部下が育ちにくい原因と10の対処法とは!「仕事」を与えない上司の部下は育たない?

「部下が育たないのですがどうすればよいですか?」
このような質問を私たちは過去多くのマネジャーからいただいてきました。

原因はケースによってさまざまあります。

私たちの経験上、特にエンジニアが多い組織においては、自分の担当する領域についての技術などについては進んで学習するものの、人と関わることや上司後輩との関わりが弱くなりがちという傾向があります。

しかし、このようなケースでも、「部下がよく育つ時期」に「適切なサポート」を実施することで、部下が育つようになっていきます。

例えば、以前ご相談いただいた会社は、以下の状況でした。

【相談いただいた会社の状況】
お悩み:今後管理職となって組織を引っ張っていってほしい世代が育っていない
ご要望:意識・マインドの育成をしていきたい  
ご提案:中堅技術者の意識・マインド育成による底上げをするための研修
(詳細)

~大手企業 某カンパニー 数千名~  研修の目的中堅技術者の意識、マインド育成による底上げ 対象となる層   主務直前から課長級直前までの10年スパン(30歳~40歳ぐらい)の中堅技術者約400人程度 現状の課題  ・知識に対して、意識・マインドが低い  ・コミュニケーションスキルが弱く、なかなかお客の前に一人で出せない。  ・理論は言えるが相手の気持ちがわからない。  ・OJTが十分に機能していない。(育成にスピードが求められる、育てる側も力不足)  ・考える力が弱い。  ・チームリーダーとしての意識・能力が不足している。  ・失敗経験を積んでいない為、自分の力不足に気づけていない。自己認知が出来ていない。 研修に盛り込むべき要素  ・現状認識  ・自己認知  ・マインドアップ  ・コミュニケーション力 ・対人関係力向上  ・チームビルディング  ・リーダーシップ   (但し、その場だけの研修に終わるものではなく「実務に活きる研修)

大変な状況ではあったものの、「部下がよく育つ時期」に「適切なサポート」を実施することで、この会社は部下が育つようになり、大きな成果が生まれていきました。

実施したことは、主に以下の3つです。

  • 管理職候補層を対象に1回24名を対象として複数班に分け、1班につき半年間にわたる研修プログラムを展開
  • 研修をするだけではなく、研修後に受講者、受講者の上司、研修講師、社内事務局の4者面談を取り入れた
  • 受講者の能力開発に向け、研修時の報告にとどまらず、その後の現場でのタスクアサインを変えていった(成長のための仕事を与えていった)

この取り組みは大きな成果となり、受講者の仕事ぶりに大きな変化が見られ人が育つきっかけとなりました。

今回は上記のような経験を踏まえ、エンジニアが多い組織内での「部下が育ちにくい」と悩む方に、

  • 部下が育ちにくい原因
  • 部下がよく育つ時期
  • 部下が育ちにくい問題を解決する10の対処法

について詳しく解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.仕事を与える上司・与えない上司の違い
    1. 1.1.作業と仕事の違い
    2. 1.2.作業を与える上司と仕事を与える上司の違い
  2. 2.部下が「よく育つ時期」に仕事を与えれば部下は育つ
    1. 2.1.コンピテンシー調査から見えてきた能力開発が進む時期は「30代前半」
    2. 2.2.各年代の調査データ紹介
      1. 2.2.1.【20代前半・後半のデータ】
      2. 2.2.2.【30代前半・後半のデータ】
      3. 2.2.3.【40代~50代のデータ】
      4. 2.2.4.(補足)コンピテンシーとは
  3. 3.部下が育ちにくい問題を解決する10の対処法(チェックリスト付き)
    1. 3.1.コミュニケーションを確保する
    2. 3.2.信頼関係を構築する
    3. 3.3.期待を伝える
    4. 3.4.自己成長への意識向上を図る
    5. 3.5.具体的なビジョンを共有する
    6. 3.6.スキルアップの機会を提供する
    7. 3.7.ストレッチアサインを行う(仕事を与える)
    8. 3.8.メンターとしての役割を発揮する
    9. 3.9.フィードバックを行う
    10. 3.10.パフォーマンスの評価を行う
  4. 4.まとめ

