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人的資本経営の事例9選|成功例から読み取る取り組みのポイント

「人的資本経営を取り入れるにあたって、正直イメージがわかない!参考にできるような事例ってない?」
「今の経営方法じゃ会社の拡大にはつながらないよね…。人的資本経営を実現させている企業はどんなことをしているのかな」

このように、今後の企業成長を見込むのであれば人的資本経営が必要だと考えていても、自社でどのように取り組んでいけばいいのか見当が付かない方は多いでしょう。

だからこそ、他社の事例を参考にこれからの人材戦略を進めていきたいですよね。

本記事では、経済産業省の「人材版伊藤レポート1.0」をもとに、人的資本経営の事例を9つご紹介していきます。

企業名

旭化成株式会社

アステラス製薬株式会社

伊藤忠商事株式会社

オムロン株式会社

SOMPOホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社

KDDI株式会社

株式会社丸井グループ

株式会社LIXIL

3P
3つの視点

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

-

企業文化への定着度

5F
5つの要素

採用や人材配置、
人材育成の最適化

知・経験の
多様性

リスキリング・
学び直し

-
-

従業員
エンゲージメント向上

-

柔軟な働き方の推進

-
-
-
-
-
-
-

本記事では経済産業省の「人材版伊藤レポート1.0」にまとめられた、人的資本経営の人材戦略に求められる「3つの視点」と「5つの共通要素」である、3Pと5Fへの該当の有無も併せてチェックしました。

どのような点に着目して各社が施策を行っているのかが、一目瞭然でわかる記事となっています。

とはいえ、ただ事例を見れば「人的資本経営ができる!」とはならない点も把握しておいてください。

そのまま事例の取り組みをマネをしても、自社に合わせた施策をとれなければ失敗して、時間や労力、資本の無駄になるだけでなく、従業員や株主からの反発も起こりかねません。

そこで本記事では、人的資本経営を進めるにあたって理解しておきたいポイントも紹介します。

本記事を読んでわかること

  • 人的資本経営の事例を参考にできる
  • 人的資本経営を進めるときに各社が着目している点がわかる
  • 人的資本経営を進めるときのポイントを押さえて失敗しない!

ぜひ本記事を読み進めて、人的資本経営の事例を学んでいきましょう。

▼人的資本経営についてはテーマに合わせて下記で詳しく解説しています。

▼人的資本経営については下記にまとめています。

人的資本経営バナー

目次[非表示]

  1. 1.人的資本経営の事例1 旭化成株式会社
    1. 1.1.経営戦略の実現に必要な人財の確保
    2. 1.2.独自のエンゲージメント調査を毎年実施
    3. 1.3.高度専門人財について定義し、必要人数を数値目標(KPI)として設定
  2. 2.人的資本経営の事例2 アステラス製薬株式会社
    1. 2.1.人事を経営層や事業部門と共に戦略を実現するパートナー化
    2. 2.2.人材に関する目標を明確化してハイパフォーマンスを実現
    3. 2.3.社内で適切な競争環境を作り、従業員のポテンシャルを最大化
  3. 3.人的資本経営の事例3 伊藤忠商事株式会社
    1. 3.1.人材戦略の目標に対する施策と成果を開示
    2. 3.2. 「労働生産性」に関する数値を社外に発信
    3. 3.3.人的資本投資に関する施策とKPIを体系化
  4. 4.人的資本経営の事例4 オムロン株式会社
    1. 4.1.従業員自ら目標を立て企業理念を浸透
    2. 4.2.グローバルリーダーの人財育成、現地化
    3. 4.3.多様・多才な人財を支援する環境を整備
      1. 4.3.1.従業員エンゲージメントサーベイ VOICEの導入
      2. 4.3.2.グローバル人事情報マネジメントシステムの導入
  5. 5.人的資本経営の事例5 SOMPOホールディングス株式会社
    1. 5.1.意識改革による「MYパーパス」の浸透
    2. 5.2.パーパス浸透と人材戦略の連動
    3. 5.3.人材戦略の実現に向けた効果的な仕掛け
  6. 6.人的資本経営の事例6 キリンホールディングス株式会社
    1. 6.1.経営戦略と人財戦略の連動強化
    2. 6.2.CSV経営の推進により従業員エンゲージメントを最大化
    3. 6.3.多様性とイノベーションにより組織風土の変革
  7. 7.人的資本経営の事例7 KDDI株式会社
    1. 7.1.事業経験者の人事部門の人材登用と経営層・各事業部門と人事との対話を強化
    2. 7.2.人材ポートフォリオを活用し、適所適材を実現
    3. 7.3.新卒、キャリア採用を拡充し、専門人材の獲得を強化
  8. 8.人的資本経営の事例8 株式会社丸井グループ
    1. 8.1.「手挙げ」文化の推進
    2. 8.2.多様な知の融合
    3. 8.3.心理的安全性の確保
  9. 9.人的資本経営の事例9 株式会社LIXIL
    1. 9.1.インクルージョンへの経営の強いコミット
    2. 9.2.体系的な育成プログラムで次世代リーダーを育成
    3. 9.3.従業員のキャリア自律の支援
  10. 10.人的資本経営の事例から見る取り組みポイント
    1. 10.1.自社の目的に合わせて取り組み方を検討する
    2. 10.2.経営戦略と人材戦略を紐付ける
    3. 10.3.KPIを設定してモニタリングする
  11. 11.人的資本経営の実現には人材育成が不可欠!LDcubeなら理想的な学習環境を整備
  12. 12.まとめ

人的資本経営の事例1 旭化成株式会社

旭化成株式会社画像

出典:旭化成株式会社

旭化成株式会社は化学製品を製造する会社で、あらゆる産業への素材提供や住宅、ヘルスケア領域などに対する製造・販売事業を行っています。

旭化成株式会社では人的資本経営の実現に向け、以下3つの施策を実行しています。

  • 経営戦略の実現に必要な人財の確保
  • 独自のエンゲージメント調査を毎年実施
  • 高度専門人財について定義し、必要人数を数値目標(KPI)として設定

順番に解説します。

経営戦略の実現に必要な人財の確保

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-


5S

採用や人材配置、
人材育成の最適化

知・経験の
多様性

リスキリング・
学び直し

従業員
エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
-
-
-

多様な事業を展開する旭化成株式会社は、人的資本経営を実現するにあたって必要な人財の数と質を見直し、人材確保を目指しました。

具体的には採用すべき人財の質と量を毎年1回全社で洗い出し、新卒採用やキャリア採用、社内の人財育成を計画的に実施しています。

採用や育成で人財を確保できない場合はM&A(合併と買収)の実施や、スタートアップ企業への投資などを行い、ほかの企業を通じて獲得します。

また2019年~始まったコロナの流行時期には現状を見つめながら、どのようにしたら従業員が働きやすくなり活躍できるのか、働き方の改革を図りました。

人財戦略の概要:これからは「人」によるチーム旭化成の進化へ

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」をもとに筆者が作成

旭化成株式会社は従業員が柔軟かつ効率的に働けるように以下のような施策を取り入れ、結果的に生産性を向上させました。

  • 在宅の推進
  • コアフレックス制の導入
  • ITツールの活用
  • 会社が「サテライトオフィス」を契約

現在では個の力をどれだけ旭化成へ活かせる状況を作れるか、成長や挑戦をできるように立場にとらわれない意見交換やグループワークを積極的に取り入れています。

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」

独自のエンゲージメント調査を毎年実施

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-
-


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
-
-
-

旭化成株式会社は独自のエンゲージメント調査を毎年実施し、職場環境や従業員の意欲などを把握して、人的資本経営の実現を目指しています。

2020年度からは以下のKSA(活力と成長アセスメント)を導入して、従業員意識調査の内容を見直し、個人と組織の成長を図ることにしました。

KSA(活力と成長アセスメント)の仕組み

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」をもとに筆者が作成

KSA(活力と成長アセスメント)によって測定できる項目

職場環境

活力

成長への行動

  • 上司の働きかけ
  • 仕事の人間関係
  • 創意工夫への奨励
  • 多様性の尊重
  • 率直な発言の認容
  • 前向きな姿勢の維持
    例)
    自信
    逆境を乗り越える力
    目標への道筋を立てる力
  • 仕事への意欲
  • 経験学習
  • 組織への貢献
  • 問題の解決や改善
  • 自らの仕事への主体性

