【調査レポート速報!】ポスト・コロナの人財育成施策の実態を公開!
コロナ禍において人財育成施策の展開に大きな変化がありました。社会のデジタル化が進む中、人財育成領域においてもデジタルツールの活用やオンライン化などが急速に進みました。
新型コロナウイルス感染症の位置づけは「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」とされていましたが、2023年5月8日より「5類感染症」となりました。これによりコロナ禍に控えていた集合研修などの施策も実施しやすくなりました。
そのような環境変化の中、人事ご担当者様、経営者様へ「ポスト・コロナの人財育成施策の実態」について広く調査することといたしました。
本記事ではその結果の一部をご紹介します。
目次[非表示]
アンケート調査概要
- アンケート名称 「ポスト・コロナの人財育成施策の実態」に関するアンケート」
- 調査主体 株式会社LDcube
- 調査期間 2023/7/14~7/27
- 調査方法 WEBアンケート
- 調査対象 人事・人材育成ご責任者・ご担当者様
- 有効回答 223件
質問一覧
- 貴社の従業員数をお選びください。
- 人的資本経営が叫ばれる中、貴社ではこれまでと比べて人財育成への投資をどの程度まで増やしていますか?(直接的な金銭の支払いを伴うものだけでなく、社内体制の強化なども含む)
- 貴社における人財育成の対象として、重視しているのはどのような方々ですか? 当てはまるものをすべてお選びください。
- 質問3のご回答について、その対象者を重視している理由を教えてください。
- 貴社ではどのようなリソースを活用して人財育成施策を展開していますか? 当てはまるものをすべてお選びください。
- 貴社ではどのようなスタイルで人財育成施策を実施していますか?
- 質問6のご回答について、そのスタイルで実施している理由を教えてください。
- コロナ禍において、オンラインでの研修も実施されたのではないかと思います。オンライン研修を実施してみて、その効果についての印象を教えてください。
- 貴社で研修を実施する際、その目的は何ですか?
- 人的資本経営が重要になってきている中、貴社では「社員がどれくらい学習しているか」といった、社員の学習行動についてのデータを取得・可視化できていますか?
- DXが叫ばれる中、貴社の人財育成におけるDXは進んでいると感じますか?
- 「人財育成のDX」とは、どのようなことを実現することだとお考えですか? ご自身のお考えを教えてください。
- 現在の人財育成施策の効果について教えてください。
- 貴社が現在重視している、人財育成上のテーマを教えてください。
人財育成への投資の増減について
質問2
人的資本経営が叫ばれる中、貴社ではこれまでと比べて人財育成への投資をどの程度まで増やしていますか?(直接的な金銭の支払いを伴うものだけでなく、社内体制の強化なども含む)
- 60%の組織では「これまでと変わらない」と回答しています。
- 3%の組織では「減らしている」と回答しています。
- 程度の差はありますが、37%の組織では人財育成への投資を増やしていると回答しています。
【コメント】
60%の組織では「これまでと変わらない」と回答していますが、反面37%の組織では人財育成への投資を増やしていると回答しています。これまで人的資本への投資は研修費など費用に計上されるため、短期的にはコストとみなされてきました。
中長期的には人的資本経営が叫ばれる中で、投資をした社員の知的・技術的資本が高まり、生産性の向上や新サービスを生み出すなど、自社の価値創造への貢献が期待されています。
そのような中では、業績的な観点から投資の可否の問題もありますが、37%の組織が人的資本経営の求められる環境変化にいち早く反応し、人的資本への投資を増やし、60%の組織が様子を見ているとも言えるかもしれません。
