自律型人材とは?特性や特徴、行動パターン・育成方法などポイントを解説!
「自律型人材を増やしたいけれど、どうすればよいかわからない」
と悩んでいる経営者や人事担当者の方は、多いのではないでしょうか。
近年、自ら考え行動できる自律型人材の重要性が高まっています。自律型人材は、上司の指示を待つことなく、自ら目標を設定し、その達成に向けて主体的に行動します。
自律型人材が増えれば、組織全体の生産性が向上し、競争力の強化につながるのです。
しかし、自律型人材の育成方法がわからず、困っている企業も少なくありません。
本記事では、自律型人材とはどのような人材なのか、その特性や行動パターンを詳しく解説します。自律型人材を育成する具体的な方法や、それを支える組織風土について、理論的背景も交えてお伝えします。
最後までお読みいただくと、自律型人材を育成するための実践的知見が得られ、人材育成の取り組みに生かせるはずです。ぜひ、本記事を参考に、自律型人材の育成に取り組んでみてください。
▼ 自律型人材はセルフエスティームも高いことが多いです。セルフエスティームについては下記をご覧ください。⇒セルフエスティーム(自尊感情)とは?公式や測定尺度・高める方法
▼自律型人材は自己肯定感が高いことも多いです。自己肯定感を高める方法については下記で解説しています。⇒自己肯定感を高める7つの方法とは?低い部下をケアするポイントと合わせて解説!
▼ LDcubeへの問合せはこちらから。
目次[非表示]
- 1.自律型人材とは?
- 2.自律型人材に共通して見られる特性
- 3.自律型人材の4つの行動パターン
- 4.自律型人材にはどのような背景が影響するか?
- 5.自律型人材と関連性の深い心理学理論
- 6.企業が自律型人材を育成する5つのポイント
- 6.1.自律性への欲求を満たす環境の提供
- 6.2.有能感を高める機会の提供
- 6.3.関係性を強化する施策の実施
- 6.4.経験学習の機会の提供
- 6.5.自律型人材を支える組織風土の醸成
- 7.自律型人材育成に必要な組織内環境
- 7.1.自律的に学べる学習環境
- 7.2.内発的動機に気付く研修環境
- 7.3.上司からの支援環境
- 8.自律型人材を育成するメリットとデメリット
- 9.まとめ
自律型人材とは?
自律型人材とは、与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら問題点を発見し解決策を見出せる人材のことをいいます。
別の表現をすれば、自分で考え行動し、その結果に責任を持つことができる人材です。
「具体的にどのような要素が備わっていれば、自律型人材といえるのか?」
という問いに関しては、以下の3要素が挙げられるでしょう。
【自律型人材が持つ3つの要素】
|
これらの要素を兼ね備えた人材を育成し、活躍を促すことが、組織の発展につながるのです。
自律型人材に共通して見られる特性
前章で紹介した3要素以外にも、自律型人材には、いくつかの特徴的な能力や姿勢があります。これらの特性を理解することは、自律型人材の育成や活用を考えるうえで重要な視点となります。
【自律型人材に共通して見られる特性】
|
詳しくは後述しますが、自律型人材のこれらの特性は、生まれ持った資質のみならず、環境や経験を通じて育まれる部分が大いにあります。
自律型人材の4つの行動パターン
前章で紹介した特性の発揮として、自律型人材が見せる行動パターンとしては、以下4つが挙げられます。
【自律型人材の行動パターン】
|
企業にとっては、「こんな行動パターンの人材にいてほしい」と感じるところではないでしょうか。
続いて以下では、どのような背景を持つ人物が自律型人材になるのかについて、解説します。
自律型人材にはどのような背景が影響するか?
