
レジリエンスがビジネスを成功させる!?その意味と高めるポイント・方法を解説!
本コラムでは、ビジネスの持続可能性と成長を支える「レジリエンス」について解説します。
レジリエンスは、「復元力」や「回復力」とも言われ、困難を乗り越えるための能力として重要視されています。レジリエンスが求められる背景や、必要とされる企業・組織の特徴、レジリエンスが高い人材の特徴・育成方法などを説明します。
また、トップダウンが強い組織で陥りがちな「学習性無力感」から抜け出し、レジリエンスを高める方法についても紹介します。
▼ 3分でわかるレジリエンスについての資料はこちらからダウンロードできます。
目次[非表示]
- 1.ビジネスにおけるレジリエンスとは
- 2.ビジネスにおけるレジリエンスが注目される背景
- 2.1.高度なグローバリゼーションの進展
- 2.2.テクノロジーの進化
- 2.3.サステナビリティの重視
- 2.4.予測困難な事態への対応力
- 3.レジリエンスが必要な組織
- 3.1.グローバル企業
- 3.2.競争と変化の激しい業界/組織
- 3.3.スタートアップ企業
- 4.レジリエンスを高めるポイント【組織づくり】
- 4.1.コミュニケーションと意思決定の透明性の向上
- 4.2.危機管理計画の策定と見直し
- 4.3.学習機会の提供
- 5.レジリエンスを高めるポイント【人材育成】
- 5.1.思考の柔軟性を養う(意図的なポジティブ思考)
- 5.2.自身の強みやエネルギーの源泉を確認する
- 5.3.問題解決力を磨く
- 5.4.セルフケアを行う
- 6.レジリエンスが高い人の特徴
- 6.1.ポジティブな思考を持っている
- 6.2.解決策を見つける能力が高い
- 6.3.社会的な支援を活用できる
- 7.組織の中で注意したい「学習性無力感」とは
- 8.トップダウンの強い組織注意!学習性無力感に陥っている!?
- 9.学習性無力感から抜け出し、レジリエンスを高める方法
- 10.まとめ
ビジネスにおけるレジリエンスとは
レジリエンスは、元々物理学の用語であり、「復元力」や「弾力」などと訳され、何か物体に圧力がかかった際にそれを押し戻す力を意味します。ビジネスにおけるレジリエンスは、事業活動において予想外の事態や困難が発生した際に、企業・組織がその打撃から早期に回復し、業績を維持する、もしくはさらに向上させる能力を指すことが多いです。組織が直面する困難を乗り越え、組織の持続可能性を保つための能力として重要視されています。
レジリエンスを持っている組織は、環境変動や市場変化、経済的な困難などがあっても、その衝撃を受けた後に早々に立ち直ることができます。また、その困難を乗り越える過程で得た学びを活用し、組織の成長を促進させることも可能です。
レジリエンスが高い組織には、問題や困難を前向きに捉え、チャンスとして考える風土があります。また、そのような組織は一体感を重要視し、社員が互いに助け合い、共に問題に対処しようとします。さらに、問題への対処から学んだことを活かし、より良い方向に組織を進化させようとします。
レジリエンスを強化するためには、組織全体で危機管理体制を整備すると共に、レジリエンスが高い人材の育成、変化や困難に対応できる組織風土を醸成することなどが求められます。
ビジネスにおけるレジリエンスが注目される背景
ビジネスにおけるレジリエンスが重視されるようになった背景には、時代の変化がありますが、その他に、以下のような複数の要素が含まれています。
高度なグローバリゼーションの進展
ビジネスのグローバル化につれて、1つの国や地域における経済的、政治的な出来事が他の国や地域の企業にも影響を与え、企業にとって予見しきれないリスクが増えました。そのため、組織には地域に限定されたビジネスリスクだけでなく、世界規模のリスクに対応できるレジリエンスが求められるようになりました。
テクノロジーの進化
ITやAIの進化により、ビジネス環境が急激に変化しています。新たな技術の波に遅れずに対応し、技術を活用していくことは容易ではありません。そのような環境変化に対応していくには、組織に高いレジリエンスが求められるようになりました。
サステナビリティの重視
