次世代リーダー研修とは?開発すべきスキルや実践に繋がるコツを解説
「ビジネス環境も厳しくなったので、競争を勝ち抜けるような強いリーダーを育成したい」
「これまで次世代リーダー育成のための研修をしていなかったので、具体的な内容が分からない」
次世代を担う経営幹部の早期育成を目指す「次世代リーダー研修」。
グローバル化やVUCAの時代のような言葉が飛び交う昨今では、時代にあわせた変革を起こせるリーダーの重要性は、より高まっているでしょう。
しかし通常の階層別研修と違い、次世代リーダー研修は実施する機会が頻繁にないものです。
そのため、次世代リーダー研修をどのように設計し、どのような内容やテーマを扱うべきか分からないと頭を抱える人事の方も多いようです。
次世代リーダー研修単体を考える前に、まずは「次世代リーダーをどう育てるのか」という育成の全体像を考え、そのなかでの研修の位置づけを考える必要があります。
当記事では次世代リーダー研修の内容とともに、全体像の設計をおすすめしています。
【次世代リーダー研修の位置づけ例】
次世代リーダー育成プログラムの全体像 | ||
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人事制度関連 |
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経営者に求められることは多岐に渡るため、次世代リーダー研修を中心とした他施策も含めて、経営を担えるまでのレベルに育成する必要があるのです。
全体像がない状況で研修単体を実施したとしても、効果が得られず、研修コストの無駄遣いにもなりかねません。
また「次世代リーダー」の定義は曖昧で、各企業で求める要件が異なります。
そのため経営陣などの関係者で「語学を中心に学ばせるべき」や「ロジカルシンキングを鍛えるべき」など、認識が異なっていることはしばしばあります。
このような全体像を設計しないと「何をすることが次世代リーダーを育てることにつながるのか」というオーソライズをとることもできません。
その上で、当記事では次世代リーダー研修に絞った際に、実際に研修設計のポイントとして、以下を紹介します。
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最後まで記事をお読みいただければ、「自社の場合は、どのような内容を含めるべきか」という次世代リーダー研修の内容の方向性が決まるはずです。
ぜひ当記事で次世代リーダー研修について理解を深めていただき、自社で実施する参考にしていただければ幸いです。
▼リーダーシップ開発については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント
▼次世代リーダーの選抜については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒育てるべきは誰?次世代リーダー選抜の新たな視点
▼次世代リーダーの選抜と育成については下記にまとめました。施策検討にお役立てください。
▼能力の棚卸をするコンピテンシーサーベイの結果から、能力開発に適した年齢がわかりました。次世代リーダーの選抜と育成には年齢的なタイミングを逃さない施策展開が重要です。
目次[非表示]
次世代リーダー研修とは?
次世代リーダーとは一般的に、「企業の将来を担う経営幹部や経営幹部候補」と定義され、その人材を戦略的に育成するのが「次世代リーダー研修」です。
曖昧とした概念なので、まずは通常のリーダー研修との違いを端的に紹介します。
【通常のリーダー研修】
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一般的には「次世代リーダー育成プログラム」のような会社全体の育成体系があり、その中の一つとして「次世代リーダー研修」では集中的に研修形式で学ぶ狙いがあります。
【次世代リーダー育成プログラム全体での研修の位置づけ例】
次世代リーダー育成プログラムの全体像 | ||
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人事制度関連 |
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経営とは、特定部門の一般業務などとは環境が異なるため、研修を通じてある種の「仮想環境」を通じて、経営を担うスキルを開発する必要があります。
例えば部門の予算だけを管理しているだけでは、経営幹部になった際に、これまでとは異なる大きな規模の予算を、どのように効果的に配分すればいいか分かりません。
予算に限らず、裁量の範囲・判断のレベル・関係者の質や量など、経営の環境は一般社員とは大きく異なるでしょう。
なお次世代リーダーの対象は、すぐに幹部候補となるベテラン人材とは限りません。