自律型人材が輩出される背景には、家庭環境や教育環境、仕事経験など、さまざまな要因が関係しています。
ここでは、自律型人材になりやすい背景について、4つの観点から説明します。
|
家庭環境
1つ目は「家庭環境」です。
自律型人材になりやすい背景として、まず家庭環境が挙げられます。自主性や責任感を尊重する家庭で育った人は、自律的な行動を身につけやすい傾向があるのです。
【自律型人材を育む家庭環境の特徴】
|
このように、家庭環境は自律型人材を育む上で重要な役割を果たします。
なお、注意点として、人材採用の観点からは、面接などで家族構成や生活環境について質問することは禁じられています。
これらの情報は、企業が後天的に自律型人材を育成する際のヒントとしてお役立てください。
教育環境
2つ目は「教育環境」です。
教育環境は、自律型人材の育成に大きな影響を与えます。主体的な学習を促す教育環境に触れることで、自律的な行動を習得しやすくなるのです。
【自律型人材を育む教育環境の特徴】
|
主体的な学習を重視し、自主的な活動を奨励する教育環境は、自律型人材の育成に大きく寄与します。
これらは、企業の組織風土を醸成するうえで、大いにヒントとなるポイントです。
仕事経験
3つ目は「仕事経験」です。
社会に出てからの経験で、自律型人材へと変貌を遂げる人たちも少なくありません。
裁量権を与えられ、自分で判断・行動する機会が多い仕事に就くことで、自律的な行動力が養われるのです。
【自律型人材を育む仕事経験の特徴】
|
人材採用の際には、応募者の前職までの経験に注目することで、自律型人材としてのポテンシャルを見極めることができるでしょう。
また、社内では上記の仕事経験を積ませることで、自律型人材が育ちやすくなります。
ロールモデルの存在
4つ目は「ロールモデルの存在」です。
自律型人材の育成において、ロールモデル(見本となる人)の存在も見逃せません。
身近に自律的に行動する上司や先輩がいる環境では、そのロールモデルから学ぶことで、自律的な行動を身に付けやすくなります。
【自律型人材を育むロールモデルの特徴】
|
このようなロールモデルを社内に数多く輩出することが、持続的な自律型人材の育成に効果的です。
以上、自律型人材を輩出する背景には、家庭環境、教育環境、仕事経験、ロールモデルの存在という4つの要因が大きく関わっていることを見てきました。
続いて以下では、科学的に掘り下げていきたいと思います。
自律型人材と関連性の深い心理学理論
自律型人材の概念は、いくつかの科学的理論と深く関連しています。
ここでは、自律型人材の特性や育成を理解するうえで重要な2つの理論を紹介します。
|
自己決定理論(Self-Determination Theory)
自己決定理論は、エドワード・デシ(Edward L. Deci)とリチャード・ライアン(Richard M. Ryan)によって提唱された動機付けに関する理論です。
この理論は、人間の動機付けを外発的動機付けと内発的動機付けに分類し、「内発的動機付け」を高めるためには、自律性・有能感・関係性の3つの基本的心理欲求を満たす必要があると提唱しています。
|
別の表現をすると、人間は「自律性・有能感・関係性」を満たしたいという欲求を持っています。
これらの欲求が高いレベルで満たされた人物が、外発的動機付けがなくても、内発的動機付けによって行動する自律型人材になると考えられるのです。
【自己決定理論における3つの心理的欲求】
|
自律型人材を育成するためには、この3つのニーズを満たす環境や施策を整えることが重要です。
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査」、独立行政法人国際協力機構「SHEPアプローチの考え方」
経験学習(Experiential Learning)
経験学習は、デビッド・コルブ(David A. Kolb)によって提唱された学習理論です。
この理論では、「具体的経験」「内省的観察」「抽象的概念化」「能動的実験」の4段階を循環的に繰り返すことで、効果的な学習が行われると考えます。
【経験学習の4段階プロセス】
|
自律型人材は、この思考パターンを自然発生的に身に付けているケースが多いといえます。
そこで、後天的に経験学習の考え方を習得することで、自律型人材の育成をより効果的に進められるのです。