KSAによって測定できる項目は、職場環境と活力、成長への行動の3つの指標です。

各指標の影響度合いを確認しながら、以下に役立てます。

  • これまでの取り組みの成果を「見える化」する
  • 現在の組織の状態について把握し、次の取り組みへ役立てる

KSAの回答はマネジャーが把握し、活力や職場環境の現状を認識したうえで、職場で共有します。

職場のメンバー間での対話を通じながら課題解決へ取り組み、従業員個人と組織がそれぞれ自立できるよう「成長」を目指せる仕組みが作られています。

実際にKSAに取り組んでみた結果、管理職からは

「KSAの結果をもとに部門メンバーと議論できたので、全員で職場の活力と成長について考える時間をとれた」

「自分が把握していない各組織の状況がわかり、KSAで弱みと記載されていた部分については新たな気付きになった」

といった声が挙がっており、組織の現状を把握したうえで改善につなげられています。

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」

高度専門人財について定義し、必要人数を数値目標(KPI)として設定

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
-

旭化成株式会社は高度専門人財について「高い専門性をもち、部門を問わず活躍が期待される人財」と定義し、必要人数を数値目標(KPI)として設定して毎年人数を増加させています。

高度専門職人数

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」をもとに筆者が作成

「高度専門職」の役割は以下のように区分を分けて明確化し、任命した従業員を目標をもって育成することで、最終的に新事業創出や事業強化につなげます。

区分

処遇

役割

エグゼクティブ
フェロー

新しい技術領域の創出や拡大をした実績者

執行役員相当

  • トップ専門職として技術や専門知識を備え、新たな事業創出や既存事業の強化に積極的に貢献する。 
  • 当該領域の人財育成を行う

プリンシパル
エキスパート

各技術領域におけるトップ技術者

理事
もしくは
上席理事相当

シニアフェロー

定年後にエグゼクティブフェロー、プリンシパルエキスパートを退任した後も役割を担う者

理事~
執行役員相当処遇

リードエキスパート

プリンシパルエキスパートに次ぐ専門職
(プリンシパルエキスパートの候補者)

-
  • 技術や専門知識を備え、新たな事業創出や既存事業の強化に積極的に貢献する。

エキスパート

リードエキスパートに次ぐ専門職
(リードエキスパートの候補者)

-

高度専門職には一時金の支給や、部課長~執行役員クラスの処遇にすることも、優秀な外部人財を獲得しやすくする仕組みのひとつです。

自社の事業領域ごとに高度専門職の後継者育成計画を策定するので、各分野の専門家を多く育成・獲得でき、競争力を高めています。

高度専門人財におけるKPI達成によって、旭化成株式会社は異なる領域の従業員がもつ力を結集させられるようになり、着実に企業価値を向上させているといえるでしょう。

最近では高度なDX人財を育成するために掲げたKPIである、230名のデジタルプロフェッショナル人財の育成を見事に達成し、ビジネスモデル変革や価値創造へ向けたDXの推進を図っています。

参考:旭化成株式会社「旭化成レポート2021」

人的資本経営の事例2 アステラス製薬株式会社

アステラス画像

出典:アステラス製薬株式会社

アステラス製薬株式会社は医薬品の製造、販売、輸出入業を行う会社です。

以下のポイントを押さえて、アステラス製薬株式会社は人的資本経営の実現に向けて動きました。

  • 人事を経営層や事業部門と共に戦略を実現するパートナー化
  • 人材に関する目標を明確化してハイパフォーマンスを実現
  • 社内で適切な競争環境を作り、従業員のポテンシャルを最大化

順番に解説します。

人事を経営層や事業部門と共に戦略を実現するパートナー化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
-
-
-

アステラス製薬株式会社は人的資本経営を進めるにあたって、これまでの人事部門の見直しを図り、経営層や事業部門と共に戦略を実現するパートナー化を促進しました。

具体的な施策は以下2つです。

  • 人事部門の役割の見直し
  • データ分析にもとづいた人事の意思決定・戦略へのアプローチ

例えば、採用や育成、評価などの人事に関するデータをダッシュボードにまとめ、経営層の意思決定や課題解決が必要なときに活用し、期待する人事運営ができるようにしています。

またピープルアナリティクスのスキルをもつ人材を増やして、従業員の人材分析の高度化を図り、人事に役立てています。

ピープルアナリティクス:従業員の属性や行動などのデータを用いて、人事領域の課題解決や意思決定を支援する手法

アステラス製薬株式会社は「人」の力を活かせる組織にするために、経営層や事業部門から独立させるのではなく、人事をパートナー化した体制を作り上げて人的資本経営へと行動しました。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P11」

人材に関する目標を明確化してハイパフォーマンスを実現

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
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人的資本経営に向けアステラス製薬株式会社は、人材に関する目標を明確化してハイパフォーマンスを実現できるようにしました。

具体的には「経営計画2021」において以下のような目標を設定し、企業文化や考え方などの浸透を図りました。

アステラス製薬株式会社「経営計画2021」の3つの目標

参考:アステラス製薬株式会社「「経営計画2021」の3つの目標の解説」をもとに筆者が作成

上記の目標を要約すると以下のようなイメージとなり、会社内で共通の目標をもって達成していくことが掲げられています。

  • リスクを想定しながら、成果の追求や新しい価値・アイデアを生み出せる環境を構築する
  • 目的をもって人材の採用や育成をするとともに、企業方針を一貫させ、会社の成長につなげられるよう行動できる環境の構築につなげる
  • 従業員が共通の目標に向かって協力し、組織として戦略を強く進める環境を構築する

具体的なアクションの例を挙げると、アステラス製薬株式会社には社長と従業員が直接対話する「Dialogue with CEO」があります。

2022年2月末時点で約120人の従業員がリモートで参加し、意見や質問を投げかける機会が設けられました。

他にもトップマネジメントやリーダーが従業員の質問に答える「Ask Me Anything」があり、会社のトップだけでなく従業員一人一人が組織として、戦略を推し進められる環境が整えられています。