昨今は「早期選抜」や「若手のリーダー育成」など、若手や中核社員にも次世代リーダー研修を実施するケースもあります。
このように通常の業務では培いにくい知識やスキルを意図的に開発するのが、次世代リーダー研修の狙いです。
▼関連して女性のリーダー育成については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒女性の管理職(リーダー)を育成する上で必要なことを一気に解説
次世代リーダー研修を行う目的
忙しい現場社員を研修に参加させるためには、きちんと目的や意図を明文化する必要があります。
本章では以下の3つの代表的な目的を紹介します。
- 部門を超えた視界を養うため
- 実践力につながる環境を整えるため
- 本人の自覚を促すため
一つずつ具体的に解説していきます。
部門を超えた視界を養うため
自分が所属する部門だけではなく、部門を超えた全社的な視界を養うことは、次世代リーダー研修の目的の一つです。
経営は自社に存在する複数部門を見て、全社最適な判断を行う必要があります。
例えば営業しか知らない役員と、バックオフィス部門の役員と経営会議で対立するのは、頻繁に起こりがちな課題でしょう。
特に縦割り傾向が強い日本企業では、「同じ畑を歩む」に代表されるように、自部門しか知らないままキャリアを積むことも珍しくはありません。
そのため、研修で他部門のことを理解したり、他部門と交流したりすることで、全社的な視界を身につける狙いがあるのです。
単に他部門の動きを知るだけではなく、経営として判断するためには、ファイナンスやマーケティングなどの専門知識も必要となります。
次世代リーダー研修ではそのような知識のインプットを基にしながら、徐々に経営判断のケーススタディなど実践的なスキルを身につけるのも効果が高いでしょう。
実践力につながる環境を整えるため
研修という仮想空間を通じて、より実践力を鍛えることも次世代リーダー研修の目的です。
経営に限らずですが、今まで未経験の仕事を突然任されたとしても、いきなりベストな動きができるとは限りません。
特にヒト・モノ・カネの裁量が大きい経営陣に、未経験者がアサインされたとしたら、大きな経営ダメージを招いてしまうリスクがあります。
そのため研修ではより実践に近い環境を経験させ、判断力・行動力など複合的なスキルを鍛える必要があるのです。
一般的なケーススタディを使って「疑似経営体験」をすることもありますが、より実践に近づけるためには、実際の自社プロジェクトなどのケースを使い、ロールプレイングすることが効果的でしょう。
本人の自覚を促すため
リーダーとしてのスキル開発だけではなく、本人の「自分は会社を牽引するんだ」という自覚を促すことも、次世代リーダー研修の目的です。
経営は「胆力次第」と言われるように、どれだけ素晴らしい知識やスキルが備わっていても、本人のやる気が高まっていなければ、リーダーとしての真価は発揮しにくくなります。
そのため研修で本人への期待や経営としての課題を浸透させることで、経営が他人ごとから自分ごとに切り替わるはずです。
経営ビジョン発表の模擬体験などのケースを使うような内容や、コーチングなどで本人の内側にアプローチするような研修内容が考えられるでしょう。
次世代リーダー研修例【テーマ別】
次世代リーダー研修の目的が定まったら、次に研修の内容を検討していきます。
本章では以下の3つの代表的な研修内容例を紹介します。
- 経営者の視点や思考
- 自社課題の解決
- 自身への内省
1つずつ具体的に解説していきます。
経営者の視点や思考
経営者の視点や思考を扱うのは、リーダー研修の代表的なプログラムです。
前述した通り、経営者の視点は通常業務では身につかないため、次世代リーダー研修で体感する必要があるのです。
次世代リーダーに求められるのは、組織を運営するためのマネジメント力だけではありません。
次世代リーダー研修では、より高次な経営者としての視点や思考力を磨いていきます。
具体的には以下のような研修内容が代表的でしょう。
【研修例】
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なおこの研修テーマを実施するのにおすすめのケースは、このようなニーズをお持ちの企業です。
【こんなニーズをお持ちの企業におすすめ】
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どこかの部門に所属していると、無意識に組織の常識などに縛られてしまい、経営者の視点や思考はなかなか身につきません。
そのため経営の視界は、研修を通じて意図的に開発すべきテーマの一つでしょう。
▼経営者視点については下記で解説しています。合わせてご覧ください。
⇒経営者視点とは?企業の今と今後の業績を上げるために必要な方法・ポイントを解説!
