「OJTという名の放置」が意味する本質的な課題とは?Z世代の新人に合わせた解決策を解説!
多くの企業でOJT(On The Job Training:実地研修)による人材育成が行われています。Off-JTと違いOJTは現場で仕事をしながら指導する育成方法ですが、実態は「放置」になっているケースが少なくありません。
教育担当者の「忙しくて時間を取ることが難しい」「どう教えていいか分からない」という悩みや、組織としての体制が整っていないことなどが原因で、新入社員が十分なサポートを受けられずにいるのです。
職場で十分な指導を受けられていないと感じている若手社員も多く存在し、これは早期離職の主要な要因の1つとなっています。
特に近年は、リモートワークの浸透やビジネス環境の急速な変化により、従来のOJTが機能しにくい状況も加わり、この問題は一層深刻化しています。
しかし、「OJTという名の放置」は、適切な施策と仕組みづくりによって解消することができます。
本記事では、現場で実際に効果を上げている具体的な施策と、効果的なOJTの進め方について、実践的なノウハウをご紹介します。
既に人材育成に課題を感じている方はもちろん、これから新入社員の教育を担当する方にとっても、すぐに活用できる情報をお届けします。
特に、教育担当者の負担を軽減しながら、効果的な人材育成を実現するためのポイントを重点的に解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
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目次[非表示]
- 1.「OJTという名の放置」が意味する本質的な課題
- 2.OJTという名の放置が起きている理由
- 3.OJTという名の放置が引き起こす3つの問題
- 4.OJTという名の放置を防ぐための組織的対応
- 5.放置を防ぐ、効果的なOJT体制の整備・進め方
- 6.現場ですぐできる「OJTという名の放置」を防ぐための5つの対策
- 7.Z世代のOJT放置を防ぐ新たな対策!
- 7.1.OJTで教える内容をデジタルコンテンツ化する
- 7.2.いつでもどこでも学習できる環境を整える
- 7.3.スキルマップをオンライン化し、受講履歴を確認できるようにする
- 7.4.オンライン上でいつでも質疑応答できる環境を整える
- 7.5.定期的なオンラインミーティングで進捗を確認する
- 8.デジタル化でOJTという名の放置を解決した支援事例
- 9.まとめ
「OJTという名の放置」が意味する本質的な課題
「OJTという名の放置」という言葉を耳にすることは少なくありません。
この問題は、表面的な教育方法の課題だけではなく、組織内の人材育成における本質的な問題を浮き彫りにしています。
ここでは、3つの重要な課題について詳しく見ていきましょう。
人材育成に対する無責任さの表れ
OJTという名の放置は、組織内の人材育成における無責任な姿勢を如実に表しています
。多くの企業では「現場で学ばせる」という名目の下、実質的には新入社員を放置している状態が散見されます。
この背景には、人材育成を「誰かがやってくれる」という他人任せの姿勢や、育成の責任の所在が不明確な組織風土が存在しています。
本来、人材育成は組織の競争力を左右する重要な経営課題であるにも関わらず、その認識が組織全体で共有されていないことが多いのが現状です。
人事部門は現場(OJT)に任せたという思い
人事部門がOJTを現場任せにしている状況には、深刻な問題が潜んでいます。「実務は現場が1番よく知っているから」という理由で、OJTの計画から実施、評価まで全てを現場に任せきりにしてしまう傾向があります。
しかし、これは組織内の人材育成における本質的な役割を見失っている状態です。
人事部門には、以下のような重要な役割があるはずです。
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これらの役割が適切に果たされないことで、現場任せのOJTによって新入社員が放置される状況を生む要因となっているのです。
現場はOJTの体制が整っていないという現状
現場では、日常業務に追われる中でOJTを実施しなければならない状況に直面しています。
しかし、効果的なOJTを実施するための体制が十分に整っていないのが実情です。
OJTトレーナーとなる若手・中堅社員は自身の業務で多忙を極め、じっくりと新入社員の指導に時間を割くことができません。
また、指導方法も属人的になりがちで、組織として標準化された育成プロセスが確立されていないケースが多く見られます。
このような状況下では、OJTトレーナーは自身の経験や感覚に基づいて手探りで指導を行わざるを得ず、結果として新入社員に対する「放置」という形で表面化してしまいます。
この問題を解決するためには、現場の実態を正確に把握し、実効性のある支援体制を構築することが不可欠なのです。
▼OJTガチャについては下記で詳しく解説しています。
⇒OJTガチャの不運・悲劇を防ぐ処方箋3選!効果的な対策について解説!