1人の人間やカリスマ的なリーダーがすべてを決めて動くのではなく、アステラス製薬株式会社は社内で歩調を合わせながら一人一人チャレンジできる環境が整えられています。

参考:アステラス製薬株式会社「「経営計画2021」の3つの目標の解説」

社内で適切な競争環境を作り、従業員のポテンシャルを最大化

アステラス製薬株式会社は人的資本経営に向け、社内で適切な競争環境を作り、従業員のポテンシャルを最大化させました。

具体的には以下2つです。

  • 国籍を問うことなく優秀な経営人材を登用
  • 社内公募制度による社内転職

アステラス製薬株式会社では、経営ポジションへの人材に国籍は関係ありません。
能力さえあれば経営幹部となるチャンスがあり、実際に数多くの外国籍の経営者が活躍しています。

外国籍の経営陣の数

15人中6人

56人中29人

エグゼクティブ・コミッティ
(経営上の重要案件を協議する機関)

部門長

そして2020年からは個人の意思・能力・適性を考慮したキャリア形成につながるよう、社内公募制度を導入して社内転職を可能にしました。

世界中の社内ポジションを閲覧でき、興味があれば応募できるシステムなので、自らのキャリア希望に応じて世界規模で活動できる環境が整えられたのです。

もちろん応募すればすべて通るわけではありませんが、ポジションごとに求められるスキルや能力を明確にしています。

そのため、従業員自身で自身のキャリアを描いたうえで、目標に向かって取り組めます。

従業員一人一人がもつ力を存分に発揮できる環境を整えることで、研究や開発、製造、営業などアステラス製薬株式会社のすべての部門が魅力的に活動できるようにしました。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P13」

人的資本経営の事例3 伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事画像

出典:伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社は卸売小売業を担う企業で、繊維や資源、各種製品等の国内生産、輸出入などを行っています。

人的資本経営の実現に向けて、伊藤忠商事株式会社は以下の施策を取り入れました。

  • 人材戦略の目標に対する施策と成果を開示
  • 「労働生産性」に関する数値を社外に発信
  • 人的資本投資に関するKPIと施策を体系化

順番に解説します。

人材戦略の目標に対する施策と成果を開示

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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人的資本経営の実現に向け、人材戦略の目標に対する施策と成果を開示してステークホルダーへの理解を示しています。

ステークホルダー:株主や従業員、顧客など企業や組織の活動によって影響を受ける人

具体的な施策は、以下がわかりやすいでしょう。

厳しくとも働きがいのある会社(現場主義徹底・「三方よし」体現・多様性重視・「能力発揮」最大化)

参考:伊藤忠商事株式会社「企業価値向上に繋がる人材戦略」をもとに筆者が作成

伊藤忠商事株式会社は上記の図のように人材戦略への目標を6つ設定し、それぞれに対応するINPUT(施策)とOUTCOME(成果)を開示しています。

たとえば「経営参画意識の向上」では、以下2つのINPUT(施策)とOUTCOME(成果)が開示されています。

経営参画意識の向上

INPUT

OUTCOME

従業員持株会への参加促進

・2010年度55.3%

・2021年度99.2%

株式報奨制度

従業員一人ひとりの経営参画意識の向上

参考:伊藤忠商事株式会社「人材戦略」

2010年度は従業員持株会への加入率55.3%でしたが、2021年度には43.9%増えた99.2%という結果となり、多くの従業員が株主との企業価値を共有できるように動けたことを示しています。

また株式報奨制度は従業員持株会に加入している従業員に対して、業績に応じて特別奨励金を支給する制度です。

従業員の経営参画意識をさらに高めて継続的な勤務を促すとともに、中長期的な企業価値の向上を図るために整備しました。

このように伊藤忠商事株式会社の人材戦略では、各成果項目に対してどれだけ実現できているかが一目でわかり、ステークホルダーの理解を促しやすくなっています。

参考:伊藤忠商事株式会社「企業価値向上に繋がる人材戦略」

 「労働生産性」に関する数値を社外に発信

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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伊藤忠商事株式会社では人的資本経営の実現に向け、「労働生産性」に関する数値を社外に発信しています。

高い能力をもつ従業員一人一人の個の力を最大限引き出すことを経営戦略とし、従業員数に対する純利益を労働生産性の指標として開示しています。

労働生産性の向上

参考:伊藤忠商事株式会社「Brand-new Deal」をもとに筆者が作成

労働生産性の向上を実現させることで、結果的に社外からの評価を高めることに成功しています。

総合レポート2022「Brand-new Deal」では、経済産業省と(株)東京証券取引所が共同で実施する女性活躍推進や健康経営に関する評価制度において、高い評価を得たことを示しました。

  • 2021年度の女性活躍推進に優れた上場企業として「令和3年度なでしこ銘柄」に選定
  • 優れた健康経営を実践している企業として、6年連続「健康経営優良法人ホワイト500」に選定

「労働生産性」に関する数値を社外に発信しつづけることで、伊藤忠商事株式会社は企業価値の拡大につなげています。

人的資本投資に関する施策とKPIを体系化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
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伊藤忠商事株式会社は、人的資本投資に関する施策とKPIを体系化して効果を把握し、継続的な見直しを図っています。

以下は、伊藤忠商事株式会社の人的資本の拡充策例とKPI例です。

人的資本の拡充策例

  • 企業理念の改訂や行動指針の設定
  • 朝型勤務制度や在宅勤務制度の導入
  • 伊藤忠健康憲章やがんとの両立支援などの健康経営)の推進
  • エンゲージメント調査による定期的なレビュー・改善
  • 「女性活躍推進委員会」を取締役会の諮問委員会として設置

KPI例

  • 従業員の労働生産性
  • 月平均残業時間
  • 年次有給休暇取得率
  • 従業員1人当たりの人材育成投資額
  • 中国語有資格者数
  • エンゲージメント調査のスコア
  • 就職活動における学生の評価
  • 就職人気企業ランキング​​​​​

例えば、朝型勤務制度や在宅勤務制度の導入によって、働きやすさの改善を図ったとします。

このとき従業員の労働生産性やエンゲージメント調査のスコアの変化などのKPIによって、人的資本に対してどのような効果があったのか把握するしくみです。

効果がなければそのままの施策として放置するのではなく、見直しを続け、人的資本の達成に向けて着実に前進しています。

参考:伊藤忠商事株式会社「Brand-new Deal」

人的資本経営の事例4 オムロン株式会社

オムロン画像

出典:オムロン株式会社

オムロン株式会社は製造業として制御機器事業、ヘルスケア事業、社会システム事業、電子部品事業などを幅広く手がけています。

人的資本経営の実現に向け、オムロン株式会社は以下を実行しました。

  • 従業員自ら目標を立て企業理念を浸透
  • グローバルリーダーの人財育成、現地化
  • 多様・多才な人財を支援する環境を整備

順番に解説します。

従業員自ら目標を立て企業理念を浸透

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-
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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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オムロン株式会社は、従業員自ら目標を立てて企業理念の浸透を図りました。

具体的には、TOGA(The OMRON Global Awards)を実施し、従業員自らが社会的課題の解決に向けた目標を立てます。

このTOGAとは企業理念の実践を全社で共有し、全従業員へ浸透させながら企業文化への定着を図る取り組みです。

企業理念の実践を皆で共有して共感と共鳴の輪につなげたいとの思いで、当時のオムロン株式会社 代表取締役社長 CEO 山田義仁氏が始めました。

世界中の全社で取り組まれ、以下のようなテーマがこれまで発表されました。

TOGAには年間を通じてチームで取り組み、日々の仕事や職場における企業理念をどのように実践したのか京都で開催されるグローバル大会で紹介します。

2023年9月21日開催の「第11回 TOGAグローバル大会」では、グローバル6,930テーマ、のべ50,071人の中からゴールド・特別賞18テーマが選ばれました。

