポイントを提供します。 株式会社LDcube

▼ サクセッションプランについてまとめた資料は下記よりダウンロードできます。

サクセッションプラン資料

目次[非表示]

  1. 1.サクセッションプランの事例5社
  2. 2.事例(1)株式会社荏原製作所
    1. 2.1.後継者の選任|選定基準が公開されており高い信頼性がある
    2. 2.2.後継者の資質|役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている
    3. 2.3.後継者の育成|約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している
  3. 3.事例(2)コニカミノルタ株式会社
    1. 3.1.後継者の選任|内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する
    2. 3.2.後継者の資質|CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする
    3. 3.3.後継者の育成|育成チャートを活用し計画的に行う
  4. 4.事例(3)マニー株式会社
    1. 4.1.後継者の選任|候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する
    2. 4.2.権限の移譲|CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る
  5. 5.事例(4)SOMPOホールディングス株式会社
    1. 5.1.後継者の選任|性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める
    2. 5.2.後継者の育成|後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する
  6. 6.事例(5)株式会社山本海苔店
    1. 6.1.後継者の育成|経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる
    2. 6.2.事業の継承|後継者候補と社員との関係性を重要視している
  7. 7.【他社事例から学ぶ】サクセッションプランを成功させるコツ3つ
    1. 7.1.後継者選定の基準を明確にし、透明性と信頼性を確保する
    2. 7.2.後継者候補の育成と事業継承には最低1年以上の準備期間を設ける
    3. 7.3.後継者のポストや成長段階に合わせた育成計画を立てる
  8. 8.まとめ

サクセッションプランの事例5社

サクセッションプラン①

冒頭で解説したように、この記事では、以下の5社の事例について解説します。

  • 事例(1)株式会社荏原製作所
  • 事例(2)コニカミノルタ株式会社
  • 事例(3)マニー株式会社
  • 事例(4)SOMPOホールディングス株式会社
  • 事例(5)株式会社山本海苔店

それぞれの事例には、以下のような特徴があります。

事例(1)株式会社荏原製作所

後継者の選任

選定基準が公開されており信頼性が高い

後継者の資質

役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている

後継者の育成

約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している

事例(2)コニカミノルタ株式会社

後継者の選任

内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する

後継者の資質

CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする

後継者の育成

育成チャートを活用し計画的に行う

事例(3)マニー株式会社

後継者の選任

候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する

権限の委譲

CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る

事例(4)SOMPOホールディングス株式会社

後継者の選任

性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める

後継者の育成

後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する

事例(5)株式会社山本海苔店

後継者の育成

経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる

事業の継承

後継者候補と社員との関係性を重要視している

次章から、それぞれの事例について詳しく解説していきます。
それではご覧ください。

事例(1)株式会社荏原製作所

サクセッションプラン②

出典:株式会社荏原製作所

株式会社荏原製作所は、ポンプ設備や排水処理システムなどを製造する大手メーカーです。
同社のサクセッションプランには、以下のような特徴があります。

後継者の選任

選定基準が公開されており信頼性が高い

後継者の資質

役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている

後継者の育成

約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している

このように、(株)荏原製作所は透明性の高い社長選任プロセスや、段階的な育成プログラムなど、優れたサクセッションプランを制作し実施しています。

2022年には、これらの取り組みが評価され、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2022」経済産業大臣賞を受賞しました。

会社名

株式会社荏原製作所

資本金

804億円

従業員数

4,688名
(連結従業員数:9,629名)