OJTという名の放置が起きている理由
OJTという名の放置は、決して意図的に起こっているわけではありません。しかし、組織のさまざまな要因が複雑に絡み合って、結果として「放置」という状態を生み出しています。
ここでは、その背景にある3つの主要な理由について詳しく解説していきます。
組織的に人材育成に対する意識が低い
組織全体の人材育成に対する意識の低さは、OJTでの放置を引き起こす根本的な要因となっています。
経営層が人材育成を重要な経営課題として認識していないケースや、短期的な業績達成が優先され、人材育成への投資が後回しにされている状況が散見されます。
このような組織風土では、現場レベルでも人材育成の優先度が自然と下がってしまい、日々の業務に追われる中で新入社員の育成がおろそかになってしまうのです。
OJTについての理解が不足している
多くの企業では、OJTの本質的な意義や効果的な実施方法について、十分な理解が得られていない現状があります。
OJTは単に「現場で仕事を覚えさせる」という漠然とした認識にとどまっており、以下のような重要な要素が見落とされています。
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このような理解不足により、場当たり的な指導となり、結果として新入社員が放置される状況につながってしまうのです。
OJT体制が整っていない
現場でOJTを効果的に実施するための体制が十分に整備されていないことも、大きな課題となっています。
OJTトレーナーとなる社員の選定から、育成計画の策定、進捗管理の方法まで、多くの企業で体系的な仕組みが確立されていません。
特に以下のような点が体制の不備として表れています。
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これらの体制の不備により、現場のOJTトレーナーは十分な指導時間を確保できず、また効果的な指導方法も確立できないまま、結果として新入社員の「放置」という状況を生み出してしまっているのです。
このような状況を改善するためには、組織全体での意識改革と共に、具体的なOJT体制の整備が必要不可欠です。
OJTという名の放置が引き起こす3つの問題
OJTにおける「放置」は、新入社員個人の成長を妨げるだけでなく、組織全体に深刻な影響を及ぼします。
ここでは、放置することで引き起こす3つの重大な問題について、その影響と具体的な事例を交えながら解説していきます。
新入社員の成長が著しく遅れる
適切な指導を受けられない新入社員は、基本的なビジネススキルの習得にも予想以上の時間がかかってしまいます。
本来であれば3カ月程度で習得できる業務知識の習得に半年以上かかったり、単純な作業ミスを繰り返したりする状況が続きます。
これは新入社員本人の能力の問題ではなく、適切な指導や支援が得られていないことに起因しています。
特に入社後の重要な時期に必要とされる以下のような基礎的なスキル習得が遅れることで、その後の成長にも大きな影響を及ぼすことになります。
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早期離職リスクが高まる
放置された状態が続くと、新入社員は強い孤立感や不安感を抱くようになります。
「自分は会社に必要とされていないのではないか」「この状況で成長できるのだろうか」といった不安が日々募っていき、最終的には離職という選択につながってしまいます。
また、放置された期間が長くなるほど、以下のような負の感情が蓄積されていきます。
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職場全体の生産性が低下する
新入社員の放置は、職場全体の生産性低下を引き起こす重大な要因となります。
適切な指導を受けられない新入社員は、基本的な業務でもミスを繰り返すことが多く、そのフォローに他のメンバーが時間を取られることになります。
結果として、チーム全体の業務効率が低下し、以下のような負のサイクルが生まれてしまいます。
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この悪循環は、単に新入社員の成長を妨げるだけでなく、職場全体のモチベーションや生産性に大きな影響を及ぼすことになります。