近年、社会的な責任や環境問題に重きを置くサステナビリティの考え方が浸透してきており、ビジネスのあり方も変わりつつあります。また、気候変動による自然災害のリスクなども増えています。これらに対応していくためにも組織には高いレジリエンスが求められています。
予測困難な事態への対応力
自然災害、感染症拡大(例:COVID-19)、テロ、経済危機など、予測困難な事態が発生したら、組織が受けた衝撃に対応するには、レジリエンスが必要です。
以上のようなことを背景にし、ビジネスにおけるレジリエンスが多くの組織に重要視されるようになりました。今後業績を維持し、向上させたい組織にとって、改めて自社のレジリエンスを評価し、強化する必要があります。
レジリエンスが必要な組織
レジリエンスは、どのような組織にも有用ですが、特に以下のような組織には必要です。
グローバル企業
世界各地で事業を展開している企業は、地域的な法制度、文化、経済状況の違いに対応しなければならず、そのための柔軟性が求められます。
また、自然災害や政治的変動など、その地域特有のリスクに立ち向かう対応力が必要となります。取引相手や従業員・供給チェーンが多岐にわたるため、予見できない問題や困難さに対処できる能力が求められます。
競争と変化の激しい業界/組織
IT業界のような競争が激しい業界にとって、市場の環境や競争の状況が日々変わる中で、生き残るためには市場の変動や競争相手の戦略に素早く対応するレジリエンスが必要です。
▼ 合わせて読みたい
高度に競争的な業界は心理的安全性の確保が難しい可能性があります。
心理的安全性についてはこちらから
スタートアップ企業
新しいビジネスを展開するスタートアップ企業は、多くの課題に直面します。新たな市場を開拓すること、競争相手との差別化を図ること、資金調達など、数多くの困難を経験しながら事業を進めていかなければなりません。スタートアップ企業が事業を成功させるためには、ストレスや不確実性とうまく付き合いながら進むレジリエンスが求められます。
以上のような組織は、予見できない困難や変化に対して迅速にかつ効果的に対応するためにレジリエンスが必要です。レジリエンスが高い組織は困難な状況下であっても前向きにブレずに進むことができ、困難を乗り越えて成長を続けることが可能となります。従って、どのような組織であってもレジリエンスを高めることで、困難な状況を乗り越える力を持てるようになります。
レジリエンスを高めるポイント【組織づくり】
組織のレジリエンスを高めるためには、組織づくりとレジリエンスが高い人材の育成という2つの側面から取り組む必要があります。まずは組織づくりの側面から取り組みのポイントを紹介します。
コミュニケーションと意思決定の透明性の向上
オープンなコミュニケーションは、社員の組織についての理解と合意形成を促進します。社員それぞれが相互に、現状の活動に対するフィードバックを定期的に求め、フィードバックを気軽に共有できる環境を整備することで、心理的安全性を高めることにつながります。
また、組織の中では意思決定についてのさまざまな臆測や噂が飛び交い、さまざまな感じ方・捉え方が生まれます。組織としての意思決定の透明性を高めることで、メンバーが組織の動向を正しく理解し、共通理解に基づいた、変化や危機に対応する能力を高めます。
▼ こちらも参考になります。
危機管理計画の策定と見直し
危機や大きな変化に直面したときに備えて、組織として事前に緊急対応計画を策定しておくことが重要です。そして、その計画を定期的に見直すことで、常に最新の状況に対応できるようになります。
学習機会の提供
組織が社員にさまざまな学習機会を提供することで、社員一人ひとりが持つ能力やスキルを最大限に活用できるようになります。
また、社員にこれからの時代に求められる新たな知識やスキルの習得といった学習機会を提供することで、組織が変化への適応力を強化し、より迅速に成長できます。環境変化の激しい現代では、社員がこれからの時代に求められる、さまざまなテーマについて学べてリスキリングできる学習環境が求められています。
レジリエンスを高めるポイント【人材育成】