部下が育ちにくい原因は上司から「仕事」を与えられていないこと

部下は上司から「仕事」を与えられず、「作業」ばかりしていると、成長の機会がなく育つことが難しいです。

「部下を育てることが最も優先する仕事ではない」と認識している上司の方は意外と多くいらっしゃいます(自分が責任を担っている目標が達成できていれば、部下が育たなくてもよいと思っているケースもあります)。

だから、指定した手順を単純に実行してもらう「作業」を与えていれば目標は達成できるため、「部下が育ちにくい」という状況になってしまいます。

短期的に成果を求められる上司はついやってしまいがちなことですが、長期的に見ると、職場や会社全体の成長を鈍化させる結果となります。

  • 上司が1人で全てを行うのではなく、部下に適切な量と難易度の「仕事」を与える
  • もしくは、あえて難易度の高い「仕事」を任せて成長の機会を提供する

これも上司の大事な仕事の1つであり、人材を育てるための必須の行動といえるのです。

上司は、部下の「仕事」の難易度や量を適切にコントロールし、部下の能力を最大限に発揮させる機会を提供する権限を持っています。

権限を適切に使い部下を成長に導いていくことがポイントです。

部下を信頼し、彼らが成長できる機会をつくり、必要なサポートを提供する。これが、真のマネジメントといえるでしょう。

仕事を与える上司・与えない上司の違い

仕事を与える上司・与えない上司の違いは「作業」と「仕事」の違いを理解できているかどうかという点です。

まず、作業と仕事の違いについて説明し、そのうえで、作業を与える上司と仕事を与える上司の違いについて説明します。

作業と仕事の違い

作業と仕事は見た目ではあまり違いがないように見えることがあります。

しかし、背後にある意図と結果は大きく異なります。

作業:一連のプロセスまたは手順を実行すること

仕事:作業以上のものであり、それは「付加価値」を生み出す活動

「作業」は、一連のプロセスまたは手順を実行することを指します。ルーティン的なものであり、特定の手順を順番にこなすことで完了するものがほとんどです。

作業自体は動作の連続であり、それ自体が価値を生むとは限りません。ただし、作業は必要なものであり、組織全体の運用をスムーズにするために必要な業務となります。

一方、「仕事」は作業以上のものであり、「付加価値」を生み出す活動を指します。付加価値とは、その活動によってもたらされる特定の利益または結果のことであり、ビジネスの文脈では通常、直接または間接的な利益を生むことを指します。

仕事は独自の思考、分析、判断、創造性を必要とし、仕事を通じて新たな価値を生むことが期待されます。

例えば、

  • プロジェクトの計画を立てること
  • 新しいビジネスモデルを開発すること
  • 顧客との関係を構築し深めること

などです。これらは全て付加価値を生む「仕事」の例です。

つまり、「作業」は決められた一連のプロセスを実行するだけですが、「仕事」はその過程で何か新しい価値を生み出すことを求められます。

仕事を与える上司・与えない上司の違いはこの「作業」と「仕事」の違いをきちんと理解できていて、使い分けられているかどうかという点にあります。

作業を与える上司と仕事を与える上司の違い

作業を与える上司
短期的に生産性が上がるが、中期的には部下が育ちにくく、生産性も上がらず、大きな仕事を成し遂げられない
 
仕事を与える上司
短期的には生産性が上がらないが、中期的には部下が育ち、生産性も上がり、より大きな仕事を成し遂げられる

作業を与える上司は、仕事の大部分を自分でこなしながら、必要な作業を部下に任せながら仕事を進めます。

そのため短期的には効率よく仕事を進めることができ生産性が上がります。しかし、部下が育ちにいくため、それ以上の生産性を上げることができません。

結果として現状の仕事の維持がやっとで大きな仕事を成し遂げることにはつながりません。

一方、仕事を与える上司は、目の前の一時的な生産性の低下を自分の責任の中で引き受けながら、思い切って仕事を部下に任せることで、その仕事を通じて部下が育っていきます。

部下が育つことで今まで以上のことに取り組める状況をつくり出すことができます。それにより、現状の仕事以上の大きな仕事に職場チームとして取り組むことができ、より大きな仕事を成し遂げることができるようになります。