特に中堅社員への負担が増加することで、本来の業務に支障が出たり、新たな施策に取り組む余裕がなくなったりするなど、組織の成長機会も失われていくのです。
OJTという名の放置を防ぐための組織的対応
OJTにおける放置の問題を解決するためには、現場レベルの対応だけでは不十分です。
組織全体で取り組むべき課題として認識し、経営層から現場まで一貫した対応を行うことが求められます。
ここでは、組織として取り組むべき5つの重要な施策について解説していきます。
経営陣が人材育成・OJTについての重要性を理解する
人材育成とOJTの改革は、経営陣の本質的な理解と強いコミットメントから始まります。
経営陣には、人材育成が企業の持続的な成長に直結する重要な経営課題であることを認識し、適切な投資判断を行うことが求められます。
具体的には、育成体制の構築に必要な予算の確保、人員配置の最適化、育成時間の確保など、実効性のある支援を行う必要があります。
経営陣から人材育成・OJTの重要性を組織内に発信する
経営陣が人材育成の重要性を理解しただけでは不十分です。その考えを組織全体に浸透させ、共通認識として定着させることが重要です。
経営陣からの定期的なメッセージ発信や、人材育成に関する方針の明確化、成功事例の共有などを通じて、組織全体で人材育成の重要性を共有する文化を醸成していく必要があります。
管理者が人材育成・OJTの重要性についての研修を受講する
現場の管理者層には、OJTの具体的な進め方や効果的な指導方法について、体系的な知識を身に付けることが求められます。
特に以下のような点について、十分な理解を深めることが重要です。
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人材育成の責任は、上司である管理者にあります。
管理者が人材育成・OJTの重要性を正しく理解し、具体的な手法を学ぶ必要があります。
人事部門と現場が協力してOJT体制を構築する
効果的なOJT体制の構築には、人事部門と現場の連携が不可欠です。
人事部門は全社的な育成の枠組みを提供し、現場はその実態に即した運用方法を確立します。
両者が定期的に情報を共有し、課題の早期発見と解決に取り組む体制を整えることで、より実効性の高いOJTが実現できます。
現場で計画的にOJTを始める
体制が整ったら、実際のOJTを計画的に始めます。
この際、急激な変更は現場に混乱を招く可能性があるため、段階的な導入を心がけましょう。
まずは以下のような基本的な取り組みから始めることをおすすめします。
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これらの組織的な取り組みを着実に実行することで、「放置」という課題を解決し、効果的なOJTの実現につながっていきます。
▼OJTのやり方については下記で詳しく解説しています。
⇒OJTの正しいやり方とは?即戦力を育てる7ステップを徹底解説!
▼OJTトレーナー研修については下記で詳しく解説しています。
⇒OJTトレーナー研修とは?45%が未実施!内容や実施方法を解説!
放置を防ぐ、効果的なOJT体制の整備・進め方
OJTでの放置を防ぎ、効果的な人材育成を実現するためには、具体的な体制の整備と明確な進め方の確立が不可欠です。
現場で実践できる、具体的なOJT体制の整備方法と、その効果的な進め方について解説していきます。
月間の育成計画を立てる
効果的なOJTの第一歩は、綿密な育成計画の策定です。単なるタスクの割り当てではなく、新入社員の成長段階に応じた計画的な育成が必要です。
月間の育成計画では、習得すべきスキルや知識を明確にし、それらを段階的に身に付けられるようなスケジュールを組み立てます。
この際、新入社員の理解度や成長スピードに合わせて柔軟に調整できる余地を持たせることも重要です。
業務の手順を細かく説明して見せる
業務の指導では、単に「やり方を教える」だけでは不十分です。
なぜその作業が必要なのか、どのような影響があるのかなど、業務の本質的な理解を促すことが重要です。
手順の説明では、以下のような点に特に注意を払います。
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実践中の様子を必ず側で見守る