業種

製造業

出典:株式会社荏原製作所

ここからは、同社のサクセッションプランの特徴について、詳しくみていきましょう。
 

後継者の選任|選定基準が公開されており高い信頼性がある

(株)荏原製作所では、明確な選定基準を公開することで、客観的な基準に基づく後継者候補の選任システムを構築しています。

後継者候補の選出は非業務執行の取締役会長及び3名の独立社外取締役の計4名で構成された「指名委員会」が中心となって行います。

同社では候補者の選定・評価の執行者と選任プロセス監督者を分離することを徹底しています。これにより、客観性を持った候補者の選定が可能となるです。
 

後継者の資質|役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている

指名委員会は、以下のように取締役に必要な役割や資質・能力をポジションごとに明確に定め、それに基づいて候補者を選んでいます。

(1)社長の場合
社長候補者は、経営者に必要とされる胆力やその時々の経営状況に適応できる能力を評価され、複数の面接や評価を経て選ばれます。

実際に現社長は、指名委員会によって複数回のインタビューなどを含む選考を経て選任されました。

(2)他の取締役の場合
社長以外の取締役は、それぞれ求められる役割と資質・能力について、明確に定められ公開されています。

以下は、社内取締役に求められる役割と資質・能力の例です。

<取締役に求められる役割/求められる資質・能力>

役割
  • 取締役会が「企業戦略等の大きな方向性を示すこと」、「業務執行における適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」及び「独立した客観的な立場から業務執行に対する実効性の高い監督を行うこと」を実現するためにモニタリング・ボードとしての役割を果たすべく、取締役会での議論及び業務執行のモニタリングにおいて最善の努力を払うこと
  • 特定の分野における専門的知見を基に、他の取締役からの意見及び社内外からの情報を考慮しつつ、幅広い見識と論理的思考力をもって賢明な判断を下すこと
  • 議論においては、賛否の表明に留まらず、当社の成長に向けた新たな論点を提示すること
資質・能力
  • 優れた人格・高い倫理観・探究心・独立心を有する。
  • 企業経営に関する知見を有し、責任ある立場での意思決定、あるいは専門能力を発揮した経験を有し、その結果として優れた成果を発揮した経験を有する。
  • 当社の戦略的な方向性、中長期的課題に関する業界あるいは周辺・関連領域で最新の情報を保有し、あるいは獲得する意欲を有する。
  • 過去の自身の経験、知識に依存するのではなく、他の取締役からの意見および社内外からの新たな情報に基づいて判断を下すことのできる見識、論理的な思考力を有する。
  • 当社のガバナンス改革にコミットし、その進化のプロセスに貢献することを通じて自身のさらなる成長への意欲を有する。

 引用:荏原製作所 コーポレート・ガバナンスに関する基本方針
 

後継者の育成|約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している

社長候補者が選ばれると、経営者として必要なスキルを身に付けるために専用の育成プログラムを複数回実施します。

社長候補者への育成・選定プロセスは、以下のように約6年間に及びます。

サクセッションプラン③

出典:荏原グループ 統合報告書2023

このように、6年間にわたって実施された各プログラムの評価を基に後継者人材を絞り込むのです。

育成プログラムには、以下のような内容が含まれます。

  • 国内外の経営者との対話
  • 他部署への異動による新たな業務経験
  • 実際の経営課題解決への挑戦
  • エグゼクティブコーチングによるコーチング
  • 経営に必要となり財務/法務/コーポレートガバナンスなどの習得
  • 主要事業拠点への視察
  • 社外の有識者による講義や意見交換会
  • 新任取締役向けオリエンテーション

これらのプログラムと選考プロセスを経て選ばれた最終候補者は、指名委員会に報告され、その後指名委員会から取締役会に推薦されます。

事例(2)コニカミノルタ株式会社

サクセッションプラン④

出典:コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は、デジタルワークプレイス事業を中心にプロフェッショナルプリント事業やヘルスケア事業など、多岐にわたる分野で事業を展開している会社です。

同社のサクセッションプランには、以下のような特徴があります。

後継者の選任

内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する

後継者の資質

CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする

後継者の育成

育成チャートを活用し計画的に行う

同社は、2015年「コーポレートガバナンス・コード」が導入されたことを受けて、指名委員会がサクセッションプランを監督する体制を導入しました。

コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業のコーポレートガバナンスに関する指針や原則を定めるガイドラインのことです。

このなかで、サクセッションプランについて以下のように言及されています。

4-1③取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~ 第4章 取締役会等の責務|株式会社東京証券取引所