15,000人以上の視聴・参加を実現させ、ほかのチームの取り組みや審査の評価などを称え合いながら、企業理念の浸透につなげています。

グローバルリーダーの人財育成、現地化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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オムロン株式会社は、グローバルリーダーの人財育成、現地化による人的資本経営の実現を図っています。

グローバルリーダーとは、企業理念を体現して組織を牽引していく人材です。

オムロングループの経営と事業を牽引する、最重要執行ポジションとして「グローバルコアポジション」を約200用意し、そのポジションをグローバルリーダーが担います。

グローバルリーダー増やすことで、効率的に企業理念の実践を進められる仕組みです。

ただしグローバルリーダーを約200ある、各グローバルコアポジションへ適所適財の人財配置をするには、人数を増やす必要があります。

そこで以下のようにサクセッサー(将来の経営を担う可能性のある人材)や、次世代リーダー人財を育成しながらグローバルリーダーを担える人材を発掘しています。

コアポジションと人財プール

参考:オムロン株式会社「統合レポート2021」をもとに筆者が作成

また現地の感覚にもとづいた意思決定を迅速に進めるには、グローバルリーダーが現地の人材であるほど効率的です。

オムロン株式会社はグローバルリーダーの数を増やすことに注力した結果、海外のコアポジションに占める現地化比率の向上にも成功し、2020年度には目標の66%を大きく上回る75%となりました。

海外コアポジションに占める現地化比率の推移/2020年度実績:2020年度には目標の66%を大きく上回る75%となりました

参考:オムロン株式会社「統合レポート2021」をもとに筆者が作成

オムロン株式会社は企業理念を体現するグローバルリーダーの育成・登用の仕組みを整え、現地化を進めることによって、世界中で企業理念の実践を加速させています。

多様・多才な人財を支援する環境を整備

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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オムロン株式会社では、多様・多才な人財を支援する環境を整備し、会社の持続的な成長につなげています。

具体的には以下2つです。

  • 従業員エンゲージメントサーベイ VOICEの導入
  • グローバル人事情報マネジメントシステムの導入

順番に解説します。

従業員エンゲージメントサーベイ VOICEの導入

「従業員エンゲージメントサーベイ VOICE」とは経営陣が全従業員の生の声を聴く取り組みです。

持続的に会社を発展していくには、経営陣が自社の魅力度の測定や経営課題を把握・特定し、課題解決のためのアクションを起こさなければなりません。

2018年度からは業績成長と企業の魅力度が統計的に検証されている、「持続可能なエンゲージメント指標(SEI)」という項目も追加しました。

SEIの集計分析された各スコアと従業員の生の声であるフリーコメントをもとに、研究課題の把握や特定を行い、解決に向けて議論を重ねています。

参考:オムロン株式会社「総合レポート2021 企業理念経営を支える人財マネジメント」

グローバル人事情報マネジメントシステムの導入

グローバル人事情報マネジメントシステムは、dシステムです。

グローバル人事情報マネジメントシステムを導入することで、企業理念の実践に取り組む最適かつ最高のチーム作りに役立ちます。

以下のように、グローバル人事情報マネジメントシステムを活用すれば、将来への期待・要求に対する打ち手を決められるのです。

グローバル人事情報マネジメントシステムを活用した、将来への期待・要求に対する打ち手

参考:オムロン株式会社「統合レポート2021」をもとに筆者が作成

オムロン株式会社は、2021年度からグローバル人事情報マネジメントシステムの順次運用を開始しました。

2025年現在では事業戦略にもとづく最適なチーム編制を作りながら、従業員一人ひとりが描くキャリア実現への機会を提供しています。

参考:オムロン株式会社「総合レポート2021 企業理念経営を支える人財マネジメント」

人的資本経営の事例5 SOMPOホールディングス株式会社

SOMPOのパーパス

出典:SOMPOホールディングス株式会社

SOMPOホールディングス株式会社は、保険会社や生命保険会社などのグループ会社の経営管理を行う会社です。

以下の施策を取り入れて、SOMPOホールディングス株式会社は人的資本経営の実現を図りました。

  • 意識改革による「MYパーパス」の浸透
  • パーパス浸透と人材戦略の連動
  • 人材戦略の実現に向けた効果的な仕掛け

順番に解説します。

意識改革による「MYパーパス」の浸透

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
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-

SOMPOホールディングス株式会社は従業員の意識改革を図り、「MYパーパス」を浸透させることを人材戦略の基盤として実行しています。

そもそも「パーパス」とは目的や目標、意図などを意味し、SOMPOホールディングス株式会社では

「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」

としています。

そして「MYパーパス」は以下のように従業員一人一人の自分の人生におけるパーパスであり、自らを突き動かす志です。

MYパーパス=自らを突き動かすもの=志 自分は何のために、なぜ生きるのか?「人生の目的」「働く意義」

参考:消費者庁「MYパーパスを活用したSOMPOのパーパス経営」をもとに筆者が作成

まずSOMPOホールディングス株式会社のパーパスを浸透させるために、会社のなかに自分がいるのではなく、自分の人生に会社がいるという意識変革を行っています。

MYパーパスを起点とした価値創造(会社のなかに自分がいるのではなく、自分の人生に会社がいる)

参考:SOMPOホールディングス株式会社「MYパーパスを起点とした価値創造」をもとに筆者が作成

さらに従業員へ以下のような、「MYパーパス」の策定を促しています。

  • 自らを突き動かすものは何か
  • 自分がどうありたいのか

MYパーパス実現へ向けて従業員自らで動けば自立や自走につながり、結果的にエンゲージメント向上を見込めます。

SOMPOホールディングス株式会社は「MYパーパス」を軸とし、抜本的な意識改革を図ることが、人材戦略の基盤になるとして実行しています。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P51」

パーパス浸透と人材戦略の連動

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-
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SOMPOホールディングス株式会社はパーパス浸透と人材戦略の連動により、人的資本経営の実現に向けて動いています。

具体的には、以下3つの施策でパーパス浸透に向けた体系的な運用を行います。

SOMPOホールディングス株式会社のパーパス浸透に向けた施策

トップからの発信

タウンホールミーティングにて、CEO自らがパーパス実現に向けて変革フェーズに則したメッセージを発信する

現場レベルでの取り組み実施

上司と部下の対話をもとにパーパスを自分事化して浸透を図る

エンゲージメントサーベイの
一体的な推進

エンゲージメント調査を行い浸透度を調査する

この施策のなかでも現場レベルでの取り組みに「MYパーパス1on1」の推進があります。
「MYパーパス1on1」ではMYパーパスを中心におき、上司と対話をしながら深掘りをしていきます。

研修を受け、コーチング技術を習得している上司と対話を進められるので建設的な対話をしながら、MYパーパスのなかに仕事を落とし込んで自立的な働き方につなげられる仕組みです。