先行して人的資本への投資を増やした組織は、人的資本への投資のポイントを早期につかみ、自社の競争優位性につなげていくことが重要です。様子を見ている組織は先行している組織の動きなどをウオッチしながら、自社の投資の方向性や計画を見定め、先行している組織に後れを取らないことがポイントになるでしょう。
人財育成で重視している対象者・層
質問3
貴社における人財育成の対象として、重視しているのはどのような方々ですか? 当てはまるものをすべてお選びください。
- 多くの組織では新入社員から初級管理職層までを重視している。
- 中でも30代前半の中堅社員を重要視している割合が一番多い。
- 次いで、初級管理職層を重視している割合が多くなっている。
- 一方で、役員やキャリア採用者、女性社員を重要視している割合は低めとなっている。
【コメント】
多くの組織では新入社員から初級管理職層までを重視しており、中でも30代前半の中堅社員を重要視している割合が一番多く、次いで、初級管理職層を重視している割合が多くなっているという結果でした。
これまで人材育成投資(研修費)などは管理職層に多くかけられてきた印象がありますが、それがやや若手にシフトしてきている印象を受けます。従来入社して3~5年目くらいまでは研修の機会があり、その後役職者になるまで研修の機会がないということも少なくありませんでした。
その点において、30代前半を重視しているという点においては良い傾向といえると考えられます。
▼ 良い傾向といえる理由はこちらの記事を参照ください。能力開発が進む年齢について解説しています。
人財育成施策を展開するためのリソース
質問5
貴社ではどのようなリソースを活用して人財育成施策を展開していますか? 当てはまるものをすべてお選びください。
- 人材育成施策を展開するリソースについては、社内トレーナーと外部研修がツートップでした。
- 次いで、外部のeラーニングの活用、外部機関の口座への参加、社内で作成したeラーニングと続きます。
【コメント】
本質問は複数回答ですので、多くの組織でこれらのリソースの併用が多いと推察されます。これまでさまざまな組織にお伺いし、人財育成施策のお打ち合わせやその実施に立ち会う中での肌感覚としては、本質問の選択肢を目的に応じて使い分けているのではないか、ということです。
社内での実務的な事柄に関しては社内トレーナーが研修を実施し、リーダーシップ、コミュニケーションスキルなど汎用的なスキルに関しては外部講師を活用する。既任管理者以上については、社内トレーナーでは実施しにくいので、外部の講座に派遣し学習してもらうとともに幹部クラス同士のネットワークを構築する機会を提供する。
コロナ禍を経てeラーニングの活用など教育のデジタル化の必要性も感じており、自社でもコンテンツを作成し始めているものの、自社でのコンテンツ作成が追いつかず、外部機関が提供しているeラーニングについて活用している。社内作成のeラーニングよりも外部のeラーニング活用の比率が高いのは、自社独自のコンテンツの作成も進めたいと思っているものの、そこまで手が回っていないということを表しているのではないかと考えられます。
人的資本経営が叫ばれる中で、今後重要になってくると考えられるのが、社内トレーナーの活躍と自社独自のeラーニングコンテンツの充実です。なぜなら、それ以外は他社もお金さえ出せばその環境を用意することができるためです。競争優位性を築き、確かなものとしていくには自社での努力という名の投資を行い、自社でしか実施できない研修、自社でしか用意できない独自の学習コンテンツをいち早く取りそろえていくことが重要です。お金を出せば用意できる環境については、すぐにでも他社が追随してくる可能性があります。自社独自の研修やeラーニングなどの整備が期待されます。
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人財育成施策の実施スタイル
質問6
貴社ではどのようなスタイルで人財育成施策を実施していますか?