能力開発に適した年齢資料

部下が「よく育つ時期」に仕事を与えれば部下は育つ

人間の能力開発という側面から見たときに、「よく育つ時期」が分かりました。

よく育つ時期に作業ではなく、仕事を与えれば、部下はすくすく育つでしょう。

本章では、「よく育つ時期」についてコンピテンシー調査のデータを活用しながら、解説します

コンピテンシー調査から見えてきた能力開発が進む時期は「30代前半」

コンピテンシーについて調査するコンピテンシー診断といい、さまざまな年代のさまざまな研修の受講者に事前課題として受講いただいたデータを分析したところ、コンピテンシー開発が大きく進む年齢層が見えてきました。

結論は、20代前半・後半、30代前半・後半、40代前半・後半、50代前半・後半の中で、一番コンピテンシー開発が進む時期は「30代前半」であるというものです。
(株式会社ビジネスコンサルタント調べ)

30代前半は、「よく育つ時期」といえるでしょう。

なぜなら、仕事をはじめてそれなりの経験を積み、色んなことができるようになってくる時期であり、後輩に教える経験をはじめ、さまざまな経験ができる年代であるからだと考えられます。

30代前半になるとワークライフバランスや働き方改革を意識しながらも、能力開発につなげるための“挑戦的な仕事経験(修羅場)”をデザインすることが能力開発において最も重要であるといえます。

もし、30代前半で大事な仕事経験ができないと、その後のことを考えると能力開発上の最大の“機会損失”につながりかねません。企業にとっては人材育成上の最大の“リスク”であるともいえます。
 
次章以降で、データを見ながらこの結論を確認していきます。育っているのかどうかは、「コンピテンシー調査」の結果を見ていきます。

各年代の調査データ紹介

コンピテンシー調査のデータを紹介します。コンピテンシー調査でわかることは、「個人の能力について、目に見えない部分の能力開発状況」です。

これは、個人が持っている能力・行動特性(目に見えない部分)の発揮度合いを調べて、その発揮度合いの値が上下することで、「成長している」「成長していない」を判断していきます。

実際のデータを見ていきましょう。

【20代前半・後半のデータ】

20代前半・後半のコンピテンシー開発状況のグラフ。20代前半・後半ともにほとんどのコンピテンシーで平均を下回っている。

グラフの中央付近にある水色のラインが全体の平均値です。20代前半・後半ともにほとんどのコンピテンシー項目で平均を下回っています。20代前半から後半になるにつれて、平均に近づいていく様子が確認できます。

【30代前半・後半のデータ】

30代前半・後半のコンピテンシー開発状況のグラフ。30代前半で平均を上回り、30代後半でも同様の傾向を示している。

30代前半になると、ほとんどのコンピテンシー項目で平均を上回ります。30代後半になってもグラフの波形はほとんど変わりません。

【40代~50代のデータ】

40代~50代のコンピテンシー開発状況のグラフ。40歳以上は年齢層が異なっても結果はほとんど変わらない。

40代前半・後半、50代前半・後半のグラフを見てみると、その結果はほとんど変わらないことが確認できます。

このように20代後半まではほとんどのコンピテンシー項目で平均を下回っていた段階から、30代前半を迎えるタイミングでほとんどのコンピテンシー項目で平均を上回ることから、30代前半がコンピテンシー開発の進む時期、「よく育つ時期」であると考えています。

(補足)コンピテンシーとは

コンピテンシー説明図

コンピテンシーとは優秀な人材が有している行動特性のことをいいます。特に見かけからでは分からない内面の価値観や思考パターンなどを指します。

どのような仕事でもそうですが、仕事は成果を求められます。

​​求められる成果をだすために必要な行動があります。行動を適切に行うためには知識やスキルが必要です。知識やスキルを身につけるために研修会やeラーニングの学習の場を活用して身につけていきます。

知識やスキルは目に見える部分です。知識があるかどうかは理解度テストを実施すれば見ることができます。スキルは実技をやってもらえば、やれるかどうか見ることができます。

しかし、知識やスキルだけでは成果は生み出せません。知識・スキルを「効果的に活用する能力」が必要です。この土台となる目に見えない部分(思考特性・心的態度・自己概念・動機)のことを「コンピテンシー」といいます。コンピテンシーの開発が結果として成果につながります。

部下が育ちにくい問題を解決する10の対処法(チェックリスト付き)