コーポレートガバナンス・コードの導入は、コニカミノルタ(株)をはじめとする多くの上場企業にとって、サクセッションプランに対する意識を変える転機となりました。

会社名

コニカミノルタ株式会社


資本金

37,519百万円


従業員数

4,407名
(連結従業員数:39,775名)


業種

デジタルワークプレイス事業/プロフェッショナルプリント事業 など

ここからは、同社のサクセッションプランの特徴について、詳しく解説していきます。
 

後継者の選任|内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する

コニカミノルタ(株)では、指名委員会が以下の流れで後継者人材を選定します。

1

定時株主総会で取締役が選任された時点から、次期の取締役候補者の選定が開始される

2

指名委員会は、総人数および社外取締役・非執行社内取締役・執行役兼務社内取締役それぞれの人数案を確認し、候補者の人数を決定する

3

指名委員会は、次期取締役に必要なスペックを決定する

4

適切な人物を選出し、指名委員長の采配のもとで検討・決定する

候補者の選出では、内部評価だけでなく外部機関から得た行動・能力に対する評価も重要視します。
また、取締役会での受け答えや現場視察、各部門の研究発表会での発言や質疑応答も、人物評価において重要な参考の一つです。

このようにして選ばれた後継者候補には、指名委員会が優先順位を設定し、その順位に基づいて取締役就任の打診が行われます。

選任時に重視されるポイントは会社の状況によって異なる

コニカミノルタ(株)では、取締役を選任するときの大原則として、会社の成長と企業価値の向上に貢献し、ステークホルダーの期待に応えられる人物を選ぶことが求められます。

そのうえで、現在の取締役会の構成や多様性を考慮し不足している視点を補うことも重要視されており、選任時に重視される資質や能力は、会社の状況によって異なります。

例えば、2018年度の社外取締役には、必要な分野や将来必要になる領域で豊富な経験を持つ人物を選出しました。社内取締役は「継続性」と「世代交代」を重視し、既存の取締役を維持しつつ、新しい取締役を迎え入れて世代交代を進めました。

このように、同社では取締役の選任を通じて取締役会の構成を最適化するために、必要なスキルや経験を持つ人材を積極的にに選定しています。


後継者の資質|CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする

コニカミノルタ(株)では、将来CEOになるために以下のような資質や経験を各候補者に求めています。

  • 先を読む力
  • 企業成長への熱意
  • コミュニケーション能力
  • 人間的魅力
  • 会社の状況に応じた業務経験や知見

出典:統合報告書2018 ホーム コーポレートガバナンス対談|コニカミノルタ株式会社

同社では、上記の資質や経験を積むために、執行役候補者が取締役会に出席することを想定した予行演習や取締役会議長によるコーチングを行っています。
 

後継者の育成|育成チャートを活用し計画的に行う

コニカミノルタ(株)では、CEOを含めた取締役の後継者育成のするために、独自の後継者育成チャートを用いています。

これにより後継者育成の全体像を可視化し、計画的に進めることが可能となっています。

後継者育成チャートとは、後継者を育てる過程を時間の流れに沿って図式化したものです。

このチャートでは、横軸には時間を配し、縦軸には育成すべき役職を配置します。
それぞれの役職には具体的な教育内容が組み込まれており、後継者がどの教育段階にあるかを把握することができます。

例えば、後継者育成チャートを使用することで、特定の役職者の退任予定日が決まっている場合には、その日までに必要な候補者の数や適性を明確に設定することが可能です。

これにより、後継者の選定や教育の計画を効率よく進めることができ、後継者は最適なタイミングで必要なスキルや知識を身に付けられるようになります。

事例(3)マニー株式会社

サクセッションプラン⑤

出典:マニー株式会社

マニー株式会社は、医科・歯科治療機器の開発・製造・販売を手がける医療機器メーカーです。
同社のサクセッションプランには、以下のような特徴があります。

後継者の選任

候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する

権限の委譲

CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る

創業家自身がコーポレートガバナンスの重要性をいち早く理解していた同社は、経営から創業家の影響を排除することを目標としていました。

目標の達成のために、同社は委員会等設置会社への移行、社外取締役による取締役会議長の就任などの施策を実行し、コーポレートガバナンス改革を積極的に進めたのです。

その結果、これらの取り組みが高く評価され、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2023」の経済産業大臣賞を受賞しました。