結果的に会社のパーパスを浸透させるだけでなく、SOMPOホールディングス株式会社の3つのコア・バリューを共有する人材集団の実現にもつなげています。

SOMPOホールディングス株式会社のパーパス浸透に向けた施策

ミッション・ドリブン

使命感とやりがいを感じながら当事者意識をもって働く

プロフェッショナリズム

高い専門性や価値基準や考え方にもとづき、自分で考えて行動し、結果を出す

ダイバーシティ&インクルージョン

多様性の重要性を理解して新たな価値創造に結びつける

※コア・バリュー:企業や組織が最も重視する価値観や信条、行動規範

パーパスをただ浸透させるだけでなく、企業としてこうあって欲しいという人材へ成長させているといえるでしょう。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P52」

人材戦略の実現に向けた効果的な仕掛け

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度


5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

SOMPOホールディングス株式会社は効果的な仕掛けを用意し、人材戦略の実現に向けて動いています。

具体的には、以下2つです。

  • ジョブ型人事制度の導入
  • デジタル・ワークシフトの導入

ジョブ型人事制度は、従来の会社が従業員の人事を決めるのではなく、従業員自らがキャリアを選択して動けるような制度です。

会社主導による人事異動は原則しないことで、自律したキャリア形成の促進を図っています。

またデジタルワークシフトは、2021年度から実施しているデジタルに対応する人材を育成する研修制度です。

デジタルを活用したビジネス展開が加速しており、全従業員をDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで必要な人材であると、SOMPOホールディングス株式会社は考えています。

そのためデジタルワークシフトでは全従業員を以下3つの区分に分類し、グループ全体のDXを加速させる仕組みを整えています。

人材分類

役割

対象従業員

DX企画人材

デジタルを活用した施策を企画。
DX推進の核として組織を牽引する。

本社部門

DX専門人材

DX企画人材が立案した企画を実現させる。

デジタル/新規事業部門

DX活用人材

DX専門人材により実現した企画を活用する

現場部門

DX企画人材が施策を立案して、DX専門人材が実現する。
そして現場のDX活用人材がお客さまに対して効果的に活用するのです。

SOMPOホールディングス株式会社は効果的な仕掛けを適用しながら従来のやり方を変え、従業員全員が自分の考えや役割をもって働ける環境を作っています。

結果的にSOMPOホールディングス株式会社のパーパスの実現につながるよう、企業文化の変革に取り組んでいます。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P53」

人的資本経営の事例6 キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス

出典:キリンホールディングス

キリンホールディングス株式会社は、ビールを中心とした飲料・食品・医薬事業を展開する総合企業です。

以下の施策を取り入れて、キリンホールディングス株式会社は人的資本経営の実現を図りました。

  • 経営戦略と人財戦略の連動強化
  • CSV経営の推進により従業員エンゲージメントを最大化
  • 多様性とイノベーションにより組織風土の変革

順番に解説します。

経営戦略と人財戦略の連動強化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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キリンホールディングス株式会社は、これまでの食と医療の分野での強みを活かし、新たに「ヘルスサイエンス」分野への参入を決定しました。これに伴い、専門的な知識と経験を持つ人材の採用に力を入れることにしました。

人的資本経営の実現に向けた検討会(経営戦略・人財戦略)

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P31」をもとに筆者が作成

このように、経営戦略の意思決定と人材戦略の連動を即座に連携・強化することで、
キャリア採用において以下のような成果を得ることができました。

得られた成果
全採用者数に占める割合は2017年度の約16%に対し、2020年度には約40%に上昇


CSV経営の推進により従業員エンゲージメントを最大化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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キリンホールディングス株式会社では、従業員エンゲージメントを最大化するために、CSV経営の推進に取り組んでいます。

CSV(Creating Shared Value)経営とは、社会課題を解決することで企業の経済的価値の向上を図る経営のことで、同社はこの考え方を経営の基軸にしています。

具体的な取り組みとしては、多様性推進・働きがい改革・健康経営の大きく3つの分類において、各種環境を整備しています。

新たな価値の創造:従業員エンゲージメントの向上(多様性推進・働きがい改革・健康経営)

参考:キリンホールディングス「キリンホールディングス事例発表」をもとに筆者が作成

たとえば、働きがい改革の以下の取り組みによって、会社と社員の成長へと繋げています。

働きがい改革の取り組み

  • 従来の「働き方改革(How)」から、意義・目的(Why)に基づく仕事(What)の見直し
  • 「加速すること」「変革すること」「やめること」「縮小すること」の4つの観点で仕事を見直すサイクルを継続的に回し、仕事の体験価値を高める

健康経営の観点からは、キリンホールディングスならではの観点から、以下のような取り組みを実施しています。

健康経営の取り組み

  • 安全衛生活動(定期健診・ストレスチェック・長時間労働健康障害防止策など)の実施
  • 免疫について正しい知識を習得し、健康的な身体につながる生活習慣を従業員及びその家族に奨励する、「免疫ケア習慣キャンペーン」の実施 など

ただ健康や安全を推奨するだけではなく、ストレスチェックなどの結果を踏まえた組織分析・アクションプランの実施、免疫維持のため「プラズマ乳酸菌」の配布など、ダイレクトに従業員の健康に繋がる施策を実施しています。

また、特徴的なのは、従業員のエンゲージメントスコアを重要成果指標として設定し、役員報酬にもエンゲージメントスコアを反映させている点でしょう。

長期経営構想へのCSV経営の位置付け、CSVパーパスの設定により、従業員にもCSV経営の考え方が浸透しています。

多様性とイノベーションにより組織風土の変革

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

-
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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-

キリンホールディングスでは、イノベーション創出のための多様な人財を活用し、さまざまなイノベーションによる組織風土の変革にも力を入れています。

6-2. CSV経営の推進により従業員エンゲージメントを最大化で紹介した従業員エンゲージメントの向上の取り組みの一つとして、多様性の推進が挙げられましたが、正しく女性や若手の活躍推進が、イノベーションに多大なる貢献をしています。

女性社員の活躍を推進する具体的な取り組みには、以下のようなものがあります。

  • 女性リーダーの育成「仕事を通じた実践」×「研修プログラム」
  • 女性社員がライフイベント前に職務経験を積む「早回しのキャリア形成」
  • 女性社員がリーダーを目指すためのスキルと機会を醸成する「キリンウィメンズカレッジ」

など

これらの取り組みにより、女性リーダーの比率は2013年度比で2倍以上に上昇しただけでなく、女性社員の活躍により、

  • 世界最高のワイナリーを選出する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード2020」にて世界第30位、ベストアジアに選出されるほどのワイナリーの立ち上げ
  • キリン全体を動かすほどのビッグプロジェクトになった「クラフトビール戦略」の始動

など、数々の価値を創出しています。

また、若手社員の活躍を推進する例としては、企業内大学「キリンアカデミア」の立ち上げがあげられるでしょう。

「キリンで挑戦志向の風土を作りたい」というビジョンを掲げて、2019年から非公式の有志活動として始まったキリンアカデミアは、

  • 社内外のゲストによるトークセッション
  • 新規事業立ち上げワークショップ
  • 新入社員を対象としたメンタリング

など、さまざまな企画を実施し、「挑戦する風土」に主体的に取り組み、自ら学ぶ風土への変革をもたらしています。

参考:キリンホールディングス 事例発表

人的資本経営の事例7 KDDI株式会社

KDDI.