今回は、上司ができる「部下が育ちにくい問題を解決する10の対処法」として整理しました。重要なのは⑦のタスクアサインですが、⑦を生かすためには①⑥がどの程度できているかを確認しましょう。

部下が仕事のアサインをきちんと受け入れて、前向きに捉え、持てる力を投入し全力で取り組めるようにしておく必要があるからです。

この点を理解しておかないと、良かれと思って仕事をアサインしたのに、本人が、負担が増えたと感じて離職してしまうという負の連鎖を生んでしまうこともあります。

そして、タスクアサイン後は⑧~⑩の要素も忘れずに実践していきましょう。

まず、10の対処法についての解説を読みながら、下記のチェックリストで自己点検をしましょう。
次に、できていない対処法を確認し、実行する計画に落とし込みましょう。

以下のチェックリストの項目が改善されることで、あなたにあるかもしれない「部下が育ちにくい原因」を潰していくことができます。

(今すぐ確認できる!部下が育ちにくい上司になっていないかチェックリスト10)

部下が育たないチェックリスト


コミュニケーションを確保する

部下とのコミュニケーションを1日1回は必ず取るようにしましょう。

なぜなら、日ごろから話をしておくことで、部下から意見や疑問、不満をオープンに話せる場をつくることにつながるからです。

彼らが安心して自己表現できる環境をつくることができれば、心理的安全性が高い状態になります。

例えば、以下の(コミュニケーションを取る例)を実践してみてください。
 
(コミュニケーションを取る例)

  • 現在の仕事の進捗状況について
    「今回のプロジェクトの来週までのタスクだけど、順調に終わりそう?」
  • 仕事を進めるうえで気になっていること、不安や懸念
    「今回の案件のあの提案書作成だけど、何か気になることや不安ってある?」
  • 仕事以外のプライベート面での不安など
    「この前、子供の病院通いが大変って言っていたけど、フレックス制とかうまく使えている?」
  • 職場について感じていることや気になっていること
    「最近、職場で何か気になることとかある?どんなことでもいいよ。」
  • 上司や会社への期待
    「今期の方針を聞いて、期待していることとかある?会社に対しでもいいし、自分(上司)に対しでも」

など

信頼関係を構築する

部下との信頼関係を構築していくことは

  • 部下に信頼していることが伝わり、
  • 部下が自分の仕事に対する責任を感じ取り、
  • 自発的に行動を起こす

ことにつながっていきます。

部下が上司に対して信頼感を持つことで、結果として職場の生産性が高まる可能性があります。

信頼関係の構築は一朝一夕にはいかない分、部下とのコミュニケーションを確保しながら、上司が部下への理解を深めていくことの積み重ねが必要です。

そのような関係性を徐々に築いていくことで信頼関係が育まれます。


(信頼関係を構築する例:1のコミュニケーションを確保している前提で)

  • 部下にお願いしている仕事の重要性などを伝える
  • 部下の仕事の成果を一緒に喜ぶ・労う
  • 部下が何かしてくれたら「ありがとう!」と感謝の気持ちを伝える

など

期待を伝える

上司として、信頼関係が構築できてきたら部下に何を期待しているのかを明確に伝えていくことが重要です。

なぜなら部下は信頼している上司から自分への期待を明確につかむことができれば、その期待に応えようという心境になるからです。

短期的なことから長期的な期待まで含めて伝え、目標を設定することで共に歩んでいく方向性を共有することができます。

部下はそれぞれの置かれた状況に適した働き方や目標を理解し、自身のパフォーマンスを最大化することにつながるとともに、職場全体の一体感の醸成にも寄与します。


(期待を伝える例)

  • ○○さんのこれまでの経験を生かせば、今回のプロジェクトを成功させられると信じています。○○さんならできる!
  • ○○さんの分析力は他のチームメンバーよりも一歩抜きに出ている。それを生かせばこれまでの報告書よりも良い報告書がつくれるよ!
  • ○○さんの人当たりの良さは他の人が持っていないものがある。それを生かせば、今回の部門横断タスクチームメンバーとしてもうまくやっていけると思う