- 集合研修スタイルが27%で1番回答が多いです
- 次いで、集合研修、オンライン研修、eラーニングの併用が25%です
- オンライン研修スタイルは9%にとどまっています
- eラーニングスタイルは14%とオンライン研修よりも活用されています
組織規模別にみると、傾向が異なります。
- 1001名以上の組織では、集合研修の割合が低く、3つのスタイルを組み合わせたスタイルが約半数となっています。
- 300名以下の組織、301名~1000名までの組織では類似した傾向を示しており、集合研修が約3割と一番多いスタイルとなっています。
【コメント】
オンライン研修が普及した世の中ですが、集合研修スタイルが27%で一番多い回答となりました。従来は研修といえば集合研修というイメージが強かったですが、コロナ禍を経てオンライン研修の活用も増えていることがうかがえます。集合研修の実施が不可能という時期もありましたが、2023年5月より、新型コロナウイルス感染症が5類に分類され、少し落ち着いてきたことなども影響し、集合研修が戻ってきているのかもしれません。
次に多かったのが、集合研修、オンライン研修、eラーニングの併用です。25%の組織がこのように回答しています。3つの研修スタイルを組み合わせて展開していくのがこれからの時代のスタンダードになりそうです。コロナ禍以前はオンライン研修という選択肢はありませんでした。集合研修と個別学習の大きな2択でした。コロナ禍でオンライン研修が急激に普及しました。その普及に伴い効果的なオンライン研修の実施に向けてさまざまな工夫をしてきた組織はオンライン研修の可能性を感じ、集合研修が実施できる世の中になったとしても、集合研修に戻すという発想ではなく、効果的な組み合わせを模索されていることが推察されます。
そして規模別にみると、1001名以上の組織では、集合研修の割合が低く、3つのスタイルを組み合わせたスタイルが約半数となっています。これは組織の規模による事業展開上のエリア政策とも関連すると考えられます。さまざまなエリアに支店やオフィスを構える企業はマーケットのカバー率も高く、絶対値での業績も高い傾向にあります。そのため、集合コストをかけずに能力開発施策を展開できるオンライン研修の活用はメリットが大きいと考えられます。
一方、300名以下の組織、301名~1000名までの組織では類似した傾向を示しており、集合研修が約3割と一番多いスタイルとなっています。これもロケーションの影響を受けていることも推察されます。例えば、製造業で、本社と工場が同じロケーションにあれば、集合コストをかけずに施策展開ができるため、集合研修スタイルでの実施で生産性を落とさず研修施策を展開することが可能です。
オンライン研修の効果についての印象
質問8
コロナ禍において、オンラインでの研修も実施されたのではないかと思います。オンライン研修を実施してみて、その効果についての印象を教えてください。
- 36%の方が集合研修と同様の効果が得られていると回答
- 反面、32%の方が、効果が下がったと回答
- 効果が高まったと回答した方は4%にとどまった。
- 19%の方はオンライン研修の実施はしていないと回答
組織規模別にみると、傾向が異なります。
- 1001名以上の組織では、集合研修と同様の効果が得られているが約半数。
- 300名以下の組織、301名~1000名までの組織では集合研修よりも効果が下がったが約半数。
- 300名以下組織では32%がオンライン研修を実施していないと回答
【コメント】
コロナ禍を経て、オンライン研修が普及しました。オンライン研修を実施していない組織もありますが、多くの組織でオンライン研修を取り入れてみたのではないでしょうか。しかしながら、32%の組織では効果が下がってしまった印象をお持ちです。
その理由はこれまで集合研修で行っていた研修をオンライン研修に置き換えたからではないかと考えられます。集合研修とオンライン研修ではできることが違うため、さまざま工夫しながらオンライン研修ならではの研修にしていくことで、従来の集合研修と同様の効果を得ることができます。しかし、単純に置き換えようとすると、できることできないことの違いから効果は下がってしまいます。
オンラインならではの特徴を理解し、その違いを把握したうえで、集合研修をオンライン研修に置き換えるのではなく、新たなプログラムとして創り変えることができると、その効果性を劇的に高めることが可能です。現時点ではプログラムを創り変えて、効果が高まったと実感している組織はわずか4%にとどまっています。逆に捉えると、4%の組織はこれまでの研修実施のやり方にこだわることなく、新しいプログラムづくりに挑戦し、それが研修施策の高い成果につながっているともいえます。
▼ オンラインで効果が高まった事例
まとめ
【調査レポート速報!】ポスト・コロナの人財育成施策の実態に関するアンケートについて紹介してきました。残りの項目については調査レポートで結果を公開しています。
下記よりダウンロード可能ですので、ぜひお手に取ってご覧ください。
新型コロナウイルスが生み出した変化の中で、企業の人材育成は大きな転換期に立たされています。学習効果の高め方や研修の品質維持といった課題は、オンライン化の波に乗ってもなお、企業にとっては切実な問題のままです。今こそ、デジタル化が実現する新たな可能性に目を向けてみてはいかがでしょうか。
ポスト・コロナ時代、物理的な集合の可否をベースに施策を検討するのではなく、デジタル化の意義をきちんと理解し、その実現に向けて必要な事柄に着実に取り組んでいくことで、これまでの枠を超えた人財育成の効果を得ることができます。本レポートが貴社の人財育成施策の参考となれば幸いです。
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