建設業における2024年問題とは?人事部における課題と解決策について解説!
働き方改革の一環として、建設業における時間外労働の上限規制が2024年4月に適用となります。
これは2024年問題とも呼ばれており、建設業にさまざまな影響を与えると予想されており、早急な対応が必要です。施行日が近づいているため、建設業界では現状の課題を解決して働き方改革の実現が求められます。
この記事では、建設業における2024年問題の概要と現状の課題、働き方改革に向けた取り組みについて詳しく解説します。
▼働き方改革については下記で解説しています。合わせてご覧ください。
⇒建設業の働き方改革とは!2024年問題を見据えOJTマニュアルの整備などの施策や留意点を解説!
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目次[非表示]
- 1.建設業界の2024年問題とは
- 2.2024年問題で理解すべき2つの事
- 3.2024年問題に向けた4つの取り組み
- 3.1.①長時間労働の低減
- 3.2.②給与の見直しや福利厚生の充実化
- 3.3.③現場の生産性向上
- 3.4.④評価制度の見直し・改善
- 4.建設業界が抱える大きな課題とは
- 4.1.①少子高齢化に伴う若手人材不足
- 4.2.②若手人材の離職率の高さ
- 4.3.③長時間労働の常態化
- 5.課題解決には企業内大学の設置と活用
- 5.1.企業内大学とは
- 5.2.再教育・スキルアップ支援を行う
- 5.3.社内イノベーションを推進する
- 5.4.人材の定着と採用強化を図る
- 6.企業内大学は採用強化にもつながる【事例】
- 7.まとめ
建設業界の2024年問題とは
建設業の2024年問題とは、2024年4月から建設業における労働基準法が改正され、時間外労働に対して罰則付きの上限規制が適用されることを指します。
それに伴い、建設業に携わる企業は早急に働き方改革に取り組む必要があります。
本来の施行日は2019年4月1日ですが、建設業界の高齢化や労働人口の減少などの課題から短期間での問題解決が難しいと判断され、5年間の猶予期間が設けられました。
その猶予期間も残りわずかとなり、2024年4月の施行日が差し迫っているため、建設業界全体での働き方改革の推進が求められています。
2024年問題で理解すべき2つの事
ここでは、建設業における2024年問題で理解しておくべき事項を2つ紹介します。
①時間外労働は原則月45時間以内・年360時間以内
労働基準法では、時間外労働時間の上限規制は原則月45時間以内、年360時間以内と定められています。
特例として、特別条項付き36協定を締結した場合は以下の条件つきで時間外労働が可能です。
- 時間外労働が年間720時間以内
- 月間45時間の上限を上回れるのは年間6ヶ月まで
- 単月100時間未満かつ2~6ヶ月の平均が80時間以内
法改正前の建設業では上限規制を超えても罰則はありませんでした。
しかし、今回の法改正では上記の条件に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
②割増賃金率が25%から50%へ引き上げ
今回の法改正では、中小企業における60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。
建設業を営む大企業では2010年から適用されていましたが、中小企業には猶予期間があったため、実際の施行は2024年4月となります。
建設業における中小企業とは、資本金・出資金が3億円以下、もしくは従業員数が300人以下の企業のことをいいます。
2024年4月以降は、企業の規模に関係なく上記の割増賃金率で給与を支払わなければなりません。
2024年問題に向けた4つの取り組み
ここでは、建設業における2024年問題に向けた重要な取り組みを4つ紹介します。
①長時間労働の低減
建設業で働き方改革を実現するためには、長時間労働を低減させる必要があります。
長時間労働の低減には、国土交通省より発表されている『建設業働き方改革加速化プログラム』に基づく改善が必要です。
建設業働き方改革加速化プログラムでは、長時間労働に対して以下の対策が推奨されています。
- 週休2日制の導入を後押しする
- 各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する