レジリエンスが高い人材を育成していくことが組織のレジリエンスの向上にもつながります。以下、個人のレジリエンスを向上させるために具体的な方法を紹介します。
思考の柔軟性を養う(意図的なポジティブ思考)
人間が生きていく上で、危険を回避するためにネガティブ思考が必要不可欠です。危険な状況に遭遇したら、ネガティブ思考を働かせ、危険から遠ざかります。しかし、ネガティブ思考だけでは全ての物事にうまく対処できません。
困難な状況が生じても、それを挑戦や成長の機会と捉えることが、困難を乗り越える第一歩です。無意識にネガティブに捉えてしまった考えを、意図してポジティブなものに書き換えることで、自分自身の考え方を改善し、物事に柔軟に対処でき、困難を克服する能力を高めることができます。
自身の強みやエネルギーの源泉を確認する
自分を理解し、自身の強みや自身の活動のエネルギーとなっている特性を把握し、強みや特性をどのように活用すればより活動のエネルギーを高められるかを模索します。自身の強みや自身のエネルギーの源泉となる特性をうまく活用できている状況が困難な状況から立ち直り、さらに目標に向かって活動していく上でとても重要な要素になります。
また、さまざまな活動を支えてくれる人々との関係性の強化もレジリエンス向上に不可欠です。困難な状況に立ち向かうときに、他人からのアドバイスやサポートを得られるということが、精神的な負担を軽減し、逆境を乗り越える自信を強めます。
問題解決力を磨く
日頃から問題解決スキルを磨くことが、問題が起きてもすぐに解決策を見つけ出すことに役立ちます。研修会参加や自己啓発は自分自身の問題解決の幅を広げていくには有効な手段です。問題解決の幅が広くなると、困難な状況でも冷静な判断を下し、自信を持って対処できるようになります。
セルフケアを行う
困難な状況を乗り越えていくには、心身ともに健康であることが前提となります。適度な睡眠、健康的な食事、運動や趣味などを通じて身体と心をケアし、効果的にストレスマネジメントを行えます。自分自身の健康を第一に考え、セルフケアに励むことがレジリエンスを保つには重要です。
▼ レジリエンス力を高めるトレーニングプログラム(SBRP)についてはこちらをご覧ください。
レジリエンスが高い人の特徴
レジリエンスが高い人の特徴は多くありますが、主な3つの特徴を紹介します。
ポジティブな思考を持っている
レジリエンスが高い人は、ポジティブな思考を持っている人が多いです。困難な状況に直面しても、自己が置かれた状況を乗り越える可能性を常に信じ、困難を前向きに捉えることができます。困難な状況を前向きにとらえる思考は、困難な状況を回避するのではなく、困難にチャレンジし、成長を目指そうとする意欲につながります。
解決策を見つける能力が高い
レジリエンスが高い人は、問題が生じた際に解決策を見つける能力も高いです。解決策を見つける能力が高ければ、問題に対する自己効力感が増え、逆境を乗り越える可能性が高くなります。
社会的な支援を活用できる
レジリエンスが高い人は、他人との良好な関係を築き、社会的な支援を得られる状況をつくる能力があります。自分だけでなく、他人を理解し支えることによって、困難を乗り越えていきます。
また、他人からの援助を受け入れる柔軟性も持ち合わせているため、逆境から速く脱出することができます。
組織の中で注意したい「学習性無力感」とは
「学習性無力感」とは、何度努力をしても成果が上がらない体験が続くことで、社員が自身の行動が結果に影響を与えないということを学習し、無力感を覚え、最終的には試みることを諦めてしまう心理的な状態を指します。
この概念は、心理学者マーチン・セリグマンによって提唱されました。彼の行った実験では、電気ショックを避けることができない状況を繰り返し体験させられた犬が、最終的には逃れる方法があるにも関わらず、逃げることを試みなくなるという結果が出ました。これが「学習性無力感」の最初の発見とされています。
人間も、何度努力しても成功せず、努力が何の結果ももたらさないと感じた場合、自己効力感を失い、新たな挑戦から逃れるようになる可能性があります。個人の学習性無力感は、組織のレジリエンスを低下させるため、注意しなければなりません。
トップダウンの強い組織注意!学習性無力感に陥っている!?