新入社員が実際に業務を行う際は、必ずトレーナーが側について見守ることが重要です。
これは単なる監視ではなく、新入社員が安心して業務に取り組める環境をつくるためです。トレーナーは適切なタイミングでアドバイスを行い、必要に応じて実践的なサポートを提供します。
また、この過程で新入社員の理解度や課題を正確に把握することができ、それを次の指導に生かすことができます。
できた点と改善点を毎日フィードバックする
日々のフィードバックは、効果的なOJTの要となります。その日のうちに成功体験を共有し、改善点を明確にすることで、学習効果を最大限に高めることができます。
フィードバックでは以下の点を意識して行います。
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このように、細やかな配慮と計画的な指導を組み合わせることで、「放置」のない効果的なOJT体制を構築することができます。
重要なのは、これらの要素を継続的に実践し、必要に応じて改善を加えていくことです。そうすることで、新入社員の着実な成長と、組織全体の人材育成の質的向上につながっていくのです。
▼OJTの計画については下記で詳しく解説しています。
⇒OJT計画とは?テンプレートや効果的なプランの立て方・注意点
現場ですぐできる「OJTという名の放置」を防ぐための5つの対策
組織的な体制づくりには時間がかかりますが、現場レベルですぐに実践できる対策もあります。
明日から実践可能な、具体的な5つの施策について、その実施方法と期待される効果を解説していきます。
毎週30分の育成面談を設定する
定期的な育成面談は、新入社員の成長を支援する最も効果的な方法の1つです。
毎週30分という短い時間であっても、確実に実施することで大きな効果が期待できます。面談では、その週の成果や課題を共有し、次週の目標を設定します。
また、業務上の不安や悩みについても率直に話し合える場とすることで、新入社員が孤立を感じることを防ぎます。
1日2回の進捗確認タイムを決める
1日の始まりと終わりに、短時間でも必ず進捗確認の時間を設けることが重要です。
朝はその日の業務内容と目標を確認し、夕方はその日の成果と翌日への課題を共有します。
この習慣により、新入社員は常に明確な目標を持って業務に取り組むことができ、トレーナー側も適切なタイミングでの指導が可能となります。
指導マニュアルをステップ形式で作成する
効果的な指導を行うためには、体系的なマニュアルの存在が欠かせません。
特に以下の要素を含むマニュアルを作成することで、指導の質を安定させることができます。
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▼OJTのマニュアルについては下記で詳しく解説しています。
⇒デジタル時代のOJTマニュアルとは?社員教育のポイントを紹介!
部内の指導担当を複数人に分散する
OJTの負担を特定の個人に集中させないことが重要です。
複数のOJTトレーナーが役割を分担することで、以下のような利点が生まれます。
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月1回のOJTトレーナーミーティングを必須化する
OJTトレーナー自身の成長も、効果的なOJTには不可欠です。
月に1度、OJTトレーナー同士が集まって情報共有や課題解決の討議を行う機会を設けることで、指導スキルの向上と標準化を図ることができます。
このミーティングでは、実際の指導現場での成功事例や課題を共有し、より良い指導方法を全員で考えていきます。
ミーティングでは特に以下のような点について重点的に取り上げることで、実践的なスキル向上を図ります。
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これらの対策は、必ずしも大がかりな組織改革を必要とせず、現場の判断で即座に実行に移すことができます。
重要なのは、これらの施策を継続的に実施し、必要に応じて改善を加えていくことです。
地道な取り組みの積み重ねが、最終的には「放置」のない効果的なOJT環境の構築につながっていくのです。
Z世代のOJT放置を防ぐ新たな対策!