会社名

マニー株式会社


資本金

1,066百万円


従業員数

366名


業種

医療機器の開発・製造・販売

それでは、同社のサクセッションプランの特徴について、解説していきます。
 

後継者の選任|候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する

マニー(株)では、以下のプロセスで後継者を選定しています。

1

後継者は、マニー(株)が定義する「あるべきCEO像」に基づいて自己評価を行い、不足していると考える部分について自己研鑽計画を制作・取締役会に提出する

2

候補者は自らの成長計画を進め、その進捗を取締役会に中間報告と期末報告として提出する

3

候補者が提出した計画と結果に基づいて、指名委員会が候補者を選定する

4

最終候補者は、取締役会で将来の会社の姿やその姿を達成するために必要な戦略についてプレゼンテーションする

5

最終候補者の自己研鑽計画の最終報告を受け、次期CEOを1人に仮決定する

出典:マニー株式会社 統合報告書

上記の流れで、CEO交代の1年前には、次期CEO候補者が最終的に1人に絞られます。
 

権限の移譲|CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る

マニー(株)では、前述の通りCEO交代の1年前に次期CEO候補者を決定し、慎重に引継ぎ・権限移譲を行います。

次期CEOは、就任までの1年間自己研鑽計画の提出を継続し、取締役会によって期待通りの成長ができているか確認されます。

次期CEOが就任するまでの1年間は、経営者としての資質を磨くために必要な準備期間なのです。

さらに、次期CEOは他の執行役と将来のビジョンを共有しながら、中期経営計画の策定に携わります。この中期経営計画の制作を通して現CEOと次期CEOは意見交換を行い、経営方針の一致を目指します。

つまり、マニー株式会社では、次期CEOの成長を確認しながら、現CEOとの対話を重ねることで円滑な権限移譲実現しているです。

▼ 経営幹部のOJTのあり方については下記で詳しく解説しています。

  OJTでの経営幹部育成とは? ~次世代は現役世代にしか育てられない!?~ 幹部育成は、企業が持続可能性を保つために不可欠な要素です。次期幹部には、問題解決力やリーダーシップ、意思決定やリスク管理能力が期待されます。企業が幹部を育てる際に、効果的な方法として、経験を通じた学び(OJT)と経営シミュレーションの組み合わせがよく活用されます。 株式会社LDcube


事例(4)SOMPOホールディングス株式会社

サクセッションプラン⑥

出典:SOMPOホールディングス株式会社

SOMPOホールディングス株式会社は、損害保険事業を中核とする日本の大手金融グループです。
同社のサクセッションプランには、以下のような特徴があります。

後継者の選任

性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める

後継者の育成

後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する

SOMPOホールディングス(株)のサクセッションプランは、国内外の重要ポストを対象にしています。ループ全体で88の主要ポストがあり、それぞれに具体的な後継者計画が立てられています。

同社のサクセッションプランの目標は、質の高い人材が安定的かつ効果的に輩出される体制の構築することです。

特に、CEOや事業オーナーなど、グループのキーとなるポストには、多様な背景を持つ人材を育成し、これらのポストに配置することを目指しています。

会社名

SOMPOホールディングス株式会社


資本金

1,000億円


従業員数

506名


業種

保険業 など


出典:SOMPOホールディングス株式会社

ここからは、同社のサクセッションプランの特徴について、詳しく解説していきます。 

後継者の選任|性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める

同社では、後継者候補となる人材を、以下のように識別しています。

N(Next)人材


5年以内に該当ポストを担う可能性のある人材

F(Future)人材

5〜10年後に該当ポストを担う可能性のある人材

各ポストには、N人材とF人材がそれぞれ5名以上の候補者が選定され、40%以上を女性とすることが目標とされています。

さらに、各ポストの候補者の年齢分布も考慮されており、これにより多様な人材を集めることができるようになるのです。
 

後継者の育成|後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する

同社のサクセッションプランでは、以下のように前述のN人材とF人材に対してそれぞれ異なる内容の育成プログラムを提供しています。

<N(Next)人材>

NLP
(Next Leaders Program)