参考:WGU「Experiential Learning Theory」
企業が自律型人材を育成する5つのポイント
最後に、ここまでに解説してきた自律型人材の特性や心理学的理論を踏まえて、企業が自律型人材を育成する際のポイントを5つ、ご紹介します。
|
自律性への欲求を満たす環境の提供
1つめのポイントは「自律性への欲求を満たす環境の提供」です。
ここでいう自律性は、前出・自己決定理論における「自律性(Autonomy)」を指します。説明文を再掲しましょう。
自律性(Autonomy):
自分の行動を自分で選択し、コントロールできるという感覚です。仕事における裁量権や意思決定への参加機会などを通じて満たされます
別の表現をすると、自社の従業員が、
「自分で自分の行動を決められない、自分の意志でコントロールできない」
という不満を抱えている場合、自律性への欲求が満たされていません。
自律性への欲求を満たすためには、裁量権や意思決定への参加機会を付与することが必要です。
【自律性を支援する具体的な施策】
|
逆に、好ましくない例として、「マイクロマネジメント」があります。マイクロマネジメントとは、あらゆることに細かく干渉するマネジメントスタイルです。
上司が部下の業務を逐一監視する環境では、部下の自律性は満たされず、自律型人材は育ちにくくなります。
従業員の一人一人が「自分の選択で決められる」という実感を持てるように、社内を変えていきましょう。
有能感を高める機会の提供
2つめのポイントは「有能感を高める機会の提供」です。
有能感の説明を再掲します。
有能感(Competence):
自分の能力を発揮し、目標を達成できるという感覚です。適度なチャレンジと、それを乗り越えた時の達成感などから得られます
有能感を高めるためには、適度なチャレンジと成功体験が、重要な鍵となります。
【有能感を高める具体的な施策】
|
このように、有能感を高める機会を提供することで、部下は自信を持って自律的に行動できるようになります。
「自分にはできる」という感覚が、自律型人材としての原動力となるのです。
関係性を強化する施策の実施
3つめのポイントは「関係性を強化する施策の実施」です。
関係性の説明文を再掲しておきましょう。
関係性(Relatedness):
他者との有意義な関係性を築けているという感覚です。職場における信頼関係やチームワークなどを通じて満たされます
関係性を強化するためには、チームビルディングやコミュニケーションの機会を設けることが有効です。
【関係性を強化する具体的な施策】
|
社内で関係性を強化する過程で、それぞれの従業員が自分のロールモデルを見つけられることも、大きな意義があります。
信頼できる上司や先輩との関わりの中で、自律型人材としての在り方を学べます。良好な関係性は、自律型人材の成長を加速させる原動力となります。
経験学習の機会の提供
4つめのポイントは「経験学習の機会の提供」です。
前述のとおり、経験学習とは、具体的な経験を通じて内省し、新しい概念を次の経験へ生かすプロセスを指します。
自律型人材を育成するうえで、経験学習の機会を提供することは重要なポイントとなります。
【経験学習を促進する具体的な施策】
|
実務的には、経験学習に適した学習プラットフォームを導入することが非常に有益です。
【経験学習に適した学習プラットフォームの例:CK-connect】
ただし、ツールの導入だけでは不十分で、そこで提供される学習コンテンツの質が重要であることはいうまでもありません。
▼学習プログラムの設計について詳細は、以下の記事にてご確認ください。
自律型人材を支える組織風土の醸成
5つめのポイントは「自律型人材を支える組織風土の醸成」です。
自律型人材が力を発揮するためには、それを支える組織風土の醸成が欠かせません。
自律型人材を支える組織風土の特徴を3つ、ご紹介します。
|
組織風土の醸成には時間がかかりますが、地道な取り組みを続けることが大切です。
やがて、社内に自律型人材のロールモデルがあふれるようになれば、新入社員も自然と自律型人材へと成長していく好循環が生まれます。
自律型人材育成に必要な組織内環境
自律型人材を育成するには組織内に「自律的に学べる学習環境」「内発的動機に気付く研修環境」「上司の支援環境」を整えておく必要があります。