出典:KDDI

KDDI株式会社は、auブランドの携帯通信を中心に、インターネット、IoT、金融など多角的な事業を展開する総合通信企業です。

「人財ファースト企業への変革」を経営戦略の中核に据えているKDDIの人的資本経営の主な取り組み内容は、以下の3つです。

  • 事業経験者の人事部門の人材登用と経営層・各事業部門と人事との対話を強化
  • 人材ポートフォリオを活用し、適所適材を実現
  • 新卒、キャリア採用を拡充し、専門人材の獲得を強化

順番に解説します。

事業経験者の人事部門の人材登用と経営層・各事業部門と人事との対話を強化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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KDDIの人的資本経営の取り組みの1つに、営業部門で約20年という豊富な業務経験を持つ人材を、人事部門トップに登用に登用したことがあげられます。

KDDIでは、人的資本経営の推進者は「人事部」だと認識し、経営戦略と人事戦略の連動を推進する部門とし、人事部門の予算を年々拡充しています。

「指示されたことをミスなく、そつなくこなす」ような従来の管理部門とは一線を画す体制で、経営層や各事業部門と密接に連携しています。

経営戦略と人事戦略を連動するために実施していることの例

  • 人事本部長と経営戦略本部長の1on1を常時実施
  • 人事部とファイナンス部門、経営管理部門との定期的なミーティング
  • 経営戦略に関わる議論のばには必ず人事部が参加 など

これらの密な連携が、経営戦略を踏まえた人事施策の実施や、経営層・事業部門への人事戦略の浸透を可能にしています。

参考:
パーソル総合研究所「~KDDIの人的資本経営~投資家との対話は学びの宝庫 人事は投資家と積極的に相対しよう」

人材ポートフォリオを活用し、適所適材を実現

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

-

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KDDIでは、社員のスキルや経験をデジタルプラットフォームにまとめ、人財ポートフォリオを作成しています。

この人財ポートフォリオを踏まえ、事業ニーズに応じた多様な人材を採用・育成・適切に配置することにより、事業戦略に沿った適所適材を実現しています。

「成果の最大化」と「個人の能力開発」を目的とした人事評価制度も取り入れており、

  • 結果に対する「成果・挑戦評価」
  • 現在の能力(課題解決/コミュニケーション/専門性)に対する「能力評価」
  • それらの結果を自動プロットし未来への期待を予測する「人財レビュー」

による評価を実施しています。

成果や挑戦評価は1on1による日々の上司との対話、能力評価は360度評価+上司評価によって行われ、常に事業戦略と社員個々人とのギャップが可視化されています。

ギャップが可視化されるだけでなく、全社員に対して、研修メニューの全体像を見える化した上で、全部門共通のポータブルスキルや専門スキルを、各社員が望むタイミングで学習できる環境を構築し、自律的な成長を促す環境が整えられています。

参考:KDDI「KDDIのキャリア採用(中途採用)でよく聞かれる質問」

新卒、キャリア採用を拡充し、専門人材の獲得を強化

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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2020年8月から「ジョブ型人事制度」を導入しているKDDIでは、高い専門性を持つ社員の獲得と従業員エンゲージメント向上のために、新卒採用・キャリア採用人数を拡充し、約10年で10倍にし、専門人材を増強させました。

具体的には、

  • 学生の意向に沿ったコース別の新卒採用
  • 通年採用
  • 入社を開始高い専門性を持つ人材の採用
  • 初期配属領域を確約するWILLコースの導入
  • 初期配属を確約しないOPENコース(業務系・技術系)と併せて実施

など、多様な就学体系に合わせ、入社時期も柔軟に対応しています。

これらの取り組みにより、2023年時点で全社員の25%がキャリア採用者、特定グループでは過半数を占めるまでになりました。この数字は、年々増えているそうです。

参考:
KDDI「人財ファースト企業への変革」
KDDI「KDDIのキャリア採用(中途採用)でよく聞かれる質問」

人的資本経営の事例8 株式会社丸井グループ

丸井画像

出典:丸井グループ

株式会社丸井グループは、ファッションビルの丸井やクレジットカード事業を行うエポスカードなどを傘下に持つ、小売事業、フィンテック事業を軸に事業展開する企業です。

「人の成長=企業の成長」を企業理念に掲げる株式会社丸井グループが取り組む人的資本経営の主な特徴は、以下の通りです。

  • 「手挙げ」文化の推進
  • 多様な知の融合
  • 心理的安全性の確保

順番に解説します。

「手挙げ」文化の推進

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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丸井グループでは、「有形投資」から「無形投資」への長期的シフトを実施する中で、10年以上の歳月をかけて、「手挙げ」文化の醸成を行いました。

手挙げで参画できる取り組み

出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P63」

手挙げ文化の狙いは、イノベーションの創出に向けた自律的な組織作りを推進することです。

企業理念に関する対話をはじめ、公認プロジェクトや研修等への参加は、全て社員の自主性に基づく手挙げ方式に変更。スタートアップへの出向や新規事業への参画も手挙げを基盤とし、社員一人ひとりの自主性を促し、成長を支援しています。

2023年3月期には、自ら手を挙げて何らかの取り組みに参画した社員の割合は85%にものぼるようになったのだそうです。

参考:Ambitions「社員の”手挙げ”が、企業文化をつくる」

多様な知の融合

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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丸井グループでは、グループ間職種変更異動、スタートアップとの共創などを通じて、グループ内外で多様な知・経験の融合を実現しています。

同社の特徴的な取り組みのひとつが、社員の希望に基づく「グループ間職種変更異動」でしょう。

実は、丸井グループは、小売やフィンテックに加え、IT、物流、住宅関連、証券、CVCなど多様な事業を展開しています。

グループ会社間での異動を通じて、社員一人ひとりの成長を促すとともに、多様な事業を経験したメンバーでチームを構成。これにより、変化への対応力を高め、イノベーションを生み出せる企業を目指しています。

異動イメージ・職種変更率・異動後に成長を実感した割合.png

出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P64」

この制度の成果は数値にも表れており、2022年3月時点で社員の77%が職種変更を経験し、そのうち86%が成長を実感しています。

また、スタートアップとの共創を目的に、執行役員をチームリーダーとした大規模チームを組成している点も特徴的な取り組みでしょう。

現在201人の社員が参画する22チームによって、スタートアップとの共創が推進されています。

参考:丸井グループ「丸井グループの人的資本経営#1」

心理的安全性の確保

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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丸井グループは、多様性が活かされる組織づくりの一環として、心理的安全性を確保するため、対話のルールを策定し、対話型の企業文化への変革を進めてきました。

かつては一方通行のコミュニケーションが当たり前だったという同社も、以下のルールを明示することで、双方向の対話を重視した会議文化へと変革を遂げています。

対話のルール

  1. 安全な場宣言から始める
  2. 特に目的を定めない
  3. 結論を求めない
  4. 傾聴する
  5. 人の発言を受けて発言する
  6. 人の意見を否定しない
  7. 間隔を置いて熟成させる

言われて見ればどれも当たり前のようなことでも、意外とできていないこともあるのではないでしょうか。

丸井グループでは、こうした基本的なルールも明文化し、徹底してきたからこそ、現在では会議の場で一方通行なコミュニケーションが行われることはないそうです。

さらに、同社では、「思い込み」や「偏見」を自覚するための取り組みとして、社長・役員・管理職から一般社員までを対象に、外部講師によるアンコンシャスバイアス研修を実施しています。