経営リーダーの育成を目指すためにを行う
グループCEOや社外取締役によって候補者の能力や人物像が評価される

<F(Future)人材>

FLP
(Future Leaders Program)


ビジネススクールと連携し、リーダーに求められる視点や経営理念に対する理解を深めるために行う

このように、後継者候補に対して最適なプログラムを行い、経営層候補としてのマインドセットやリーダーシップのあり方について教えています。

事例(5)株式会社山本海苔店

サクセッションプラン⑥

出典:株式会社山本海苔店

(株)山本海苔店は、1849年に創業し、代々ファミリービジネスを続けてきた老舗企業です。

この会社では、サクセッションプランは公開されていませんが、代々事業継承を続けてきた企業として、以下のような知見を持っています。

後継者の育成

経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる

事業の継承

後継者候補と社員との関係性を重要視している

山本海苔店では、社長の後継者には原則として長男または長女の配偶者が選ばれることが慣例化されています。

これは、親族内での事業継承トラブルが発生するリスクを軽減するためです。親族内の人事に関する明確なルールを設けることで、事業継承に伴うトラブルを未然に防ぐことができたのです。

会社名

株式会社山本海苔店


資本金

4,800万円


従業員数

310名


業種

加工食品の製造・販売


ここからは、同社の後継者育成の特徴について、詳しく解説していきます。
 

後継者の育成|経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる

山本海苔店では、特別な後継者育成プログラムを用意していません。
なぜなら、ファミリービジネスでは経営者としての意識は子供の頃から自然に培われることが多いからです。

実務に関しては、一般的な企業と同様に現場で仕事を覚えたり、セミナーや他社で経験を積んだりしてさまざまな経験を積んでいきます。

同店の場合は、以下のような方法で、経営者としての知識を身に付けていきます。

  • 後継者本人が自主的に、MBAや中小企業診断士の取得、勉強会への参加をする
  • 事業承継に関するアドバイスを提供できるコーチやコンサルタントに依頼する など

これらの育成方法に加えて、先代社長との対話や、社内での実践的な経験を積むことが重要だと考えられています。
 

事業の継承|後継者候補と社員との関係性を重要視している

山本海苔店では、社長と後継者候補が共に戦略を考え、それぞれの視点や相違点を確認しながら、会社の成長と存続を目指しています。

これは、後継者が事業を継承したときに、社内の混乱を避けるためにも、先代との戦略のすり合わせが重要だと考えられているためです。

一般的に、新社長は新しい風を取り入れ、これまでの仕事や方針を変えたがる傾向があります。
そのため、後継者が事業を継承して新社長になると、先代と仕事を重ねてきた社員との間で理解のずれや対立が生じることがあります。

このような問題を避けるためには、新社長が先代の取り組みを尊重しつつ、徐々に自身の方針を示していくことで、社員との関係を築くことが重要だと同店では考えています。

【他社事例から学ぶ】サクセッションプランを成功させるコツ3つ

サクセッションプラン⑥

ここまで、実際に公開されているサクセッションプランや後継者育成の事例を解説してきました。

しかし、具体的にこれらの事例をどのように生かしたらいいのかわからない、という人もいるかもしれません。

そこでこの章では、ここまで解説してきた事例からわかるサクセッションプランを成功させるための重要なポイントを以下のように3つ解説します。

  • 後継者選定の基準を明確にし、透明性と信頼性を確保する
  • 後継者候補の育成と事業継承には1年以上の準備期間を設ける
  • 後継者のポストや成長段階に合わせた育成方針を立てる