上記の対策は業務プロセスの変更や現場リソースの増加などで実現できる可能性があります。
しかし、労働時間の減少は工期のしわ寄せを招く可能性があるため、実施する際は慎重に検討することが大切です。
②給与の見直しや福利厚生の充実化
建設業における給与の見直しや福利厚生を充実させるためには、建設業働き方改革加速化プログラムに基づく改善が必要です。
建設業働き方改革加速化プログラムでは、以下の対策が推奨されています。
- 離職防止に向けた、技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する
- 社会保険への加入を、建設業を営む上でのミニマム・ スタンダードにする
建設業における労働人口の減少には技能や経験に見合わない給料や社会保障の不足が原因として挙げられます。
働き方改革を実現させるためには新たな人材の確保が必要であり、適切な給与の設定や社会保険への加入が不可欠です。
③現場の生産性向上
建設業で働き方改革を実現させるためには、現場での生産性を向上させる必要があります。建設業働き方改革加速化プログラムでは、以下の対策が推奨されています。
- IOT、ICT導入による業務効率化や従業員のスキルアップ
- モチベーション向上などで生産性を高める
- 新人の定着、即戦力化に向けた学習コンテンツの導入
長時間労働や人材不足が深刻な課題としてある建設業では、これまで以上の生産性を実現するのは簡単ではありません。
この状況を打破するためには、IOTやICTを活用した新たな働き方の推進が必要不可欠です。
労働者のニーズに沿った学習コンテンツの導入も有用であり、新人や既存社員の定着率を向上させられます。
④評価制度の見直し・改善
昔ながらの職人気質の労働者が大半を占める建設業では、新人・若手社員が適切な教育や評価がされない場合があります。
これが原因で離職するケースも少なくなく、社員の定着と働き方改革を実現するためには労働環境や評価制度の見直しが必要です。
従業員のエンゲージメント向上に向けたより適切な評価制度の導入、成長に向けたフォローアップの実施などで職場環境の改善が期待できます。
社員の知識やスキルアップには学習プラットフォームがおすすめであり、学習成果や進捗を適切に管理して成長を定量的に評価することで人事施策に生かすことが可能です。
建設業界が抱える大きな課題とは
建設業で働き方改革が必要とされる背景には、建設業界全体が抱える大きな課題があります。ここでは、建設業界の課題を3つ紹介します。
①少子高齢化に伴う若手人材不足
建設業界では少子高齢化に伴う若手人材の不足が深刻な課題となっています。 国土交通省が公開した「建設業の働き方改革の現状と課題 2021」では、建設業就業者数は2020年時点で55歳以上が36.0%、29歳以下は11.8%であり、高齢化が進んでいることが分かります。 全国的に労働人口が減少しているなか、新たな人材確保と次世代の技術継承が建設業界の課題です。
②若手人材の離職率の高さ
建設業界では、若手人材の離職率の高さが一つの課題となっています。 厚生労働省による「雇用動向調査」で、29歳以下の労働者の離職率が他の年代に比べて高くなっており、若手人材の不足が慢性化しています。 これは建設業が高齢化に陥る要因として考えられており、早急な対応が必要です。
③長時間労働の常態化
建設業界では、長時間労働の常態化が課題です。 国土交通省による「建設業における働き方改革」では、他の業種に比べて建設業の年間労働時間や年間出勤日数が多くなっていることが示されています。 建設業界全体での人材不足や短期間納期の依頼などが原因と考えられており、働き方改革に踏み切れない要因の一つです。
課題解決には企業内大学の設置と活用
2024年問題に対しては企業内大学の設置と活用が有効です。特にテクノロジーの活用やVR技術の導入、外国人労働者の育成が鍵となります。
企業内大学とは
企業内大学とは、各企業が運営する教育組織であり、それぞれの戦略やビジョンに基づく教育・研修を提供し、従業員のスキルアップと業績向上を目指しています。
組織の成長や個人のキャリア開発、リーダーシップの開発、そして実務教育等を学ぶことが可能なほか、直接現場で学ぶ機会も設けられていることが多いです。
企業の文化や価値観を反映したプログラムの提供し、長期的な視点での体系的な人材育成機能も持っています。
▼企業内大学については下記で解説しています。合わせてご覧ください。
⇒企業内大学のメリットとは?企業の成長を促進するポイントを徹底解説!