など

自己成長への意識向上を図る

部下への期待を伝えながら、部下の自己成長に向けた意識を向上させることは、彼らの自己実現やキャリア開発において極めて重要です。

成長への意識が低い状態で、成長につながる仕事をアサインしても本人は負担に感じるだけだからです。

成長のためには少し背伸びをしたような仕事に挑戦していくことの重要性などを伝えていきましょう。

自己成長を望むようになると、部下は仕事に対してより熱心に取り組み、前向きで創造的なアイデアを提案し、ブレイクスルーしやすくなります。


(自己成長への意識向上を図る例)

  • 今が能力の伸び盛りの時期なので、ちょっと負荷が増えるけど、今回の仕事に挑戦してみない?
  • この仕事はちょっと大変なのだけど、これをやりきるとものすごく成長できるよ
  • 実は、今活躍しているAさんは、数年前にこの仕事をやり切ってものすごく成長して、今の活躍があるんだ。○○さんもこの仕事に挑戦してみようよ

など

具体的なビジョンを共有する

上司は、部下にビジョンを共有し、そのビジョンに向けた具体的なアクションプランを作成し、活動していくことが重要です。

なぜなら「作業」ではなく「仕事」をして付加価値を高めていくには、ビジョンが必要だからです。

ビジョンを理解し、共感できれば、自分たちが何に取り組む必要があるかを自ら考えることができるようになります。


(具体的なビジョンを伝える例)

  • 今やってもらっている資料作成は面倒くさいと思うかも知れないけれど、資料を50件作成して、それをポータルサイトに掲載できれば、見込客数を急激に伸ばせる見通しなんだ。だから、今のテーマ以外にもアイデアがあればどんどん出してほしい。早期に50件作成して業績を上げよう!

など

スキルアップの機会を提供する

上司として部下の成長を促進するためには、スキルアップの機会を提供することが大切です。

部下が期待に応え、自己成長に向かって仕事に取り組んでいくためには常に新たな知識やスキルを学んでいく必要があるからです。

社内外で行われている研修会やワークショップはもちろん、上司自ら勉強会を開催したり、おすすめの図書やeラーニングを紹介したりしましょう。

上司の社内人脈を活用して勉強会を開催してもらうなども効果的です。


(スキルアップの機会を提供する例)

  • 自ら勉強会を行う(できれば定期的・継続的に)
  • 社内で行われている研修会への参加を推薦する
  • 社内で募集しているeラーニング受講の機会に推薦する
  • 能力開発につながりそうな外部の研修やeラーニングを探して、受講を薦める(受講する場合、自らの権限で決裁したり、予算取りに動く)
  • 自分が読んで役に立った書籍を紹介する
  • 自分のネットワークを生かし、社内外の知人に勉強会を依頼する

など
  

ストレッチアサインを行う(仕事を与える)

部下の能力を引き出すためには、彼らに挑戦的な仕事(ストレッチアサイン)を与えることが最も重要です。

なぜなら、その仕事を進めるうえで必要な新たな知識やスキルを学びながら仕事を進めることで、部下は自分自身の成長を感じることができるからです。

そしてその経験を通じて成長していくのです。今現状の能力で十分対処できるものではなく、少し背伸びをしたチャレンジブルな仕事であることが大切なポイントです。

併せて、ストレッチアサインをする前にスキルアップの機会を提供しておくことも大切です。


(ストレッチアサインの例)

  • 今までやったことの無い分野の仕事(新たなスキルを学ばないとできない仕事)
  • 他部門やステークホルダーとのやり取りが多い仕事
  • 不振部門の立て直しなど困難な状況でストレスのかかる仕事
  • 制度改定や組織再編など変革に携わる仕事
  • 海外赴任などの状況が大幅に変わる仕事
  • 後輩メンバーを育成しながら進める仕事(自分だけではできない仕事)

など

メンターとしての役割を発揮する

上司は、部下が挑戦的な仕事に取り組んでいる間も部下とのコミュニケーションを確保し、つまずきそうなことなどに対してはアドバイスを行うなど、サポートを行うことも重要です。

上司は、自身の経験を踏まえ、つまずきそうなことなどを予測することなどができるからです。

部下が挑戦的な仕事にチャレンジしてそれを成し遂げることで成長します。

ストレッチアサインをして終わりではなく、その仕事経験から最大限の学びを得られるよう関わっていくことがポイントです。


(メンターとしての関わる例)