それでは、上記の3つのポイントについて、一つずつ詳しく説明していきます。
 

後継者選定の基準を明確にし、透明性と信頼性を確保する

サクセッションプランを成功させるためには、後継者選定の基準を明確にし、透明性と信頼性を確保することが重要です。

これは、後継者の選定基準を曖昧にしたままでは、従業員やステークホルダーから不信感を抱かれ、事業承継がスムーズに進まなくなるリスクがあるためです。

また社員に対して後継者選定のプロセスを理解し、納得してもらうことで、将来の経営者を目指す社員のモチベーションが高まります。

後継者選定の基準を明確にする方法としては、以下のような方法が挙げられます。

  • 役職ごとに求められる資質や能力を具体的に定義し、選定基準を広く社内外に公開する
  • 後継者の評価には社内の視点だけでなく、外部機関の客観的な意見を取り入れる など

このように、後継者選定の透明性を確保することで、公平かつ適切に後継者候補の選定が可能になります。

役職ごとに求められる資質や能力を定義することは後継者育成にも役立つ

あらかじめポストごとに必要な資質・能力を明示することは、後継者候補を決定したあとの、育成でも役立ちます。

役職ごとに必要なスキルや知識を明確にすることで、適切な育成計画を立てることができます。
その結果、後継者が役職に適したスキルや知識を備えて成長できるようになるでしょう。


後継者候補の育成と事業継承には最低1年以上の準備期間を設ける

サクセッションプランを成功させるためには、後継者候補の育成と事業継承までに十分な準備期間を設けることが必要です。

最低でも1年以上の時間をかけて、後継者候補のスキルと経験を段階的に積み上げていくことが求められます。

なぜなら、時間をかけて計画的な育成プログラムを実施することで、後継者候補を着実に成長させることができるためです。

時間があれば、準備期間中に問題点が見つかっても解決に取り組む余裕があるため、実際に事業承継したときにトラブルが発生するリスクを低減できます。

例えば、以下のような問題点があっても十分な準備期間を確保しておけば、その期間中に解決することが可能になります。

  • 現CEOと後継者候補との間で経営方針に相違がある
  • 後継者候補がバックオフィス業務に対する知識と経験が不足している
  • 後継者候補の能力や資質を他の従業員が認めておらず、協力体制が整っていない など 

実際に、多くの企業では、後継者の育成期間を3年以上確保することが一般的です。
帝国データバンクが行った事業承継に関する企業の意識調査では、後継者への移行期間に「3年以上」を要すると回答した企業が51.9%と、半数以上に上りました。

サクセッションプラン⑦

※後継者への移行期間とは、「後継者を決めてから事業承継が完了する期間」を示し、後継者の育成期間なども含める

出典:後継者への移行期間、企業の半数が「3年以上」 ~ 新型コロナの影響で事業承継への意識が変化した企業は8.7% ~ |株式会社帝国データバンク

このように、後継者候補の計画的な育成と十分な準備期間の確をすることで、スムーズなサクセッションプランの実子を実現できます。
 

後継者のポストや成長段階に合わせた育成計画を立てる

後継者育成の方法は業種や役職、会社の方針によって異なりますが、共通してできることもあります。
それは、後継者候補が目指す役職や成長段階に応じた育成計画を立てることです。

後継者に求められる能力は、担当する部門や役職によって大きく違いがあります。
以下の表は、担当する部門毎に求められる能力の一例です。

営業責任者


  • 販売戦略に関する知識と経験
  • 市場の動向を分析する能力
  • 営業戦略を策定する能力

技術責任者


  • 技術的な専門知識と経験
  • 技術トレンドを追う感性
  • プロジェクトの進捗を管理する能力

法務責任者


  • 法務に関する知識と経験
  • コンプライアンスを重視する倫理観
  • 最新の法律動向に対応する能力

このように、後継者が目指す役職によって必要とされる能力や資質は異なります。
そのため、あらかじめ求められる能力を具体的に特定し、それに基づいて育成計画を立てることが重要となるのです。