トップダウンの強い組織では社員が「学習性無力感」に陥りやすいです。組織内で学習性無力感を持った社員が増えてしまう原因には、社員の意思決定参画の欠如、自己責任感の弱さ、成長機会の不足などがあります。組織のトップが全ての決定を一方的に下すと、社員、自分の行動が結果に影響を及ぼすという意識が薄れ、学習性無力感を抱くことになりかねません。
また、社員が、組織内で意思決定をしているのはトップであり、自分たちには権限も責任もないと感じると、自身の行動に対する責任感を失う可能性があります。さらに、新たなことにチャレンジする機会がない、あるいは、失敗を厳しく罰するような状況では、従業員は安全地帯から出ることを避け、成長の機会を逃してしまいます。
このように、学習性無力感が組織の生産性に悪影響を及ぼすため、トップダウンの強い組織には、組織の意思決定に社員を参加させ、自己責任感と成長の機会を提供することが必要です。
トップダウンの強い会社では心理的安全性を高めていく取り組みも重要です。
心理的安全性についてはこちらをご覧ください。
学習性無力感から抜け出し、レジリエンスを高める方法
学習性無力感から抜け出し、レジリエンスを高める方法について紹介します。
自分が学習性無力感に陥っている場合、社員自身がそのことに気付いていないケースが多いです。そのため、組織としてさまざまな機会をつくり、社員がその状態に気付いて、意識して、改善するという努力が必要です。
社員のレジリエンスを高めるには、まず、レジリエンスプログラムを受講してもらい、思考の柔軟性を高めてもらいます。社員が学習性無力感に陥っている場合、何かの事象に遭遇した時に無意識的に「何をやっても意味がない」という捉え方をしてしまっている可能性が高いです。レジリエンスプログラムを受講する際に、社員は、無意識に行っている判断や物事の捉え方を書き出して可視化し、それを意図的にポジティブなものに書き換え、捉え直すという思考訓練を受けます。これによって、本人の思考の柔軟性を高めることができます。
このようなトレーニングを受講し、思考の柔軟性の高い人材が増えることで、学習性無力感から抜け出し、レジリエンスを高めることを実現できます。
また、組織のマネジメントのあり方も見直していく必要があります。全てをトップが決定するのではなく、現場から上がってきた提案や意見をトップが受け入れ、それを具現化していくことで、社員が組織の意思決定に加わることになり、学習性無力感を抱かなくなります。
学習性無力感から抜け出し、組織のレジリエンスを高めるには、経営者がそのような状況になっているということを認識し、マネジメントのあり方を見直していくことが必要です。
▼ 社内でレジリエンストレーニングを展開することができます。詳しくはこちらから。
まとめ
レジリエンスがビジネスを成功させる!?レジリエンスを高めるポイント・手法について解説してきました。環境変化の激しい現代において、企業にとっては、組織と従業員のレジリエンスを高めることがビジネスを発展させるカギとなります。
人間は生存本能から物事をネガティブに捉える思考を持っていますが、ネガティブな思考だけでは、物事にうまく対処できません。ビジネスでの成功に向けて、必要な場面で物事をポジティブに捉え、機会を創出していくことがビジネスパーソンに求められる能力です。その能力を強化するために、レジリエンスプログラムを受講し、思考の柔軟性を高めておくことをおすすめします。
株式会社LDcubeが提供するサービスの1つに、ストレングス・ベースド・レジリエンス・プログラム(SBRP)というプログラムがあります。ポジティブ心理学をベースに組み立てられた体系的なプログラムを受講することで、思考の柔軟性を高めることが可能です。さらにレジリエンスプログラムを組織内の多くの方々に展開したいというニーズに応えるために、社内トレーナー養成コースも用意しています。
プログラムの一部を体験できる無料体験会も実施しています。お気軽にご相談ください。
▼ 3分でわかるレジリエンスについての資料はこちらからダウンロードできます。
▼ レジリエンストレーナー資格についての資料がこちらからダウンロードできます。