  • このプロジェクトは経営管理部に動いてもらうことが多いから、先に挨拶しておいた方がスムーズに動きやすいよ。もう挨拶した?まだしてないなら一緒に挨拶に行こうか
  • この案件は、法的論点も含むので、最終的には弁護士チェックが必要になるはずだから、先にそういう案件が今あるということを法務チームに連絡しておいた方がよいね

など

フィードバックを行う

仕事の結果だけではなく、過程においても気付いたことについては本人にフィードバックしていくことが重要です。

なぜなら、人はフィードバックを得ることで、気付きを得ることができ、自己認識が拡大し、成長していけるからです。

フィードバックのポイントはHere & Now(今、ここで)です。気付いたときにタイムリーなフィードバックを提供することで、相手は受け入れやすくなります。

また、仕事の成果についてもきちんと評価し、そのパフォーマンスに対するフィードバックを行うことも必要です。


(フィードバックを行う例)

  • 本人が主催し、議事進行するミーティングをオブザーブし、感じたことなどをミーティング後にフィードバックする
  • お客さま先に同行し、打ち合わせに同席した上で、打ち合わせ後に感じたことなどをフィードバックする

など

パフォーマンスの評価を行う

部下のパフォーマンスを適切に評価することは、部下の仕事の質を向上させ、さらなる成長を促すためには不可欠です。

なぜなら、パフォーマンスの評価を通じて、マネジャーは部下の努力をたたえ、また改善が必要な点を正確にフィードバックすることができるからです。

また、仕事を通じて成長している部下や著しい成果を上げている部下については昇進昇格に向けて、上長に推薦することなども上司の大切な役割です。


(パフォーマンス評価の例)

  • 評価面談で、部下の自分の仕事に対する自己評価を聞き、上司としての部下の仕事ぶりの評価とのすり合わせを行う。部下が過大評価していればそれを軌道修正し、過小評価していれば、うまくできている部分を伝え、誉める。
  • 部署内での評価ミーティングなどがある場合には、顕著な活躍をしたメンバーについては、その仕事ぶりを売り込み昇格の推薦を行う

など

まとめ

部下が育ちにくい原因と10の対処法!「仕事」を与えない上司の部下は育たない?と題してポイントを紹介してきました。ポイントをまとめておきましょう。

【ポイント】

  • 仕事を与えないと部下は育ちにくい
  • 作業と仕事は違う
    作業:一連のプロセスまたは手順を実行すること
    仕事:作業以上のものであり、それは「付加価値」を生み出す活動
  • 部下がよく育つ時期は「30代前半」 
  • 部下が育っていないときの対処法10は下記の通り
    1       コミュニケーションを確保する
    2       信頼関係を構築する
    3       期待を伝える
    4       自己成長への意識向上を図る
    5       具体的なビジョンを共有する
    6       スキルアップの機会を提供する
    7       ストレッチアサインを行う(仕事を与える)
    8       メンターとしての役割を発揮する
    9       フィードバックを行う
    10    パフォーマンスの評価を行う

部下がよく育つ30代前半に、作業ではなく仕事を与えることで部下は育っていくでしょう。

部下が育っていない場合には仕事ではなく作業をさせているにすぎない可能性があります。

作業と仕事の違いを理解し、部下に仕事を与えましょう。

部下に仕事を与える際にも、その仕事をきちんと受け入れて全力で取り組める下地づくりも重要です。

そのためチェックリストで示した10の対処法を活用して、できるところから意識して取り組んでみましょう。

きっと部下が育ち、その部下の力も借りながらより大きな仕事を成し遂げることができるでしょう。

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代表取締役 新井澄人
代表取締役 新井澄人
株式会社ビジネスコンサルタントで、講師派遣型の人材育成支援から始まり、社内トレーナーの養成による人材育成支援、デジタルツールを活用した人材育成のDX化の支援まで、中小企業から大企業まで20年にわたり幅広いコンサルティングに従事。 新入社員研修からOJTリーダー研修、若手社員研修、管理職研修、幹部研修、営業研修、デジタル学習環境づくりのコンサルテーションなどに自らもコンサルタントとして登壇しながらも、人材育成・組織活性化・営業強化において講師派遣型の枠を超えた支援を実現するため、ビジネスコンサルタントの子会社である株式会社LDcubeの設立と同時に代表取締役に就任。 資格: ・全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC2023002) ・LIFOプログラムライセンス(LIFO-MSSプログラム開発者)

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