人材育成の効果測定とは?重要な観点や評価項目を網羅的に解説
人材育成は企業の持続的な成功にとって不可欠です。しかし、その効果を正確に測定することは多くの企業にとって課題です。
効果測定が不十分な場合、どんなに多くのコストと時間を投入しても、その投資効果が明確にならないため、人材育成の戦略が誤った方向に進むリスクが高まります。
適切な効果測定を行い、実際の業績向上や社員のスキルアップに直結する取り組みが求められています。では、どのようにして人材育成の効果を測定するのでしょうか?
ここでは、人材育成の効果測定の難しさに注目してみましょう。
- 定量的評価の欠如:人材育成の効果を数値で示す具体的な指標が不足しています。
- 定性的評価の曖昧さ:社員の意見や感覚に頼った評価が多く、客観的なデータが得られにくい状況です。
- フォローアップの不足:効果測定を行わないまま次の施策に進むため、育成活動の結果が不明確になっています。
本記事では、人材育成の効果を正確に測定するための具体的な方法を紹介します。
効果測定を通じて、企業は人材育成の質を高め、全体のパフォーマンスを向上させることができます。その結果として、組織全体が持続的な成長を実現し、さらに大きな成功を収めることができるでしょう。
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目次[非表示]
- 1.人材育成で重要な効果測定とは
- 2.5W1H・4W1Hでの人材育成の効果測定
- 3.人材育成の効果測定における2つの視点
- 4.人材育成の効果測定における重要ポイント
- 4.1.①効果測定の目的を明確化する
- 4.2.②効果測定の対象と検討事項を決める
- 4.3.③効果測定ができる学習ツールを活用する
- 5.効果測定の事例
- 6.研修における効果測定のやり方
- 6.1.研修直後のチェック
- 6.2. 数か月後のチェック(フォローアップ)
- 6.3. 効果測定の評価
- 7.まとめ
人材育成で重要な効果測定とは
企業の教育担当者は、研修を企画・実施するだけではなく、研修成果の効果測定によって投資効果を立証しなければなりません。
効果測定の項目は、企業によってさまざまな観点で検討されており、5W1Hや4W1Hが代表的なものとして挙げられます。
例えば、研修後のアンケート調査で受講者の満足度を測定した後、テストの実施で学習目標達成度を測ります。
その後、現場でのパフォーマンス観察やインタビューを通じて、受講者の行動変容や業績評価を確かめ、研修や育成方針の課題発見と改善につなげるというのが基本的な流れです。
▼人材育成プログラムの企画・設計についてはこちらをご覧ください。
⇒育成プログラムの企画・設計とは?基本的な流れと成功の秘訣
5W1H・4W1Hでの人材育成の効果測定
企業の人材育成における効果測定では、5W1H・4W1Hが代表的なフレームワークとして活用されています。
項目 |
具体例 |
Why(なぜ測定するのか) |
・人材育成施策の改善 |
What(何を測定するのか) |
・目的、ゴールの達成度 |
Who(誰を測定するのか) |
・新入社員 |
When(いつ測定するのか) |
・日時 |
Where(どこまで測定するのか) |
・研修の満足度 |
How(どのように測定するのか) |
・研修後のアンケート |
人材育成の効果測定は、次の施策の橋渡しを行ううえで重要な役割を果たします。
そのため、研修中のパフォーマンスだけではなく、研修後の行動変容や意識の変化にも注目することが重要です。
▼効果測定の前提として人材育成についての目標がしっかりと定まっていることも重要です。人材育成の目標についてで解説しています。合わせてご覧ください。
⇒人材育成の目標とは?目標設定の仕方やこれからの時代の重要ポイントを解説!