また、後継者候補の成長段階に応じて、育成方法や内容を調整していくことも大切です。

このように、後継者候補それぞれに合わせた育成を行うことで、後継者候補が必要なスキルや知識を計画的かつ着実に習得できるようになります。

後継者候補の育成には経営シミュレーション「Biz-Ex(ビジックス)」をご活用ください


後継者候補にどのような教育をするべきか悩んだときは、ぜひ「Biz-Ex(ビジックス)」をご活用ください。

Biz-Ex(ビジックス)は、社長の立場で6年間分の会社経営を疑似体験できる経営シミュレーション型eラーニングプログラムです。

このプログラムには以下のような特徴があり、御社の後継者育成をサポートします。

  • 本格的な意思決定を疑似体験できる高度な経営シミュレーションシステム
  • 戦略/財務/マーケティングなどを学習できる120以上の図解付きコンテンツ
  • シミュレーションから導き出された受講者の能力や行動志向などを可視化できるレポート

これらの特徴で、後継者に必要な知識やノウハウを体系的に習得させることが可能です。
後継者候補の教育にお悩みの際は、ぜひBiz-Ex(ビジックス)の利用をご検討下ください。

▼ 経営シミュレーション研修については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

  経営シミュレーションとは?人材育成の新手法・研修について解説! 今回は経営シミュレーションの意義や内容、対象者、必要なスキル、進め方について解説します。ビジネススキルや戦略思考、意思決定力を高め、経営力を育てる研修として、企業の成長を支える人材育成に役立つでしょう。 株式会社LDcube


まとめ

〇今回は、以下のように5つのサクセッションプラン事例を紹介しました。

事例(1)株式会社荏原製作所

後継者の選任

選定基準が公開されており信頼性が高い

後継者の資質

役職ごとに必要な役割や資質・能力を明確に定めている

後継者の育成

約6年間の後継者育成専用プログラムを実施している

事例(2)コニカミノルタ株式会社

後継者の選任

内部評価だけでなく外部機関から得た評価も重要視する

後継者の資質

CEOに必要な資質や経験を明示しコーチングする

後継者の育成

育成チャートを活用し計画的に行う

事例(3)マニー株式会社

後継者の選任

候補者自ら設定した成長計画とその成果に基づいて選定する

権限の委譲

CEO交代の1年前から協議・議論を重ね経営方針の一致を図る

事例(4)SOMPOホールディングス株式会社

後継者の選任

性別や年齢のバランスを考慮して選抜し多様な人材を集める

後継者の育成

後継者候補のグループごとに異なる育成プログラムを実施する

事例(5)株式会社山本海苔店

後継者の育成

経営者としての意識は子供の頃から自然に培われる

事業の継承

後継者候補と社員との関係性を重要視している

〇これらの事例からわかるサクセッションプランを成功させるための重要なポイントは以下の3つです。


  • 後継者選定の基準を明確にし透明性と信頼性を確保する

  • 後継者候補の育成と事業継承には1年以上の準備期間を設ける

  • 後継者のポストや成長段階に合わせた育成方針を立てる

これらのポイントを踏まえてサクセッションプランに取り組むことで、後継者の育成と事業承継をスムーズに進めることができるでしょう。

この記事が、サクセッションプランを制作する際の手助けとなれば幸いです。

株式会社LDcubeでは、サクセッションプランに合わせた人財育成の支援を行っています。経営幹部に求められる知識やスキルを学ぶためのeラーニングやマイクロラーニング、経営についての知識やスキルをを使えるものにしていくための経営シミュレーション研修などを提供しています。
無料のデモIDの発行も行っています。お気軽にご相談ください。

▼関連資料はこちらからダウンロードできます。

サクセッションプラン資料

マイクロラーニング資料

Biz-Ex資料

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LDcube編集部
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株式会社ビジネスコンサルタント時代から約60年、人材開発・組織開発に携わってきた知見をもとに、現代求められる新たな学びについて、ノウハウや知見をお届けします。

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