また、社内横断プロジェクト「ジェンダーイクオリティプロジェクト」を発足し、性別に関係なくすべての社員が自分の可能性にチャレンジできる企業文化の実現を目指しています。その一環として、性別役割分担意識の見直し度合いなどの指標を設定・開示し、進捗を可視化。施策への反映を進めています。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P65」

人的資本経営の事例9 株式会社LIXIL

LIXIL画像

出典:LIXIL

株式会社LIXILは、住宅設備や建材を手がけ、快適な住環境を提供する住宅設備機器業界最大手の企業です。

「世界中の誰もが豊かで快適に暮らせる住まいの実現」を目指しているLIXILは、人的資本経営の取り組みにおいて、以下の点に注力しています。

  • インクルージョンへの経営の強いコミット
  • 体系的な育成プログラムで次世代リーダーを育成
  • 従業員のキャリア自律の支援

順番に解説します。

インクルージョンへの経営の強いコミット

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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LIXILは、「世界中の誰もが豊かで快適に暮らせる住まいの実現」を達成するためには、まず顧客志向を徹底し、多様な顧客に対応できる組織をつくる必要があると考えています。

そして、顧客志向の組織をつくるには「社会を反映したインクルーシブな職場環境の構築が必要」という信念をもとに、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進しています。

多様な従業員が活躍できる環境を整えることで、組織の柔軟性を高め、イノベーションを生み出す力を強化できるからです。LIXILでは、D&I戦略のもと、以下のような施策を実行しています。

  • CEO主導のD&I委員会が全社的な施策を監督
  • 人事戦略にもD&I視点を取り入れ、多様性を促進
  • 2030年までに「取締役・執行役の50%を女性に」「管理職の30%を女性に」する目標を掲げる
  • 多様な背景を持つ従業員同士のネットワークを形成
  • 執行役がERGのグローバルスポンサーとなり、活動を支援 など

現在、LIXILの取締役に占める女性の割合は約30%で、これは東証一部上場企業の中でも上位5%に入る水準です。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P75」

体系的な育成プログラムで次世代リーダーを育成

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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LIXILは、従業員の成長を加速するために体系的な育成プログラムを実施し、次世代経営幹部の育成を加速させるとともに、イノベーションを推進する企業文化を醸成しています。

これにより、将来のビジネスニーズに柔軟に対応し、競争力を強化しています。

具体的に取り組んだ施策としては、以下のようなものがあげられます。

後継者育成計画

  • 毎年、約300ポジションの後継者候補をリスト化し、育成計画を作成
  • 実力主義と経営層の多様化を意識し、事業の継続性や未来のニーズに基づいて後継者を選定

 次世代経営幹部の育成

  • 部門から推薦された候補者を選抜し、多面評価や外部アセスメントを通じて評価
  • 評価結果に基づき、ストレッチアサインメントや個別育成計画書を作成

 イノベーション研修プログラム

  • 戦略と変革に関する共通言語を浸透させるための研修プログラムを展開

2021年には、米国MBAが提唱するイノベーションの戦略的枠組みに基づいた独自の研修を実施し、研修中に生まれたアイデアの実現化の取り組みが、現在進行中です。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P76」

従業員のキャリア自律の支援

3P

経営戦略と人材戦略の連動

現在と理想のギャップの把握

企業文化への定着度

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5S

採用や人材配置、 人材育成の最適化

知・経験の 多様性

リスキリング・ 学び直し

従業員 エンゲージメント向上

柔軟な働き方の推進

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LIXILでは、従業員が起業家精神を持ち、自律的にキャリアを形成できる環境を提供し、キャリアオーナーシップを支援しています。

顧客志向に変える・キャリアを変える・働き方を変える.png

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P77」をもとに筆者が作成

革新的で差別化された製品やサービスを開発し、外部環境に左右されにくい経営プロセスを確保するためには、より機動的で起業家精神にあふれた、目的志向型の組織になる必要があります。

従業員一人ひとりが自らのキャリアを描き、成長の機会を得られるよう、LIXILでは以下の取り組みを実践しています。

Job Posting(社内公募制度)
部署ニーズに応じたさまざまなポジションを随時募集し、従業員が自分の希望に基づいたキャリア形成に挑戦できる

キャリア申告制度
年に一度、従業員が今後実現したいキャリアを申告し、それに基づいてマネージャーとの1on1を実施

副業制度の導入
従業員のニーズに応じて、社外での副業や、業務時間の20%を社内での副業に充てる制度を導入

など

これらの取り組みにより、LIXILは従業員が自らのキャリアを主体的に切り拓ける環境を整え、起業家精神を活かす組織文化を構築しています。

参考:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜実践事例集 P77」

人的資本経営の事例から見る取り組みポイント

人的資本経営のイメージ画像

ここまで、9つの企業における人的資本経営の事例を紹介しました。

最後に人的資本経営の事例から見る、取り組みへのポイントを以下3つお伝えします。

  • 自社の目的に合わせて取り組み方を検討する
  • 経営戦略と人材戦略を紐付ける
  • KPI(重要業績評価指標)を設定してモニタリングする

順番に解説します。

自社の目的に合わせて取り組み方を検討する

前提として、自社の目的に合わせて人的資本経営への取り組み方を検討してください。

紹介した事例のなかには「自社にもこれならできそう」「すぐに実践できそうだな」といったケースもあったかもしれません。

しかしただ良さそうだからといってただ同じように取り入れても、結果を得られず失敗する可能性が高まります。

なぜなら会社によって、以下のような状況が異なるからです。

  • 会社の理念
  • 規模
  • 資本
  • 提供するサービス
  • 状況

事例でもおわかりいただけるように、全社で従業員やサービスに対する考え方が異なります。

また、現段階で何を重視して取り組むべき段階なのかも違います。

たとえば今はDXを進めていきたい企業もあれば、とにかくグローバルに世界で活躍できる状況にしていきたい企業もあり、目的を明確にして進めなければ求めていた結果につながりません。

ただただ単純に各社の取り組みをマネしても、それはあくまでもその会社の目標を達成するための人的資本経営への施策です。

自社が今何を求めて人的資本経営を実現させたいのか、目的に合わせて取り組み方を検討してください。

経営戦略と人材戦略を紐付ける

人的資本経営を実現させるには、経営戦略と人材戦略を紐付けましょう。

経営戦略を実現させるために必要な人材を確保・育成することが、人的資本経営の実現につながるからです。

今回紹介した企業はすべて、経営戦略と人材戦略が連動していることをおわかりいただけたでしょう。

たとえば「2-1. 経営戦略の実現に必要な人財の確保」の事例では、経営戦略の実現に必要な人財について洗い出して、確保できる状況を整えています。

従業員が柔軟かつ効率的に働ける環境を整え、意見交換やグループワークによって個の力を自社に活かせる状況を引き出したからこそ、経営戦略を遂行できています。

ただ従業員を大事にして成長を促すだけでは、その先にある経営戦略の実行には至りません。

経営戦略と人材戦略を紐付けながら、人的資本経営を進めましょう。

以下の記事では、人的資本経営とはの実践プロセスを事例付きで紹介していますので、ぜひご覧ください。

KPIを設定してモニタリングする

人的資本経営を実現させるには、目標となる数値であるKPIを設定してモニタリングすることが大切です。

KPIを設定できれば目的達成への度合いをモニタリングしながら測れるので、やみくもに施策を実行する状況を避けられ、人材戦略実行の精度向上を期待できるからです。

またKPI達成に向けてただ動いくだけではなく、未達成の項目については議論を重ね、改良につなげられます。

たとえば「4-3. 人的資本投資に関する施策とKPIを体系化」のように、伊藤忠商事株式会社は人的資本投資に関する施策とKPIを体系化して効果を把握し、継続的な見直しを行っています。