デジタルネーティブであるZ世代の新入社員に対しては、従来のOJTだけではなく、彼らの特性や学習スタイルに合わせた新しいアプローチが必要です。
ここでは、テクノロジーを活用した効果的なOJT手法と、Z世代の特性を考慮した放置防止策について解説していきます。
OJTで教える内容をデジタルコンテンツ化する
Z世代の学習スタイルに合わせ、従来の対面指導に加えてデジタルコンテンツを活用することが効果的です。
基本的な業務手順や知識をビデオやスライド、インタラクティブな教材として提供することで、彼らの自主的な学習を促進できます。
また、繰り返し閲覧可能な形式にすることで、理解度に応じた学習ペースの調整も可能となります。デジタルコンテンツは、単なる業務マニュアルの電子化ではなく、視覚的に分かりやすい形式を心がけることが重要です。
いつでもどこでも学習できる環境を整える
Z世代は、時間や場所にとらわれない柔軟な学習環境を好む傾向があります。
社内のラーニングマネジメントシステム(LMS)やモバイルアプリを活用し、通勤時間や隙間時間を有効活用できる学習環境を提供することで、効率的なスキル習得が可能となります。
また、リモートワークの普及に対応し、オフィス以外の場所でも学習を継続できる環境を整えることで、「放置」を防ぐことができます。
スキルマップをオンライン化し、受講履歴を確認できるようにする
学習の進捗状況を可視化することは、Z世代の成長意欲を高める重要な要素です。
オンラインのスキルマップを導入し、以下のような項目を明確に示すことで、自身の成長を実感できる仕組みをつくります。
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オンライン上でいつでも質疑応答できる環境を整える
Z世代は疑問が生じた際に、即座に解決策を求める傾向があります。
チャットツールやQ&Aプラットフォームを活用し、気軽に質問できる環境を整備することが重要です。
これにより、忙しそうな先輩に「聞きづらい」という従来ある心理的障壁を下げ、より活発なコミュニケーションを促進することができます。
特に、以下のような仕組みを整えることで、効果的な支援が可能となります。
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定期的なオンラインミーティングで進捗を確認する
対面でのコミュニケーションが制限される環境下でも、オンラインミーティングを活用することで効果的な進捗管理が可能です。週次や月次で定期的なオンラインミーティングを設定し、成長の確認と課題の共有を行います。
この際、単なる報告会ではなく、双方向のコミュニケーションを重視し、新入社員が主体的に参加できる場となるよう工夫することが重要です。
これらのデジタルを活用した施策は、Z世代の特性に合わせた効果的なOJTを実現するとともに、「放置」を防ぐ有効な手段となります。
ただし、これらはあくまでも従来の対面指導を補完するものであり、人的な関わりの重要性は変わらないことを忘れてはいけません。
▼OJTのデジタル化の背景にある「OJT最大のデメリット」については下記で詳しく解説しています。
⇒OJTにおける最大のデメリットとは?解決策と合わせて解説!
デジタル化でOJTという名の放置を解決した支援事例
建設業でOJTのデジタルを図り、OJTという名の放置を解決したご支援事例を紹介します。
社員数:100名以上
事業:土木建築工事、建設工事の設計と監理
課題・背景
技術教育に十分な時間を割けない
ベテラン社員が現場作業に追われ、若手社員の技術教育を十分にできていないという課題がありました。
また、時間だけでなく、人員にも余裕がないため、本来教えるべき技術やノウハウが現場で伝達できていないという事態に陥っていました。
OJT格差と離職率が上昇
現場のOJTは主にベテラン社員が担当していましたが、人によって言うことが違う、厳しい口調の上司が多いなど、 OJT格差がありました。その結果、若手社員の離職率が高くなり、新入社員の採用に悪影響が出ました。
取り組みの詳細
全社プロジェクトの立ち上げ
課題解決のため、人を介さず業務知識が学べるコンテンツの配信環境を構築するプロジェクトを立ち上げました。まずは各現場で「わが社の新人に必要な学習内容は何か」という観点で棚卸しを行いました。
このプロジェクトの初期は、中堅社員をコンテンツ作成作業の中心に据えました。
全社員アンケートを実施
現場所長や各部署の社員を対象とした「現場に配属になった際に覚えてほしいこと」アンケートを実施しました。
そこで集まった声を基にし、業務フローと照らし合わせながら、必要なコンテンツリストをブラッシュアップしました。
コンテンツ作成のサポート体制を強化
中堅社員の目線でコンテンツ作成を行った結果、自身が新入社員だった頃の感覚を忘れていることもあり、どのようなポイントを伝えれば新入社員にとって分かりやすいかという観点が抜けた内容になっていました。