自社課題の解決
自社の課題を本質的に理解し、解決するための力を養うことも、次世代リーダー研修では代表的なテーマです。
業務として現実の自社課題に対峙してしまうと、なかなか最初からうまく解決できるとは限りません。
そのため、次世代リーダー研修で解決力を磨く必要があるのです。
例えば、研修では課題発見の方法や解決方法など、前例にとらわれない発想力を伴うリーダーシップスキルを学びます。
具体的には以下のような研修内容が代表的でしょう。
【研修例】
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なお、この研修テーマを実施するのにおすすめのケースは、このようなニーズをお持ちの企業です。
【こんなニーズをお持ちの企業におすすめ】
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研修では実際の自社課題を題材にするなど、実践的な体験プログラムを実施される傾向があります。
周囲を巻き込みながら、事業や会社を動かす力を身につけることができるでしょう。
自身への内省
自分自身の強み・弱みやなど内面を深掘りするテーマも、次世代リーダー研修で取り上げられやすいです。
経営幹部には、知識・スキル以外に人と組織を牽引する「人間力」も求められます。
ただし日常では目の前の仕事に邁進しているため、なかなか自分自身を振り返る機会がないというビジネスパーソンがほとんどでしょう。
例えば、研修では自己分析を通じて自分のモチベーションリソースを確認したり、過去の経験の棚卸しをしたりしていきます。
具体的には以下のような研修内容が代表的でしょう。
【研修例】
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なおこの研修テーマを実施するのにおすすめのケースは、このようなニーズをお持ちの企業です。
【こんなニーズをお持ちの企業におすすめ】
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研修は自分自身との対話と内省を通じて経営観を磨き、経営幹部としてのマインドセットに役立ちます。
ブレない決断力や経営幹部となる覚悟を醸成することが期待できるでしょう。
次世代リーダー研修で身につけるべき3つのスキル
必要となるスキルが多い次世代リーダーですが、本章ではとりわけ必要な以下の3つのスキルを紹介します。
- 概念的思考能力
- 対人関係能力
- 個人的資質
一つずつ具体的に解説を進めていきます。
概念的思考能力
概念的思考能力とは、複雑であったり曖昧であったりする概念を、自分の脳内で再構築する力です。
経営を取り巻く環境は目まぐるしく変化するため、次々と発生する課題を正確かつスピーディーに捉え、解決策を導き出す必要があります。
具体的には、概念的思考能力には以下のような力が代表的なものです。
概念的思考能力の例 |
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概念的思考能力は全てをバランス良く所持し、かつ高次で発揮できる方は稀でしょう。
まずは候補者の現状をチェックし、研修でどの能力に特化して開発していくかの優先順位をつけることがおすすめです。
▼経営についての勉強法については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒経営の勉強は何をすべきか?実践スキルを身に付ける効果的な方法
対人関係能力
対人関係能力とは、集団や個人に働きかけ、理解をしてもらい、そのうえで組織をリードする力です。
会社員であれば人との関わりは避けることはできませんが、経営者となるとコミュニケーションの量や質は桁違いです。そのため、対人関係のベースとなる力は不可欠といえます。
具体的には、対人関係能力には以下のような力が代表的なものです
対人関係能力の例 |
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小さな組織のマネジメントであれば、対人関係能力の発揮範囲は個人~数名でしょう。
しかし経営者は多くの人々を動かす必要があるため、対人関係能力では複数人に働きかける影響力が求められる特性があります。
個人的資質
個人的資質とは、その人が元来持っている性格・特性ですが、経営者として共通する不可欠な特性もあります。
例えば多くの試練にさらされる経営者は、ある程度のストレス耐性が必要となります。
仮に耐えがたいストレスにさらされた際も、決して逃げ出さず自身をセルフコントロールする力をも求められるでしょう。
このような「経営者ならでは」の個人的資質は、具体的に以下のような力が代表的なものです
個人的資質の例 |
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個人的資質は、元来変化しにくく、開発しにくい力とされています。
だからこそ次世代リーダー研修で訓練を重ね、たとえ本来は苦手領域であっても、行動としては発揮できる準備をすることが重要なのです。
次世代リーダー研修を成功に導く3つのポイント
研修と聞くと「座学」の印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、実践がもとめられる次世代リーダー研修を成功に導くためには、以下の3つのポイントを踏まえる必要があります。
- 参加者のマインドセットを行う
- 経営に必要なインプットを行う