外国人労働者の活用・育成を行う
労働力不足の解消のため、外国人労働者の活用が急務となっています。
企業内大学では、外国人労働者に向けた言語教育や技術指導、日本の文化や作業習慣などを教えます。
この教育過程では、動画やVRなどの視覚的なツールを活用することで効率的に理解を深められるよう工夫します。
これを通じて、外国人労働者がスムーズに職場に溶け込み、生産性向上につなげることが可能となります。
再教育・スキルアップ支援を行う
企業内大学は既存の社員や新たな人材のスキルアップをサポートします。
VR技術を活用することは、リアルな状況を再現し安全に技術習得をするための有用な手段です。
これらの技術は、文化や言語の壁を越えて外国人労働者にも技術習得の機会をもたらす重要な役割を果たします。
社内イノベーションを推進する
企業内大学では、建設業に関わる知識や技術、最新の情報を教えます。
これにより、業界の新たなトレンドを捉え、そしてそれを活かす新たな仕事の進め方やビジネスを生み出すための共創の場を構築します。
人材の定着と採用強化を図る
企業内大学は社員にとって自己成長の場となり、キャリアについての視野を拡げる機会ともなります。
これは企業への忠誠心を強め、定着率向上にもつながります。
特に外国人労働者に対しては、教育やケア、サポートを具体的に行うことで、より一層の定着を促します。
また、企業内大学の設置と活用について情報発信していくことで、人材採用の強化にもつながります。
企業内大学は採用強化にもつながる【事例】
建設業で人材育成のあり方を改革した事例を紹介します。
社員数:100名以上
事業:土木建築工事、建設工事の設計と監理
取組後の成果
若手社員の知識習得レベルの底上げ
若手社員が中心となり、自身が新入社員だった頃の目線を思い出しながらコンテンツ作成を行い、2年間で600個が完成しました。
これにより、初めて業務を覚える新入社員にとっても分かりやすく、必要な情報が十分に揃った学習環境を提供することができました。
また、マイクロラーニングの考え方に基づき、全ての動画コンテンツの長さを5分以内収めました。これによって、隙間時間に効果的な学習をすることが可能になりました。
その結果、新入社員の知識習得レベルの底上げにつながりました。
OJT格差の是正とコミュニケーションの活性化
コンテンツを活用した教育によって社員の学習の機会が標準化されたことで、OJT格差が縮小しました。
また、業務内容については新入社員と若手社員がベテラン社員に習い、現場で活用するスマートフォンやタブレットなどについては上司が新入社員と若手社員から学ぶという動きも出てくるようになりました。
この動きは、ベテラン社員と新入社員、若手社員のコミュニケーションの活性化にもつながっています。
入社希望者の増加
企業内大学の運用には、ラーニングプラットフォーム「UMU(ユーム)」を活用しました。
これにより、県内の入社希望者数の増加につながりました。
新卒の採用説明会やメディアの取材において、UMUを使ったオンラインでの企業内大学の取り組みの紹介をすることで、時代に即した教育体制の良さをアピールすることができ、県内の学生が選ぶ建設業知名度ランキング1位を獲得し、学生たちから選ばれる企業になっています。
取り組みの詳細
全社プロジェクトの立ち上げ
課題解決のため、人を介さず業務知識が学べるコンテンツの配信環境を構築するプロジェクトを立ち上げました。
まずは各現場で「わが社の新人に必要な学習内容は何か」という観点で棚卸しを行いました。このプロジェクトの初期は、中堅社員をコンテンツ作成作業の中心に据えました。
全社員アンケートを実施
現場所長や各部署の社員を対象とした「現場に配属になった際に覚えてほしい事」アンケートを実施しました。
そこで集まった声を基にし、業務フローと照らし合わせながら、必要なコンテンツリストをブラッシュアップしました。
コンテンツ作成のサポート体制を強化
中堅社員の目線でコンテンツ作成を行った結果、自身が新入社員だった頃の感覚を忘れていることもあり、どのようなポイントを伝えれば新入社員にとって分かりやすいかという観点が抜けた内容になっていました。
また、コンテンツ一つ一つの情報量が多い事や、自身が普段当たり前のように行っている業務を、コンテンツに落とし込むことができないという課題が浮上しました。
そこで具体的な作業に関するコンテンツの作成を若手社員が担当するように切り替えました。
また、各部に配置したアシスタントによる動画撮影・編集のバックアップなどのコンテンツ作成サポートの強化を行いました。
背景・課題
技術教育に十分な時間を割けない
テラン社員が現場作業に追われ、若手社員の技術教育を十分にできていないという課題がありました。
また、時間だけでなく、人員にも余裕がないため、本来教えるべき技術やノウハウが現場で伝達できていないという事態に陥っていました。
OJT格差と離職率が上昇
現場のOJTは主にベテラン社員が担当していましたが、人によって言うことが違う、厳しい口調の上司が多いなど、 OJT格差がありました。
その結果、若手社員の離職率が高くなり、新入社員の採用に悪影響が出ました。
まとめ
この記事では、建設業における2024年問題について以下の内容で解説しました。
- 建設業界で注目される2024年問題とは
- 建設業界が抱える大きな課題とは
- 3.2024年問題で理解すべき2つの事項
- 4.2024年問題に向けた重要な取り組み
- 5.解決に向け企業内大学の設置と活用
- 6.企業内大学の設置は採用強化にもつながる【事例】
2024年4月に施行される労働基準法の改正は建設業に大きな影響を与えます。
高齢化や従業員不足などの課題を抱える建設業では、新たに設定された時間外労働に対する上限規制によってさまざまな影響が出ます。
この問題を解決するためには現状の課題の解決が必要不可欠であり、従業員が定着し、成長できる労働環境の確保が必要です。
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