また、コンテンツ一つ一つの情報量が多いことや、自身が普段当たり前のように行っている業務を、コンテンツに落とし込むことができないという課題が浮上しました。そこで具体的な作業に関するコンテンツ作成を若手社員が担当するように切り替えました。
さらに、各部に配置したアシスタントによる動画撮影・編集のバックアップなど、コンテンツ作成サポートの強化を行いました。
取り組み後の成果
若手社員の知識習得レベルの底上げ
若手社員が中心となり、自身が新入社員だった頃の目線を思い出しながらコンテンツ作成を行い、2年間で600個が完成しました。これにより、初めて業務を覚える新入社員にとっても分かりやすく、必要な情報が十分にそろった学習環境を提供することができました。
また、マイクロラーニングの考え方に基づき、全ての動画コンテンツの長さを5分以内に収めました。これによって、隙間時間に効果的な学習をすることが可能になりました。
その結果、新入社員の知識習得レベルの底上げにつながりました。
OJT格差の是正とコミュニケーションの活性化
コンテンツを活用した教育によって社員の学習の機会が標準化されたことで、OJT格差が縮小しました。
また、業務内容については新入社員と若手社員がベテラン社員に習い、現場で活用するスマートフォンやタブレットなどについては上司が新入社員と若手社員から学ぶという動きも出てくるようになりました。
この動きは、ベテラン社員と新入社員、若手社員のコミュニケーションの活性化にもつながっています。
入社希望者の増加
OJTのデジタル化を導入したことが、県内の入社希望者数の増加につながりました。新卒の採用説明会やメディアの取材において、OJTのデジタル化を図った取り組みを紹介し、企業の教育体制の優位性をアピールしました。
その結果、県内の学生が選ぶ建設業知名度ランキングで1位を獲得し、多くの学生から選ばれる企業となりました。
まとめ
「OJTという名の放置」が意味する本質的な課題とは?Z世代の新人に合わせた解決策を解説!について紹介してきました。
- 「OJTという名の放置」が意味する本質的な課題
- OJTという名の放置が起きている理由
- OJTという名の放置が引き起こす3つの問題
- OJTという名の放置を防ぐための組織的対応
- 放置を防ぐ、効果的なOJT体制の整備・進め方
- 現場ですぐできる「OJTという名の放置」を防ぐための5つの対策
- Z世代のOJT放置を防ぐ新たな対策!
- デジタル化でOJTという名の放置を解決した支援事例
本記事では、企業における「OJTという名の放置」について、その本質的な課題から具体的な解決策まで、多角的な視点で解説してきました。
この問題の解決には、単なる教育手法の改善だけではなく、組織全体での取り組みが大切です。
まず重要なのは、経営層が人材育成を重要な経営課題として明確に位置づけ、必要な経営資源を適切に配分することです。
そのうえで、人事部門と現場が緊密に連携し、実効性のある育成体制を構築していく必要があります。
現場レベルでは、定期的な育成面談の実施や段階的な育成計画の策定など、すぐに実践できる具体的な施策から着手することが効果的です。
特に、複数のトレーナーによる指導体制の構築は、特定の個人への負担集中を避けつつ、多様な視点からの育成を可能にする有効な方策といえます。
さらに、デジタル技術の活用も見逃せない重要なポイントです。特にZ世代の新入社員に対しては、彼らの学習スタイルに合わせたデジタルコンテンツの提供や、オンラインでのコミュニケーション環境の整備が効果的です。
ただし、これらはあくまでも対面での指導を補完するものであり、人的な関わりの重要性は変わらないことを忘れてはいけません。
最後に強調したいのは、OJTにおける「放置」の解消は、単に新入社員の育成効率を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上と企業文化の醸成にも大きく貢献するという点です。
人材育成に真摯に取り組む姿勢は、社員のモチベーション向上につながり、結果として組織の持続的な成長を支える基盤となります。
本記事で紹介したさまざまな施策を、自社の状況に応じて適切に組み合わせながら実践することで、効果的なOJTの実現と、それを通じた組織全体の成長が期待できるでしょう。
人材育成は一朝一夕には成果が表れにくい取り組みですが、地道な努力の積み重ねが、必ずや組織の未来を切り開く力となるはずです。
LDcubeでは、OJTトレーナー研修やOJTのデジタル化支援のサービスを提供しています。無料のプログラム体験会やプラットフォームのデモ体験会なども行っています。お気軽にお声がけください。
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