- インプットした内容を整理しアウトプットを行う
具体的にどのような点に注意すべきかを解説していきます。
参加者のマインドセットを行う
研修参加者のモチベーションを高めるようなマインドセットが、研修効果を高めます。
研修自体は1日~数日の行事です。
研修直後だけ行動変容が起こることを「湯上がり効果」と例えられるように、研修の効果を実践で発揮し続けるためには、参加者の心意気に拠る部分が大きいでしょう。
例えば研修前後にエグゼクティブコーチングを付け、本人の決意を高め続けるようにすれば、実践につなげやすくなります。
気を付けたいのが、本人のやる気は高まっていても、現場の上司が研修参加に批判的なケースです。
そんな場合は本人の前に上司の理解促進を行い、職場全体で参加者を温かく研修に送り出すような雰囲気作りをしてください。
経営に必要なインプットを行う
参加者には経営に必要といわれる知識を、確実にインプットするようにしてください。
知識がないまま実践的な研修を実施しても、武器を持たずに戦えと求めているようなものです。
特に経営レベルの判断をするためには広範囲の知識インプットが必要となるでしょう。
例えば「ファイナンス」「マーケティング」「HR」などは、どのような業種の経営者でも必須の知識といえます。
まずは知識を洗い出し、次に参加者によって「必要」「不必要」のチェックを行ったうえで、研修設計をしてください。
インプットした内容を整理しアウトプットを行う
インプットした知識は必ずアウトプットしてもらうような研修設計にしましょう。
知識を持っていることと、発揮できることは異なります。
インプットした内容を自分なりに整理し、周囲に分かりやすく伝えられて、初めて実践で使える知識となるのです。
従って、研修ではインプットだけではなく、必ずそれら知識を使った課題発表などのアウトプットを組み合わせます。
単なる課題の説明ではなく、経営者として当事者意識を持ってアウトプットに挑むような演出も効果的でしょう。
学びのアウトプットには経営シミュレーションが最適
学びのアウトプットとして経営シミュレーションが最適な理由にはいくつかのポイントがあります。
【経営シミュレーションが最適な理由】
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これらの理由により、経営シミュレーションは学びのアウトプットとして非常に効果的な手法とされています。
▼経営シミュレーション研修については下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒経営シミュレーションとは?人材育成の新手法・研修について解説
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次世代リーダー研修は全体設計が重要!
今回は次世代リーダー「研修」を取り上げましたが、研修を含めた次世代リーダーを育てるまでの全体設計が重要です。
一般社員を経営者レベルまで引き上げるには、単体の研修開催だけでは不可能でしょう。
必要な知識のインプットだけでも、多分野に及ぶため、複数回の研修やオンライン学習を実施する必要があります。
そのため、研修単体の設計を考える前に、複数の研修を中長期目線で実施する「設計図」のようなものを描くことが推奨されます。
例えば、以下の図は1年間に渡って、複数回のインプット研修・アウトプット研修や、コーチングやアセスメント診断を組み合わせた全体設計図です。
【次世代リーダー研修の全体設計図例】
ただし、通常の階層別研修と異なり、次世代リーダー研修の設計経験が頻繁にある方はあまりないかと思います。
そんな場合は、さまざまな企業の次世代リーダー研修の実施経験がある、外部の専門企業に相談するのも一手段でしょう。
【次世代リーダー研修なら、LDcubeにお問い合わせを!】 |
LDcubeは、株式会社ビジネスコンサルタント時代から50年以上にわたる集合研修支援で得た知見と経験をもとにして、各企業の実情と時代にマッチした研修設計を行うことが可能です。 「誰を次世代リーダー研修に選べば良いのだろう?」「どんなスキルを開発すべきなのだろう?」などお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。 |
まとめ
今回は、企業の成長を担う次世代リーダーを育成する研修について取り上げました。
あらためて本記事のポイントは以下の通りです。
◎次世代リーダー研修を行う目的は以下の通り
- 部門を超えた視界を養うため
- 実践力につながる環境を整えるため
- 本人の自覚を促すため
◎次世代リーダー研修の代表的なテーマ例は以下の通り
- 経営者の視点や思考
- 自社課題の解決
- 自身への内省
◎次世代リーダー研修で身につけるべきスキルは以下の3つ
- 概念的思考能力
- 対人関係能力
- 個人的資質
◎次世代リーダー研修を成功に導きポイントは以下の3つ
- 参加者のマインドセットを行う
- 経営に必要なインプットを行う
- インプットした内容を整理しアウトプットを行う
「次世代リーダー研修」は、定義そのものがが曖昧です。
だからこそ「自社ならではの次世代リーダー研修のポイントは何なのだろう」と考え抜くのが要諦ともいえます。
時には外部の専門企業とのディスカッションも交えながら、「こんな研修なら、次の時代を切り拓くリーダーを輩出できそうだ」という、戦略的な研修設計をしてください。
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