人材育成の効果測定における2つの視点
人材育成の効果測定は、企業側(教育担当者)と社員側の2つの視点で考える必要があります。
企業側の視点の場合、研修後に社員が会社の売上・利益に貢献できているのかを測定します。また、採用・研修にかけたコストと得られた利益を可視化し、費用対効果を測ることが重要です。
社員側の視点では、抽象的な指標も用いて効果測定を行います。例えば、研修の満足度やモチベーションの向上、得られた知識・スキル・資格などが測定の材料となります。
ただし、社員全員を同じ指標で効果測定をするのではなく、個々人に最適な指標を選定することが重要です。
人材育成の効果測定における重要ポイント
企業側の視点、社員側の視点でそれぞれ効果測定を行う場合、設定すべき指標は多岐にわたります。事業目標の達成に向けて、より効率的な効果測定を行うためにも、以下の重要ポイントを押さえておきましょう。
①効果測定の目的を明確化する
教育や研修の効果を確かめやすくするために、何を目的として効果測定を行うのかを明確化しましょう。例えば、以下の項目が効果測定の目的に挙げられます。
- 研修で得られた知識・スキル・資格・行動変容などの評価
- このままの研修内容で継続するべきかの判断
- 研修プログラムの課題点、改善点の洗い出し
- 研修後のフォローアップが必要かどうかの判断
- 研修で業務にもたらされている効果の可視化
- 研修効果の個人差の可視化と標準化
- 社員による研修内容の満足度の可視化
- 研修コストの削減と予算の獲得など
上記の中には、成果をデータで可視化できないものも多く含まれます。
研修を対象とした効果測定はかなり難しいため、組織の目標達成や部署の課題解決につながる項目を選定することが重要です。
②効果測定の対象と検討事項を決める
人材育成の効果測定は、研修そのものを対象とするのか、それともチームや個人を対象にするのかで評価項目が大きく異なります。
研修そのものを対象とした場合、受講者に限らず、教育担当者や講師などの評価も行う必要があります。
受講者を対象とした場合、所属部署や担当業務、業務で抱える課題などに応じて、評価すべき項目を絞り込むことが大事です。
また、効果測定の材料となるデータも、定量的なものと定性的なものに区別し、効果を適切に判断できるものを選定しなければなりません。
③効果測定ができる学習ツールを活用する
教育や研修の効果を可視化するには、専用のツールを導入する必要があります。
例えば、研修の理解度や知識・スキルの習得度を測定できる研修ツールや、社員毎の学習の進捗状況を可視化できる学習プラットフォームなどが効果測定に役立ちます。
学習・研修ツールの種類は多岐にわたりますが、自社の課題や目標に応じてカスタマイズできるものがおすすめです。
また、ベンダーによるサポートが充実しているサービスなら、費用対効果の高い運用が実現します。
▼学習データを施策に生かすポイントについてはこちらをご覧ください。
⇒LMSを人事評価や施策の改善に生かすポイント!失敗しない選び方
効果測定の事例
建設コンサルタント業 新入社員研修のケース
【背景】
Withコロナ時代の中で、単にオンラインで研修を行うだけでなく、学び方のイノベーションを図りたい。
【新たな取り組み】
動画コンテンツを作成してオンライン自己学習の充実化を図る
確認テストを実施して理解度を都度チェックする
質問BOXを設け、随時質問があれば入力してもらう
オンライン協調学習のセッションで演習や質問BOXに入力された質疑応答を行う
【結果】
受講の満足度は?
理解度は?