ただただ人材戦略の施策を実行して終わり、にはならずに「どこまで達成できているのか」「現状できていない課題は何なのか」といったことをKPIから確認できるのです。

KPIの設定はできるだけシンプルでわかりやすくし、数値化やデータ化が可能な目標を定めます。

そして期限を設けることでだらだら施策を続けることのないように、達成率の向上を見込みます。

たとえば以下のような項目でKPIを設定してモニタリングしながら人的資本経営材戦略に活かし、人的資本経営の実現に向けて動きましょう。

KPIの設定項目例

  • 研修時間
  • 女性管理職比率
  • デジタル人材人数
  • リーダー人材人数
  • 中国語人材の数
  • エンゲージメントサーベイの進度


人的資本経営の実現には人材育成が不可欠!LDcubeなら理想的な学習環境を整備

LDcube画像

人的資本経営の実現には人材戦略を進めなければならず、人材育成が不可欠です。

企業理念を理解し、今後の企業成長へ向けた経営戦略を着実に実行できる人材がいなければ、人的資本経営は成り立たないからです。

LDcubeは60年以上の組織変革・人材育成の知見を活かした人材育成支援サービスを提供しており、あなたの会社にとって理想的な学習環境を整備いたします。

  • ラーニングプラットフォームの提供
  • 個人と組織に向けた教育プログラムの提案
  • アフターフォローで学習効果の定着と最大化

LDcubeでは成果につながる学習環境を提供するために、「UMU」や「Cross Knowledge」などのラーニングプラットフォームを活用しています。

ラーニングプラットフォームでできること

概要

効果的な研修運営の実施

受講生参加型の研修運営、 反転学習を取り入れた研修運営

学習の成果を見える化

受講履歴のデータの活用

キャリア採用者育成を効率化

入社時に学習すべきことをまとめ、効果的・効率的な初期教育の実施

また各企業さまとワークショップを通じて人材育成や組織開発の方向性と目的を明確化したうえで、LDcubeが個人と組織に向けた教育プログラムを提案いたします。

もちろん全社共通の教育プログラムではなくオーダーメイドでお作りし、新入社員の方から経営幹部の皆さままであらゆる階層にマッチした内容を提供するので、事業目標達成までがスピーディです。

アフターフォローは、LDcubeが徹底的に伴走し、学習効果の定着と最大化につなげます。

個人と組織のパフォーマンスの飛躍的な向上を見込めますので、ご期待ください。

人的資本経営の実現には人材育成をしなければ始まりません。

そして人材育成は新入社員やマネジャークラス、経営幹部も含めた全従業員が時代と環境に即して学んでいく必要があります。

LDcubeなら理想的な学習環境を整備いたしますので、人的資本経営をの実現を目指して人材育成をお考えでしたらぜひ一度、ご相談ください。

LDcubeロゴ

まとめ

人的資本経営の事例は参考になりましたでしょうか。

最後に本記事の要点をまとめていきます。

◎人的資本経営の事例一覧は、以下のとおりです。

企業名
旭化成株式会社
アステラス製薬株式会社
伊藤忠商事株式会社
オムロン株式会社
SOMPOホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社
KDDI株式会社
株式会社丸井グループ
株式会社LIXIL
3P
3つの視点
経営戦略と人材戦略の連動
現在と理想のギャップの把握
-
企業文化への定着度
5F
5つの
要素
採用や人材配置、 人材育成の最適化
知・経験の 多様性
リスキリング・ 学び直し
-
-
従業員 エンゲージメント向上
-
柔軟な働き方の推進
-
-
-
-
-
-
-

◎旭化成株式会社では人的資本経営の実現に向け、以下3つの施策を実行しています。

  • 経営戦略の実現に必要な人財の確保
  • 独自のエンゲージメント調査を毎年実施
  • 高度専門人財について定義し、必要人数を数値目標(KPI)として設定

◎以下のポイントを押さえて、アステラス製薬株式会社は人的資本経営の実現に向けて動きました。

  • 人事を経営層や事業部門と共に戦略を実現するパートナー化
  • 人材に関する目標を明確化してハイパフォーマンスを実現
  • 社内で適切な競争環境を作り、従業員のポテンシャルを最大化

◎人的資本経営の実現に向けて、伊藤忠商事株式会社は以下の施策を取り入れました。

  • 人材戦略の目標に対する施策と成果を開示
  • 「労働生産性」に関する数値を社外に発信
  • 人的資本投資に関するKPIと施策を体系化

◎人的資本経営の実現に向け、オムロン株式会社は以下を実行しました

  • 従業員自ら目標を立て企業理念を浸透
  • グローバルリーダーの人財育成、現地化
  • 多様・多才な人財を支援する環境を整備

◎以下の施策を取り入れて、SOMPOホールディングス株式会社は人的資本経営の実現を図りました。

  • 意識改革による「MYパーパス」の浸透
  • パーパス浸透と人材戦略の連動
  • 人材戦略の実現に向けた効果的な仕掛け

◎以下の施策を取り入れて、キリンホールディングス株式会社は人的資本経営の実現を図りました。

  • 経営戦略と人財戦略の連動強化
  • CSV経営の推進により従業員エンゲージメントを最大化
  • 多様性とイノベーションにより組織風土の変革

◎以下の施策を取り入れて、KDDI株式会社は人的資本経営の実現を図りました。

  • 事業経験者の人事部門の人材登用と経営層・各事業部門と人事との対話を強化
  • 人材ポートフォリオを活用し、適所適材を実現
  • 新卒、キャリア採用を拡充し、専門人材の獲得を強化

◎以下の施策を取り入れて、株式会社丸井グループは人的資本経営の実現を図りました。

  • 「手挙げ」文化の推進
  • 多様な知の融合
  • 心理的安全性の確保

◎以下の施策を取り入れて、株式会社LIXILは人的資本経営の実現を図りました。

  • インクルージョンへの経営の強いコミット
  • 体系的な育成プログラムで次世代リーダーを育成
  • 従業員のキャリア自律の支援

◎人的資本経営の事例から見る取り組みポイントは、以下3つです。

  • 自社の目的に合わせて取り組み方を検討する
  • 経営戦略と人材戦略を紐付ける
  • KPI(重要業績評価指標)を設定してモニタリングする

ぜひ本記事の事例を参考に、人的資本経営の実現を目指してください。

株式会社LDcubeでは、人的資本経営を進化させるための独自の教育プログラムづくりや階層別育成カリキュラムの充実化にむけ、世界の著名やMBA教授陣による高品質な学習コンテンツや学習管理システム(LMS)、社内トレーナーの方々が外部講師さながらの研修が行えるようになる社内トレーナー養成支援などを行っています。お気軽にご相談ください。

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