自律的に学べる学習環境
自律型人材を育成するためには、個々の社員が自分のペースと興味に合わせて学習できる「パーソナライズ学習」が実現できる学習環境が必要です。これには以下の要素が含まれます。
|
このような環境を整備することで、社員は自らの興味や目標に沿ったペースで学習を進め、自律的な成長が促進されます。これが自律型人材の育成に貢献します。
▼パーソナライズ学習の実現には「CK-connect(シーケーコネクト)」がおすすめです。
内発的動機に気付く研修環境
自律型人材を育成するためには、社員が内発的動機に気付く研修環境を整えることが重要です。
その方法の一つとして、セルフエスティーム(自己肯定感)を高めるための研修が挙げられます。この研修では、社員が自己理解を深めるプロセスを支援します。以下に、その内容を示します。
自分一人では気付けないことも多いため、他の参加者からのフィードバックを受けながら進めることが必要です。そのため、集合研修の受講環境を整えることが重要です。 |
このようにセルフエスティームを高める研修を受講することで、従業員は自分自身の価値や可能性に気付き、自律的に行動できる内発的動機を見つけることができます。これが自律型人材の育成に繋がり、結果として組織全体のパフォーマンス向上に寄与するのです。
▼セルフエスティームについては下記で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
⇒セルフエスティーム(自尊感情)とは?公式や測定尺度・高める方法
上司からの支援環境
自律型人材を育成するためには、上司の支援が欠かせません。まず、上司自身が自律型人材の特性とその重要性を理解することが大切です。
自律型人材とは、自分自身で課題を見つけ、解決に向けて主体的に行動する能力を持つ人材です。これを促進するためには、上司が部下のセルフエスティーム(自己肯定感)を高めるように関わることが求められます。
具体的な方法としては、上司が部下に対して支援的な関係を築くことが重要です。
例えば、部下の意見やアイデアを尊重し、積極的にフィードバックを行うことや、成功体験を共有して部下の自信を育むこと、そして自己成長の機会を提供するといった方法があります。
さらに、課題解決のプロセスにおいても、上司は適切に助言し、必要なリソースを提供しつつも、自律的な行動を奨励する姿勢を持つことが重要です。
このような環境が整うことで、部下は自ら考え、行動する力を身につけることができ、結果として組織全体のパフォーマンス向上につながります。
自律型人材を育成するメリットとデメリット
自律型人材を育成することには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下に具体的に説明します。
メリット
|
デメリット
|
これらのメリットとデメリットを理解することで、自律型人材の育成を成功させるための適切なアプローチや対策を講じることができます。
例えば、定期的なフィードバックやメンタリングの導入、チームビルディングイベントの実施などが考えられます。
まとめ
本記事では「自律型人材」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
自律型人材の基礎知識として、以下を解説しました。
|
以下の背景があると自律型人材になりやすいと考えられます。
|
自律型人材と関連性の深い心理学理論として、以下をご紹介しました。
|
企業が自律型人材を育成するポイントは、以下のとおりです。
|
自律型人材の重要性は、今後ますます高まっていくと予想されます。自ら変化の波に乗り、イノベーションを生み出せる人材を育成することが、激動の時代を勝ち抜く鍵となるでしょう。
自律型人材の育成に向け、取り組みを推進していただければと思います。
株式会社LDcubeでは、自律型人材の育成に向けた学習環境づくりの支援を行っています。内的動機づけを行えるようなマインドを育む研修プログラムや有能感を高めるためのパーソナライズした学習環境の提供など幅広くご支援しています。無料のプログラム体験やデモIDの発行など行っています。お気軽にご相談ください。
▼ LDcubeへの問合せはこちらから。
▼ 関連資料はこちらからダウンロードできます。
▼ 関連記事はこちらから。