2019年度までは集合研修をベースに新入社員研修を実施していましたが、コロナ禍に突入した2020年度は新入社員研修を実施できませんでした。
2021年度はオンラインで新入社員研修が実施できるように準備を進めました。
オンラインで行った新入社員研修の効果について、受講者の満足度と理解度の観点から効果測定しています。
満足度を見てみましょう。研修のテーマごとに受講者のアンケートを取っています。2019年度までの研修アンケートと2021年度の研修アンケート結果を比べると、大きな差が出ています。
(2020年度は研修未実施のためデータなし)
2019年度までは研修の満足度に関して、5段階中で4をつける人がボリュームゾーンでしたが、2021年度は5をつける方がボリュームゾーンとなりました。受講者の研修満足度が大きく高まった結果となりました。
また理解度については、毎年テーマごとに試験を実施しています。
新入社員の中には、ある分野について大学時代に学習したことがある履修者と、学習したことがない初学者が混在しています。例年の傾向として、初学者は得点が低く、履修者は得点が高い傾向にありました。
2021年度の試験は下記のような結果になりました。
初学者の得点が低く、履修者の得点が高いという傾向は存在しますが、その差はあまりなく、初学者が履修者に追いついてきているという結果になりました。
オンラインで効果的な学習環境を構築してきたことで、受講者の満足度も理解度もどちらも高めることに成功しました。
今回のケースの場合、下記に取り組みました。
【新たな取り組み】
・動画コンテンツを作成してオンライン自己学習の充実化を図る
・確認テストを実施して理解度を都度チェックする
・質問BOXを設け、随時質問があれば入力してもらう
・オンライン協調学習のセッションで演習や質問BOXに入力された質疑応答を行う
※上記について、ラーニングプラットフォームUMU(ユーム)を活用して展開
その取り組み施策の効果測定をしたところ、受講者の満足度、理解度ともに良い結果を得ることができ、上記の施策が効果的であるということを証明することができました。
研修における効果測定のやり方
研修における効果測定は、学んだ内容が実際の業務や行動にどれだけ反映されているかを評価するための重要なプロセスです。ここでは、研修直後と数か月後に行うチェックリストを活用して効果測定を行う具体的な方法について説明します。
研修直後のチェック
目的:研修で学んだ内容が参加者にどれだけ理解され、具体的な行動イメージを持っているかを評価します。
方法:
- アンケート:学んだ内容についての理解度や具体的な行動計画について質問します。例えば、「今日学んだ内容を明日からどのように実践しますか?」といった具体的な質問を用意します。
- チェックリスト:このような行動ができていることが望ましいというチェックリストを用意し、そのチェックリストについて研修直後の実践度合いを評価し、数値化します。
数か月後のチェック(フォローアップ)
目的:研修で学んだ内容が実際の業務にどれだけ定着しているか、行動に変化があったかを確認します。
方法:
-
フォローアップアンケート:研修直後と同じ内容のアンケートを再度実施し、学んだ内容が実際に業務に活かされているか、具体的な行動変化があったかを評価します。
-
チェックリスト:研修直後のチェックリストと同様のチェックリストでの評価を行い、どの程度期待する行動が実践できているかをチェックし、数値化します。
-
パフォーマンスレビュー:上司や同僚からのフィードバックを収集し、研修参加者がどのような変化を見せたかを確認します。
- 面談:研修参加者との個別面談を行い、研修内容の実践状況や具体的な成果、困難な点について話し合います。
効果測定の評価
★定量評価
-
アンケート結果の比較分析:研修直後のアンケート結果と数か月後のフォローアップアンケート結果を比較し、学習内容の定着度や行動変化を数値化します。
-
チェックリストの比較分析:研修直後のチェックリスト評価結果と数か月後のフォローアップ時のチェックリスト評価結果を比較し、期待する行動の定着度や行動変化を数値化します。
- パフォーマンス指標の分析:業務成果や生産性など定量的なデータを活用して、研修の効果を数値的に評価します。
★定性評価
-
フィードバックの内容分析:上司や同僚からのフィードバックや面談の記録を分析し、研修効果を質的に評価します。
- 行動変化の事例集:成功事例や変化の具体例を収集し、研修がどのように実践で活用されたかを示します。
このように、研修直後と数か月後に行うチェックを組み合わせることで、研修の効果を多角的に測定し、実際の業務への影響を評価することができます。
▼研修の効率化を図ることも重要な視点です。下記で詳しく解説しています。
⇒研修を効率化するには?コスト削減とパフォーマンス向上の両立
まとめ
この記事では、企業における人材育成の効果測定について以下の内容で解説しました。
- 5W1H・4W1Hでの人材育成の効果測定
- 人材育成の効果測定における2つの視点
- 人材育成の効果測定における重要ポイント
人材育成の効果測定では、研修自体や個人の目標に応じた評価項目の選定と、目的の明確化が非常に重要です。
学習や研修の費用対効果、社員の成長度合いを把握するためには、データを定量的に可視化できる専用ツールの導入も不可欠です。
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